☆さやか☆の観てきた!クチコミ一覧

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孤天 第二回「ボクダンス」

孤天 第二回「ボクダンス」

コマツ企画

APOCシアター(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

最高に知的で、笑えて、スリリングな舞台でした
●かつてコマツ企画の公演中「俺だけ規格外!」と叫んでいた様子が思い起こされる。「獣性」こそが魅力のひとなのかと思っていたら、それだけではない。そんな単純なアレじゃなかった。彼自身が存分に己の「獣性」をコントロールできる、猛獣使いでもあったのだ。

●「演技」「演出」の能力と、「自己演出」の能力はいずれもわけて考えなくてはならない異質の能力だろう。たとえ「演技力」があり「演出力」が備わっていたとしても、それはイコール「自己演出力」にはならない。この前面にたって人々に認識されることの少ない、されど決定的な実力=「自己演出力」を持つ作家兼俳優は限られる(野田秀樹、ハイバイの岩井秀人、tsumazuki no ishiの寺十悟などがあげられるだろうか)

●ここに川島潤哉の名前を並べたい気持ちに駆られつつ、一方そんな括りにおさめてしまうには少々のためらいがあったりもする。あくまでも「俳優」こそが彼の生業であり、俳優視点からみて何か完結した作品を世に送り出すことは出来ないかと考えて提示されたものなのだから、やはりそれは「作家」を出発点とする前述の演劇人とは異質のアプローチでつくられている。

●これまで「ひとり芝居」を「凄い」とおもったことはあっても、やばいくらい「面白い」とか普通の芝居より「こっちのほうがいい」などと思ったことはなかった。が、驚いた。まさか「ひとり芝居」を見てここまで心うたれるとは。そして「ひとり芝居」はきっと川島潤哉さんが表現活動をしていくうえで、もっとも適したフォーマットなのだろう。誤解を恐れずにいえば、これまで見たどの川島出演作品よりも彼の深奥部分に浸ることができた感触がある。

●きっと几帳面で凝り性な人なのだろう。劇中に登場する自由が丘的な店員の言葉を借りるならば、通常わたしたちが2、3のチェック項目で済ましているところを、彼は40くらいチェックして演技をしているのではなかろうか(笑)

●キャラクターの演じ分けや上演時間80分のペース配分、独特のビートの刻み方などテクニカル部分での凄みはこちらの期待通りの期待以上っぷりだったのだが、それよりさらにここで言及したいのは作品テーマの選定と、その昇華の方法である。

●ある四コマ漫画の例え。女が三コマ目までボッコボコにレイプされている描写がある。しかしさんざんやられたあげくの四コマ目で「セクハラよ!」と叫ぶと、瞬く間にボッコボコのレイプがセクハラということになってしまう。ギャグのようで、実はこれこそがテーマ。

●認識の齟齬、あるいは認識のすり替えといってもいい。

●コンテンポラリー的な暗黒舞踏的なそれに対峙した二人の恩師のコメントも同じで、読解力でひとひとり殺せると豪語する国語教師の「一をかいつまんで百に引き延ばす」見方も、「こうも考えられます」とひたすら相対的な視点を提示し続ける社会科教師の見方も、彼のおどりを観てなぜ泣いてしまったかの説明は一切できていない。当り前で、ダンサーの彼が泣いてしまったのは、咄嗟に彼のおじさんの思い出が脳裏をよぎったからで、それは観る側にとっても、やる側の彼にとっても、何の前置きもなく訪れたことだからである。

●深い断絶。しかし、感動とはそのくらいに誰にとっても超個人的な体験なのではないか。泣く、ということで共有はできても、なぜ泣くかまではガイドしきれないのではないか。そしてそれはそれでよいのではないか。どのキャラクターも滑稽に描かれてはいるものの、わたしたち観るものと観られるものの関係を、これはある面から言えばリアルに冷徹に捉えている。

