おけい@広島の観てきた!クチコミ一覧

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ブロードウェイと銃弾

ブロードウェイと銃弾

東宝/ワタナベエンターテインメント

博多座(福岡県)

2018/03/24 (土) ~ 2018/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

地方都市在住だとミュージカルの舞台を観る機会はほとんどない。
初演の評判が良かったので、思い切って福岡まで観に行くことにした。売れない劇作家が、自作をブロードウェイで上演できることになり・・というストーリにも興味があった。

地図だけを頼りに初めて出かけた博多座、劇場に入ってからも豪華な雰囲気に驚いた。オーケストラピットでは開演前からすでに音合わせ中だ。幕が開くと、回り舞台や迫りの装置が舞台を華麗に演出する。

あらすじは、ほぼ公演チラシより。
自分の戯曲をブロードウェイの舞台に懸ける願いがかなったデビッド(浦井健二)。ところが出資者であるマフィアの親玉ニック(ブラザートム)は、ロクに台詞も言えない大根役者の愛人オリーブ(平野綾)を主役につけろと要求し、部下のチーチ(城田優)を稽古場にボディガードとして送り込んでくる。プライドの高い主演女優ヘレン(前田美波里)は脚本を書き換えろと色仕掛けで迫る。ひと癖もふた癖もある彼らが無理な注文を要求してくるなかで、芸術至上主義でまじめなデビットは困惑する。その上、稽古を監視していたチーチまでが脚本と演出に口を挟んで来る。さらに、残してきた恋人のエレン(愛加あゆ)と自分を誘惑してくる主演女優ヘレンの間で揺れ動くデビット。
舞台を完成させたい一心のデビッドは、脚本と演出に数々の妥協を余儀なくされる。しかも、ギャングの子分であるチーチの提案は、いちいち的確な指摘ばかり。神は意外なところに才能を授けたわけである。二人はともに苦心して脚本を書き直していく。そして舞台は見事に大成功を収めるのだが、初日の舞台の後にデビットは重大な告白をする。

舞台の完成とデビットの恋の行方にはらはらし、ギャングに追われるチーチの運命はいかにと手に汗を握る。舞台を創る側の悪戦苦闘と出来上がった舞台の華やかさを同時に味わえるという予想以上にお得なミュージカルだった。今、人気のプリンス浦井健二を芸達者な共演者たちがしっかりと脇を固めて、ショーアップされた歌やダンスも勿論のこと、思わずニヤリとさせられる台詞のやり取りも洒落ていて、小劇場ファンの私が観てもなかなか楽しめる舞台だった。観客としては、平凡な幸せを選ぶより、悪魔に心を売ってでもいい芝居を作ってくれる人を望みたいところだが。

舞台の上を、役者を乗せた本物のクラシックカーがゆっくりと通り抜ける。日生劇場始まって以来という煽情的な衣装の踊り子たち、ダンスは颯爽として華やかだった。ギャングたちのタップダンスシーンは事前に動画で観ていたが、生の迫力はやはり違う、ため息が出るくらいカッコいい。
思わず身を乗り出して、隣の席の人からやんわりと注意をされる。(幕間には身を乗り出して観劇しないように繰り返しアナウンスされるのだ)3階席の最前列だったので、オペラグラスも初めて用意した。役者の表情の動きがよく見える。いちいち舞台全体と見較べるのは面倒だけど、後方席には必需品ね。

LOVE ME DO

LOVE ME DO

公益財団法人広島市文化財団 アステールプラザ

JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)

2018/03/16 (金) ~ 2018/03/17 (土)公演終了

満足度★★★★

19時開演、会社帰りでも悠遊間に合う。1時間ほどのダンス公演は苦にならない。
コンテンポラリーダンスってのは相変わらずよく分からないのだけれど、前回観たときも、なかなか楽しいステージだった。

プログラムには出演者14人の名前と血液型!だけ。
ACDCはオーディション合格者が10日間のワークショップを兼ねた稽古をして舞台に臨むらしい。

ほとんど女性だったけれど、男っぽい激しい動きのダンスも迫力があった、地元劇団が劇中に見せるダンスとは段違いだ。ただ、さすがに目が慣れると一人一人の技量の差が見えちゃう。

