食卓の愛~Spring ver~
LOVE&FAT FACTORY
シアター711(東京都)
2017/04/20 (木) ~ 2017/04/23 (日)公演終了
満足度★★★
2016年のミニシアターで一番人気のあった作品を長編化したもの。会場内に入るとすぐにあの有名な映画のシーンを連想させるような横長テーブルがある。その映画の食卓シーンはそれまでの邦画で観られた”食卓を囲む”ではなく、人(この映画では家族)と向き合うことがない、そして観客を意識したもの。
本公演も「食卓の愛」というタイトルであり、そこには深いワケが…。
(上演時間1時間30分)
ネタバレBOX
舞台セットは、先に記した横長テーブルが客席寄に置かれている。奥は少し高い段差を設けているが、別の場所へ移動させる空間処理であろう。時々、場面転換として回想シーンが現われるが、その時には舞台と客席の間に紗幕が引かれる。
さて、映画とは「家族ゲーム」(1983年 森田芳光監督)であり、正面切って家族と向かい合うことがない、上辺だけの家族・食卓を描いていたが、この公演では逆に本当の家族ではないが、愛ある食卓を求める人々が騒がしく描かれている。その食卓のメインメニューがカレーライスである。日本人には、煮物やラーメンと並んで好まれる料理であろう。
梗概…食卓に愛!をモットーにしているシェアハウス「コラソンKIYO」の問題を抱えた個性豊かな住人達が巻き起こすコメディ。管理人はオネェ、住人達は霊感占い師、駆け落ちカップル(女性はヤクザ組長の一人娘)、キャバクラ嬢、一見真面目な女。そして主人公の千川もも(斎藤未来サン)が無邪気で好奇心旺盛な魅力ある女性を演じている。このシェアハウスを見張る刑事の存在。
登場人物は魅力的でキャストは熱演している。しかし、刑事が事故死した女性を探す理由が分からず、しかもその成果が表彰ものらしい。またヤクザ事務所へ管理人オネェが昔の友人を伴って出向くなど疑問が残るが、卑小なことかもしれない。
しかし、住人を含め登場人物全員に”もも”の姿が見えるというのが最大の謎であった。それゆえ物語に意外性が乏しくなり、普通の話として展開しラストの衝撃度が弱くなったのが残念。このシェアハウスの住人との絆を大切にしている証だろうか…。目に見えない共感として 居る と想像させた方が面白いと思った。
本公演、映画と違って擬似家族であっても温もりが感じられる家。その食卓の和気藹々の雰囲気を客席に伝えるための横長テーブル、観せるための演出であろう。この独特な観せ方は滑稽で印象にも残る。
次回公演を楽しみにしております。
ナイスコンプレックス
ナイスコンプレックス
調布市せんがわ劇場(東京都)
2017/04/20 (木) ~ 2017/04/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
第7回せんがわ劇場演劇コンクール オーディエンス賞受賞記念公演にして、この劇団の10周年記念公演第二弾でもある。
チラシにある説明文_認知症または法曹関係に興味がある人は、公演である事件のことを連想するだろう。この認知症に関する事件は多くの注目を集めたが、社会福祉制度にも関心が持たれ、本公演では、その部分は母親との約束事として切り離している。もっと言えば、制度面は切り捨て、母と子(息子)という人間ドラマという視点で描いている。
この劇団は、いつもであれば主宰のキムラ真氏が脚本・演出を手がけるところであるが、今回は演出を弦巻啓太氏(弦巻楽団)へ依頼している。当日パンフにキムラ氏は、初めてプロデュースのみの参加で、稽古場に全く顔出さなかったと記している。それを受けるように、弦巻氏は、家族をテーマにした作品は一本もなく、親子が登場した作品さえ殆どないと書いている。しかし、両者の思いはしっかり伝わるような…。先に書いた社会福祉という制度(枠)を外す事で、より親子関係が鮮明になり感情移入し易くなっていた。<★の回>
(上演時間1時間50分)
注目を集めた事件だけに、その裁判記録(事実)だけを追うのではなく、この公演では懸命に生きてきた親子と温かく見守る人々を描いている。
なお、判決とその後日譚は事実と違い、希望が持てるように感じたが…。
(2017年4月24日追記)
ネタバレBOX
京都地裁の認知症母殺害(心中未遂)事件…公演では舞台背景を北海道、主人公(被告)を劇団作家にしているところが違うが、事件の概要(経緯)は踏まえている。
舞台セットは、心象形成をするような、情景の作り込みはしない。どちらかと言えばシンプルで観客に情景・状況を想像させるようなもの。段差のある舞台奥はカラーBOXを一面に置き、客席寄は半円型で場面によって裁判所被告席をイメージさせる。上手・下手に各1脚(検察官・弁護士席)、また別シーンでは上手側にスナックの出現をイメージさせる。
