リタ・ジョーのよろこび
劇団俳小
d-倉庫(東京都)
2019/09/21 (土) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
端正な作りで歌もよく、ハッピーなことのない話なのだが、観劇後の印象は悪くない。
我々の文明の仕組みが、リタ・ジョーにとっては何から何まで、ディストピアの様相を呈してくる。宗教も慈善家も教育も、彼女にとっては抑圧的でウソウソとなる点では同じ。リタの絶望的な孤独に、ほんの少しノゾミを匂わせる終幕であった。
銀河鉄道の夜
SOUKI
シアターX(東京都)
2018/12/14 (金) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
「葬送の列車」だったのですね。幼い頃から童話という思い込みがあって、ロマンチックに解釈しようとして、どうしても腑に落ちなかったが、今回、<ことば>を除いて、返って<意味>がハッキリしました。マイムに強い表現力があることを知らされました。
野外劇 新譚 糸地獄
吉野翼企画
西戸山野外円形劇場(シェイクスピアアレイ)(東京都)
2018/06/21 (木) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
大変、面白く見ることができた。初日観劇。
野外円形劇場の底、舞台部分にベンチを並べ、客席となっている。舞台は階段状の客席部分。7時まだ日が沈んで間もないので後方の空が明るい。黒衣の踊り、女たちの客引きの声、期待が高まる。
もろびとこぞりて
劇団橄欖舎
上智小劇場(一号館講堂)(東京都)
2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
コント集にならず、しっかり芝居の筋を通していた。二人の「内向の世代」風ともう一人の「つかこうへい」風の対比が全体にとぼけた感じでよかった。話題に上る人名、タイトル、曲名のほぼ全てが、懐メロ感覚で私には楽しかったのですが、多くの観客にとっては生まれる以前のことでしょう。不思議&チンプンカンプンらんどを楽しめたのでしょうか。
「哀愁主人、情熱奴隷」 「いなくなった猫の話」
Zu々
紀伊國屋ホール(東京都)
2017/07/28 (金) ~ 2017/08/01 (火)公演終了
満足度★★★★
ストーリー紹介では、SF 趣味の勝った印象ですが、かなり違ってファンタジーの趣でした。装置や衣装が具象的で、しっかり世界観を支えているようでした。
ファンタズマゴリア
天幕旅団
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/07/06 (木) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
お前にも罪がある
劇団fffff
王子スタジオ1(東京都)
2017/06/15 (木) ~ 2017/06/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
半世紀前、十代だったボクは安部公房を変格の推理・SFとしての好んで読んだ。今日、拝見させていただいて、別の思いを強く持つようになった。私ごとを優先して、見て見ぬふり・無かったことにしてしまおうとする、俗物根性が痛々しく演じられているように思われた。50年の時を超えて、今も通用する挑発の声ーーおまえにも罪があるーーが聞こえてきます。
ドグラ・マグラ
演劇企画集団THE・ガジラ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/06/04 (日) ~ 2017/06/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
ドグラ・マグラといえば、うつうつとして陰々滅々という印象をもって臨んだのですが、ガラリと違って、どちらかというと体育会系、無理やり人を挙げるとすれば、東尾理子と松本薫の親子バトルのような、メト美のような、元気いっぱい。尿意も忘れる2時間20分でした。
ロマンス、人情、勧善懲悪などに興味のない人には、面白くてたまらない、オススメと思います。
すてきな三にんぐみ
ゼンリョクハツデン
アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)
2016/11/17 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
読み聞かせ絵本のレベルを100%超えて
絵本の舞台化だが、よくある商業的な2・5次元ものとは全く違う、知的で楽しいものになっていました。ダンスと劇が交互に展開。ストーリーは絵本にだいぶ肉付けされていて、それぞれの心の動きがよくわかり、キャラクターが立っていた。イケメンでスタイルが良いのが、原本のイメージと違ってやや難といったところ。絵本の色彩をいかした装置・衣装に加え、選曲・振付もいい感じで世界観を表現していた。
Midsummer Nightmare
明治大学シェイクスピアプロジェクト
アカデミーホール(明治大学駿河台キャンパス)(東京都)
2016/11/11 (金) ~ 2016/11/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
芝居する男子、実感を表現する女子
最近の商業演劇では、シェイクスピア劇もエログロになりがちだけれど、そうした方に流れない健康的で安心して見られる舞台であった。妖精たち、パックの動きが舞台全体を明るくファンタジックにしていた。しかし古めかしいというわけではなく、意外と現代的とも思った。プロデュース・演出をはじめとする女性陣の思いが見えてくるからだろう。「男ってこんなもの」ーーきかん坊、単純バカ、うぬぼれ、意固地 ーーという女子の実感・メッセージが透けて見えているようであった。時代に即した新しい演出の方向かもしれない。
舞台と映像で俳優に求められること
pafe.GWC2017
学習院女子大学 やわらぎホール(東京都)
2016/11/06 (日) ~ 2016/11/06 (日)公演終了
治天ノ君【次回公演は来年5月!】
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
自由に芝居が掛かる時代に感謝
ちょっと『リチャード2世』を思わせる政治・歴史劇ですが、「天皇」が家業である家庭の物語でもあった。時折、客席からすすり泣きが聞こえてくるほど、普通に感涙を誘うのが馴染みの薄い人(当時は神)だけに、自分には意外な感じがした。台本の作りが、また秀逸な演技がなせる技であろう。ただし、舞台上は、過去を振り返る凛とした皇后(松本紀保)の存在が、全体の目線を乾いたものにし、クールであった。上つ方だけの世界を描いていて、同時代を生きた臣民を思うと、悲しみ、やるせなさを感じないわけでもなかった。
わが町
ヨハクノート
立教大学新座キャンパス(埼玉県)
2016/10/14 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
現代の「わが町」が表現される
実験色が強目ということで、期待に違わず面白かった。ワイルダーの革新的なところをさらに進めて見せてくれた。特に2点かな。舞台監督が出てこない、読み上げソフトによる合成音がナレーション風に流れる。もう一つが、「幕なし・背景なし」がさらに進んで、「舞台なし」であった。広いフラットな空間に、椅子がランダムに。優も客も好きに掛けているのみ。古くに実写映画があるが、真逆に展開した舞台であった。筋は分かりにくいが、演劇の可能性ではあるのかも、と納得してみる。
ユビュ王
演劇企画「ある」
ART THEATER かもめ座(東京都)
2016/10/13 (木) ~ 2016/10/17 (月)公演終了
満足度★★★★★
ブッフォンは愉快じゃ!