テーマは恋。舞台を見ていると、男と女の出会いや別れに見えなくもない。逞しく自律的な女性像と、相変わらずか弱い女性を求める男性の視線とが舞台に交錯する感じで面白い。

普段着にベレー帽で舞台挨拶をした近藤良平さんが、そのままの姿でソロで踊るシーン、キレのいい動きと軽やかの身のこなしはさすがプロだね。

訳が分からなくても、コンテンポラリーダンスは、脳の老化を防ぐと平田オリザが書いていた。ダンサーの華麗な動きを見ているだけでも血流がよくなりそうだ。

昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ

昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ

公益財団法人広島市文化財団 アステールプラザ

JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)

2018/02/21 (水) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★

上演は、2月21日(水)~25日(日)5日間で、全7ステージである。広島と蓬莱竜太がタッグを組む三年計画集大成と銘打たれたこの公演。その蓄積が何を産み出したか興味深いところだ。
中央の舞台を挟んで、対面形式の観客席はあわせて100名ほど。
中学の同じクラスで、十数年ぶりに再会した双子の在日二世の姉妹を中心に、クラスの彼・彼女たちの日々がさまざまなエチュードで描かれている。
観客にも一つや二つは思い当たるだろう青春の思い出、片思いと部活仲間とに行き違い、漫画家になる夢を打ち砕くクラスメートの心無い言葉、演劇部での幼い演技論の衝突など甘酸っぱいエピソード。
好きな彼女と同じ高校には行けない受験問題、仲良し3人娘の中でいじめの当事者が入れ替わり、クラスの乱暴者が父子家庭の父親から受けている虐待、引きこもりの息子に暴力を振るわれる母親の苦悩などの社会問題もほどよく散りばめられているが、その経緯やその後をうかがい知ることは出来ない。ただ、思い出の記念写真の中の彼ら彼女らが動き出すだけだ。
27人の出演者それぞれに、芝居の見せ場があり、全員が歌う合唱シーンやダンスシーンは、なんとも楽しげである。まるでハイレベルの学芸会のようだ。
16歳で姿をくらました姉ソジン(李そじん)の謎を妹のゲン(鈴政美穂)は、10年前の中学時代の思い出の中で見つけることができただろうか。
アフタートークでは、芝居に感激した若い観客の感想や質問が相次いだ。あたかも現在同時進行中のオリンピックのように、演じる側も観る側もこの取り組みに参加することに意義があったのかもしれない。

さよならだけが人生か

さよならだけが人生か

青年団

四国学院大学ノトススタジオ(香川県)

2018/02/06 (火) ~ 2018/02/08 (木)公演終了

満足度★★★★

開演が19:30なので、善通寺の駅から会場までは真っ暗で、うどん屋もとっくに閉まっている。ノトススタジオ(キャパ:100席)のある大学構内も人っ子ひとり歩いていなくて心細いこと限りなかった。
劇場の明かりにホッとする。
会場に入ると例の通り舞台には既に二人の役者が居て、退屈を持て余し、ひと悶着があったりの中での客入れだ。
時間になると休憩なしの110分の芝居が始まる。
相も変わらず、何となく気になる他人のいとなみはついつい興味があり、無責任な感想やら強引な持論やらに、うん、うんと肯きつつ自分も首を突っ込んでしまっている。青年団の芝居は相変わらずである。
アフタートークで平田オリザに、25年後の再演はどんな意味があるのかを訪ねると、劇団のレパートリーとして上演していくつもりだとのこと。自分の芝居には努めて時事性を除いて創作するように心がけているそうだ。そうするといつまでも芝居は古びない。ただ、携帯電話に関しては頭が痛いという。25年前にはもちろん携帯電話は今のようには普及していなかったので、舞台の役者たちはひとりとして携帯を使わない。劇作家は人とのすれ違いを描くことが多いので、携帯電話があったら「ロメオとジュリエット」は成立しない、だから最大の敵だそうで、頭が痛いという。
ロビーで販売していた著書の最新刊を購入し、サインを貰って、夜も10時過ぎ、凍てつく夜風の中を帰路についた。