●ヘレン・ケラーを単なる感動物語と思うな。これもネタ的に語られる台詞だが、まさにそのとおりで、ヘレン・ケラーを観て泣いている観客の100人が100人とも同じ文脈で泣いているとは限らない。というか、皆それぞれ異なる理由で泣いているのだろう。鈴木杏演じるヘレンを観た2003年当時のわたしも、そりゃもう例にもれず泣いてしまったわけだが、それでも今思い返せばこの言葉の意味がわかる。が、これ以上の注釈は上記の国語教師のような誤解を差し挟むことになるかもしれないので、このくらいにしておきたい。勝手ですみません。でも、勝手にしかしゃべれないものなのだというのもこの作品のお墨付きじゃないか(笑)

●ラスト間際のダンサーが立ちつくすシーンは登場人物たちの独白が繰り返されることによってつづられる。「なんで俺は泣いてるんだ?」川島潤哉の芝居というだけでも十分に効くが、やはりこれがひとり芝居でやられているということがとても大きい気がする。それぞれの「個」や、あるいは「孤」を語るうえで、これほど効果的で魅力的な上演形式があるだろうか。川島氏の前傾姿勢気味なアーティスト魂に身震いしつつ、それでも絶対に外さないと確信を持って上演していたのであろうしたたかな興行主としての川島氏の策士ぶりにも心打たれたのでした。

●というわけで2009年度、80本ぐらいお芝居を観てきましたが「もっとも驚かされた」という意味ではこの作品がぶっちぎりにNO.1です。

一人オリンピック~千の仮面をもつ女

一人オリンピック~千の仮面をもつ女

高木珠里ひとり芝居

リトルモア地下(東京都)

2009/06/18 (木) ~ 2009/06/29 (月)公演終了

壮絶なるひとり芝居
千の仮面もとい千の声帯を惜しみなく披露。「演じ分けられる」という意味で、これほど北島マヤに近い人物は、彼女をおいて他にいないとおもいます。鳴りやまぬカーテンコールに二度目のお辞儀。素で挨拶する高木さんに、もう一人の人物像を観ました。

羊の置物のクオリティがやたら高かったです。

ネタバレBOX

映像で登場した、紅茶の成分を淡々と紹介する貴婦人(なのに1.5リットルのコーラをグビ飲み)と、DJゆかりのネタ(軽妙なトークで国会爆破や鹿児島県民皆殺しにコメント)がツボでした。いつもネットラジオを拝聴しておりまして、なんかあのくらいの「サラッと」「ボソボソ」感が彼女は一番素敵なんじゃないかと。ちょっと今回は全体的にパワープレイに偏りすぎてたかもしれません。脚本的にこれが正解なのかしら。あの会場ですし、も少し繊細なものも観たかった。。。それでも高木さんの凄さは十分に伝わりましたけど。
花のゆりかご、星の雨

花のゆりかご、星の雨

時間堂

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/06/02 (火) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

今年演劇を観て、はじめて泣きました
肩肘張っているし、ぎこちないところも多々ある。ほんとに「深呼吸できる演劇」?いや、ただ単に無意識で息吸って吐いてというのではなく、「深」呼吸なのだから、それってやっぱ空気みたいな芝居とはちょっと違うのかしら?気持の深度というか、深い誠実さというか、うまいとかうまくないとか、そんなことどうでもよくなるなにかがそこにあったのかなあって気がする。結果、ボロ泣きですから。やられました。

ネタバレBOX

年代をさかのぼるごとに、言葉遣いも現代的なものから遠ざかっていくのだけれど、そのハードルの上がり方が功を奏しているのか、みるみる役者のからだがフィットしてゆく(ように見える)。戦後の焼け野原、あのタイミングでのプロポーズ。プロット、演技体ともに決してスマートではないのに、無理を承知でやりきってしまう愚直さに、リュウ夫人同様わたしの心も動かされる。えー無理っしょ(笑)でも、そこがいいの。飾っていない、一生懸命な菅野貴夫がほんとに素敵。

久々に琴線にふれるお芝居を観ました。
成れの果て

成れの果て

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2009/05/21 (木) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★★

復活おめでとうございます☆
「不幸や絶望はもういらない。私は幸せがほしい。」とは言うものの、他人の不幸や絶望なら話は別。むしろそんな話が聞けて幸せ。とかなんとかいう、自分ではなかなか認めたくない暗部を、白日のもとにさらされる快感を久々に味わう。安易な狂気やギミックに逃げることなく、真摯にシンプルに人間関係のいびつさに向きあった快作です。

