☆さやか☆の観てきた!クチコミ一覧

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I WANT YOU I WANT YOU

I WANT YOU I WANT YOU

モッカモッカ

駅前劇場(東京都)

2008/02/29 (金) ~ 2008/03/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

やべえ!死ぬほど面白いんですけど!
もともと拙者ムニエルのファンなんですが、どうも最近同団体が「テレビ化」してて面白くない。で、違う作家のネタならと観にいったらさ、これが大当たりなわけよ。

ネタバレBOX

「便所」と「工場」が大好きです。作家の名前が特にないことをみると、おそらく二人のオリジナルネタ。ほんとセンスいいよなあ。もっと売れていいよねー。
お台場SHOW-GEKI城「おねがい放課後」

お台場SHOW-GEKI城「おねがい放課後」

ハイバイ

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/16 (日) ~ 2007/12/21 (金)公演終了

満足度★★★★★

なんじゃこりゃあああああああ!!!!!
すっごい面白いぞ!はんぱじゃねえぞ!くっだらねえぞ!しかもわかってやってるぞ、このひと!うわー、惚れたわぁ。観て!絶対観て!いま一番おすすめ!!!願わくば、星六つくらいつけたい!

ネタバレBOX

品川幸雄。別に蜷川幸雄を全然知らなくたって笑える。本番はじまってるのに、まだダメだしを続けようとする演出家根性にはほんと参りました。ハムレット二人になってるし(笑)。そう、「ここ越えちゃいけないだろう」というラインを容易に、そしてたしかな説得力をもって越えてしまうのがここの持ち味なんではないかな、と。倫理規範から、演劇手法から、舞台の範囲から。そしてうまいんだよね、なにやっても。やらせても。出演者みんな。センスいいのは言うまでもないけど、センスだけで乗り切ってる幾多の劇団とは確実に異なる一線がある。じつはかなり理知的に演出指示がなされてるんでしょうね。恐るべし、岩井秀人。

カロリーの消費

カロリーの消費

サンプル

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2007/09/14 (金) ~ 2007/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

都会的スーパーフラット
誘拐だの、虐待だの、性倒錯だの、字面だけ追うとハードそうな出来事がおこっているのに、なんだか狐につままれたような、夢見ているような、そんなスーパーフラット感覚が全編にわたりただよう物語。それぞれの変人たちに一応リアクションをとりつつも、深いところでは全く関心を寄せていない、かといって個人の欲望を追及するでもない、そんないい加減な登場人物ばっか。唯一必死に何かを訴えるのは、「死にたい」とうめく老婆くらい。この無関心さ、無目的さ加減は「都会的」といっていいんじゃないかしら。とってもクールだぜ。後半そのおかしさ加減に若干麻痺してきて、眠くなってきたりもするんだけど、作り手の表現としちゃ正しいんだとおもう。

おもしろかったので、ロビーで上演台本(一冊500円)を購入。いまそれ読みながら、これ書いてます。

正直ホンとして読んでも、そんなにぐっとくるかんじではない。あれをあのかたちにもっていけるのは、演出力、俳優の技術力のたまものなんだなあって感心した。空間をふんだんにつかった妙なバランスの舞台装置、遊びに遊ぶ照明にもこだわりあり。好きだなあ。こういう大人の余裕。つか、センス。「果肉のはいった~蜜をかけて~お召し上がりください~♪」て、あの歌はほんとに素敵だ。

余談なんだけど、三鷹でこれ見た帰りに新宿のティップネスに寄ったところ、インナーマッスルの燃焼にしか興味のない男女がマシーンのまわりにひしめきあっていました。それ見て「ああ、まさにカロリーの消費の時代なのかなあ……」と。

業に向かって唾を吐く

業に向かって唾を吐く

elePHANTMoon

王子小劇場(東京都)