ネタバレBOX

特に事件があるわけでもないまさに静かな演劇が繰り広げられる。1992年に初演され、「そのとき日本の演劇界が青年団を発見した」とも言われる劇団の出世作だが、あまり昔っぽい感じはない。
遺跡が発見され工事が中断された現場は雨降りの中で、工事現場の人や発掘の大学生、工務店の社員、文化庁の役人などが入れ替わり板張りの休憩所に出入りしてお茶を飲んだりお喋りをしたりする。一人娘の結婚相手の男に会いたがらない宮内のおっさんと訪ねて来た求婚者の男性、自分の留学の決定を恋人に話しそびれている女子学生が、相手の男に留学から戻ると分かれちゃう恋人が多いねと呟いたり。そんな中でのミイラ男の目撃情報がちょっとした事件か。
ウタとナンタの人助け

ウタとナンタの人助け

一般社団法人 舞台芸術制作室無色透明

広島市東区民文化センター・ホール(広島県)

2018/01/13 (土) ~ 2018/01/13 (土)公演終了

満足度★★★★

こんなにたくさんの障害を持った人たちと芝居を観る経験は初めてかもしれない。静かな熱気があふれる満員の観客席だった。
出演者にもたくさんの障害を持った人が参加している。車いすの人もいる。台詞や演技を覚えて舞台で演じることは大変だったろうと思うのだが、実際の舞台は、どこまでが演技でどこまでが素の当人だが分からないような緊張感をはらんだ演劇空間であり、とても30分の芝居だったとは思えない豊饒さが溢れている。
京都の柳沼昭徳が芝居を書き、宮崎の永山智行が演出した舞台だが、劇中には広島の地名がたくさん登場し、当時の少し古風な広島弁が随所に登場する。
アフタートークで聞いたところによると、上演時間はちょうどウタとナンタがマサルを送って行った広島駅(ピロシマ駅)から宇品港までのピロ電の乗車時間と同じだそうで、まさに同時進行の芝居だった。自ら長老役で舞台にも出演した山口隆司さん(NPO法人ひゅーるぽん)が、孤児になってもまわりの仲間たちに助けられしっかりと生きていくであろうユタとナンタの姿に多くの人が共感したとしても、現実は「児童養護施設を探そう」となる。私たちの世界は優しそうでいて実はとても冷たい社会だという言葉に、考えさせられることが多かった。
舞台演劇を都市圏に観に行くことは出来よう。でも私たちは自分たちの物語を必要としている。そんな舞台が地元でたくさん上演されるようになることを祈っている。

ネタバレBOX

印象的だったのは、死ぬことになった母との別れが納得できないウタが、別れのあいさつをできないまま母は死の国へ旅立つ場面だ。現在の日本は世界一の長寿を謳歌し、もはや子どもは親の死を悲しむ余裕があるだろうか。
ウタはその別れのあいさつのために、マサルを人間の世界に返す旅に出るのだ。その道中で、かつては人間と猿猴達は仲良く暮らしていたが、原爆を境に、猿猴達は自分たちだけのピロシマという世界を作ったことが明かされる。のんびりと仲良く暮らす彼らの世界。それは同時に、今の人間たち、私たちが作れたのかもしれない世界でもある。
人間界に戻れたマサルを迎えに来た母は車いすの役者が演じた。それまでは嫌っていた母なのに、柔らかい言葉で話しかけ、ゆっくりと車いすを押す彼の姿に胸がいっぱいになる。猿猴達のようなのんびりとした平和な世界は失ってしまったけれど、私たちが、心の中の猿猴達の世界を持ち続けることが出来たら、まだやっていけるんじゃないかと、勇気をもらい背中を押してくれたそんな舞台だった。
広島ジャンゴ

広島ジャンゴ

公益財団法人広島市文化財団 アステールプラザ

JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

たった一人の木村になるために

直前まで観に行くかどうか迷った。西部劇らしい?!
あまり期待できない気がしたのだ。客席には200名近くの観客席、しかもほぼ満席である。
それは私の予想を裏切る舞台だった。
まさか広島で、まさかアステールで、広島作のこんな骨太の舞台が見られるとは思わなかった!
西部の町「ヒロシマ」の舞台は、違和感なく目の前で繰り広げられる。アクションがらみのダンスシーンもなかなかの迫力だ。
一人っきりの異質な人間を、和の国日本では、「なぜ折り合いが付けられぬ」「なぜ諦めて人と同じように出来ぬのだ」と公然と追い詰めるところがある。
終幕部の穏やかな静けさが、ことに印象的。
誇り高き弱者のために、私たちは「たった一人の木村」になれるだろうか。

