まことの観てきた!クチコミ一覧

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夏に死す

夏に死す

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/08/02 (火) ~ 2016/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★

死ぬという意思は…
死期が迫ると身につくものなのだろうか?
多少歪でも「生きる」ことはできるが
自殺以外で「死ぬ」ことは意思決定できるのだろうか?

「呆け」「介護」という事が現代日本には溢れている。
死ぬことさえ忘れてしまったのかと思える老人も増加するのだろう。
家族はどう対処すべきなのか?自らの生活を投げ出すことでしか「介護」は解決しないのか???

本作はしかしながら、呆けのもとで生きる人間の尊厳を謳っているようだ。
登場人物皆がそれぞれ事情をもっている。生きることに疲れ、死を選択しようとしながらも、それを結果的に乗り越えている。

「生きる」とはどういうことなのだろう?「死ぬ」その瞬間まではとにかくも生きているのだ。

個人的にはそんなことを考えさせられた。

いつもながら、物語に心を奪われる。良作。
多少希薄な語り口が気にはなったが…。

殺人者J

殺人者J

TRASHMASTERS

駅前劇場(東京都)

2016/07/14 (木) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★

いい題材とは思うが…
前回の公演を観た時も思ったのだが…
ここんとこのトラッシュ作品は演劇的ではなくなってきた。

登場人物の個性を描くというより、その口から作家の警告が発せられることが重要だとでも言い切っているような、ちょっとした不自然なダレ場が展開される。

演劇的な展開がないので、必然、会話劇になってしまい、それが観る側を飽きさせる。今回も45分過ぎくらいからしばらくそんな時間帯になっていた。

せっかくの題材と切り口なのに、それが演劇的に未消化になっていると言わざるを得ない。
是非一考をされることを期待する。


傭兵ビジネスを展開するか否かが不倫の可否にすり替わる展開は醜悪だ。
きちんとそれ専用に扱ってほしいと思った。

安全 愛欲 金満 は同一線上にあるには違いないし、おおかたが一部の輩のご都合主義で善悪をコントロールされていることは同感には思うのだが…。

これまた前作でもあった、急激な経済論の展開も唐突すぎるきらいがある。
もっと丁寧に扱って欲しいと思う。

最近すこし”やばいな”と感じるのは私だけならいいのだが…。

if

if

TEAM 6g

d-倉庫(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

一番大切な物
それは命だという事を訴える作品でした。
当たり前じゃないか…?と言われるかもしれませんが、なかなかこの直球は投げられないものです。
しかも、警察権力の腐敗構造とか、脱線しそうな仕掛けが沢山配されている中で、ぶれずに進んでいけるという推進力はお見事でした。
命を大切に思う。この表現は、表現方法こそ少し硬い路線を取りながらも、この劇団の基本テーマをきちんと踏襲していると思いました。
前作から、無駄な言葉遊びや台詞振りが無くなった筆致は、今回も冴えていると思いました。

"if"何故このタイトルだったのでしょう?
もっと母子の方に厚く物語を振っていく予定だったのでしょうか?

警察組織の集団的隠蔽体質。これは本当に問題でしょう。
ifよりも never って感じですね。

力作であり、よくコントロールされた演出だったと思います!!

ネタバレBOX

非常に気になったのは、被疑者の遺留品を触る際に、だれも手袋を付けなかったかしょでしょうか。

あれは無いと思います。

あと、対決する相手が、一刑事ではなく、検察の方が良かったなとも(個人的には)思いました。
死に顔ピース

死に顔ピース

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/03/18 (金) ~ 2016/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