ネタバレBOX

「レイプはタブー」という建て前をとりつつ、それは営業のセールストークになってたり、虐められっ子が仲間に入るためのツールに活用されてたり、小説家の格好のおいしいネタだったり。本当のところ、誰ひとり「タブーだ」「傷だ」と思っちゃいない、ゆるゆるの危機管理クライシス。被害者姉と加害者のカップルとのラブロマンスが燃え上がるにあたっては、もうこれ以上ないほどの高めの障壁(笑)。だから妹は笑う。笑うし利用もする。傷を脅し文句にかすめ取ろうとする。

結局のところ、私たちは総じて皆こういう話が大好き。「他人の悪口こそが挨拶」が常態と化し、ブログに板に平然と醜聞がさらされる現代にあって、これほど現代的で現実的な視点を持てる作家を、マキタカズオミをおいてほかに、このへんの小劇場界隈で私は知らないです。

で、こんなダイナミックな社会のえぐ味を、過度に露悪的にならず常温にちかい感覚で味あわせてくれるのがニクい。芝居の地力というのかな?俳優が今回は一人残らずいい。団体の紹介で、映像的と評されることが多いようだが、わたしはむしろ演劇特有の「空気の密度」志向をもつ集団だとおもう。キャッチーな絵を効果的に差し挟みたいという意図も感じる(というか以前作家がアフタートークでそのようなことを語っていたことを聞いたことがある。つくりかたとしては「絵」が先行するのだそうだ)が、それ以上に今回は流れる空気を丁寧につくることに第一にちからを注いだのではないかという印象だ。

たとえば作家役の山口オンが出てきてからのワンシーン。ともすれば空気の読めないがさつな女に振り回される三人という図式になりかねないものを、それぞれに「弱み」を握らせることで緊迫感が拮抗する、見ごたえある説得力をもったシーンとしている。決してトリッキーというほどではない。丁寧なのだ。リアルとはまさにこういうことなのではないかと思える、卓越した居心地の悪さ(笑)。卓を囲む四人のうち、三人までがエレファントムーン団員だというのが面白い。もちろん姉役の津留崎夏子もそれにひけをとらないいい芝居。

強いて言えば、アクションシーンの詰めの甘さは指摘すべき点としてあげられるだろうか。初日ということもあってか、レイプシーンの手際の悪さ、血糊の量の少なさ、妹が男の頭に打ち付ける鈍器の処理、姉がボイラー業者の彼に向って本を投げつけるシーンのリアリティなどが気になるといえば気になる。芝居の本筋というより、テクニカルな問題。このあたりは以前のエレファントムーン作品を観ていても引っかかるところだった。となるとこれは演出家の弱点なのかな??よりよい作品づくりのために改善できるのであれば、がんばってほしいところではある。
I WANT YOU I WANT YOU

I WANT YOU I WANT YOU

モッカモッカ

駅前劇場(東京都)

2008/02/29 (金) ~ 2008/03/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

やべえ!死ぬほど面白いんですけど!
もともと拙者ムニエルのファンなんですが、どうも最近同団体が「テレビ化」してて面白くない。で、違う作家のネタならと観にいったらさ、これが大当たりなわけよ。

ネタバレBOX

「便所」と「工場」が大好きです。作家の名前が特にないことをみると、おそらく二人のオリジナルネタ。ほんとセンスいいよなあ。もっと売れていいよねー。
「(発電所)」

「(発電所)」

親族代表

新宿シアタートップス(東京都)

2008/02/14 (木) ~ 2008/02/24 (日)公演終了

満足度★★★

お気楽に
どれも作家の作風がにじみ出つつも、ハイバイやピチチやナイロンとかとはやっぱり違う。ゴリラ顔の男と、ひょろいメガネ男と、もう一人という共通のお題を与えられて、それでどうなったかという視点で見てこそおもしろいのだ。猫ニャーの小村さんがでてたり、ピチチのあのひとが岩井脚本で出てたり、わたし的には満足ポイントがどっさり。

