MaTsuの観てきた!クチコミ一覧

81-100件 / 222件中
殺してゴメンネ

殺してゴメンネ

劇団たいしゅう小説家

萬劇場(東京都)

2019/03/13 (水) ~ 2019/03/17 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/03/15 (金)

大塚萬劇場にて劇団たいしゅう小説家『殺してゴメンネ』を観劇。
数年前から名前は聞いたことがあったものの、未見のままであった劇団さん。今回初めて拝見させて頂きましたが、舞台セットの緻密さや登場人物のキャラクター設定、それを演じる役者さんの演技力の高さなど好感を抱いた部分がある一方で、フライヤーやあらすじに多用されていた“昭和”という部分には疑問を感じざるを得ない内容の作品に感じました。火災の跡地?を舞台に繰り広げられる夢を持った若者達と謎めいた一人の男による少しミステリアスな物語。コメディーというほどのコメディー要素は無く、むしろシリアスで不気味な要素を多く含む不思議な作品で、推理小説を読んでいるかのような感覚になった作品でした。
オープニングの昭和歌謡や物語の中に登場する集団就職の女子グループ、聖徳太子のお札、そして何より人と人との密な関わりなどに昭和らしい雰囲気が描かれていたのかもしれませんが、個人的な感想としては残念ながら伝わりにくい。なのでサブタイトルにある「昭和46 1971」という表記と実際の作品との時代設定がいまいちリンクせず、何となくモヤモヤした気分になりながらストーリーが進行していったような気がします。殺しを企てる場面におけるヒソヒソ話ではなく大声での会話、伏線回収が少なく点と点が結び付きにくい展開などやや物足りなさも感じました。但し、殺人犯なのか何者なのかわからない一人の男をめぐる騒動は面白く、どんな展開が待っているのだろうとワクワクしながら楽しめたのも事実であり、結果的には観劇出来て良かったと思える作品でした。今のようにインターネットの世界が存在していなかった時代。何かと不便な生活ではあったと思いますが、人情味溢れる何か大切なものが確実に存在していたような気がします。やはり昭和も平成もそれぞれに魅力があるなと感じました。
役者さんも全員が初見でしたが、特に村川翔一さん、白石裕規さん、高橋浩二朗さんの男性キャスト3人の好演が印象に残りました。中でも高橋さんの不気味且つ良い人キャラのお芝居には引き付けられました。女性キャストでは八城まゆさんのお嬢様キャラぶり?が良かったです。

『ザ・漱石 再演ニ非ズ』

『ザ・漱石 再演ニ非ズ』

おおのの

シアター711(東京都)

2019/03/06 (水) ~ 2019/03/12 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/03/11 (月)

下北沢シアター711にて おおのの♪『ザ・漱石 再演ニ非ズ』を観劇。
文豪・夏目漱石の生き様を、漱石の妻・鏡子へのインタビューシーンなどを交えながら紐解いていくような作品。一見するとお堅く難しそうな印象を受けるテーマではあるものの、漱石と鏡子の波乱万丈の生活ぶりをユーモアを交えて面白可笑しく描いており、全く堅苦しい雰囲気は感じられず、むしろ楽しみながら漱石や彼に関わった色々な人達、彼の残した小説などについて触れることが出来たような気がします。おおのの♪さんの作品観劇は2016年の『さよなら、先生』以来3年ぶり2回目。前回は太宰治の作品をモチーフとした作品で、今回同様になかなかユニークな視点から描いていた印象がありますが、扱う人物こそ違えど“文豪”という部分にスポットを当てて作品を創られている“一貫性”のようなものが感じられる点は良いと思いますし、文豪達の人格や生き様などに対して新たな発見もあって、今まで以上に奥深く作品に触れることが出来る点も魅力だと感じます。2回しか拝見したことのないカンパニーですが、今回の公演を以てピリオドを打たれるということで少し残念な気持ちも抱いています。どんなに立派な小説を書き、後世に語り継がれるような大きな功績を残した文豪であっても一人の人間であることには変わりなく、当然その文豪が一人だけいても成り立たない。人間は色々な人達の支えがあって生きられるものだと再認識したような気がします。夏目夫妻も波乱万丈の人生ではあっても、まぁ幸せで素敵な生き方をされたのではないかと思いました。
舞台セットは何もなく小道具もほとんど無し。演者さんの演技もラフで自由な雰囲気が感じられ、お芝居全体の完成度の高さという部分はやや欠けるような印象を受けたものの、見せ所はしっかりとしており良かったと思います。夏目夫妻役の大井靖彦さん、川西佑香さんは勿論、キャラがまるで異なる複数の役を演じられた藤澤志帆さんらの好演も光っていたと感じます。丸川敬之さんのチャラ男ぶりやコミカルな動きも面白かったです。

肉体改造クラブ・女子高生版

肉体改造クラブ・女子高生版

劇団ハーベスト

小劇場B1(東京都)

2019/02/18 (月) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/02/21 (木)