不信 ~彼女が嘘をつく理由

不信 ~彼女が嘘をつく理由

パルコ・プロデュース

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/04/30 (日)公演終了

満足度★★★

念願の三谷幸喜の舞台を観た。チケットが手に入ったのだ。
観客席が対面に設えられ中央が舞台だ。間取りが対称な隣同士のマンションに住む、2組の夫婦。休憩を挿み、2時間余りの舞台だが、テンポのいいセリフとスピーディな舞台転換で飽きさせないのはさすが。
4人の役者の中では、テレビの印象と違い、優香、声も台詞もキレイで、対する戸田恵子に一歩も引けを取らない。三谷の芝居では常連の、段田安則が見られたのもよかった。
シチュエーションコメディだから、三谷幸喜の面目躍如の筈なのだが、期待があまりに大きすぎて、いささか消化不良気味。後半の殺人の場面が、説明台詞だけだったのもガッカリだった。
地方の演劇ファンにとっては、評判作の演劇チケットを入手するのは至難のわざだから、辛いところである。

南島俘虜記

南島俘虜記

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★★

Bチーム
竹と木の葉で編んだ南の島らしい簡易づくりの医務室にのんびりとだらしなく寝転ぶ捕虜たち、熱帯の木々に囲まれた舞台美術は客席も覆い尽くすばかりで、まるで南の島にワープしたようだ。
近未来の日本は戦争中で、だが捕虜としてとらえられた日本兵たちの収容所は、平和そのもの。努めて緊張感を持たせないような演出で、捕虜たちの怠惰な日々が描かれる。
若い役者の卵たちはさすがに演技も台詞も達者だが、舞台に登場しない部分の奥行と言うか演技の深みが乏しい気がする。きっと、もっと面白い芝居になったろうな。

フェードル

フェードル

パソナグループ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2017/04/08 (土) ~ 2017/04/30 (日)公演終了

満足度★★★★

大竹しのぶの舞台をやっと見ることができた。ギリシャを舞台とする堂々とした台詞劇だ。シンプルな舞台装置。ギリシャ劇の耳慣れない台詞回しは、さすがにしっかり耳から心に届く。時おり客席には吐息のような笑い声が広がる。
何といっても、大竹しのぶがステキ。愛おしく、狂おしく、憎らしくと緩急自在な台詞の蠱惑的なこと。

広島アクターズラボから生まれた「五色劇場」の試演会「新平和」

広島アクターズラボから生まれた「五色劇場」の試演会「新平和」

広島アクターズラボ

広島市東区民文化センター・ホール(広島県)

2017/06/09 (金) ~ 2017/06/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇とは他者の世界観を見に行くものだと言った人がいる。
まさにそんな演劇に出合えた。
それぞれの演者にとって世界がどう見えているのか。それが生き生きと伝わってくる。役者は、自分に見えたその世界観を演じるために、演技以外のさまざまの勉強をしたそうだ。その集合知の重さが舞台にある。切り取った世界のコラージュの巧みさと、センスの良さで、見る者を飽きさせない。
悪戦苦闘の手探りの中、やっと試演にこぎつけたというが、観客席の私には、演劇にはこんな描き方もできるのだと、まさに目からウロコであった。
台詞と役者の本音が交錯した舞台のように見えながら、実はアドリブは全くないとアフタートークで聞き、更に驚かされた。
残すところ2ステージです、観ておいて損はないと思う。

人形の家

人形の家

第七劇場

広島市東区民文化センター・ホール(広島県)