終末期医療の是非
人間は例外なく誰でも死ぬ。
「癌」は年齢を選ばない病だし、3人にひとりは「癌」で死ぬのだと冒頭にも断言しているほどのポピュラーな疾患である。

既存の医療制度が悪いというのではなく、助からない命とどう向かい合うかというのが本作のテーマであろう。

当たり前のことだが、人間は息を引き取るその瞬間までが人生であり、まさにその瞬間までは生きることを謳歌する権利を持っているのである。

終末期医療の重要性を否定する観客は皆無であったはずだ。
出来得るなら皆、渡良瀬のような医師に助けられながら、家族と一緒の場で死を準備したいに違いない。

しかし、当然のごとく、往診であり、医師一人がかかわれる患者の数はたいした人数ではないのが現実だろうし、医療費そのものや、医師の収入に関しても(本作では触れられていないが)検証する必要があろう。

無理をしない。泣きたい時には泣く。この言葉が胸を打った。

この劇団の素晴らしさは、今の問題をきちんと独自取材して我々に提示してくれるところである。
お芝居としての盛り上げ要素よりも、そのテーマの伝わり方に細心の注意を払っている点は、他劇団の追随を赦さない。

「癌」に限らず、老人介護も問題になっている今、終末期医療や介護制度の整備は急をようするのである。
こう声高に訴えたくなるのも、この劇団と接したからだ!!!

マッチ売りの少女

マッチ売りの少女

天幕旅団

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/03/09 (水) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

不条理劇?
「不条理劇」というものの定義は?
私にはよく解らないのだが…。
この芝居は、むしろ、精神的なオカルト劇或いは「統合失調症」を題材とした芝居に思えた。

主人公は、完全にそんな症状だし。
そこに起因するのは、やはり戦後の悲惨な時間だろうか?
「マッチ売り」という特殊な体験に続く客たちの”性”のギラつきに壊された少女の精神。
また一方では、平和を装う夫婦の中に存在する忘れ去りたい過去。

それらのカルマが渦巻いている作品に見えたが…。

どちらが加害者でどちらが被害者なのか?双方共が加害者であり同時に被害者であったのか…。

戦後政治は暗黒部に蓋をして、表面的な安穏さを演出したに過ぎないのではないか?

不条理劇と片づけられない何かをとても感じた。が、それを巧く言い当てられない。

戦後の現代社会は「統合失調症」を患うことによって別の新たな社会を創造したに過ぎないのではないのか???

今まさに起きている<おれおれ詐欺><子殺し・親殺し><引きこもり><バーチャル空間への逃避:スマホ依存症やゲーム中毒>
蓋をしたはずのカルマが覆い尽くそうとしている今。

そう思うと、これは重大な啓示を伴った作品なのかもしれない。

砦

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

近年最高の作品!傑作!!
ダム建設反対運動の実話演劇だとのこと。
第一に、村井さん、藤田さんのおふたり。絶品の演技!集中の仕方、表現の確かさ、客席への情報の伝達力。素晴らしい。
叫ぶことがエネルギーだと勘違いしている昨今の若い俳優たちはお二人の確かな技術を観て勉強するべきだ。
藤田さんのちょっとした所作での夫に対する心情表現、女としての色気は今や誰も表現できない境地である。(しかし、山田五十鈴や淡島さん並みの所作をいつ弓子さんは取り入れだしたのだろう…?記憶にない)
村井さんの自在な強弱のコントロールの確かさ。情に溢れた役作り。失礼千万だが、こんなに上手い役者だったかな…?と最敬礼。

そのお二人の確かな演者にサポートされた本も非常に良い!
無駄な物をすべてそぎ落とした感のある力強い進行は観る側を鷲掴みにして離さない。

ダムの建設を題材にしての、民主主義への警笛、官主導の行政の危うさ、土地に生きる者の覚悟…非常に明快に現代立法府への疑問を投げかけてくれる。

こんな本当に完成された舞台を観ずして何で演劇を語れようか!!!

客席が満員ではなかった事に淋しさ痛感した。

演劇が好きだという諸氏!必見の作品を見逃すこと無きよう!!!!