下北沢小劇場B1にて劇団ハーベスト『肉体改造クラブ・女子高生版』を観劇。
劇団ワンツーワークス主宰・古城十忍氏の戯曲を、劇団レトロノート主宰の中村公平氏が演出し、劇団ハーベストの団員さんが演じるという個人的に夢のコラボレーションが実現したような作品。3話のオムニバス構成。ダイエッター、ピアッシング、ギャルゲーというテーマを聞いただけで、何となく一筋縄ではいかないような印象を受けましたが、案の定、様々な問題要素が絡み合い、根深く色々な感情が生まれてくる作品に感じました。これまで何本か劇団ハーベストさんの作品を拝見させて頂いたことがありますが、今までとはひと味もふた味も違ったテイストの作品で、笑いや華やかさなどの要素は少なく、むしろ怖さや不気味さなどが先行するような少し大人の雰囲気を感じた作品でした。
女子高生が抱く様々な悩みや葛藤、個人にしか理解出来ないような複雑な心情などが的確に捉えられており、なかなか見応えがありました。女子高生に限ったことではないと思いますが、家庭の乱れ、社会の乱れなどが歪んだ人格、もがき苦しむ人間を生んでしまう原因の一つなのかもしれないと感じました。肉体(外見)の改造も大事ですが、やはり一番は思考(内面)の改造が一番大事で必要なことなのではないかという印象です。気軽に、という感じではなく、頭をフルに使って謎解きするような感覚で楽しむような作品。どこまで理解出来たか不安ではありますが、劇団ハーベストさんの新たな可能性を感じた作品でした。
また、一人一人が存在感のあるしっかりとした演技をされており、自然と物語の世界に引き込まれました。中でも篠崎新菜さん、比嘉奈菜子さん、小野由香さん、千綿勇平さんらが印象に残っています。広瀬咲楽さんの劇中歌は今回もとても良いアクセントになっていたと思います。面白かったです。

芸人と兵隊

芸人と兵隊

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2019/02/13 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/02/13 (水)

東京芸術劇場シアターウエストにてトム・プロジェクト『芸人と兵隊』を観劇。
2日前に東宝『夫婦漫才』を観劇し、感動と興奮が残っている中、偶然ではあるものの今回も夫婦漫才が登場する作品。ただ、こちらは夫婦漫才を主体としたコメディではなく、昭和16年、戦地で戦う兵隊に笑いを届けるために旅に出た芸人たちの社会派ドラマのような印象を受ける作品でした。当時の文献を参考にして書かれたフィクションとのことですが、改めて戦争について色々と考え直すきっかけを与えてくれたように感じました。
この手の作品を観ると、御国のために戦い、御国のために散っていった兵隊たちの存在が特にクローズアップされるような印象を受けますが、兵隊たちを支えた様々な人びとが存在することも決して忘れてはいけないことであると感じます。爆弾を落として多くの命を奪う人も、漫才や歌を唄って人々を楽しませようとする人も、さらにはそれらを観て喜ぶ人も皆同じ人間。恐らくほぼ全員が人間としての良識と常識を兼ね備えており、恐らく命を無駄にするような人間は少ないと思いますが、それらを蝕んでしまうのが戦争であり、つくづく恐ろしいことだと感じます。表現の自由が失われ制約されるのも戦争が及ぼす社会影響。現代の平和な日本があるのは悲惨な過去があってこそであり、そうした過去の出来事はこの先何十年、何百年経っても絶対に忘れてはいけないと改めて思いました。戦争を喜ぶような人間はいない。世界平和を強く願いたいです。
村井國夫さんの渋く貫禄のある演技、柴田理恵さんの面白くもあり強くもあり繊細でもある演技は勿論、夫婦の脇を固めた4人の役者さん全員が個性的でとても素敵なお芝居でした。少し頼りない師匠の一番弟子役を演じた向井康起さんの演技も印象深く、師匠と漫才を披露するシーンはなかなか感動的でした。

夫婦漫才

夫婦漫才

東宝

明治座(東京都)

2019/02/08 (金) ~ 2019/02/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/02/11 (月)

明治座にて豊川悦司さん原作の『夫婦漫才』を観劇。
阪神タイガースが優勝した2003年、大阪・道頓堀での老夫婦の会話シーンから物語がスタート。最初は特に意識していなかったこの2003年という時代設定が最後に大きな存在感を示すとは思いませんでした。激動の昭和時代を生きた一人の大阪人女性の生涯を描いた人情喜劇。どんな環境で生まれ、どんな人々と出会い、どんな人間性が構築されていくのか、そのプロセスがとてもよく描かれており、笑いを誘う場面も織り混ぜつつ、決して違和感のない設定が素晴らしかったです。夫婦漫才を出来ること自体が幸せなことだと思いますが、様々な困難に立ち向かいながらもその漫才と共に生き続ける主人公の夫婦像が何とも温かく力強く映り、終始感動しっ放しでした。昭和時代を当時の映像や音楽で振り返りながら進めていく流れも個人的に大好きな手法であり、改めて昭和の激動ぶりを感じました。この手の作品を観ると、自分が生まれる前の出来事であってもどこか懐かしくほっこりした気持ちになるのは不思議なものです。時代回顧した後、再び2003年のシーンに戻るエンディングでは完全に涙腺が崩壊しました。人間いつかは終わりがやってきますが、長年一緒にいた相棒を失うときの心情は計り知れないような気がします。“漫才の出囃子のように同時に旅立てたら”というシーンは印象深く、妙に共感してしまいました。主演の大地真央さんはオーラが半端ない。夫役の中村梅雀さんとの相性もバッチリで、村上ジョージさん、川崎真世さん、竹内都子さん、野添義弘さんらのキャスティングも絶妙でした。まさに笑って泣ける名作。素敵な作品でした。

