成れの果て 公演情報 elePHANTMoon「成れの果て」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    復活おめでとうございます☆
    「不幸や絶望はもういらない。私は幸せがほしい。」とは言うものの、他人の不幸や絶望なら話は別。むしろそんな話が聞けて幸せ。とかなんとかいう、自分ではなかなか認めたくない暗部を、白日のもとにさらされる快感を久々に味わう。安易な狂気やギミックに逃げることなく、真摯にシンプルに人間関係のいびつさに向きあった快作です。

    ネタバレBOX

    「レイプはタブー」という建て前をとりつつ、それは営業のセールストークになってたり、虐められっ子が仲間に入るためのツールに活用されてたり、小説家の格好のおいしいネタだったり。本当のところ、誰ひとり「タブーだ」「傷だ」と思っちゃいない、ゆるゆるの危機管理クライシス。被害者姉と加害者のカップルとのラブロマンスが燃え上がるにあたっては、もうこれ以上ないほどの高めの障壁(笑)。だから妹は笑う。笑うし利用もする。傷を脅し文句にかすめ取ろうとする。

    結局のところ、私たちは総じて皆こういう話が大好き。「他人の悪口こそが挨拶」が常態と化し、ブログに板に平然と醜聞がさらされる現代にあって、これほど現代的で現実的な視点を持てる作家を、マキタカズオミをおいてほかに、このへんの小劇場界隈で私は知らないです。

    で、こんなダイナミックな社会のえぐ味を、過度に露悪的にならず常温にちかい感覚で味あわせてくれるのがニクい。芝居の地力というのかな?俳優が今回は一人残らずいい。団体の紹介で、映像的と評されることが多いようだが、わたしはむしろ演劇特有の「空気の密度」志向をもつ集団だとおもう。キャッチーな絵を効果的に差し挟みたいという意図も感じる(というか以前作家がアフタートークでそのようなことを語っていたことを聞いたことがある。つくりかたとしては「絵」が先行するのだそうだ)が、それ以上に今回は流れる空気を丁寧につくることに第一にちからを注いだのではないかという印象だ。

    たとえば作家役の山口オンが出てきてからのワンシーン。ともすれば空気の読めないがさつな女に振り回される三人という図式になりかねないものを、それぞれに「弱み」を握らせることで緊迫感が拮抗する、見ごたえある説得力をもったシーンとしている。決してトリッキーというほどではない。丁寧なのだ。リアルとはまさにこういうことなのではないかと思える、卓越した居心地の悪さ(笑)。卓を囲む四人のうち、三人までがエレファントムーン団員だというのが面白い。もちろん姉役の津留崎夏子もそれにひけをとらないいい芝居。

    強いて言えば、アクションシーンの詰めの甘さは指摘すべき点としてあげられるだろうか。初日ということもあってか、レイプシーンの手際の悪さ、血糊の量の少なさ、妹が男の頭に打ち付ける鈍器の処理、姉がボイラー業者の彼に向って本を投げつけるシーンのリアリティなどが気になるといえば気になる。芝居の本筋というより、テクニカルな問題。このあたりは以前のエレファントムーン作品を観ていても引っかかるところだった。となるとこれは演出家の弱点なのかな??よりよい作品づくりのために改善できるのであれば、がんばってほしいところではある。

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    2009/05/23 01:13

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