風紋 ~青のはて2017~
てがみ座
赤坂RED/THEATER(東京都)
2017/11/09 (木) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/13 (月) 19:00
1933年、花巻と釜石を結ぶ交通の難所、仙人峠にある花巻軽便鉄道の駅舎兼旅籠を舞台に、宮沢賢治の晩年の3日を描く。と言っても、雷雨で峠の山道が塞がれ閉じ込められた形の、「居場所」のない人々を描いた群像劇として、優れた舞台だった。人物それぞれの「漂い」感が切なく、それらの中での賢治のポジションが絶妙な印象だが、やはり旅籠の女将役の石村みかの存在感が軸になっている。ただし、テンポにメリハリがなく重く長い印象になるのは惜しい。これは、てがみ座の公演でしばしば思うので、演出の問題というより、脚本の問題なのかとも思う。
なおアフタートークで長田は「賢治は〇〇だと思われているが、実は××だったという視点で描きたかった」という言い方を何回かしているが、〇〇だと思っていない人にとっては、どうなのだろうという疑問が湧いた。
ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/10/30 (月) ~ 2017/11/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/11/11 (土) 19:00
2度目の『ロズギル』。改めて、小川の演出の見事さを実感した。生田・菅田両名に力量があるのは確かだが、『ハムレット』を知らない人でも、翻弄される2人に焦点を当てた作りが巧い。また、改めて「座長」役の半海一晃の存在感を感じた。
HOTSKY『ときのものさしー帰郷ー』
HOTSKY
シアターシャイン(東京都)
2017/11/09 (木) ~ 2017/11/12 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/10 (金) 19:30
「老い」というテーマを真っ向から扱って、重くならないのは巧い。認知症の問題とか、いかにもな「あるある」エピソードを軸にしながら、軽やかに扱うという難しさにチャレンジしているが、それは一定程度成功していると思う。主演の伊藤ゆきえもそうだが、高3だという若い三谷あかねも含めて、役者陣の力量はしっかりしている。『ときのものさし』というタイトルは意味深だが、介護職員に語らせるというのは、ちょっと私のテイストではない。この辺は演出の好みがでるところだろう。
墓掘り人と無駄骨
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2017/11/08 (水) ~ 2017/11/13 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/08 (水) 19:30
MCRの作品には、少し壊れた人と真当な人が混在していて、それが醸し出す不思議な感触が魅力である。本作も、そういった男女の出会いと、一方で、全く違った展開の話が交互に流れ、途中で繋がりは何となく分かるのだけれど、どう収束させるのか、興味深く観た。珍しく(と言ったら、櫻井は怒るだろうか?)ハッピーエンドと言ってもよさそうな終わり方になっていたのは、やや意外だった。ただし、セリフのキレは相変わらずだし、伊達香苗の暴力的な肉体の見せ方とか、楽しめる100分だった。
『50ans,j’yvais!(サンコントン ジヴェ!)50歳の私が20代の彼と結婚する方法』
Sky Theater PROJECT
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/11/07 (火) ~ 2017/11/12 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/11/07 (火) 19:30
50歳になる女子大の女子寮の管理人が、28歳のイタリアン・レストランのオーナーシェフにプロポーズされるが、実は37歳と偽っていたので…、というシチュエーションコメディ。嘘を嘘で塗り隠そうとする上に、言葉の取り違いからくる勘違いも重なって、物語は思わぬ方向に向かっていく、という、プロット的にはよくできた舞台だった。ただ、登場人物が多すぎて、余計な(というか無理矢理な印象の)エピソードがあるように思うのが残念。
この熱き私の激情
パルコ・プロデュース
天王洲 銀河劇場(東京都)
2017/11/04 (土) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/11/06 (月) 19:00
ネリー・アルカンという名前は知らなかったが、高級娼婦が自分の実話とも取れる小説を発表してベストセラーになったという話は聞いたことがあった。その壮絶とも言える人生を、彼女の書いた小説をつないだテキストを用いて、6人の女優と1人のダンサーで上演する。2段×5つの10ブロックに分かれた舞台美術が目を引くが、それぞれの部屋が彼女のさまざまな側面を表わしているようで、1部屋に1人の女優がいて、若干シンクロする場面はあるものの、基本的にはモノローグで構成される。かなり抽象性が高いセリフと、ダンス的なムーブメントでの舞台は、理解するというより、感じることを要請しているように思える。