Le Père	父

Le Père 父

東京芸術劇場/兵庫県立芸術文化センター

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/02/02 (土) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/02/05 (火)

東京芸術劇場シアターイーストにて『Le Père 父』を観劇。
これまで世界30ヵ国以上で上演されてきた“老い”をテーマとした悲喜劇。今回が待望の日本初上演ということで、昨年10月の時点で観劇することを即決。とても興味深く楽しみにしていた作品でしたが、その期待をはるかに上回る実に見応えのある素晴らしい作品でした。
80歳の父親が一人で暮らすアパルトマンに娘が駆け付けるシーンから物語はスタート。この後3月下旬までロングランで上演される作品なのでネタバレ防止も兼ねて内容の詳細は割愛しますが、現実の話なのか妄想の話なのか、更には現在の話なのか過去の話なのか、とにかく目まぐるしく場面が変わる複雑な構成に吸い込まれ、頭をフル回転させながらじっくりと楽しませて頂きました。遅かれ早かれ人間誰もが経験することであろう“老い”の問題。当然自分自身が当事者となる“老い”もあるし、身内或いは他人の“老い”もあると思います。そのリアルでデリケートな問題をユーモアを交えながら描いている今回の作品はとても興味深く、場面場面によって様々な感情を抱きました。実際にこの問題に直面したとき、果たしてどのような行動を取ってしまうのか、想像すると恐ろしくもあり未知な部分もあり、、。毎日変わらず普通の生活を送れていることがどんなに幸せなことなのか、改めて実感させられたような気もします。ただ、実際に老い問題に遭遇しても決して悲観するだけではいけないと思いますし、きちんと呼吸して生きている以上は一人の人間として命を大事にして生きなければいけないという気持ちにもなりました。結局は何が正解で何が不正解なのかすら分からない。実に根深く難しい問題であるように感じます。。 父親役を演じる橋爪功さんを始めとするキャストの皆さん一人一人の好演が、物語をよりミステリアスな方向に仕上げていたと感じました。また、場面場面の点と点が終盤にかけて結び付いたときは鳥肌モノでした。もう一度観てみたいです。

福寿庵

福寿庵

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/01/31 (木) ~ 2019/02/04 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/01/31 (木)

シアターグリーンにて演劇企画アクタージュ『福寿庵』を観劇。
昨年の第7回公演『沈黙の音』以来1年ぶり3回目のアクタージュさんの作品観劇。過去2回はなかなか奥深いシリアス系の作品だった記憶がありますが、今回は東京にある小さな蕎麦屋「福寿庵」を舞台に繰り広げられる人情劇であり、これまでのイメージとはまた異なるテイストの作品でした。
とても忠実に再現された蕎麦屋の舞台セットが立派な上、本編の中で幾度も登場するいなり寿司も本物なので、劇場ではなく実際に蕎麦屋にいるような錯覚に陥りました。あらすじを読んで、蕎麦屋の店主の奥さんが鍵を握る作品という印象を受けましたが、確かにそのシーンも登場するものの、思ったよりは強く記憶に残る印象はなく、むしろそのシーンまでに登場する常連さんのキャラクターの個性の方が記憶に残りました。トータルで見ると心温まる優しいストーリーに仕上がっていたと感じましたが、笑いを誘う小ネタもこまめに取り入れらており、バランスの良い分かりやすい作品になっていたと思います。欲を言えばもっと話に捻りが欲しかったという点、蕎麦屋の存続を模索しているシーンで常連客にもう少し深刻さが欲しかったという点(あまり存続して欲しいという心情が伝わって来なかった)、何人かの役者さんの聞き取りにくい言い回しや演技があった点などがありますが、そう感じるのもアクタージュさんの作品に対する期待値を勝手に上げすぎていたからかもしれません。総合的には満足のいく作品でした。主宰の大関雄一さんのお芝居は初めて拝見しましたが、蕎麦屋の店主役が妙に似合っているように感じましたし、核となる絶対的な登場人物があまりいない中で存在感があったと思います。

ミュージカル『アラジン』

ミュージカル『アラジン』

劇団四季

電通四季劇場[海](東京都)

2015/05/24 (日) ~ 2023/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/12/26 (水)