2017/09/01 (金) ~ 2017/09/03 (日)公演終了

満足度★★★★

ノラの物語は想像していたのとは違って、夫のヘルメルはそれほど無神経な鈍感な男ではなく、ノラは思っていたより遥かに思い込みの強い、世間知らずで驕慢な感じの女だった。
だが、社会や世間と同じように、女を一人前の人間と見ない、信頼に値しない未熟なものだとする見方を、夫がした時のショックは計り知れない。
舞台では家を出ていく前のノラと、出て行った後のノラが同時に現れ、時に互いに語り掛けたりもする。出て行った後のノラをもっと幸せになったように描くこともできたのではと歯噛みする思いだ。
自分の不運を、とともすれば身近な夫や父親の責任だと思い込む。真の敵は国の大きな仕組みや昔からの宗教観、長い間の習慣の影響であるかもしれないということに、なかなか目がいかない。
出て行ったノラと、ノラが出ていかないでこの家に踏み止まったとして、女はどちらを選んだら幸せになるのだろうか。この日の観客に聞いてみると、残った方が幸せという人が4割、出て行った方が4割、どちらでもない人が残りだったようだ。残る方に手を挙げた人は男性が多かった気がする。
彼女が置かれた状況・自身の資産や信頼できる知人、世の中の景気次第で、選択は様ざまだろうと演出の鳴海さん。
ノラは何と戦えばよかったのだろうか。

ワンピース

ワンピース

松竹

新橋演舞場(東京都)

2017/10/06 (金) ~ 2017/11/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

歌舞伎座の前を通って、新橋演舞場へ。骨折した猿之助に変わり尾上右近が主役のルフィを演じることになったので、劇場入口でチケットの一部返金サービスをしている。3階席の私は500円の払い戻し。
演出は横内謙介、3幕で幕間休憩を挿んで5時間近い上演時間。1幕より2幕、2幕より3幕の上演時間の方が長くなっているのに、後半に従ってこれでもかこれでもかと面白くなっていく。せりと回り舞台を使ったダイナミックな場面転換で、特に本水を使った滝の流れを背景にした戦いの場面では、流れてくる水を飛び散らしながらの派手なアクションに度肝を抜かれる。私の席は、花道が真下で全く見えない3階席だったが、おかげで宙乗りでルフィたちを目の前で見られて大感激。3幕のエース決戦シーンは圧巻で、クルクルとトンボを切って動き回る炎役の役者の動き、流れるように美しい壮絶な対決シーンだった。
歌舞伎の役者さんと小劇場の俳優の共演でこんなに面白い芝居が観られるとは正直思っていなかったので、3000円のチケットでこれだけ楽しめれば、文句はない。又ぜひ観に来たい。

きらめく星座

きらめく星座

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/11/05 (日) ~ 2017/11/23 (木)公演終了

満足度★★★

まあまあの芝居が観られる割に、チケットが比較的取り易いのがこまつ座で、急に東京方面に行くことになったときに結局「こまつ座」ということが多い。チケットが一律8000円というのがちょっと痛い。前の方の席が取れないと損だもの。
3時間近い長丁場の芝居で、時おり集中力が切れたりしたけど。音楽学校の受験生役が弾くピアノの生演奏で役者が歌ったり踊ったりするコミカルな芝居は、懐かしい歌謡曲が何曲も歌われ楽しい。再演のためか細部まで行き届いた演技で呆れるほど役者は巧いし。「こまつ座」ファン、『きらめく星座』ファン(こまつ座では何度も上演されている)が多いのも頷ける。
栗山民也の巧みな演出で芝居の楽しさ満載ではあるが、登場人物たちのささやかの幸せを押し潰していくものの正体が、今ひとつ私には明確に見えなかった気がするのは残念だった。

プライムたちの夜

プライムたちの夜

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2017/11/07 (火) ~ 2017/11/26 (日)公演終了

満足度★★★★

リーズナブルなサイドの2階席が取れた。多少観にくいが舞台がとても近い。久々に浅丘ルリ子も観ておきたかった。ご高齢なので、これが最後かもしれないなどと失礼な(!)思惑もあり。
平田オリザのロボット芝居もある中で、役者がアンドロイドを演じるのは興ざめかもしれないと危惧したのだけれど。これがなかなか良かったです。
亡くなった人とそっくりのアンドロイドが開発された近未来。
浅丘ルリ子の80歳過ぎの老女の芝居は、さすがに真に迫った感じがあり、見事だった。ところが次の場面でアンドロイド役で登場した時には、ひややかにシャキッとしたアンドロイド振りで感心した。女優というは凄いものだ。
娘が老いた母のために頼んだのがアンドロイドである彼女の夫(しかも若い頃)、その娘が死んだ後に娘の夫が頼んだ妻のアンドロイドと、役者が本人役とアンドロイド役の二役を演じるのだが、その演じ分けがスゴイ。「それは記録されていません」という台詞が笑える。
そして最後のアンドロイドたちの会話、これが衝撃だった。
アンドロイドたちは、あとからインプットされた情報しか持っていない。ロボットにない、一番の人間らしさは、弱さであり狡さなのであろうかと考えさせられた。