ネタバレBOX

ひとつだけ…ごめんなさい
あの時代劇調のS.E <獅子脅し調のショック音>
以前はよく使われた手法だが、今回は効果的であったのは確かだが、多用に過ぎていた気がする。

多用すると耳障り感が募り、意識を引き付ける効果が無くなる。

仕様箇所を再考すべきだと思った。
ストアハウスカンパニー『Remains』

ストアハウスカンパニー『Remains』

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

感じることが試されるか…
パフォーマンスというものなのか…???
左脳を眠らせ、右脳で感じるべき作品なのだと思う。

ストアハウス版
細胞?内面活動?脳の再現?なかなか興味深かった。
洋服たちを絡めてからが長すぎるような気もした。
1時間くらいで再構成したら良いのになと思った。

B-floor
なんだか退屈だった。

ドアを開ければいつも

ドアを開ければいつも

演劇ユニット「みそじん」

atelier.TORIYOU 東京都中央区築地3-7-2 2F tel:03-3541-6004(東京都)

2016/02/27 (土) ~ 2016/03/22 (火)公演終了

満足度★★★★

良い空間。
”茶の間劇”とも呼べるような作品で、上演空間がとてもフィットしている。
「覗き見」してるような…という表現が本当にピッタリだった。

内容は、一昔前の中島敦彦が良く書いていたような雰囲気で、大好きだった『夫婦レコード』の続編のような気がした。
…勿論、作者も演出家も違うのだが。

”外面”と”内面”のこの埋められない差異は、人間生活には不可避な物だろう。
”自分の内なる声”と”自分の行動”が常にギャップを生じているようなものだ。

この類の話は、劇場という空間ではちょっとしらじらしくなりがちなものだが、今回の空間は実に良い!!!

想いを発する時の四姉妹それぞれがとてもエネルギッシュに吐露する演出であったが、全く逆の演出を特に次女に施したパターンがあるなら再度観てみたい。

長女役と四女役が、姉妹だな~という感じで似ていたのがリアルで良かったし、
次女役が素晴らしく美形であったのが、商業演劇の王道を行っているようで好感が持てた。

お茶の間版『細雪』といった感じか。

引き込まれた1時間半だった。

ネタバレBOX

会場時間がとても押した。
これはきちんと対応して欲しいと思った。
ロビー会場等の対応が出来ない会場なのだから、主催者は会場時間には並んでいる観客に後れをアナウンスするなり、お詫びするなりの気遣いをするべきだ。折角、アットホームな空間を用意しているのだから、もうこの時間からそれを大切にするべきだろう。

椅子席は「ご予約のお客様がいらっしゃいますので…」という案内を聴いたが、それはどういうことなのだろう???
チケットに<全自由>と明記されているのは…?
これも非常に不可解な対応であった。

余談ながら、暦あるいはカレンダーの類が居間にあれば(開演前のラジオで日付に触れたものがあるとなおおしゃれ)すんなり時空に入っていけるのでは…と思った。
フェードル

フェードル

劇団キンダースペース

シアターX(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

現代版が同時進行します
シチュエーションは違うような気もしますが、現代版を観ていると何のことはない間抜けな不倫劇です。
朗々とした台詞回しや人物が与えられた地位、神話との絡み合いが古典版に格調のようなものを与えているだけなんですよね!という種明かしのように見えました。

現代版では”嫉妬””誤解”というモチーフが弱いなという感じもしますが。

ギリシャ悲劇やシェークスピアの悲劇とか、この要素で語られる人間の内面劇は多いですよね。

実は、それがどうした…???というようなネタを扱っているのですが。

そんな皮肉が含まれているとしたら効果的だったと思います。

違ってたら…、、、それはこの構成にした方に訊いてください。

星の果てまで7人で

星の果てまで7人で

トツゲキ倶楽部

「劇」小劇場(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

好意的な「観てきた」が多いですね
たまたま現在A・クラークの本に嵌っているのですが、身体を別にした精神の実在性が描かれている作品が多いので、ネタはここからかな?と思うような本でした。