「表に出ろいっ!」English version”One Green Bottle”
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2017/10/29 (日) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★★
野田秀樹と故・中村勘三郎の唯一の共演作で、黒木華の出世作となった作品を英語版で上演する。役者は、NODA・MAPでお馴染みのキャサリン・ハンターとグリン・プリチャードの2人を使って、大竹しのぶ・阿部サダヲによるイヤホンガイドも付く。英語版になってみると、全く違った作品になる、っていうのは、ある意味当たり前だが、今回サブタイトルに付いた "One Green Bottle" (イギリスのわらべ唄 "Ten Green Bottle" から取ったもの)の持つ重みが強い。面白いけれども、やはり英語のフィルターを通すと、笑えるまでの距離は少し遠くなるが、それでも哲学的な意味も含めて「信じる」ことというテーマは活きているなぁ、と思う。
間の女
めがね堂
RAFT(東京都)
2017/10/31 (火) ~ 2017/11/01 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/31 (火) 19:30
永井久喜のランジェリー姿というサービスショットで始まり、一人の男と関わる2人の女を永井が演じ分ける55分。江戸川乱歩の「お勢登場」をテキストに混ぜ込み、悪女は誰か、を探らせるような作りも巧い。だが、何と言っても永井の力量が強烈。ハッキリと結論づけないエンディングも面白く、2ステージしかやらないというのは何とももったいない。
ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/10/30 (月) ~ 2017/11/26 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/30 (月) 19:00
『ハムレット』に登場する端役2人の立場から『ハムレット』を見直す、的な感触のの不条理劇だが、人気俳優2名の競演で、ちょっと不思議な雰囲気の中での舞台だった。実は初めて観る戯曲だが、少し面白いオープニングで始まり、、38分(10分)50分(10分)42分という3幕に区切られたことで、緊張感を持って観ることができる2時間半だった。笑わせる場面も多く、何だか分からない内に死んだことにされてしまう2人の不条理は興味深い。半海一晃演じる「座長」が、ストーリーテラー的な役割をしているのだが、実に巧い。人気があるだけでなく、生田・菅田ともに、それなりの実力はある役者だと思った。
富嶽百景/きりぎりす
monophonic orchestra
live space anima【2020年4月をもって閉店】(東京都)
2017/10/24 (火) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/27 (金) 19:00
須貝英と岡田あがさによるユニットの久々の第2回公演。太宰治を題材に取り、岡田が「きりぎりす」を、須貝が「富嶽百景」を交互に読む形式のリーディング。そもそも力量のある2人が異なる作品を読み合わせたことで、ちょっと独特の感触を醸し出していたのが興味深い。2人とも声がよいことを改めて認識。おまけリーディングとして、須貝作の「その夜」を2人で読んだが、これは須貝らしいトリッキーな感触の物語で、面白かった。
明日がある、かな
トム・プロジェクト
紀伊國屋ホール(東京都)
2017/10/24 (火) ~ 2017/10/30 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/25 (水) 19:00
Trashmaters の中津留章仁が、古巣のトム・プロジェクトに書き下ろした作品だが、真当な「社会派」の芝居になっている。「花粉症」という言葉がなかった1963年に「花粉症」を発見した医者がいた、というフィクションを医者を登場させず、息子のアレルギー対策に栃木の田舎に移り住んだ自動車会社に勤める男の家族を中心に描く。中津留らしい社会の見方や課題意識は確実に感じられるが、やや泣く芝居が多いのは中津留らしくない気もする。フィクションではあるが、実話の部分もあるとのことで、興味深い作品だと言える。
見果てぬ月
文月堂
劇場MOMO(東京都)
2017/10/24 (火) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/24 (火) 19:00
従来の文月堂と少し違い、脈絡のない、いくつかのシーンから始まり、それらが収束していくという、ややミステリー仕立ては面白い。結局、3/4くらいでそれらの関連は分かるのだけれど、どうエンディングに持っていくかに興味を注いでいたが、答えがあるようなないような、若干の余韻を持たせるあたりは文月堂らしい作りと言えよう。