今までに見た『ユビュ王』の中で一番楽しかった。出っ尻、ボテ腹など異形の体型で全員が熱演でした。初めてなのに既視感があり、のめり込んでしまいました。今後、常に参照さるべき演出となりそう。なおなお、ギャアテイ、ギャアテイ、寒かったぞ、ちびったか、くそったれ!でした。
桐一葉(きりひとは)
花組芝居
あうるすぽっと(東京都)
2016/09/30 (金) ~ 2016/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★★
今の歌舞伎にない、ピチピチ感がイイ
逍遥翁が生きていれば、泣いて喜ぶ出来であろう。彼の意図が百何十年のときを経て、具現した感動もの。歌舞伎とシェイクスピアがミックスされて現代に蘇った感が、大。且元、淀君らの政治の世界に加え、今回は蜻蛉、重成、銀之丞の色恋がたっぷり絡んで、スリリングな展開で面白い。そこここに、ハムレットやオフィーリアが見え隠れするのも見どころ。また、松竹衣装、東宝舞台の協力が厚みのある芝居にしていると思う。
風ガ姿、華ト伝
法政大学Ⅰ部演劇研究会
法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎地下一階多目的室1番(東京都)
2016/10/01 (土) ~ 2016/10/04 (火)公演終了
満足度★★★★★
オリジナリティたっぷり、眼福
能のシテ方市松家の崩壊。愛と不倫、家の権力争い、ジャーナリズムのフレームアップ、芸能プロダクションの事情など、能のあれこれや最近の梨園のゴタゴタも思い起こされて、楽しい芝居でした。ちょっと「ヌーヴォー・ロマン」風のテイストがあり、しかも役役が際立って演じられていて、素晴らしく思いました。それだけに、摑みどころは難しい。一人一人で「これかなと、腑にドロップする」のでよいのでしょう。
恋愛恐怖病
松
多摩美術大学演劇上野毛キャンパス新スタジオDスタジオ(東京都)
2016/09/24 (土) ~ 2016/10/01 (土)公演終了
満足度★★★★★
心の揺れはよく分かった
100年の時をこえて、今もいそうな二人。ちょっとアスペな男子と肉食系の彼女であった。基本は会話劇なのだけど、立ち居や目線の合わせ方など工夫されていた。そのせいか、浜辺を離れて、喫茶店かレストランで向き合っている意味ありげな男女のようにも思えたのは、よく表現されているからだろう。この岸田の脚本は、当時のモボモガでも、昭和のイケメンとリブでも、今回ヴァージョンでもOKだと、可能性を教えてくれる演出でした。PS「あれ見さいのう(空行く雲の早さよ)」と言いかけるのが女性側なのは、やはりこれは近代劇。
Unbreakable -アンブレイカブル- 最終章
演劇レーベルBo″-tanz
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2016/09/29 (木) ~ 2016/10/03 (月)公演終了
満足度★★★★★
SF的な批評精神を貫いて
前2作を受けていますが、開演前のレクチャーが親切ですし、展開する魔法世界は現代とかなりパラレルですので、今回から見て全然問題なしに、楽しめます。SFおきまりの自由な社会・政治批評が辛口に効いていて、堕天使と殺戮天使の争いにリアリティーというか、得心できるものになっています。映像と音楽が効果的に使われ、いいなぁ。個人的には、アンブレイカブルのままでもよかったのですが。
学園戦線:革命行き
共立女子大学ミュージカル研究部
ART THEATER 上野小劇場(東京都)
2016/09/24 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
伝えたいこと、が確かにある
志があり、部員がそれを共有しているのがイイです。2・5次元ものかと思いきや「イジメ」に取り組んだ硬派な芝居でした。よくあるウソくさい善意や反省ではありません。とはいえ、登場人物は全員男性役、オールフィメールで劇を担ってますし、人物名は地下鉄の路線名です。ガジェット的な工夫もいろいろあって楽しめます。歌が、人物の心情や場面の情況を語るのですが、納得するまで歌詞を吟味できなかったのは残念。事前に歌詞を配るか、スクリーンに映してほしいもの。
テレーズとローラン
地人会新社
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2016/09/09 (金) ~ 2016/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
やり直しはできないのが、人間
ゾラの翻案だそうですが、自然主義の劇ではない。第一、舞台上の時間が場面ごとに遡る「反自然! 」です。役者さんはやりにくいーー見ている方も腑に落ちにくいーーだろうが、凄惨な場面から生き生きした表情・振舞いに戻っていくのはさすが見事。また、装置の変更もこれといってないのに、照明と相まって、血塗られた現場からファミリーの平凡な室内に印象を変えるのも力技です。東京芸術劇場にふさわしい実験的な舞台と思います。観客に「なぜ、どうなってるの」と迫り、挑発的でもありました。面白いです。(時間が戻っているのに気付かず観劇できていたら、かなりお気に入りの不条理劇と思ったかも)