2007/05/25 (金) ~ 2007/05/29 (火)公演終了

満足度★★★★★

はじめて観た劇団ですが
だいぶ前にみたものなので、記憶がおぼろげですが……。とりあえず現状で、今年観た演劇の中では一番ひきこまれた作品。「なんか儲かりそう」ではじめた宗教が実際に儲かる仕組みになってしまっているのは、騙し手がうまいんじゃなくて皆がそれを信じたがってるから(守りたがってるから)なんだってその事実。私にはとても腑に落ちました。寄る辺なき現代。会社にも家族にも見捨てられたわたしたちは、キャバクラに通い、ホストにはまり、まだ見ぬ異国に思いをはせ、英会話学校に通い、ステージの上だけの「生きてる実感」を求め劇団にすがり、「夢」のために現実を犠牲にバイトして、ネズミ講だとわかっていながらもネットビジネスに身を落してゆく……。別に宗教だけが特別なんじゃない。なにかよりかかれる、おおきなものがあればいいんだ。そしてそのためなら喜んで金なんか捧げちゃうよ。喜んで。本っ当ーによくある、誰もが潜在レベルで考えていることをありありと現出させてしまったすごい舞台だったなとおもいます。倉田大輔さん演じる、下っ端信者の「なんだっていいんですよ。宗教プレイですよ」という台詞は、その意味で「いま」に突き刺さる、小難しい教典にまさる「真理」だったんじゃないかなあ。

生理的に気持ち悪いって方は、あのご飯吐き出すシーンのこと言ってるのかな?前のほうの席は匂いがただよってたらしい。わたしは真ん中のほうに座ってたから無事でしたが。まーでも異常性を感じさせるフックとしてはありな技なんじゃないかしら。私はあれも含めてスキデス。

演技はドライで緻密で丁寧で、まじめにやってらっしゃるかんじが好感持てました。こういうタッチの作品ならば、これからもエレファントムーンも見ていきたいです。

投げられやす~い石

投げられやす~い石

ジェットラグ

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2008/01/24 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

一日3ステもこれをやるなんてどうかしている!
なんて伝えていいかわからない。どんなに言葉を費やそうとも、あれはあの場で観て感じなければ何の意味もない気がする。よって、この感想文もほんと無意味(で、もどかしい)。せめて星5つつけるくらいしか、わたしにはできない。

台詞が緻密だとか
設定がトリッキーだとか
類まれな身体能力とか
さらりとくせがないとか

そういうことではない。そういうことではないんだよ。

久々に演劇の演劇らしさでやられた(あー言葉にするとバカみたいだよ。でもそうとしか言えないよ!)

ネタバレBOX

『おねがい放課後』にも奇病におかされた主人公が登場していたけれど、このポジション、岩井さんがやることで全くちがったものに見えてくる。「笑っていいのかどうかわからないけど笑っちゃう」がハイバイのあり方なのかなあなんてボンヤリ思っていたけど、笑えるようなもんではないんだなというのが今日みてよくわかった(まあ全然ちがう作品だから、そんなとこ比較すること自体が野暮なんだけど)。

どうしよう、まじでファンだわー。胸がくるしいわー。ふひー。
野鴨

野鴨

メジャーリーグ

THEATRE1010(東京都)

2007/11/01 (木) ~ 2007/11/30 (金)公演終了

満足度★★★★★

野鳩じゃないよ、野鴨だよ(直前まで間違えてたw)
ペニノ演出家のタニノクロウ氏。ずっと気になる存在でした。「舞台奥行きがやたら深い野外舞台」とか、「腹部切開のシーンでジャズの生演奏」とか、毎回私のツボをつく「ニュース」な噂を耳にすれど、なぜかいつも忙しい時期に重なってしまいみにいくことができず。

念願かなって初のタニノ演出。

経験と自信と確たるセンスに裏打ちされた、すんげー贅沢な3時間。

ネタバレBOX

西洋古典劇につきものの違和感。この作品に関しては不思議なことに全く感じません。現代風にこなれているとか、そういう類の消化のしかたではないんですよね。なんというか、奇妙な、こことは違う常識の、「完璧な世界」が出来上がっていました。イプセンが暮らした19世紀のノルウェーがこうしたものだったのかどうかはわかりませんが、ある徹底した美意識なり主義なりが貫かれているように感じました。ストレートなようでいて、かなり念入りな細部への「異端」なこだわり。生演奏のジャズピアノも絶妙です。