電通四季劇場[海]にて劇団四季ミュージカル『アラジン』を観劇。
大規模な舞台装置にスケールの大きな転換。さらには火花が飛び散るド派手な演出や立体的に聴こえてくる臨場感溢れるサウンド、役者さんの華やかで豪華な衣装など、普段多く観ている小劇場での演劇とはまた違った興奮や感動がありました。とにかく何もかもが凄かった。終始圧倒された80分+65分のショーパフォーマンスでした。
有名なディズニーアニメのミュージカル舞台。アラジンが魔法のランプを擦ると登場するジーニー。このジーニーがユーモアに溢れていて面白い。また、一幕一幕に様々な仕掛けや素晴らしいストーリーがありましたが、中でも印象的だったシーンはアラジンとジャスミンが魔法のじゅうたんに乗って大空を舞うシーンでした。キラキラ輝く夜空に浮かぶ魔法のじゅうたん。とても幻想的なうえ、二人で歌う「ア・ホール・ニュー・ワールド」の曲は素晴らしかったです。お城の中に閉じ込められていたジャスミンと魔法のランプの中に閉じ込められていたジーニー。それぞれが解放されて自由になった瞬間の喜びや幸せな表情を観ていると、とても穏やかな気持ちになれる印象。この他にも様々な人々の絶妙な絡み合いが丁寧に表現されており、素晴らしい良作であると感じましたし、改めて『アラジン』は優れた作品であることを実感しました。この日のアラジン役は島村幸大さん、ジーニー役は瀧山久志さん、ジャスミン役は岡本瑞恵さん。いずれも初見の役者さんでしたが、見事な演技に高い満足感を得られた気がします。今年の観劇納めに相応しい作品でした。文句なしの☆5つ評価です。

円盤屋ジョニー

円盤屋ジョニー

ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン

上野ストアハウス(東京都)

2018/12/19 (水) ~ 2018/12/25 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/12/21 (金)

上野ストアハウスにて ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン『円盤屋ジョニー』を観劇。
非常に長い団体名が印象的なジグジグさんの作品観劇は前作の『デイドリーム・ビリーバー』以来2回目。今回は3本の短編作品をオムニバス形式で上演。長編と短編を交互に上演するスタイルはこちらの劇団さんの特徴でもあるようで、今回たまたま2公演連続で観劇させて頂くことが出来たので、両方の形式を楽しむことが出来た点は良かったと感じました。
第1話はテニスサークルを舞台とした作品。第2話は南の島のバーを舞台とした作品。第3話は病院の一室を舞台とした作品。短編オムニバス形式なので当然それぞれに異なるテーマがあり、それぞれの世界観があるものの、驚くのは今回の3作品がいずれも同じ方の脚本であるということ。共通点を見出だすことが困難であるくらい3本の作品は全く異なるテイストであり、とても同じ方が書かれたものであるとは感じませんでした。強いて挙げるならば、3作品とも妙にリアリティーのある世界が描かれていた点。少々無理のあるシーンやキャラクター設定もあったものの、テニスサークル、バー、病院と実際の日常会話や現場でのやり取りを覗き見しているような不思議な感覚になりました。これは役者さんの演技力の高さがそうさせたものかと思いますが、それぞれの舞台で繰り広げられる様々な人間ドラマを違和感なく楽しむことが出来て良かったです。
全員が自然体で好演されていたと感じましたが、中でも第2話ヤクザ役の小森敬仁さん、第3話次男役の大谷典之さん、入院患者役の山岡三四郎さんらが印象に残りました。1作品当たりの時間も長すぎず短すぎず。物足りなさや逆に飽きもなく、程好く楽しむことが出来た印象です。面白い作品だったと思います。

ミセスダイヤモンド

ミセスダイヤモンド

ろりえ

駅前劇場(東京都)

2018/12/19 (水) ~ 2018/12/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/12/19 (水)

下北沢駅前劇場にて ろりえ『ミセスダイヤモンド』を観劇。
何かのスポーツチームの集合写真のような折込チラシが目に留まった作品。劇団としては今回で12回目の公演のようですが、個人的には初見でした。ビックカメラではなく、ビッ”グ”カメラ下北沢駅前店という実在しそうでしていないお店の女子ソフトボールチームの奮闘ぶりを描いた作品。その舞台設定がユニークで面白いうえ、単なるソフトボールの試合の様子だけではなく、チーム結成までの経緯、メンバーの過去、さらにはチーム解散後の状況までを一つのドキュメンタリー作品として作り上げているという設定で描かれていた点は捻りがあって面白いと感じました。登場人物も個性豊かで、全員が印象深く残るキャラクターばかり。ストーリーを進めていく中で当然核となる人物はいるものの、誰一人として欠いてはいけないくらい全員に見せ場がある作品であるという印象を受けました。全て架空のチーム、架空のメンバーとはいえ、役者さんの演技が優れていたためか、まるで本当に実在するチーム、実在するメンバーのドキュメンタリーを見ているかのような錯覚にも陥りました。分かりやすいストーリーの中にも様々な要素が盛り込まれており145分という公演時間の長さを感じさせないくらい飽きの来ない見応えのある作品だったと思います。時を戻すことが出来ない事実に切なさや虚しさを感じる一方で、年を重ねても蘇らせることが出来る青春時代の興奮、感情もある。その一つがスポーツなのかもしれない、そして忘れかけていた興奮をもう一度味わいたいという感覚にもなりました。久しぶりに学生時代の仲間を集めてもう一度同じスポーツをしてみるのもアリかもしれないと感じています。公演案内に書かれていた“汗と涙と青アザのアラサースポ根演劇”に相応しい熱い素敵な作品でした。終盤の舞台転換、総動員の試合実況なども実に面白かったです。どのような結末になるのだろうとハラハラドキドキしながら楽しませて頂きました。