境目

境目

劇団HIT!STAGE

広島市東区民文化センター・ホール(広島県)

2017/11/07 (火) ~ 2017/11/08 (水)公演終了

満足度★★★★★

今までこふく劇場にハズレは無かったので、予約だけはしておいたのだが東京から帰った日の夜の遅い公演は、気が重かった。
ところが平日の夜公演の二日間が前売り完売だという。
熊本地震をテーマにした作品らしく、佐世保在住の劇団と宮崎在住のこふく劇場の合同公演。演出は永山智行。
中央の舞台を挟んで両サイドに観客席がある。テーブルや椅子らしき舞台セットは自然の木を直線で組み合わせた象徴的な設えだ。
震災や人の死を扱った作品らしからぬコミカルなシーンが続く。独特の佐世保弁の会話のやり取りのせいだ。日本語のやり取りなのに感情的にならないのが不思議。
役者が動作でリュックを背負ったり、スマホを扱ったりするシーンが多いのにどこか寓話めいた感じもあり、いろいろ考えさせられた。
ロビーでアフタートークが催された。役者も創り手も多くの思いで悩みながらの上演だったという。だが、それが観客の心の中に具体的に見えない何かをありありと映し出したのは確かだ。乗り越えていく勇気を貰った気がする。

ちょっと、まってください

ちょっと、まってください

ナイロン100℃

JMSアステールプラザ 大ホール(広島県)

2017/12/12 (火) ~ 2017/12/12 (火)公演終了

満足度★★

休憩を入れて3時間15分の芝居である。
借金まみれで主人だけがそれを知らず、退屈な毎日を送る金持ちの家の庭に、リヤカーに荷物を積んだ貧乏人家族が住み着く。ナンセンスな会話が積み重なって、誰もそれを不思議と思わずに物語が進んでいき、いつの間にか金持ち家族と貧乏人が入れ替わっていってしまう。
久々のナイロン100℃は、不条理劇を目指したものらしい。屋敷の隣に唐突に立っている電信柱や貧乏人たちが引いてくるリヤカーは別役実のオマージュだという。
達者な役者たちの演技とプロジェクションマッピングというらしい、建物や舞台空間に映し出される雨やサイケな映像が物珍しく最後まで見てしまった。
別役作品は30年以上前に文学座のアトリエ公演でたくさん観た覚えがある。若い頃の小林勝也、角野卓造、田村勝彦、吉野佳子、倉野章子たち役者の芝居である。当然のように喋るナンセンスな台詞に気圧されるような迫力があり、うすら寒い怖さがあった。
今日の芝居のように、するすると台詞が流れて行ってしまうとどこが不条理劇なのかと首を傾げる。都で評判の芝居だからといって、私の好みには合わないことがあるということだ。

Equal-イコール-

Equal-イコール-

赤星マサノリ×坂口修一

JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)

2015/03/07 (土) ~ 2015/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★

その手があったか!
台詞っぽい会話のやり取りの胡散臭さ、いかにも芝居っぽい演技。
なのにこの面白さは、何としたことだろう!

平田オリザに傾倒していた私はどこへ行ったやら。
観客席で自分の演劇観(大げさやん)がガラガラと崩れ落ちる。

初めて観に行ったお客にも楽しめて、芝居好きも唸らせる芝居ってのは、あんまりないと思う。 ヘタウマ演技の巧妙さにも、舌を巻く。
えっ、何?と引っかかった部分が、劇後半部で次々に解明されていく快感。
出来ることなら、もう一度見直して、うん、うんと再確認したい誘惑にかられる。

人は内心の思いは、案外口にしないものだ。
であるならば超リアルな芝居といっていい。本心はどこに?

徐々に解明されるそのプロセスで味わう奇妙な浮遊感。
そして、衝撃のどんでん返し!