公判で明らかになった事柄をしっかり取り込んでいる。その印象的なシーンとして、母親の認知症は症状が悪化し、おにぎりの包み紙を食べたり、「キツネがいる」と言って天井を叩いたりする。真夜中に外出し、徘徊して警察に保護されたりもする。生活に窮し自分の食事を2日に1回にし、母親の食事を優先する。さらに暮らしが困窮し、死出の旅路で2人が向かったのは繁華街だった。どこに行きたいかと尋ねて、母親が「人の多い賑やかなところへ行きたい」と行ったからだ。2月1日。雨が降っていたのを、北海道を舞台にしたことから雪を降らせている。そして厳しい冷え込みで車椅子の母に防寒具をかける。それから何時間か過ぎて…。
介護の大変さは、弁護士の家庭にも負わせ、特別なことではないことを強調する。
この公演では主人公を劇作家にしているが、生活苦の中でバイトを掛け持ちし介護を行い時間がない中で創作を続ける。自分の芝居を楽しみにしている人がいるから。その最愛のファンは母親であった。内緒で息子の芝居を観、その過去公演のチラシを持ち歩いている。10周年記念公演におけるキムラ氏のメッセージのようでもある。
この公演の見所であり魅力は、役者の演技力であろう。主役の和田健介(濱中太サン、幼少期の荒賀弓絃サン)とその母親・和田宏子(早野実紗サン)以外は、配役が変わる。特に早野サンの老け役は哀切を感じさせる見事な演技であった。
舞台技術-その照明効果を最大限に引き出すため、セットは白色を基調にした淡色にしている。照射する色彩によって情景・状況がイメージさせ印象付ける。ラストは事件当夜の雨を雪に変え降り積もらせる。実に感動的なラスト。
次回公演を楽しみにしております。
いつまでの森
劇団演奏舞台
九段下GEKIBA(東京都)
2017/04/14 (金) ~ 2017/04/16 (日)公演終了
満足度★★★★
本公演はテーマ性を強調した物語。「劇団演奏舞台」は試作という公演は観てきたが、今回はアトリエ:九段下GEKIBA開設5周年記念(公演77)だという。
パンフレットには、主宰・代表の浅井星太郎氏が「あの日-2011年3月11日。大震災・原発事故から6年が経ちましたが、未だに真実は「闇」の中…。」と記している。この「闇」を「太平記」の中にある「広有射怪鳥事(ひろありかいちょうをいること)」に想を得た本作は、今の日本の混沌とした状況を隠蔽(闇)として描く問題作のようだ。
登場人物はわずか5人。問題となる地域に暮らす人々と、この地域に興味を持った研究者の目を通して「いつまでの森」に潜む闇_その社会背景を透徹した視線の先は将来の日本の行方を見据えるようだ。
(上演時間1時間35分)
ネタバレBOX
上演前、劇中に流れるラジオ放送(ドリームウェーヴ・架空)が重苦しくなりそうな雰囲気を和らげる。上演前の放送…「男性が女性に大事な話がある。女性は愛の告白またはプロポーズと勘違いしたようだが、男は夜景の光の省エネ化の夢」を語る。その思いが劇中になると一転して環境(自然)破壊の様相へ変わる。実に巧い導入の仕方だと思う。
舞台セットは、特別自然保護区域の名目で「いつまでの森」を追い出された まりも(文月一花サン)が経営する「MARIMO」という飲み屋。限られた空間に、店構え(カウンター、ボトル棚)・赤提灯・店前のテーブル席などを作り、雰囲気は十分醸し出している。
梗概…ドリームエナジーという会社が自然環境保護の名目で「いつまでの森」に住んでいた人々を追い出す。その地から離れられない人々の交流の場が、この居酒屋。また、まりもの同級生・弥生が「いつまでの森」ツアーを勝手に企画し、それに申し込んできたのが鳥越九郎(劇中では「取越し苦労」とからかう)という研究者である。この男、某研究所に勤務していたが、その研究所の研究内容に疑問・恐れをなして辞職したが狭い業界ゆえ、再就職がままならない。この人によって「広有射怪鳥事」に出てくる鳥”以津真矢(いつまで・いつまでん)”の姿、形、逸話が語られる。
さて、研究に用いられた餌によって成長は早いが、飛ばなくなり死に至る。森の中は鳥の死骸だらけ、何が起きているのか?情報の隠蔽、その闇には軍需産業との噂も…。
いろいろな伏線を張り納得度の高い展開である。上演前のラジオ放送が印象深い。マスメディアも政府の広報になり、個人的感情は国の思惑ですり替わり、または掻き消される危惧。
劇中での台詞…「これから」と「それから」という鳥が出会うと、世界が裏返るという迷信のような話。もっとも言語として「今」から「次」へ繋がること、という将来・希望という暗示だろうか。前向きなメッセージと受け止めれば、震災後に(地方)自治体同士の横のつながりが自主的・自発的に行われるようになったと聞く。その意味で中央の統治に変化が…。
次回公演を楽しみにしております。