ネタバレBOX

でもコンビニの芝居はもうちょっと丁寧にやってくれたらいいのになーとおもったりもした。ああいう変な間合いとか好きなんすよ。

革命日記

革命日記

青年団

アトリエ春風舎(東京都)

2008/01/30 (水) ~ 2008/02/12 (火)公演終了

満足度★★★

意外!
あたかも覗き見しているかのようなリアリティこそが平田演出の醍醐味だとおもっていたが、それはもう過去の話なのだろうか?それとも若手公演だからこうなの?いずれにしても期待していたような、日常のテンションに近い、含みのあるような演技は少なく、概ね真っ直ぐな印象。まあでも「革命家って真っ直ぐなひとたちなわけでしょ?これが彼らにとってのリアルなんじゃないの?」と言われてしまえば、それもそうかと思う。

ネタバレBOX

大久保亜美さんが素敵です。「スマートに」かつ「空気読めない」って、私が好きな俳優の二大条件なんだけど、ともすれば矛盾するこのふたつをバランスよく繰り出しておられました。

全体的に女優が活躍する戯曲ですよね。男性はなんだかみんなちゃらんぽらんで好感もてない。鄭さん応援しちゃうもん。平田さんて、やっぱ根が女目線なんだろうな。
Sheep fucker's exit

Sheep fucker's exit

tsumazuki no ishi

ザ・スズナリ(東京都)

2008/01/31 (木) ~ 2008/02/06 (水)公演終了

満足度★★★

ストレス満点、発狂寸前
最近娯楽色の強い作品ばっかり見てたので、この媚びない感じがかえって新鮮でした。これで2時間30分突っ走っちゃうんだから、いろんな制作的なこととか心配してしまう(おおきなお世話ですね)。あと伊達さんの歌はギャグでも聞いてらんなかった。ギャグでも。と、辛口コメントはこのくらいにして…

ネタバレBOX

一緒に見に行ったひとが昔LSD(ほんもののドラッグのほう)にはまってたとかで、これみて表現したいものがちゃんとつたわってきたそうです。わたしもそっちの世界には、まだ踏み込んだことはありませんが、ふとした瞬間にぐいーと吸い込まれそうになった。あの、オトコオンナの声がお姉ちゃんといれかわるあたりかなあ。でっかい人の独白のシーン。霧がぶわーとたちこめて。帰ってこれないかんじ。ストレスで死ぬとか、ストレスで気が狂うとか、そういうことが説得力をもって感じられる集団だとおもう。気持ち悪い満足感。
投げられやす~い石

投げられやす~い石

ジェットラグ

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2008/01/24 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

一日3ステもこれをやるなんてどうかしている!
なんて伝えていいかわからない。どんなに言葉を費やそうとも、あれはあの場で観て感じなければ何の意味もない気がする。よって、この感想文もほんと無意味(で、もどかしい)。せめて星5つつけるくらいしか、わたしにはできない。

台詞が緻密だとか
設定がトリッキーだとか
類まれな身体能力とか
さらりとくせがないとか

そういうことではない。そういうことではないんだよ。

久々に演劇の演劇らしさでやられた(あー言葉にするとバカみたいだよ。でもそうとしか言えないよ!)

ネタバレBOX

『おねがい放課後』にも奇病におかされた主人公が登場していたけれど、このポジション、岩井さんがやることで全くちがったものに見えてくる。「笑っていいのかどうかわからないけど笑っちゃう」がハイバイのあり方なのかなあなんてボンヤリ思っていたけど、笑えるようなもんではないんだなというのが今日みてよくわかった(まあ全然ちがう作品だから、そんなとこ比較すること自体が野暮なんだけど)。

どうしよう、まじでファンだわー。胸がくるしいわー。ふひー。
繭

reset-N

シアタートラム(東京都)

2008/01/23 (水) ~ 2008/01/27 (日)公演終了

満足度

拒絶
呆然。たしかにリーディングなどを得意としてきた団体ではある。前々からそういう兆候はあった。しかし、だ。がっつりこっちに舵を切ってしまうとは、長年のリセットウォッチャーである私ですら思わなかった。いや、むしろ長年のリセットウォッチャーだから気がつかないというべきか。とにもかくにも、夏井氏がフランスで「生まれ変わった」証は見せつけられた。