「正義病」に取り付かれたグレーゲルス(保村大和)は、今風にいえば世界中に正義を押し付けるアメリカみたいな存在かな。少女が命を絶った直後のシーンで「彼女のおかげで友人のなかにある崇高なものが目覚めたのだ」と語るなど、びっくりするような思想の持ち主ですが、存在のうそ臭さを感じません。人間として、というか、人間に良く似た悪魔のような、そんな確かさで舞台上を歩き回り、他の俳優の肩越しにささやいていました(決して批判ではありません。褒め言葉のつもりです)

で、その友人ヤルマール役の手塚とおる、もう最高です!!間抜けで、ダメダメで。かわいい。二人に共通する「潔癖さ」、かみくだいていうと「ウザさ」(笑)。これが悲劇のもとであり、コメディの要素でもあるというのが凄いと思います。よくできた脚本なんだなあ、と。

奥さん役の石田えりも、全身から「諦め」を乗り越えた荘厳なオーラを放っていて好演。目を離さずにいられません。

あーとにかく観といたほうがいいよ、これ。
孤天 第二回「ボクダンス」

孤天 第二回「ボクダンス」

コマツ企画

APOCシアター(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

最高に知的で、笑えて、スリリングな舞台でした
●かつてコマツ企画の公演中「俺だけ規格外!」と叫んでいた様子が思い起こされる。「獣性」こそが魅力のひとなのかと思っていたら、それだけではない。そんな単純なアレじゃなかった。彼自身が存分に己の「獣性」をコントロールできる、猛獣使いでもあったのだ。

●「演技」「演出」の能力と、「自己演出」の能力はいずれもわけて考えなくてはならない異質の能力だろう。たとえ「演技力」があり「演出力」が備わっていたとしても、それはイコール「自己演出力」にはならない。この前面にたって人々に認識されることの少ない、されど決定的な実力=「自己演出力」を持つ作家兼俳優は限られる(野田秀樹、ハイバイの岩井秀人、tsumazuki no ishiの寺十悟などがあげられるだろうか)

●ここに川島潤哉の名前を並べたい気持ちに駆られつつ、一方そんな括りにおさめてしまうには少々のためらいがあったりもする。あくまでも「俳優」こそが彼の生業であり、俳優視点からみて何か完結した作品を世に送り出すことは出来ないかと考えて提示されたものなのだから、やはりそれは「作家」を出発点とする前述の演劇人とは異質のアプローチでつくられている。

●これまで「ひとり芝居」を「凄い」とおもったことはあっても、やばいくらい「面白い」とか普通の芝居より「こっちのほうがいい」などと思ったことはなかった。が、驚いた。まさか「ひとり芝居」を見てここまで心うたれるとは。そして「ひとり芝居」はきっと川島潤哉さんが表現活動をしていくうえで、もっとも適したフォーマットなのだろう。誤解を恐れずにいえば、これまで見たどの川島出演作品よりも彼の深奥部分に浸ることができた感触がある。

●きっと几帳面で凝り性な人なのだろう。劇中に登場する自由が丘的な店員の言葉を借りるならば、通常わたしたちが2、3のチェック項目で済ましているところを、彼は40くらいチェックして演技をしているのではなかろうか(笑)

●キャラクターの演じ分けや上演時間80分のペース配分、独特のビートの刻み方などテクニカル部分での凄みはこちらの期待通りの期待以上っぷりだったのだが、それよりさらにここで言及したいのは作品テーマの選定と、その昇華の方法である。

●ある四コマ漫画の例え。女が三コマ目までボッコボコにレイプされている描写がある。しかしさんざんやられたあげくの四コマ目で「セクハラよ!」と叫ぶと、瞬く間にボッコボコのレイプがセクハラということになってしまう。ギャグのようで、実はこれこそがテーマ。

●認識の齟齬、あるいは認識のすり替えといってもいい。

●コンテンポラリー的な暗黒舞踏的なそれに対峙した二人の恩師のコメントも同じで、読解力でひとひとり殺せると豪語する国語教師の「一をかいつまんで百に引き延ばす」見方も、「こうも考えられます」とひたすら相対的な視点を提示し続ける社会科教師の見方も、彼のおどりを観てなぜ泣いてしまったかの説明は一切できていない。当り前で、ダンサーの彼が泣いてしまったのは、咄嗟に彼のおじさんの思い出が脳裏をよぎったからで、それは観る側にとっても、やる側の彼にとっても、何の前置きもなく訪れたことだからである。