ビデオなんかで観ても面白いかもしれないけれど、この空気感は生で見なきゃ。

ネタバレBOX

ヨーロッパ中世の古典劇かと思っていたら、クローン人間が登場する近未来劇だった。

もし、自分のクローンと対峙することになったら、やっぱりちょっと怖い。

おんなじ役を、二人の役者が交互に演じていく芝居ってのが、とにかく面白い。しかも、趣向だけじゃなく、観ていて面白く作るのは、創り手側は意外と手が込んでいる。ちゃんと芸術は細部に宿っているのだ。

アフタートークの話によると、ラストシーンではふたりの演者のどちらが死ぬ役かは、決めてないそうだ。偶然選んだナイフの印で決まるらしい。
演じる側の心臓のドキドキが伝わってくるような、対決シーンである。
パイプ・ライフ 広島公演

パイプ・ライフ 広島公演

INAGO-DX

広島市南区民文化センター スタジオ(広島県)

2014/09/20 (土) ~ 2014/09/21 (日)公演終了

満足度★★★★

実力派、イケメン男優陣!
面白かった。コミカルなダンスも見どころ。
4人の役者が何役も演じるキレのいいエンターテイメントの中に穏やかな正義感とも言える独自の世界観が見えて、好感度アップです。
5人のイケメン役者、「誰に1票入れますか?」のアンケートには、舞台初見の山田健太に一票!

青空カラー

青空カラー

劇団こふく劇場

広島市東区民文化センター・ホール(広島県)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/11 (木)公演終了

満足度★★★★★

こんな芝居が観たかった!
場の転換、役者の出捌け、台詞と演技・・きっと慎重で巧妙な仕掛けが施されているに違いない。ただ、そんなことを意識しなくても、観客は芝居を観ているだけで、演劇空間に易々と入り込んでしまう。
時系と場面がくるくると転換しているのに、観客席の自分自身が、まったく混乱しないことに驚く。大事件も驚愕の展開もない淡々とした芝居だ。これほど釘付けにさせたのは何だろう?
芸達者の役者が障がい者を演じるのではなく、障がいを持った役者が芝居を演じるという小さな衝撃!
こういう芝居を観たかったことに、観客の私自身が気が付いていなかった。これから、私たちが大事にしなきゃならないもの(新しい価値観)の萌芽、それを演劇は的確に捉える。観に行って大正解だった。

一二人の怒れる男

一二人の怒れる男

東北えびす

広島市南区民文化センター ホール(広島県)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/12 (金)公演終了

満足度★★★★★

想定外の迫力、予想を上回る面白さ!
言わずと知れた法廷劇の名作。仙台座も出演の役者さんたちも初見だった。東京公演を含む各地の巡演で広島公演は唯一ワンステージのみ。実は、こんなに凄い芝居だとは予想していなかった。

ホール舞台上の上手側と下手側に向かい合うように観客席を設え、舞台中央に陪審室のテーブルとパイプ椅子。迫真の密室劇が目の前で繰り広げられる。
三谷幸喜の翻案「12人の優しい日本人」の映画も含めて、たくさんの「12人の怒れる男」を観た。結果は知っていてもハラハラさせられる。仙台座の舞台にはさらに新たな発見があった。

ひとりひとりの役者さんがすごくカッコいい。最初に無罪を唱えた陪審員8号(映画でヘンリーフォンダが演じた)の樋渡宏嗣、最後まで有罪を譲らなかった高圧的な陪審員3号の渡部ギュウ。周囲のメンバーを巻き込んだ彼の弁舌が、終幕で冷やかに拒絶される鮮やかな展開。
民主的なルールは、決して有能なリーダーによって実現されるものではなく、自分たちが悩みながら見つけ出していくものらしい。
圧倒的に優勢な有罪論に異が唱えられたとき、勇気をもって支持を表明するのが人生経験の豊かな老人の陪審員9号(渡辺貢)や社会の中の弱者であるユダヤ移民の陪審員11号(原西忠佑)やスラム出身の陪審員5号(横山真)あったことに、社会には多様な価値観が必要なのだと思った。自分に一番近いのは、口先ばかりで周りの言動に左右されやすく有罪・無罪・有罪とくるくる意見を変えた陪審員2号(西塔亜利夫)かも。男優ばかりの芝居だが、この芝居を束ねたのが女性演出家だというのも凄い。
進んでるなあ、仙台!

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