ネタバレBOX

内容はチラシ等にある宣伝文から伺えるとおりの最終戦争モノ(戦争というか、テロリズムに脅かされる社会というか)。放射能におびえる国(日本とは明言しないが、まあ日本)の女帝が、宮廷内の人間に振り回される様子を描く。すげー90年代の終わりによくみたかんじ。古いなあと思うが、まあ古さとかはどうでもいいんだ。古かろうがなんだろうが、作品が素晴らしければそれでいい。

問題なのは、様式美にこだわるあまり、観客が置いてけぼりをくらっているということ。そこに気がついているのか?お膳立てをしてあげなきゃついていけない、そんな程度の低い客はもういらないということなのか?この入っていけなさ加減にびっくりする。

リーディングや落語がきつい制限を加えられながらも観客を魅了できるのは、想像に訴えかけ、狭いお座敷空間を越えていけるからだ。座っていながらも、心は座っていないというそのダイナミズムが魅力なのです。自由度の高い演劇という表現形式を選んでいながら、わざわざあの陣形に座らせるのとは180度意味合いがちがうのだ、と私はおもう。

凄まじい緊迫感。それをストレスととってしまった時点で、私はこの芝居に拒絶されていることを自覚した。

復帰後第一作にあたるこの作品は、これからのreset-Nがどうなっていくか、いきたいかを示す決意表明になるのだろう。たぶんわたしとはもう、別れる運命にある。悲しかった。
愛の続き/その他短編

愛の続き/その他短編

MU

OFF OFFシアター(東京都)

2008/01/17 (木) ~ 2008/01/21 (月)公演終了

満足度★★

Bバージョンをみました
俳優としてのハセガワアユム氏を何度か拝見している。難しい役どころを嫌味なく(あるいは味つけとしての嫌味に昇華して)こなせる素晴らしい役者さんだなと私はおもうのだが、劇作家・演出家としての手腕はどうか?

ネタバレBOX

正直なところ、「言葉が多すぎる」ことに違和感をおぼえた。常に気の利いた言い回しを追求し、編み出しつづけるその基本姿勢は否定されるべきものではないのだが、言葉の量とスピードに俳優達がついていけていないという印象をもった。きっとプレイヤーとしてのハセガワアユム氏には難なくこなせる台詞なのだろう。彼がやるのなら想像がつく、と思えるシーンがいくつか。

比較的、地に足がついている印象をもったのは「5分だけあげる」のほうだった。小学生役の二人がとても可愛らしい。先生の厭世的雰囲気もよい。

宣伝文や当日パンフを見ても溢れんばかりの言葉の量。「サニーデイサービスに憧れる」「サブカルから少女漫画への回帰」などの情報は、明確に自身の小劇場界での位置づけをおこない、これを観ていない観客にまで「こんなかんじのおしゃれ系(?)」だというイメージを伝えることができる。極めてマス的な伝聞広告の手法をとろうとしており(ネタなんじゃないかってくらい)、若干気圧されてトホホという気もしないではないが、ここまで臆面なくわかりやすく自身のスタイルを打ち出してきているのは興味深くもある。
新年工場見学会08

新年工場見学会08

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2008/01/02 (水) ~ 2008/01/04 (金)公演終了

満足度★★

出演メンバーに違和感あり
去年のおわりにお台場でハイバイを見て以来、この劇団にすっかり魅了されたわたしは、いろんなところで「ココ見といたほうがいいよ!最高に面白いよ!」と吹聴してまわっている。が、既に見たことのある人の中に「すっげーつまんなかった」という感想をいだく人もいるということがわかり、「なんだとー!」と憤りを感じていた。