ら・ら・ら・ららんど

ら・ら・ら・ららんど

株式会社Am-bitioN

新宿村LIVE(東京都)

2018/12/05 (水) ~ 2018/12/09 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/12/06 (木)

新宿村LIVEにてコメディミュージカル『ら・ら・ら・ららんど~天使っぽい君にラブ・ソングを~』を観劇。
何年か前に大ヒットした映画を彷彿とさせるようなインパクトのあるタイトルの作品。今回は再演とのことでしたが、個人的には今回が初見でした。
事故により昏睡状態に陥った少女と、少女に想いを寄せる男の物語。“天使っぽい君にラブ・ソングを”というサブタイトルが示す通り、恋愛をテーマとした作品ではあるものの、単なる恋愛モノではなく、目を覚まさない少女を救うため、少女の精神世界に入って喜怒哀楽の精たち?とコミュニケーションを図りながら恋愛に必要な大切なことを伝えるファンタジーの要素も入った作品であると感じました。独特の発想から生まれる個性豊かな世界は観ていて楽しかったです。喜怒哀楽は恋愛だけでなく、人間らしく生きるためには絶対に必要な感情表現であり、一つでも欠けていると人格形成に何らかの不具合が生じる可能性が高まるというメッセージ性が含まれているような印象も受けた作品でした。また、恋愛は一方通行ではなく、双方の心が開かれた状態ではないと上手く成立しないというメッセージも込められていたように感じます。公演案内に“ミュージカルっぽいコメディ”と書かれていますが、確かにミュージカルナンバーが次々に流れる展開でもなく、コメディを基本とした内容をミュージカル仕立てとしているような作品で、これはこれで良いと思いましたが、ストーリーとは関係のない役者個人の心情をアドリブのような形で度々入れていた点、曲の歌詞にも盛り込まれていた点はマイナスに映りました。また、音響の悪さ?もあり、せっかくのミュージカル曲が聞き取りにくく迫力を欠いていた点、自然な笑いではなく不必要なボケやアドリブにより笑いを強要させているように感じた点も残念に思いました。作品全体の質としては低いと感じざるを得ないものの、アクションシーンはそれなりに見応えがありましたし、ハッピーでスッキリとした気持ちで終われた最後のエンディングシーンも良かったです。

命売ります

命売ります

パルコ・プロデュース

サンシャイン劇場(東京都)

2018/11/24 (土) ~ 2018/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/12/05 (水)

サンシャイン劇場にてPARCO PRODUCE『命売ります』を観劇。
チラシやポスターに書かれた“これが三島由紀夫!?”、“三島由紀夫作品のイメージを覆す”などの文字に興味を掻き立てられ、謂わばジャケ買いのような感覚で観劇を決めた作品。プレイボーイに連載されたこともある三島由紀夫原作の有名小説を舞台化した作品のようでしたが、個人的には原作は読んだことがなく、今回の舞台で初めて内容を知りました。
死のうと思った27歳の男が「命売ります」という新聞広告を出すところから始まる奇妙な物語。主人公の濃いキャラクター設定が際立つ作品かと思っていたら、その広告を見て「命を買い」に現れる人物達はもっと濃いキャラクター達ばかりで、どんどんと物語の世界に引き込まれました。「命がテーマの作品」と聞くと重く堅苦しい印象を抱きますが、今回の作品は確かに命をテーマとしているものの、コミカルな要素も多く含まれ、ユーモアたっぷりに描かれていたため、重くなりすぎずに深いテーマについて触れられる作品であったように感じます。とはいえ、決してコメディとも言い切れないような不気味さ、恐ろしさも随所に取り入れられており、サスペンス的な要素もある面白い作品だと思いました。主演の東啓介さんは勿論、出演者全員が見事な世界観を創っていらっしゃると感じましたが、その中でも特に温水洋一さん、平田敦子さん、樹里咲穂さん、上村海成さんの存在感は印象深く残りました。恥ずかしながら三島由紀夫作品は殆ど馴染みがなかったのが現状ではありますが、今度ゆっくり読んでみるのもアリだと感じています。

善悪の彼岸

善悪の彼岸

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2018/11/22 (木) ~ 2018/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/27 (火)