8人目の人は何故存在しているのでしょう?
エイリアン云々のキャラクターではなく、物語の要素として何故必要なのかという問いです。

宇宙の話というより、所属を離れた人間が俯瞰する立場に立って、地上の諸々をどう思うかという設定の話でしょうか。

個人的には、深みが欲しいと思いましたが、この軽さが劇団の持ち味で、それを楽しむファンが多いのかもしれませんね。

猥り現(みだりうつつ)

猥り現(みだりうつつ)

TRASHMASTERS

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

詰め込み過ぎましたか???
観終わって2日経ちました。
今思い起こすと、最後の台詞が一番の真実ですね。アリストパネスのテーマでしょうか。
宗教を分析するのかと思いきや、経済の裏側、性的マイノリティ、テロの実態、識者という者のいいかげんさ…etc.
とにかく話題が飛躍し、膨らみます。
個人的には、どれかに腰を据えて語りつくして欲しかったかなと思いました。
勿論、扱われている事が互いにリンクし絡み合った事象であることは充分に理解できますが、広範囲になってしまったために、フィクションもスパイスにして掘り下げるという演劇本来の(この劇団の良さは正にここにあると思うのですが…)姿からは逸脱気味かなという印象を受けました。

 それにしても、やはりトラッシュは良いですし、是非多くの方々が観て・考えて、自らの意見を持つ事がこの作品のメッセージかな?と思います。

ネタバレBOX

自衛隊=人殺しの集団 のような安易な結論は不自然に思いました。
トラッシュ・マスターズであればこそ、安保に翻弄される自衛隊の存在を丁寧に扱って欲しかったです。
米国と日本の政治の暗躍
保障制度の金銭的な困窮や対アジア政策の価値観の相違とか、そんな事を含めて、これはこれで一作品を要する課題でしょうから、余計に安易な片付け方に違和感を感じました。

原始キリスト教のテロ推奨も触れられてはいませんでしたが、破壊の原理がもたらす物は何なのでしょう?そこを某国が経済再生に悪用するという図式はチョムスキー以後多く語られている事ですが、そこもやはりあっさり系の処理でした。

「女は命を育む存在」という叫びこそ最も説得力がある台詞でした。
ならば、そこに至るまでの語り口は少し脱線しすぎかなと思いました。

重要な事柄がてんこ盛りだったので、やや消化不良気味でしたか…。

いずれにしても、この類の問題提起はこの劇団の独壇場です。
次回にも期待しています。
ティーチャーズ・ルーム【ご来場ありがとうございました!!】

ティーチャーズ・ルーム【ご来場ありがとうございました!!】

劇団マリーシア兄弟

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2016/01/27 (水) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★

教育とは?という切り口
「教育とは…?」の問いがそのままこの芝居のテーマになっているようでした。

本は少し構成しなおす必要があるのかなと思いました。

リアリティという点で他の方々は評価していらっしゃるようですが、教育現場のリアリティとは言い難いかなと思います。
勿論、フィクションなのでリアリティを演出するという意味ですが。

ネタバレBOX

「爆破予告」をもっと中心に持ってきておいた方が良かったかと思います。

その上で、枝葉をつけていかないと、結果煩雑な印象になってしまっていました。

教え子との交際とか、生徒同士のホテルでの補導とか、題材提起はいいのだけれど、茶化して終わりというのが勿体ないです。
そこをきちんと踏み込んでおけば…。

少々残念なお芝居でした。
台風の夜に川を見に行く

台風の夜に川を見に行く

マニンゲンプロジェクト

「劇」小劇場(東京都)

2016/01/13 (水) ~ 2016/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごく良かったです!
「生きる」…何故?
死ぬために生きる
歓びを感じるために生きる
色んな「生きる」に関しての意見はあるのでしょうが、
実存主義(高校時代に習いますが…)
「在るが故に在る」というのが今回の舞台のテーマでしょうか。