スーパーストライク
月刊「根本宗子」
ザ・スズナリ(東京都)
2017/10/12 (木) ~ 2017/10/25 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/23 (月) 19:30
一人のミュージカル俳優を目指す男と、三人の女に、友情は成立するの、的な物語。いや、誤解やら距離感やら、いつもの「あるある」がいっぱいのネモシューらしい舞台だった。ある種のジェットコースター展開だが、最後ネモシューが少しハッピーになるのは、役得かなぁ。とにかく面白い舞台だった。
ハイツブリが飛ぶのを
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/24 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/22 (日) 14:00
日本中で火山が噴火し、廃墟ならぬ灰墟と化した近未来の日本。記憶傷害の女と、その夫と思われている男、実の夫に、若い「空気読めない」男が絡む会話劇。iakuとしてはちょっと変わった作りだが、その基本に人間に対する信頼があるのは分かる。最近の作品では、「空気読めない」男が物語を動かすというのも、ちょっと面白い。楽しませてもらった。
消滅寸前(あるいは逃げ出すネズミ)
ワンツーワークス
ザ・ポケット(東京都)
2017/10/20 (金) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/20 (金) 19:00
限界集落、と言うか、タイトル通り消滅寸前の集落を舞台として、それを回避しようとする人々の奮闘を描く。ただただ暗くなるのではなく、エンターテインメントを意識した造りは安定感が一杯だが、エンディングはやや予定調和的で、予想できてしまうのが惜しい。久々に見た中村まり子が元気なのは嬉しい。
愛だ
X-QUEST
新宿村LIVE(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/19 (木) 19:00
ヴェルディの歌劇「アイーダ」をベースに、X-QUESTらしいダンス’&アクションで楽しい舞台を作ってくれていた。最近は、劇団員が前面に出ず、客演を軸に置く造りだが、それでもエンターテインメントとして素敵な作品を作ってくれる。今回は、ちょっとばかり言葉遊びが少ないかな、とは思ったが。
ベチャロンドン
くによし組
中野スタジオあくとれ(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/18 (水) 19:30
シュールで不条理な國吉のストーリーが、怪優・菊池美里を得て、新たな地平に進んだという印象の作品だった。いや、いつものヘタウマ感はいっぱいなんだけど、それでも何か不思議な感触を残してくれる。セリフのキレも素晴らしい。
第25次笑の内閣『名誉男性鈴子』
笑の内閣
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/12 (木) ~ 2017/10/16 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/10/12 (木) 19:30
「笑の内閣」は京都の劇団だが、作る芝居は全国区だ。今回も、政治の世界を揶揄しつつ笑い飛ばす勢いは見事だが、途中で起こる事件に対しても結論は読める。しかし、その「結論が読める」ことが問題だという問題提起なのだろうと思う。残念ながら、ちょっと演技がクサイと思える役者がいるのだが、久々に見た石原正一の存在感は見事だった。諷刺を分かりやすく笑いにするという手法は、東京のチャリT企画にも通ずるものがあるが、本劇団の方が直球だろう。
トロイ戦争は起こらない
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2017/10/05 (木) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/10/05 (木) 19:00
ホメロスの「イリアス」の前段として、戦争を回避しようとする主人公エクトール(鈴木亮平)の努力が、外交官だった原作者の意識と重ねた物語は、そういう観点で見てみると、やはりスゴイものがある。人間がなぜ戦争するのかという課題を、見事に扱った舞台である。エレーヌ役の一路真輝の美しさに目を奪われる。ただし、やや冗長にも思える。
LOVE 第1話
シンクロ少女
OFF OFFシアター(東京都)
2017/10/02 (月) ~ 2017/10/04 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/10/02 (月) 19:30
名嘉友美の描く物語は、基本的に性的な要素を含んでいるのだが、それを含みつつも、ドロドロしたものにせず、微妙に揺れる男女の関係を巧みに描いた作品で、名嘉史上最高作と呼んでもよいような芝居になっていた。とにかく面白い。80分。見るべし。