そして今回

ネタバレBOX

悔しいけれど「つまんなかった」という人の気持ちが少しわかってしまった。本気になりきらず、ニセモノを演じるというのはなかなか難しいんだなあと。「ギャグでやってるんですよ」というオーラを放てば陳腐になるし、かといって本気でやれば「おいおい、洒落になってないよ」と突っ込まれる。言葉にするのは難しいが、この岩井さんの按配がわかるにはもうすこし意識的に出演者を固定にしてやってくとか、理解を徹底してたたきこむ努力が必要なんじゃないかなあと。こういう部分は妥協せず、ゆるくしないで頑張ってほしいです(企画自体はゆるゆるで結構なのですが)

五反田団のほうは、鼻フックに大笑いでした。
お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

ブラジル

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/19 (水)公演終了

満足度★★★

おっかしいほどトレンディー
久々に観たブラジル。しばらく観ないあいだにドタバタ系から随分しっとりしたドラマに移行していったと聞くんだけど、今日のは直球でドタバタだった。

ネタバレBOX

意図してなのかどうかはわからないが、バラエティー番組的な盛り上がりの持ってきかただった。女の子がミキサー引っ張り出してくるとことか、ハリセンでひっぱたく的なシーンの数々とか。なるほどフジテレビ的な。まああのコント専用みたいな平面的なステージだからそう見えるのかもしれないけど。

こんなふうに書くと演劇人ウケはしなさそうだけど、お台場で敢えてこれをもってきたってのはなかなか面白いな、とおもった。アイドルポップががんがん流れるあの会場周辺の雰囲気とあいまって、なんか妙な満足感が得られた。エンディングの松田聖子(?)の嘘くせえバラードにも浸れたし。
お台場SHOW-GEKI城「おねがい放課後」

お台場SHOW-GEKI城「おねがい放課後」

ハイバイ

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/16 (日) ~ 2007/12/21 (金)公演終了

満足度★★★★★

なんじゃこりゃあああああああ!!!!!
すっごい面白いぞ!はんぱじゃねえぞ!くっだらねえぞ!しかもわかってやってるぞ、このひと!うわー、惚れたわぁ。観て!絶対観て!いま一番おすすめ!!!願わくば、星六つくらいつけたい!

ネタバレBOX

品川幸雄。別に蜷川幸雄を全然知らなくたって笑える。本番はじまってるのに、まだダメだしを続けようとする演出家根性にはほんと参りました。ハムレット二人になってるし(笑)。そう、「ここ越えちゃいけないだろう」というラインを容易に、そしてたしかな説得力をもって越えてしまうのがここの持ち味なんではないかな、と。倫理規範から、演劇手法から、舞台の範囲から。そしてうまいんだよね、なにやっても。やらせても。出演者みんな。センスいいのは言うまでもないけど、センスだけで乗り切ってる幾多の劇団とは確実に異なる一線がある。じつはかなり理知的に演出指示がなされてるんでしょうね。恐るべし、岩井秀人。

Good Morning Everything

Good Morning Everything

elePHANTMoon

王子小劇場(東京都)

2007/12/14 (金) ~ 2007/12/18 (火)公演終了

満足度★★★

伏線はりっ放しじゃん!とおもわれないために
好きなんだ、この団体。前回公演の『業に向かって唾を吐く』で一気にファンになりました。で、好きだからこそ、言いたい放題いってみたいとおもいます。愛ゆえの暴言。

ネタバレBOX

まず冒頭。最近よく観るズボンおろしてパンパンする「擬似セックスシーン」。あんまり他の団体と比較するのは可哀想だなとも思うのだが(それを言われるのだけは勘弁、とアフタートークで言っていた)、この表現てあきらかにポツドール、smartball以降でてきた、アレなわけ。いや、真似ではないって言うかもしれないけど、やっぱりそう取られてしまうよ。いまのご時勢。もうなんかよっぽどの理由が無い限り、わたしには受け入れられない。だから何よ?なのだ。実際その後、ホモネタは話の本筋とは絡んでこないし。

うーん、話の本筋と絡まないものが多すぎな気がしたね。選挙も、原発も、同性愛も、キャラクターを特徴づけるための「調味料」になってしまったのというのが惜しいな。

いや、「ストーリー主義からの脱却→インパクト重視」こそが作風転換の本旨だというのであれば、それでもいいとおもうの。でもどうもそっちにも転べていない(気がする)。もっと俳優に「シーンを力強く印象付けられる」演技力がともなっていれば、違ったかたちに昇華できたんじゃないかしら、とも思う。実際女将がマネージャー役の男の顔を嘗め回すシーンは、シーンとしての重要性はまったくないのだろうが、かなり、いいなと思ってしまった。皆がこのクオリティでいけてればいいんでしょうけど(そういう意味では「擬似セックス」のシーンも、やりようなのかもしれない)。