●深い断絶。しかし、感動とはそのくらいに誰にとっても超個人的な体験なのではないか。泣く、ということで共有はできても、なぜ泣くかまではガイドしきれないのではないか。そしてそれはそれでよいのではないか。どのキャラクターも滑稽に描かれてはいるものの、わたしたち観るものと観られるものの関係を、これはある面から言えばリアルに冷徹に捉えている。

●ヘレン・ケラーを単なる感動物語と思うな。これもネタ的に語られる台詞だが、まさにそのとおりで、ヘレン・ケラーを観て泣いている観客の100人が100人とも同じ文脈で泣いているとは限らない。というか、皆それぞれ異なる理由で泣いているのだろう。鈴木杏演じるヘレンを観た2003年当時のわたしも、そりゃもう例にもれず泣いてしまったわけだが、それでも今思い返せばこの言葉の意味がわかる。が、これ以上の注釈は上記の国語教師のような誤解を差し挟むことになるかもしれないので、このくらいにしておきたい。勝手ですみません。でも、勝手にしかしゃべれないものなのだというのもこの作品のお墨付きじゃないか(笑)

●ラスト間際のダンサーが立ちつくすシーンは登場人物たちの独白が繰り返されることによってつづられる。「なんで俺は泣いてるんだ?」川島潤哉の芝居というだけでも十分に効くが、やはりこれがひとり芝居でやられているということがとても大きい気がする。それぞれの「個」や、あるいは「孤」を語るうえで、これほど効果的で魅力的な上演形式があるだろうか。川島氏の前傾姿勢気味なアーティスト魂に身震いしつつ、それでも絶対に外さないと確信を持って上演していたのであろうしたたかな興行主としての川島氏の策士ぶりにも心打たれたのでした。

●というわけで2009年度、80本ぐらいお芝居を観てきましたが「もっとも驚かされた」という意味ではこの作品がぶっちぎりにNO.1です。

花のゆりかご、星の雨

花のゆりかご、星の雨

時間堂

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/06/02 (火) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

今年演劇を観て、はじめて泣きました
肩肘張っているし、ぎこちないところも多々ある。ほんとに「深呼吸できる演劇」?いや、ただ単に無意識で息吸って吐いてというのではなく、「深」呼吸なのだから、それってやっぱ空気みたいな芝居とはちょっと違うのかしら?気持の深度というか、深い誠実さというか、うまいとかうまくないとか、そんなことどうでもよくなるなにかがそこにあったのかなあって気がする。結果、ボロ泣きですから。やられました。

ネタバレBOX

年代をさかのぼるごとに、言葉遣いも現代的なものから遠ざかっていくのだけれど、そのハードルの上がり方が功を奏しているのか、みるみる役者のからだがフィットしてゆく(ように見える)。戦後の焼け野原、あのタイミングでのプロポーズ。プロット、演技体ともに決してスマートではないのに、無理を承知でやりきってしまう愚直さに、リュウ夫人同様わたしの心も動かされる。えー無理っしょ(笑)でも、そこがいいの。飾っていない、一生懸命な菅野貴夫がほんとに素敵。

久々に琴線にふれるお芝居を観ました。
Get Back!

Get Back!

グリング

ザ・スズナリ(東京都)

2007/11/28 (水) ~ 2007/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★

地味に、けれどもトップスピードで駆け抜ける
台詞がはえ~な~というのはわたしも思った。で、はいりさんなんかはそのスピードをものにして観客をグイグイ引っ張ってるって印象。聞き逃すんじゃないかって気を張ってみるから疲れるけど、集中力はあがる。比例してテンションもあがる。なんとか振り落とされずに観ることができた。

長年ウォッチしてきた遠藤さんが素敵で嬉しかったが、ラスト近くの口論のシーンは台詞に強引さが感じられないでもない。なぜオヤジに対して言い返すのに「体内時計」をアピールする必要があるのだろう?丁寧につくりこまれてる印象だが、脚本的にもう少し整理できるポイントがあったんではないかな、という気もする。脚本的にというか、演出的にでもいいけど。どこに責任の所在があるのかはよくわからないが。

とはいえ、皆とても上手い。演劇をみたことない人にまずおすすめするなら、ココというかんじ。

第二章『流れ姉妹〜ザ・グレートハンティング〜』

第二章『流れ姉妹〜ザ・グレートハンティング〜』

真心一座 身も心も

赤坂RED/THEATER(東京都)

