満足度★★★★
地方都市在住だとミュージカルの舞台を観る機会はほとんどない。
初演の評判が良かったので、思い切って福岡まで観に行くことにした。売れない劇作家が、自作をブロードウェイで上演できることになり・・というストーリにも興味があった。
地図だけを頼りに初めて出かけた博多座、劇場に入ってからも豪華な雰囲気に驚いた。オーケストラピットでは開演前からすでに音合わせ中だ。幕が開くと、回り舞台や迫りの装置が舞台を華麗に演出する。
あらすじは、ほぼ公演チラシより。
自分の戯曲をブロードウェイの舞台に懸ける願いがかなったデビッド(浦井健二)。ところが出資者であるマフィアの親玉ニック(ブラザートム)は、ロクに台詞も言えない大根役者の愛人オリーブ(平野綾)を主役につけろと要求し、部下のチーチ(城田優)を稽古場にボディガードとして送り込んでくる。プライドの高い主演女優ヘレン(前田美波里)は脚本を書き換えろと色仕掛けで迫る。ひと癖もふた癖もある彼らが無理な注文を要求してくるなかで、芸術至上主義でまじめなデビットは困惑する。その上、稽古を監視していたチーチまでが脚本と演出に口を挟んで来る。さらに、残してきた恋人のエレン(愛加あゆ)と自分を誘惑してくる主演女優ヘレンの間で揺れ動くデビット。
舞台を完成させたい一心のデビッドは、脚本と演出に数々の妥協を余儀なくされる。しかも、ギャングの子分であるチーチの提案は、いちいち的確な指摘ばかり。神は意外なところに才能を授けたわけである。二人はともに苦心して脚本を書き直していく。そして舞台は見事に大成功を収めるのだが、初日の舞台の後にデビットは重大な告白をする。
舞台の完成とデビットの恋の行方にはらはらし、ギャングに追われるチーチの運命はいかにと手に汗を握る。舞台を創る側の悪戦苦闘と出来上がった舞台の華やかさを同時に味わえるという予想以上にお得なミュージカルだった。今、人気のプリンス浦井健二を芸達者な共演者たちがしっかりと脇を固めて、ショーアップされた歌やダンスも勿論のこと、思わずニヤリとさせられる台詞のやり取りも洒落ていて、小劇場ファンの私が観てもなかなか楽しめる舞台だった。観客としては、平凡な幸せを選ぶより、悪魔に心を売ってでもいい芝居を作ってくれる人を望みたいところだが。
舞台の上を、役者を乗せた本物のクラシックカーがゆっくりと通り抜ける。日生劇場始まって以来という煽情的な衣装の踊り子たち、ダンスは颯爽として華やかだった。ギャングたちのタップダンスシーンは事前に動画で観ていたが、生の迫力はやはり違う、ため息が出るくらいカッコいい。
思わず身を乗り出して、隣の席の人からやんわりと注意をされる。(幕間には身を乗り出して観劇しないように繰り返しアナウンスされるのだ)3階席の最前列だったので、オペラグラスも初めて用意した。役者の表情の動きがよく見える。いちいち舞台全体と見較べるのは面倒だけど、後方席には必需品ね。