「生きているから生きる」とでも云うのか、でも「生きる」という事に特別な思い入れもせず「生きている」ということがひしひしと伝わる作品でした。

「生きている」の裏側には勿論十色の道程が存在します。
死んでもいいかなという場合にも、本作の人々は生き続けます。
かといって、「生きる」事に特別執着はしていません。
そう、日々の我々もそうです。

「何故生きるのか」その答えは在りません。実際の人生だって大方がそんなものです。
かといって、流れるままになりさえもしません。

50代も後半に差しかかる筆者も最近特に「生きる」意味というか、人間の存在意義というかそんな物に心が揺れます。
答えなんか見つけられません。
「生きているから生きている」のです。
何か立派な事をしなくてはいけないのでしょうか?
誰に対して???
そして結局は命は尽きるのです。どんな生き方でも同等に。

本作は「生きる」事を美化していません。
しかし、「生きるということ」を的確に捉えていると思いました。

良い舞台でした。

難を言えば、男性陣ののび放題の髪の毛はちょっと考えものです。
もう少しきちんとしましょう。
蛇足でした。

ライン(国境)の向こう【ご来場ありがとうございました!次回は秋!!】

ライン(国境)の向こう【ご来場ありがとうございました!次回は秋!!】

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2015/12/17 (木) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★

良い題材なんだけど
”らしさ”がない作品だというのが観終わっての印象。
勿論、多彩なゲストが演じる豪華さはあったのだろうが…。

この劇団らしい”キレ””スピード感”が欠如しているように思えた。

演目の設定はとても面白いと思ったが、土着感が足りない。
”演じています”という雰囲気が多く、登場人物にリアリティを感じられなかった。

再度、劇団内のキャスティングで観てみたい。

ネタバレBOX

最後に兵士たちが豹変するのは、争いの不条理さを表現しているという意味は解るのだが、違和感を感じた。
きっと、フィクション感満載の今回の演目に、この展開は合っていないのではないだろうか?
兵士ふたりが”わざと”こうした行動を見せたというオチがつくのかなと思ったほど。

政治に背を向け土地に生きる人々が翻弄されるのが見どころならば、動機付が脆弱かなとも思った。
近藤さんも戸田さんも良い役者に間違いはないのだろうが、この作品には合っていない。
出演者たちから推測して、もっと官僚や政治家が対立する設定なのかと思っていた。むしろ彼等にはそんな役の方が合っているように思う。

う~ん、いまいちだな~と漏らさずにはいられない作品だった。残念。
俺と世界は同じ場所にある

俺と世界は同じ場所にある

アミューズ

シアター711(東京都)

2015/12/15 (火) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

Jast fit
J系の男子ふたり、B系の2.5枚目男子ひとり そして劇団系男子ひとり

青春そのものを描いていた。

そこには出来事による深遠な悩みは無い。というより、そちらへの方向を敢えてシャットアウトしていたように思う。

すごくシンプルな表現で青春の日を描いていた。

終わった後、9割以上を占める女子たちが、ひどく引き込まれていた。
口々に「おもしろかったー!」と食いついていた。

今、女子をひきつけるエッセンスはこの路線なのだろう。

2.5次元云々のコミックの劇版とこの作品がはっきり一線を画しているのは
これがオリジナルの作品であるということだ。ここが大きい。
コミックの実演を期待するのではなく、この4人を観る観客にこれ以降与えられる題材は多岐にわたる可能性がある。

その意味で、本作の制作者に応援を送りたいし、この先、観客へ良い物を与えて行って欲しい。

黄色い歓声は演劇には必要ないのだから。

『エレクトラ』『からたち日記由来』「鈴木演出教室」

『エレクトラ』『からたち日記由来』「鈴木演出教室」

SCOT

吉祥寺シアター(東京都)