中野ザ・ポケットにて ワンツーワークス『善悪の彼岸』を観劇。
何となくの漠然としたイメージはあるものの、掘り下げていくと謎が多くその在り方さえも賛否が分かれる“死刑”をテーマとした作品。ワンツーワークスさんの作品観劇は昨年6月の『アジアン・エイリアン』以来およそ1年半ぶり3回目。元新聞記者の方が主宰を務める劇団だけあり、毎回様々な社会問題を独自の視点で描いた作品が多い印象がありますが、今回もとてもディープなテーマを扱ったこの劇団さんならではの公演だと感じました。
今年大きな死刑執行のニュースがあったばかりなので、死刑に対するイメージが今までの完全なる漠然状態から多少予備知識を含んだ状態まで進歩?したつもりでいましたが、予備知識があったからこそ理解出来た部分があった一方で、結局まだまだ理解出来ていない部分も多いなと改めて痛感した作品でもありました。死刑囚はそれ相応の罪を犯したという事実が存在するものの、それぞれに親がいて家族がいる。また、死刑執行を下す者、実際に現場で死刑執行ボタンを押す者、更には死体を処理する者などにも同じく親や家族がいる。立場は違えど同じ人間であるという感情を抱くと、死刑制度そのものが本当に正解なのか、と考えさせられます。仮に「あなたは死刑制度に賛成ですか?反対ですか?」と聞かれたら何と答えるだろうとふと考えてしまいました。勿論、罪の内容や起きた背景、本人のその後の態度などによっても感情が揺れ動きそうではあるものの、やはり平和な現代の日本において生まれ育った身としては、一つの命の存在は大きいという考えが根底にあるような気がしてなりません。劇中で登場する竪山隼太さんが演じる役に一番共感出来るかも。とはいえ凶悪犯を許すわけにもいかない。結局何が正解なのか導けないままですが、まだまだ死刑制度に関する知識は乏しいので自分なりに少し調べてみようかと感じています。死刑執行のシーンは非常に緊迫感があり衝撃的過ぎて驚きました。全体としてシリアスな作品の中に少し微笑むようなシーンもあったので重くなりすぎず良かったと思います。

ばけものがでた

ばけものがでた

ソニー・ミュージックアーティスツ

小劇場B1(東京都)

2018/11/23 (金) ~ 2018/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/26 (月)

下北沢小劇場B1にて錦織激団Presents『ばけものがでた』を観劇。
今回はタイトルやあらすじではなく、脚本:錦織純平、演出:錦織純平×中村公平という部分に惹かれて観に行くことを決めた個人的にはなかなか珍しいパターンでの観劇でした。錦織さんはこれまで何度か出演作品を拝見させて頂きましたが、とにかくユニークで面白く、ボケや突っ込みのテンポなども絶妙な役者さんの印象。一方、中村さんが代表を務める劇団レトロノートさんの作品も拝見させて頂いたことがありますが、細かい部分まで凝った見応えのある作品だった印象が残っていました。そんなお二人がタッグを組んだ作品。これは面白いだろう、という勝手な期待を持って劇場へ。結果、期待を裏切らない面白く見応えのある作品であると感じました。。
タイトルにも出てくる“ばけもの”。お化けなのか妖怪なのか、敵なのか仲間なのか、タイトルを聞いただけで色々な妄想が生まれ、実際物語が進む中でも漠然としたばけもの像しか浮かばず若干モヤモヤしましたが、最後まで観て納得。なかなか意表を突かれた結末で面白かったです。ゲームやアニメは殆ど見ないので何となくのイメージしかありませんが、今回の作品はゲーム、アニメの両方の要素が入ったような世界観だと感じました。また、芸人ラーメンズさん?のようなコントシーンや劇中で何度かリピートされた「椅子があるから座る」の下りも面白く印象に残りました。ピアノの生演奏も良かったです。唯一の女性キャスト加藤梨里香さんは大きな劇場から今回のような小劇場でのお芝居まで器用にこなされる名役者さんの印象。野呂拓哉さんは声や表情が良く印象に残りました。基本的にはコメディ作品。ただ笑いだけでなく、メッセージ性も込められた作品だと感じました。ばけものにならないように気をつけて生きねば。

神社エール!

神社エール!

劇団ズッキュン娘

吉祥寺シアター(東京都)

2018/11/16 (金) ~ 2018/11/19 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/18 (日)