「漫画」っぽい。「演劇」でもなく「映画」でもなく。その「コマのインパクト」主義というか。トウモロコシでバタバタ死んでくとことかまさに。これはこれで独自のありかただとおもうから、是非その路線で突き詰めてほしいなとおもうけど。
ぷりずむてん

ぷりずむてん

Prism

BAR BASE(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/16 (日)公演終了

満足度★★★

酒あり演劇の可能性
上演スペースはかなり狭い。てか、演技中に役者同志がすれ違うことすらできないほど。演劇として「ありえない」条件を与えられながら、成立させてしまってるんだから大したものだなとおもう。

正直、メイドというよりドラッグクイーンだった(笑)。あの距離と、この空気感に慣れるのに少々時間がかかります。が、酒はいいね。酒であたしゃなんとかついていけましたよ(笑)。「潤滑油」の役割を果たしているな、というかさ。ラスト間近は手放しで大笑いでした。酒あり演劇の可能性、を見た。

スタートレック話を聞いてるときの、女二人の過剰なリアクションがスキ。「ガキか?」っつーくらいの。Dr.クラッシャーって名前はたしかにひどい。

未来ルルルルルルル

未来ルルルルルルル

あひるなんちゃら

王子小劇場(東京都)

2007/12/05 (水) ~ 2007/12/10 (月)公演終了

満足度★★

ゆるくて濃いのがいいのだ
「ゆるい」のはキライじゃない。問題はどう「ゆるい」状態のまま成立させるかだ。毎回おもうことなんだが、客演が多いせいか、かなり異なる演技プランを組み立ててきたひとたちが、同じ舞台にあがってしまっているように見える。途中で飽きがきてしまうのは、深い部分でのコミュニケーションがとれていないからなんじゃないのかな。て、なにいってんのってくらい真面目にいうけど。「無表情」になってしまっている状態が結構多いのよね。「無表情」でしか処理できなかったように見えてしまっている。不条理だったり、意味わかんなかったり、そういう台詞のセンスは好きなの。それをどこまで本気で、納得して、役者が発しているか。そこが詰められてくことで今後全然かわってくるとおもうけどな。ぜひとも「ゆるくない」演出を期待しています。

CGとスーパーコンピューターと車の三連コンボには大爆笑だった。特に、車。いい声してるよなあ。あんな車なら是非一度乗ってみたいわ。

Get Back!

Get Back!

グリング

ザ・スズナリ(東京都)

2007/11/28 (水) ~ 2007/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★

地味に、けれどもトップスピードで駆け抜ける
台詞がはえ~な~というのはわたしも思った。で、はいりさんなんかはそのスピードをものにして観客をグイグイ引っ張ってるって印象。聞き逃すんじゃないかって気を張ってみるから疲れるけど、集中力はあがる。比例してテンションもあがる。なんとか振り落とされずに観ることができた。

長年ウォッチしてきた遠藤さんが素敵で嬉しかったが、ラスト近くの口論のシーンは台詞に強引さが感じられないでもない。なぜオヤジに対して言い返すのに「体内時計」をアピールする必要があるのだろう?丁寧につくりこまれてる印象だが、脚本的にもう少し整理できるポイントがあったんではないかな、という気もする。脚本的にというか、演出的にでもいいけど。どこに責任の所在があるのかはよくわからないが。

とはいえ、皆とても上手い。演劇をみたことない人にまずおすすめするなら、ココというかんじ。

野鴨

野鴨

メジャーリーグ

THEATRE1010(東京都)