2015/12/19 (土) ~ 2015/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★★

残念でならない 最後
もうSCOT公演は東京では開催されないようだ。
この時期の吉祥寺は風物詩のようになっていたので残念でならない。
何故終わりになるのだろうか?
武蔵野市のかわりに何処か手を挙げてくれないものか…。

今回も、観ている間は、ただただ高尚な表現を感じるだけで、具体的に何がこんなに自分を魅了するのか解らない。
決して容易に入り込んでくるような表現ではないのに、観終わるとまたその世界が恋しくなる。
「エレクトラ」を観たが、正直<意味不明>であった。
コロスがあそこまで表に出てくると、もはやコロスではなくれっきとした役である。(勿論、コロスは役柄なのだが…比喩的に述べた)
エレクトラからも共感する想いは発せられなかった。ただただ力が感じられた。
それは哀しみを普遍化した表現なのだろうと感じられるが、それは観終わった後、息を入れてからのことであった。

研ぎ澄まされた刃物が舞台で振り回されているようで、緊張を強いられる。
しかし、それが心地いい。
なにやらマゾヒスティックな感覚に包まれざるを得ない。

ギリシャ劇は、当時の政治や権力者への風刺の面を色濃く持っている。
同時に、人間の”性(さが)”をディフォルメして抽出している。
けれど、”今”この時代に近世の作品を取り上げる事の意味はなんなのだろう?
ただ名作として存在するからなのか???

今を想う時、この古典の表現を現代人の”性”に置き換えて表現した作品を観てみたい。
歌舞伎が間違った方向へ進みだし、止まらなくなって間違いに加速がついている今の演劇界に何を期待するのか?
況や、大劇場は何やらファッションとでもいうような軽薄な作品を輸入ばかりしている昨今、日本の文化レベルを託せる存在はSCOTだけではないのか?

2,3の若い劇団は辛辣な批判をしてくれているが、ある種正当な演劇というものを作り続けているこの集団に、より多くを期待してしまう。

ものがたり降る夜

ものがたり降る夜

ことのはbox

上野ストアハウス(東京都)

2015/12/16 (水) ~ 2015/12/21 (月)公演終了

満足度★★

品がない
鴻上作品は好きです。
どう料理されるのか興味があって出かけたのですが…。

申し訳ないですが、最初のダンスが汚らしいです。
笑いは上品に取らなければいけないと思います。

演技者の品がなく、技術が稚拙すぎると思いました。

もっときちんと訓練し、生活全般から品位を意識して欲しいです。

笑いがとれればいい…それは売れない芸人が考えることでしょう。
コントにしても品がないものは笑う前に引きますよね。

厳しいこと書きましたが、思った通りを書かせていただきました。
役者とは本に書かれた人格を演じてみせる存在です。
基本的なトレーニングと表現の善し悪しをつねに考えながら活動してください。

ビーイング・アライブ

ビーイング・アライブ

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2015/12/11 (金) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

”老い”の真実
説明の文章とは違った作品だった。

むしろ”老い”に関しては非常にリアルに描かれていたように思う。

欠陥マンションの傾きがそのまま心の傾きを表しているのだろう。
(演者は大変だ!あんな角度の八百屋は観たことが無い。腿がパンパンではないのだろうか…)

生きていれば誰もが避けられない”老い”
社会との繋がりが無くなるこの厭世的な描写は心底”老い”を憂鬱に感じさせる。

生きることはとてもタフなのだと改めて突き付けられた。

ネタバレBOX

コード(=繋がり)、 手繰り寄せて空いた穴
からカメラ(生きている証)、写真(生きていた証)が見つかるという仕掛けはいい仕掛けだと観終わった後でしみじみと思った。

原宏一という(好きな)作家のタッチに似た話しだと思った。
彼も”穴”や”床下”を題材にシュールな悲喜劇を描いている。

もっと”穴”の使い方に工夫があったらより面白かったのかなと思う。
階上、階下との会話だけより過去や現在の違う選択肢のような違った状況が現れるとか…
しかしそうするとある程度のリアルな設定がぶち壊しか~…

そんな事を考えてしまうのも、この作品に魅せられたからなのだろう。


その王国の夜は明けない

その王国の夜は明けない

シアターノーチラス

シアター711(東京都)

2015/12/09 (水) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

良い題材だと思う
あなたの人生の目的はなんですか?