2007/10/05 (金) ~ 2007/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★

凄い女優たち
とにかく女優力に圧倒された。もちろん脇をかためる人たちも素晴らしいんだけど、バスタオル一枚でワニと(しかも結構リアルなワニと)素手で格闘できる女優さんをわたしは他に知らない。千葉さん。まじ格好よすぎる。刃物のような目って、ああいう目のことを言うんだね。高田さん。間近でみたのは初めてなんですが、ただならぬオーラでした。まさに日本一の座長!

冒頭から、ちょっとついていけないくらいの前時代的なノリでした(笑)。ぼそっとつぶやかれる類の、俗に言うスマートな笑いは一切なし。ねじふせる系。いや、だからこそ凄いんですよね。終始スタイルとして「昭和のにおいのする人情芝居」を貫いてるんだなあって。まあ昭和の人情芝居にワニは登場しないだろうけどさ。

これぞ、後の世代に伝えていきたい文化遺産。次回公演があるなら、そのときは必ず。

Caesiumberry Jam

Caesiumberry Jam

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2007/10/12 (金) ~ 2007/10/15 (月)公演終了

満足度★★★★

出鱈目で、ぐだぐだで、ゆえに生まれる説得力
タイニイ・アリス前に、こんなに長い行列ができているのをみたことねーよってくらいの大盛況でした。ロシアの片田舎。貧しくされど豊かにわいわい暮らす人々。出鱈目な演技に、出鱈目なギャグ。取り様によるのだろうけど、わたしは愛せるかんじ。愛くるしいまでに、哀愁。

で、中盤あたりから、その出鱈目さのつけがまわってくるかの如く明るみに曝される「不都合な真実」。かといって、決して誰かを断罪するような視点ではないし、何かのスローガン的な内容じゃない。ああ、なるべくしてなったよね、と。なんかこの、ちゃかして描きながらも、ドライに神様目線で突き放して人間見てるよなあ、貫いてるよなあという作家のスタンスが本当に素晴らしいとおもう。

あと、巷で「最も紅天女に近い」と話題の清水那保さん。今回もなにかが憑依していました。いいよねー、彼女の台詞のでかたって。

成れの果て

成れの果て

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2009/05/21 (木) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★★

復活おめでとうございます☆
「不幸や絶望はもういらない。私は幸せがほしい。」とは言うものの、他人の不幸や絶望なら話は別。むしろそんな話が聞けて幸せ。とかなんとかいう、自分ではなかなか認めたくない暗部を、白日のもとにさらされる快感を久々に味わう。安易な狂気やギミックに逃げることなく、真摯にシンプルに人間関係のいびつさに向きあった快作です。

ネタバレBOX

「レイプはタブー」という建て前をとりつつ、それは営業のセールストークになってたり、虐められっ子が仲間に入るためのツールに活用されてたり、小説家の格好のおいしいネタだったり。本当のところ、誰ひとり「タブーだ」「傷だ」と思っちゃいない、ゆるゆるの危機管理クライシス。被害者姉と加害者のカップルとのラブロマンスが燃え上がるにあたっては、もうこれ以上ないほどの高めの障壁(笑)。だから妹は笑う。笑うし利用もする。傷を脅し文句にかすめ取ろうとする。

結局のところ、私たちは総じて皆こういう話が大好き。「他人の悪口こそが挨拶」が常態と化し、ブログに板に平然と醜聞がさらされる現代にあって、これほど現代的で現実的な視点を持てる作家を、マキタカズオミをおいてほかに、このへんの小劇場界隈で私は知らないです。

で、こんなダイナミックな社会のえぐ味を、過度に露悪的にならず常温にちかい感覚で味あわせてくれるのがニクい。芝居の地力というのかな?俳優が今回は一人残らずいい。団体の紹介で、映像的と評されることが多いようだが、わたしはむしろ演劇特有の「空気の密度」志向をもつ集団だとおもう。キャッチーな絵を効果的に差し挟みたいという意図も感じる(というか以前作家がアフタートークでそのようなことを語っていたことを聞いたことがある。つくりかたとしては「絵」が先行するのだそうだ)が、それ以上に今回は流れる空気を丁寧につくることに第一にちからを注いだのではないかという印象だ。