吉祥寺シアターにて劇団ズッキュン娘『神社エール!』を観劇。
初見の劇団さん。槇原敬之さんの「どんなときも♪」がフェードアウトしてスタートした本編は、オープニングからカラフルな傘を使った軽快なダンスが展開されとても華やかな印象。ストーリーの詳細は割愛しますが、非常に前向きでストレートな想いが伝わってくる作品に感じました。幸せそうに見える人にも少なからず悩みがあり、不幸そうに見える人にも少なからず幸せや喜びがある。誰一人として無駄な命はなく、日々前向きに生きていくことの大切さを改めて教えてくれたような作品でした。神様の存在をコミカルに描いていた点もユニークで面白かったです。ただ、ストレートな想いがよく伝わり分かりやすいストーリーである反面、展開もシンプルであり、少し物足りなさも感じました。あと一捻りあればもう少し見応えの部分がアップしたかなと思います。とは言え、ピアノ演奏を含めた生歌や登場するキャラクターにそれぞれ個性があり面白かったですし、高さのあるステージの特徴を活かした大きな垂れ幕や天空の世界?を表現した演出も良かったです。
主演を務められた花房里枝さんも初見でしたが、複雑な背景を抱える主人公の役柄に合った絶妙な表情で、気持ちの浮き沈みを上手く表現出来ていたと感じました。同じく闇を抱えた役柄の田中菜々さん、ストリートミュージシャン役の道本成美さん、若手の中に混じり存在感を示していた鍋倉和子さんらも印象に残りました。ストーリーとの関連性は(?)でしたが、ダンスシーンもあり熱量の高いエネルギッシュな作品だと感じました。

サンザル、月をとる。

サンザル、月をとる。

電動夏子安置システム

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2018/11/13 (火) ~ 2018/11/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/13 (火)

アトリエファンファーレ高円寺にて電動夏子安置システム「サンザル、月をとる。」を観劇。
今回で第39回公演というなかなか歴史ある劇団さんのようですが、失礼ながらそのインパクトある劇団名すら全く存じ上げておらず今回が初見でした。まだまだ知らない劇団は多いものだなぁとつくづく感じます。
音楽ライブでも始まるかのような客席からの拍手、掛け声でスタートした独特の幕開け。月の話なのか、マンション住人達の話なのか、霊の話なのか。また、コメディー作品なのか、ホラー作品なのか、真面目な作品なのか、過去回想の作品なのか、未来の作品なのか、序盤は様々な憶測が生まれましたが、結果的には全ての要素が入ったような盛り沢山の内容に感じました。とにかく描かれている世界観が独創的。簡単に言えば‥、では説明出来ないような複雑なストーリー。集中して観ないと物語の中についていけなさそうな印象を受ける様々な展開がある作品でした。お笑いコンビ・アンジャッシュさんのスレ違いネタを彷彿とさせるようなユニークな会話劇も面白かったです。偶然ながらも会話の内容として成り立つシーンもあれば、全く異なるシチュエーションになるようなシーンもあり笑えました。色々な騒動が起こるも最後は何かスッキリする展開も良かったです。舞台セットは簡素で派手な音響演出、仕掛けもない作品でしたが、見せ場はしっかりとしており、良い意味で小劇場演劇ならではの良さを感じた2時間のお芝居でした。

アワード

アワード

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2018/10/31 (水) ~ 2018/11/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/11/01 (木)

ミュージカル座「アワード」を観にシアター1010へ。
「スター誕生」「Woman~源氏物語より~」に続き今年3本目のミュージカル座さん観劇。今回は今から5年後の2023年、トニー賞の授賞式を舞台とした物語。オープニングから華やかすぎるブロードウェイのミュージカルメドレーが展開され、開始僅か5分で大興奮。さらに、フィクションではあるものの、物語の中で登場する4本の新作ミュージカルはどれも趣向を凝らした興味深いものばかりであり、実際に存在しているミュージカルではないかと錯覚するほど。最優秀作品賞、主演男優賞、女優賞、作曲賞、脚本賞などの賞が次々に発表されていく様子や受賞者が実際に客席から壇上に上がっていく光景なども非常にリアリティーがあり、完全に物語の世界を飛び出し、本当にトニー賞の授賞式へ参加しているような感覚になりました。「スター誕生」でも似たような高揚感はありましたが、今回はステージの広さや眩しすぎる照明演出などの要素も絡んでそれ以上の興奮でした。登場する役者、脚本家、音楽家、振付師などのそれぞれの役柄も、作られた役というか、とても演技とは思えない妙なリアルさがありました。実際に存在していても全く違和感がなさそうです。
1本のミュージカル作品を創り上げることがいかに大変なことであるか、その出来上がったミュージカルが賞を獲るということがいかに偉大なことであるか、今回の作品を通じて改めて作品1本1本の重みを感じました。賞が獲れなかった場合、失敗と評される事実は本当にあるのかもしれませんが、作品作りの裏側を知ると決してそうとも言えないのではないかとも感じています。個人的にこれまで観劇したミュージカルの中でもトップクラスの華やかさ、斬新なストーリーが印象に残った素晴らしい作品でした。ミュージカル好きは絶対に観るべき。

ミュージカル『深夜食堂』

ミュージカル『深夜食堂』

ショウビズ/conSept

シアターサンモール(東京都)

2018/10/26 (金) ~ 2018/11/11 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/10/31 (水)