この題材は普遍性があるし、誰もが悩んで眠れぬ夜を過ごした経験があるのではないだろうか。

PCに向かってさえいれば、仕事をしていると思い込んでいるサラリーマン・OL。
参考書を開き問題集を解き、志望校に合格するためだけに勉強し続ける学生。

本来の目的は?それに即答できる人がどれだけいるのか?

少々ニヒルに問いかけるこの作品は貴重だと思う。

ネタバレBOX

少しだけ整理したほうがいいかもしれないと思った。
登場人物たちの設定は好感が持てたし、バリエーションにも無理がない。

でも、自分を語るトーンが一緒なのが残念。
その人特有の語り口があるはずだと思った。

例えば、ミュージシャンの彼なんかは、ちょっと人気が出てデビュー寸前のタイミングで調子に乗りすぎたって自戒をもっと語って欲しかった。
Bassが火を怖がったから…には何か無理無理感があるし、響かなかった。

OLの女性が一番解り易かったか。
教師の女性も何故生徒をそこまで追い込んだのかが不明瞭。

その辺りをもっと踏み込んで欲しかった。

整理した方がいいと思ったのは、ひとりひとりの吐露のパターンが似通っているのでくどい感じがしたから。
もっとバリエーションを見せて欲しかった。

最後、店長の独白が沁みた。
しかし、その後で女優が語りだすのは何だったのか?
勘違いのかたまりとしてクローズアップしたのか???それならもっとはっきり勘違いして欲しいか…。
そういえば、彼女のアジテートは下手だった。あれでは主役はとれないでしょと納得してしまう。
語り口の強さ、メリハリ、姿勢、狂気…もっと勉強してほしい。
長すぎる。魅せられないのに延々とやるのは飽きる。

もっと良くなる要素がたくさんある作品だと思う。
1995

1995

劇団チャリT企画

座・高円寺1(東京都)

2015/12/09 (水) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★

1995というよりも
オウム事件にほぼ特化していたように思います。

芝居の構成が多重時間になっているのでややこしいです。

もっと1995の出来事を総括するのかと思っていたので肩すかしされたような気分でした。

もっとやりようがあったかなと思いました。

ネタバレBOX

1995からの20年なのか、或いは1995が我々の社会に与えた影響なのか、折角多重時間を使うならもう少し踏み込んだ表現が欲しかったと思います。

例えば、オウムの地下鉄サリン事件を扱うなら、1995での反応と2015になっての反応を同じ場所の同じ人たちが違った反応をしめすとか…そんな表現の方が有益かなと思いました。

タイトルが「1995」なのですから、その年がどんなターニングポイントになったのかを大局的に提示するべきだったのではないでしょうか?

携帯の普及、ゲームのポータブル化、PCの個人所有等々、「説明」に書かれているような題材が1995を出発点として20年の間に格段の普及と進歩を遂げた結果として、現代社会がどう変化したのか…とかいい面、悪い面を織り交ぜて表現するとか。

多重時間というツールと、出来事という素材を上手く調理できていないなと思いました。

地下鉄サリン事件にしても、司法への懐疑を唱えるなら、何故それが成されたのかという本質を描いて見せないと。
認定医の数とか司法制度とかの解説らしき事柄で終えているのはいかにも中途半端な感がありました。

失礼ですが、劇中の脚本家のように、書き切れなくて脱線してしまったという印象が強かったです。

残念でした。

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