たとえば作家役の山口オンが出てきてからのワンシーン。ともすれば空気の読めないがさつな女に振り回される三人という図式になりかねないものを、それぞれに「弱み」を握らせることで緊迫感が拮抗する、見ごたえある説得力をもったシーンとしている。決してトリッキーというほどではない。丁寧なのだ。リアルとはまさにこういうことなのではないかと思える、卓越した居心地の悪さ(笑)。卓を囲む四人のうち、三人までがエレファントムーン団員だというのが面白い。もちろん姉役の津留崎夏子もそれにひけをとらないいい芝居。

強いて言えば、アクションシーンの詰めの甘さは指摘すべき点としてあげられるだろうか。初日ということもあってか、レイプシーンの手際の悪さ、血糊の量の少なさ、妹が男の頭に打ち付ける鈍器の処理、姉がボイラー業者の彼に向って本を投げつけるシーンのリアリティなどが気になるといえば気になる。芝居の本筋というより、テクニカルな問題。このあたりは以前のエレファントムーン作品を観ていても引っかかるところだった。となるとこれは演出家の弱点なのかな??よりよい作品づくりのために改善できるのであれば、がんばってほしいところではある。
散歩する侵略者(再演)

散歩する侵略者(再演)

イキウメ

青山円形劇場(東京都)

2007/09/12 (水) ~ 2007/09/16 (日)公演終了

満足度★★★★

比較するなといわれても
一年前に上演されたG-up版『散歩する侵略者』がかなりお気にいりで、どうしてもそれとの比較でみてしまいます。本当は純粋に鑑賞したいのですが。までもそうなっちゃうんだから仕方ない。

ネタバレBOX

で、比べてどこがどう変わったかというと

(1)割と年齢の幅をかんじるキャスト陣
→主に同劇団の俳優でかためたせいか、全体的に若い
(2)家とか結構つくりこんである具象舞台
→円形劇場を意識した抽象舞台に(よりSFっぽくなった)
(3)比較的、演技は淡白
→ひろい劇場を埋めようというエネルギーをかんじる芝居(個人差はあるが)

大きくまとめると、前回が「目に見えるリアル」をベースにした作品だったのに対し、今回は観客の想像力にゆだねる部分がおおきかったな、と。いや、全然想像にゆだねる芝居好きなんですが、ことこの戯曲に関しては「見た目には何も変わらない、おだやかな日常」が中抜きにされて、「虫食い」状態にされていく(アマノ談)その恐怖感が売りだとわたしは思ってるので、好みの問題かもしれませんが、前回のほうが理にかなってたのかなーと。

が、しかし後半に行くにしたがって、はじめに感じた違和感はほぼ払拭。イキウメのペースにひきずりこまれました。なかでも奥さん役の岩本さんという女優さんがやばい!嗚咽こそしませんでしたが、愛の「概念」をうばわれたクライマックスのシーンではこちらまで放心状態にさせられました。とても悲しい気持ちにさせられる芝居です(いい意味です!)帰り道は、とぼとぼ下を向いて帰りました(いい意味!!)

吐くな!飲み込め!甦れ!

吐くな!飲み込め!甦れ!

ピチチ5

駅前劇場(東京都)

2007/09/14 (金) ~ 2007/09/18 (火)公演終了

満足度★★★★

お芝居じゃない、忠告だ!75分の忠告だ!
久しぶりに、魂がふるえる体験をしました。笑えるどころの話じゃない。ただのネタとは深刻さの度合いが違うんだ。いわゆる「リアリズム演劇」とは正反対の方向で、「これが現実だ」とねじ伏せる荒業。格差社会の本質をえぐる、最高品質の社会派作品とわたしはみました。明日で終わってしまうのがとても残念。残念すぎる。こんなに悲しいくせに、腹抱えて笑えるなんて、あんまりじゃないか!!!