2007/11/01 (木) ~ 2007/11/30 (金)公演終了

満足度★★★★★

野鳩じゃないよ、野鴨だよ(直前まで間違えてたw)
ペニノ演出家のタニノクロウ氏。ずっと気になる存在でした。「舞台奥行きがやたら深い野外舞台」とか、「腹部切開のシーンでジャズの生演奏」とか、毎回私のツボをつく「ニュース」な噂を耳にすれど、なぜかいつも忙しい時期に重なってしまいみにいくことができず。

念願かなって初のタニノ演出。

経験と自信と確たるセンスに裏打ちされた、すんげー贅沢な3時間。

ネタバレBOX

西洋古典劇につきものの違和感。この作品に関しては不思議なことに全く感じません。現代風にこなれているとか、そういう類の消化のしかたではないんですよね。なんというか、奇妙な、こことは違う常識の、「完璧な世界」が出来上がっていました。イプセンが暮らした19世紀のノルウェーがこうしたものだったのかどうかはわかりませんが、ある徹底した美意識なり主義なりが貫かれているように感じました。ストレートなようでいて、かなり念入りな細部への「異端」なこだわり。生演奏のジャズピアノも絶妙です。

「正義病」に取り付かれたグレーゲルス(保村大和)は、今風にいえば世界中に正義を押し付けるアメリカみたいな存在かな。少女が命を絶った直後のシーンで「彼女のおかげで友人のなかにある崇高なものが目覚めたのだ」と語るなど、びっくりするような思想の持ち主ですが、存在のうそ臭さを感じません。人間として、というか、人間に良く似た悪魔のような、そんな確かさで舞台上を歩き回り、他の俳優の肩越しにささやいていました(決して批判ではありません。褒め言葉のつもりです)

で、その友人ヤルマール役の手塚とおる、もう最高です!!間抜けで、ダメダメで。かわいい。二人に共通する「潔癖さ」、かみくだいていうと「ウザさ」(笑)。これが悲劇のもとであり、コメディの要素でもあるというのが凄いと思います。よくできた脚本なんだなあ、と。

奥さん役の石田えりも、全身から「諦め」を乗り越えた荘厳なオーラを放っていて好演。目を離さずにいられません。

あーとにかく観といたほうがいいよ、これ。
タンデム~一人と一人と二人のはなし~

タンデム~一人と一人と二人のはなし~

tea for two

「劇」小劇場(東京都)

2007/11/22 (木) ~ 2007/11/25 (日)公演終了

満足度

懇切丁寧すぎる演習問題
「俳優は相手役と掛け合うことで、演技がかわる。それは二人乗りの自転車(=タンデム)に乗るように、カーブを曲がる際には、お互いの体重をかけるタイミングを図らねばならない」といったようなことがパンフレットに書いてあった。

「ほーなるほど。うまいこと言うねえ。なんか演劇ってスリリングそう」と、文章で読むと感心できる。が、これを客の見ている前で懇切丁寧に実証するとどうなるか……?それがこの公演の内容である。

ネタバレBOX

冒頭20分、延々つづく恋人(あるいは恋人だった人物)との会話をしみゅれーしょんする男女の独白。これをかけあわせるとどうなるかを見せるのが目的なのだから、そこを省略しないのは演出的に意味があるのだろうが、それにしても退屈。意味もわからず年号や公式を暗記させられる高校の授業に似ている(先生は、これを覚えなきゃその先の面白さは味わえませんよ、と言っていた)。

ちなみにもしわたしの読みがはずれていて、ほんとに恋人を想像してるシーンをピュアにやってるんだとしたら、かなりご都合主義だなと。恋人と会って会話の内容がぴったりあうなんてまずありえないとおもってしまう。(わたしはね。いや、ニュアンスが違うとか、やりたいことはわかるのだけど台詞の字面自体がかわらないというところに共感ができない)

作品としてどうなの?というのが正直な感想です。

しかも一組目が終わり、再びまったくおなじ図式で繰り返される二人芝居。「はい、一問目終わったね。では演習その二」的に。

たぶん演出家や参加してる役者さんは面白いんだとおもう。でももうちょっと冷静になってほしい。最近ワークショップの風景をそのままみせてしまう的な公演が増えてますよね。チャレンジ自体は悪くないとおもうんだけど、それって結構むずかしいことだよなーとか、いろいろと考えてしまった。

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