シアターサンモールにてミュージカル「深夜食堂」を観劇。
日本の新宿をモデルとした韓国生まれのミュージカル。日本に“里帰り”というべきなのか、“逆輸入”というべきなのか、まずその構図が面白いと思いました。更に、ミュージカルといえば一般的に華やかなイメージを抱きがちですが、今回の作品は午前0時~7時の間だけオープンする深夜の街の食堂を舞台としたものだけに、決してキラキラした照明やダイナミックな舞台装置、ノリノリのミュージカルナンバーといった雰囲気ではなく、その逆をいくようなこれまであまり観たことがない良い意味で異色のミュージカル作品であったと感じました。ミュージカルという表現よりも音楽劇という表現の方がしっくり来るかもしれません。
深夜に食堂へ集まってくる様々な人々。似たような境遇の人はいても、やはり一人ひとり皆違う。それぞれに様々なドラマがあり、どんな生き方が正解なのかは誰もわからない。これは現実社会においても同じことであり、やはり外見の印象だけで人を判断してはいけないことですし、どんな生き方をしていても誰もが人間らしい一面というものは持っているものだなと改めて感じました。だからこそ、幅広い心でもっと他人を思いやる気持ちを持って生きようと、漠然とではあるものの、何か大事なことに気付かされたような作品に感じました。見方によってはとても奥深い作品です。ミュージカルナンバーも真面目に歌ってはいても、タラコだのサンマだの、実はくだらない?面白い曲が多いという印象を持ちました。決して派手ではないコメディミュージカル。個性的で良かったと思います。主演の筧利夫さんをはじめ、戦隊ヒーロー、宝塚、シンガーソングライターなど役者さんもバラエティーに富んでいました。

男の純情

男の純情

トム・プロジェクト

紀伊國屋ホール(東京都)

2018/10/25 (木) ~ 2018/11/01 (木)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/10/28 (日)

紀伊國屋ホールにてトム・プロジェクト「男の純情」を観劇。
とあるマンションの一室で繰り広げられる50代男性3人の会話劇。全くの赤の他人であったはずの男性3人に共通しているのは、いずれも年齢が50代であるということと、同じ女性を愛しているということ。複数の男性が同じ女性を好きになるということはシチュエーション的には実際にあり得る状況なのかもしれませんが、今回の作品で面白かったのは男性3人が同じ時間(夜)、同じ場所(好きな女性が住むマンションの一室)で出会し、バトルを繰り広げるという展開でした。実際であれば殺人事件などにも発展してもおかしくない緊迫した状況のはずですが、今回の物語では何となくほっこりするような可愛らしいバトルが展開され、特定の誰かを応援・支持するというよりは3人とも恋を叶えて欲しいと思えるような感情が沸いてきました。それはやはり3人ともピュアな心を持っているキャラクターであったからなのではないかと感じています。とにかく宇梶剛士さん、山崎銀之丞さん、市川猿弥さんの実際の風貌やキャラクター性とよくマッチした登場人物の設定が素晴らしい。3人とも見事なハマり役だったと思いますし、お三方の演技力の高さが非常に際立っていたような印象を受けました。中でも山崎銀之丞さんは個人的にテレビドラマ「3年B組金八先生」でのイメージが強く残っていましたが、ドラマでの役と被るような棘のある演技も光る一方で、1人の女性を愛する純粋な中年男性の心情を上手く表現した演技が素晴らしいと感じました。宇梶さんの強面ながらもチキンぶりを発揮するキャラ、市川さんのいじられキャラっぽい外見ながらも実はとても誠実でしっかりしているキャラも観ていて飽きなかったです。
何日にも渡るお話ではなく、1日どころか、僅か3時間程度の時間経過の中で沸き起こるバトルのお話。二転三転するような展開もあり、とても面白かったです。結末もまぁベストの終わり方なのかなと感じました。

咲けよ、酒よ。

咲けよ、酒よ。

ソラカメ

「劇」小劇場(東京都)

2018/10/17 (水) ~ 2018/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/10/17 (水)

下北沢「劇」小劇場にてソラカメ『咲けよ、酒よ。』を観劇。
2013年旗揚げの劇団さん。第4回公演から今回で3回連続で拝見させて頂きましたが、同じ方の脚本とは思えないくらい前作とはガラリと違った雰囲気の作品と感じました。良い意味で期待を裏切ってくれた印象です。まず舞台セットは比較的簡素ながら空間の使い方が上手い。居酒屋、オフィス、ヨガスタジオ、車、路上ライブなど、とにかく様々なシーンが登場する中、どれも上手く情景が再現出来ておりなかなか秀逸。さらに登場人物像がそれぞれ個性的で面白い。そしてそれを演じる役者さんの演技がとても自然で違和感なく観ることが出来ました。また、方言や回想シーンが登場する場面もありましたが、上手く使い分け出来ていたので理解しやすいと感じました(前作はこの部分が少し弱く、若干物語の世界についていきにくかった印象があったような)。
タイトルやあらすじを見て、“酒”と“兄”の存在がどのように関わってくるのだろうと興味がありましたが、なるほどと納得。現代と過去、東京と地方など複雑な関係性が物語に深みを与えていたように感じました。最後のシーン(10年前の様子を振り返っているシーン)で兄がメガネを付けていたのは何故?など、何点か気になる部分もあったものの、見応えのある良いお芝居だったと思います。

このページのQRコードです。

拡大