ネタバレBOX

特にかなしかった人を一人あげますが、第一話で「流行らない歌」を歌うシンガー役の三土幸敏さん。なんだっけかなあ。血眼になって訴えかけてくるシーンがあって(うろ覚えですけど)「お金をください!経済的に、わたしを潤わせてください!女性であれば、股をひらくのもいいでしょう!魂をかけて歌うかわりに、あんたたちも魂をかけなさい!安全なところからリスクを負わずにああだこうだ言わないでほしい!命をかけて聞け!そして死ね!」……みたいなことをすごいテンションで言うんだけど、もうなんか演技を超える何かを発する域にまで達しててさ、「この熱さ、なりふり構わなさはハンパじゃないわ。眼鏡割れるんじゃないか?」とわたしは本当にドキドキしました。ただただ、凄かった。
月並みなはなし[07再演版]

月並みなはなし[07再演版]

時間堂

王子小劇場(東京都)

2007/10/19 (金) ~ 2007/10/29 (月)公演終了

満足度★★★★

時間堂史上、一番おもしろいです
初演のときのもみましたし、本番前に通しも一回みさせていただいたので、コレが三回目の観劇。「月にいきたい」だなんていうよくわからない願望を、ちゃんと時間内にお客さんに「ああ、そういうことなのね」と理解させてしまう、トリッキーでロマンチックで理知的で丁寧で、とにかくとても面白い脚本です。

ネタバレBOX

月に行くことで人生を変えたいフリーターと、彼女と別れても、人を殺してでも月に行きたい「半分プロ」みたいな人と、むしろ普通のひとが当たり前に行くべきと主張するパン屋さん。恋人のことで負い目に感じる部分はあっても、どのひとにも分があるなあと感じられるだけの真剣さがありました。わたしたちが日ごろ「夢」とか「目標」とかを口にするときって、だいたいこの三者の思考パターンのどれかに当てはまるなあ、と。そう、「月にいく」っていうよくわかんない願望を、普通のひとの目線に落とし込んだのがこの脚本の魅力なんでしょうね。

ただ、黒澤氏の提唱する「俳優が舞台上で深呼吸できる」演出には正直物足りなく感じる部分もあります。演技の自由度が高いために、それぞれがそれぞれの居心地のよさを求めてしまっているように見えるの。息をのむような対立が魅力のお話のはずなのに、各プレイヤーが合理的な行動をとるため、結果的にあまりギスギスした空気にならない。いわゆる「合成の誤謬」てやつ。空気が読めてしまう、「大人」な俳優ばかり集まっているのも原因なのかもしれませんね。もっと芝居にKYを!

活き活きとした感情が流れる舞台に、今度はどこまで演出家の作為を盛り込んでいくか。それがこれからのこの劇団の課題なのかもしれません。
Good Morning Everything

Good Morning Everything

elePHANTMoon

王子小劇場(東京都)

2007/12/14 (金) ~ 2007/12/18 (火)公演終了

満足度★★★

伏線はりっ放しじゃん!とおもわれないために
好きなんだ、この団体。前回公演の『業に向かって唾を吐く』で一気にファンになりました。で、好きだからこそ、言いたい放題いってみたいとおもいます。愛ゆえの暴言。

ネタバレBOX

まず冒頭。最近よく観るズボンおろしてパンパンする「擬似セックスシーン」。あんまり他の団体と比較するのは可哀想だなとも思うのだが(それを言われるのだけは勘弁、とアフタートークで言っていた)、この表現てあきらかにポツドール、smartball以降でてきた、アレなわけ。いや、真似ではないって言うかもしれないけど、やっぱりそう取られてしまうよ。いまのご時勢。もうなんかよっぽどの理由が無い限り、わたしには受け入れられない。だから何よ?なのだ。実際その後、ホモネタは話の本筋とは絡んでこないし。

うーん、話の本筋と絡まないものが多すぎな気がしたね。選挙も、原発も、同性愛も、キャラクターを特徴づけるための「調味料」になってしまったのというのが惜しいな。

いや、「ストーリー主義からの脱却→インパクト重視」こそが作風転換の本旨だというのであれば、それでもいいとおもうの。でもどうもそっちにも転べていない(気がする)。もっと俳優に「シーンを力強く印象付けられる」演技力がともなっていれば、違ったかたちに昇華できたんじゃないかしら、とも思う。実際女将がマネージャー役の男の顔を嘗め回すシーンは、シーンとしての重要性はまったくないのだろうが、かなり、いいなと思ってしまった。皆がこのクオリティでいけてればいいんでしょうけど(そういう意味では「擬似セックス」のシーンも、やりようなのかもしれない)。

