満足度★★★★★
鑑賞日2019/02/05 (火)
東京芸術劇場シアターイーストにて『Le Père 父』を観劇。
これまで世界30ヵ国以上で上演されてきた“老い”をテーマとした悲喜劇。今回が待望の日本初上演ということで、昨年10月の時点で観劇することを即決。とても興味深く楽しみにしていた作品でしたが、その期待をはるかに上回る実に見応えのある素晴らしい作品でした。
80歳の父親が一人で暮らすアパルトマンに娘が駆け付けるシーンから物語はスタート。この後3月下旬までロングランで上演される作品なのでネタバレ防止も兼ねて内容の詳細は割愛しますが、現実の話なのか妄想の話なのか、更には現在の話なのか過去の話なのか、とにかく目まぐるしく場面が変わる複雑な構成に吸い込まれ、頭をフル回転させながらじっくりと楽しませて頂きました。遅かれ早かれ人間誰もが経験することであろう“老い”の問題。当然自分自身が当事者となる“老い”もあるし、身内或いは他人の“老い”もあると思います。そのリアルでデリケートな問題をユーモアを交えながら描いている今回の作品はとても興味深く、場面場面によって様々な感情を抱きました。実際にこの問題に直面したとき、果たしてどのような行動を取ってしまうのか、想像すると恐ろしくもあり未知な部分もあり、、。毎日変わらず普通の生活を送れていることがどんなに幸せなことなのか、改めて実感させられたような気もします。ただ、実際に老い問題に遭遇しても決して悲観するだけではいけないと思いますし、きちんと呼吸して生きている以上は一人の人間として命を大事にして生きなければいけないという気持ちにもなりました。結局は何が正解で何が不正解なのかすら分からない。実に根深く難しい問題であるように感じます。。 父親役を演じる橋爪功さんを始めとするキャストの皆さん一人一人の好演が、物語をよりミステリアスな方向に仕上げていたと感じました。また、場面場面の点と点が終盤にかけて結び付いたときは鳥肌モノでした。もう一度観てみたいです。