「漫画」っぽい。「演劇」でもなく「映画」でもなく。その「コマのインパクト」主義というか。トウモロコシでバタバタ死んでくとことかまさに。これはこれで独自のありかただとおもうから、是非その路線で突き詰めてほしいなとおもうけど。
「(発電所)」

「(発電所)」

親族代表

新宿シアタートップス(東京都)

2008/02/14 (木) ~ 2008/02/24 (日)公演終了

満足度★★★

お気楽に
どれも作家の作風がにじみ出つつも、ハイバイやピチチやナイロンとかとはやっぱり違う。ゴリラ顔の男と、ひょろいメガネ男と、もう一人という共通のお題を与えられて、それでどうなったかという視点で見てこそおもしろいのだ。猫ニャーの小村さんがでてたり、ピチチのあのひとが岩井脚本で出てたり、わたし的には満足ポイントがどっさり。

ネタバレBOX

でもコンビニの芝居はもうちょっと丁寧にやってくれたらいいのになーとおもったりもした。ああいう変な間合いとか好きなんすよ。

ぷりずむてん

ぷりずむてん

Prism

BAR BASE(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/16 (日)公演終了

満足度★★★

酒あり演劇の可能性
上演スペースはかなり狭い。てか、演技中に役者同志がすれ違うことすらできないほど。演劇として「ありえない」条件を与えられながら、成立させてしまってるんだから大したものだなとおもう。

正直、メイドというよりドラッグクイーンだった(笑)。あの距離と、この空気感に慣れるのに少々時間がかかります。が、酒はいいね。酒であたしゃなんとかついていけましたよ(笑)。「潤滑油」の役割を果たしているな、というかさ。ラスト間近は手放しで大笑いでした。酒あり演劇の可能性、を見た。

スタートレック話を聞いてるときの、女二人の過剰なリアクションがスキ。「ガキか?」っつーくらいの。Dr.クラッシャーって名前はたしかにひどい。

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

ブラジル

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/19 (水)公演終了

満足度★★★

おっかしいほどトレンディー
久々に観たブラジル。しばらく観ないあいだにドタバタ系から随分しっとりしたドラマに移行していったと聞くんだけど、今日のは直球でドタバタだった。

ネタバレBOX

意図してなのかどうかはわからないが、バラエティー番組的な盛り上がりの持ってきかただった。女の子がミキサー引っ張り出してくるとことか、ハリセンでひっぱたく的なシーンの数々とか。なるほどフジテレビ的な。まああのコント専用みたいな平面的なステージだからそう見えるのかもしれないけど。

こんなふうに書くと演劇人ウケはしなさそうだけど、お台場で敢えてこれをもってきたってのはなかなか面白いな、とおもった。アイドルポップががんがん流れるあの会場周辺の雰囲気とあいまって、なんか妙な満足感が得られた。エンディングの松田聖子(?)の嘘くせえバラードにも浸れたし。
Sheep fucker's exit

Sheep fucker's exit

tsumazuki no ishi

ザ・スズナリ(東京都)

2008/01/31 (木) ~ 2008/02/06 (水)公演終了

満足度★★★

ストレス満点、発狂寸前
最近娯楽色の強い作品ばっかり見てたので、この媚びない感じがかえって新鮮でした。これで2時間30分突っ走っちゃうんだから、いろんな制作的なこととか心配してしまう(おおきなお世話ですね)。あと伊達さんの歌はギャグでも聞いてらんなかった。ギャグでも。と、辛口コメントはこのくらいにして…

ネタバレBOX

一緒に見に行ったひとが昔LSD(ほんもののドラッグのほう)にはまってたとかで、これみて表現したいものがちゃんとつたわってきたそうです。わたしもそっちの世界には、まだ踏み込んだことはありませんが、ふとした瞬間にぐいーと吸い込まれそうになった。あの、オトコオンナの声がお姉ちゃんといれかわるあたりかなあ。でっかい人の独白のシーン。霧がぶわーとたちこめて。帰ってこれないかんじ。ストレスで死ぬとか、ストレスで気が狂うとか、そういうことが説得力をもって感じられる集団だとおもう。気持ち悪い満足感。

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