窓辺の馬
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2017/04/11 (火) ~ 2017/04/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
翻訳劇…その基になった戯曲を洞察し知力を加え、練り上げた脚本に視覚と聴力に訴える表現力は素晴らしかった。キャストは僅か5人。その物語は3つの時代の戦争を背景に、男3人と1人3役(母・娘・妻)を演じた柴崎美納サンの演技が圧巻であった。少ないキャストによる濃密な戦時物語は、今の日本への警鐘、いや世界に通じる普遍的なテーマとしても観応え十分である。
時代に翻弄される人間、その悲哀・無力・滑稽な姿が舞台に立ち上がってくる。
また、演出、舞台美術・技術(照明・音響)が臨場感を醸し出し情景が鮮明に描き出される。
ネタバレBOX
上演前、舞台と客席との間に欧州の古地図が吊るされており、使者が放銃して地図上を赤く汚す。上手・下手の両側にドラム缶が置かれ、上手側に街灯、下手側は上部のパイプ管から水が落ちる。
時代が異なる3つの戦時を背景に、戦死者の悲報を知らせにくる使者。その顔は道化師のようであり役割としてはストーリーテラーといったところ。
第1話…出征する息子の身の回りの世話をする母。気丈に振舞いながらも息子のことが心配な様子が見て取れる。しかし馬に蹴られて死亡。
第2話…父の戦争体験を子守唄のように聞く娘。その話は戦地での恐怖を暗示するような不気味なもの。馬に後をつけられて逃れられない孤独・不安。孤独は理性を奪う。その苦悩の果ての発狂死。
第3話…夫が戦地へ行くまでの準備、勇姿が見られるが、結局行軍中に躓き軍靴で轢殺された(ラストに数多くのブーツ)。
いずれも銃弾という直接的な戦死ではなく、戦時という状況に殺されたかのようだ。そこに戦争の非情さが見て取れる。
人間の最悪な不条理である戦争…その後始末に死体自動収集埋葬機なるものが登場するという。この機械的処理に対し、交わされる言葉(詩のよう)は生きている証のようである。
脚本・演出はもちろん、舞台美術・技術はどれもが素晴らしかった。
舞台セットは平板で骨組みした家屋内(壁は紙張り)と上手側に跳ね橋のような板。室内は食器棚・テーブル、客席寄りに旅行鞄がありその中は多くのスナップ写真、白いカーネーションだ詰められ、死を暗示するような小物。衣装は死者は白装束、白塗顔、一方生きている者は、黒も含め色彩ある服を着ている。照明の陰影、ロウソクの炎が幻想的で、その炎こそ命のようだ。また音楽はパレード、宗教曲など場面に応じて聴かせ、水の音が生きていることを感じさせる。
劇中、ドアを閉める音が”うるさい”という台詞が何度かあるが、その騒がしさ、手の荒さこそ争いという比喩か。もっとも口を噤んで静かにしていては危険を知らせることが出来ないだろう。
次回公演を楽しみにしております。
FAMILY
ヒューマン・マーケット
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2017/04/12 (水) ~ 2017/04/16 (日)公演終了
満足度★★★★
某地下倉庫が舞台…劇中の台詞にもあったが、「ロミオ&ジュリエット」のような反目し合うファミリーと一家の男と女の恋愛話から物語が始まる。本公演は登場人物の外見(衣装など)で区別でき、どちらの者か考えるまでもなく視覚で楽しめる。その演出効果は巧み。
またこの対立の構図は、地方(郊外)都市における小型商店の衰退、いわゆるシャッター商店街という課題を垣間見せる。もっともこの課題は背景として表現しているに止まり、物語の中心は両家の確執とそうなった経緯、これからの行方を面白可笑しく描いている。
(上演時間1時間40分)
ネタバレBOX
舞台セットは壁際に脚立やダンボール箱が積み上げられている。一見すると雑然としているが、中央に空きスペースを作りアクションを観(魅)せる。この倉庫は0(ゼロ)倉庫と呼んでいる。この倉庫は両家にとって思い出の地のようで、偶然か必然か分からないが佐藤家(コーポレーション)・鈴木家(商店)の人々が集まってくる。
冒頭は先に記した通り、佐藤家の三男と鈴木家の次女が恋仲になり、鈴木家の母に相談するところから始まる。今では反目しているが10年前までは共同経営するほどの間柄であった。仲違いした原因は子供じみたこと、「銃」と「刀」のどちらが強いかという銃刀の優劣が発端である。先にオチを書くが、決してブラック企業などではなく玩具会社である。この倉庫は商品の保管をしており、初(ゼロ)めて使用した思い出の場所である。両家とも年に1度会合を持っていたが、それぞれの経営も苦しいことからどちらの家も手放そうとしている。
この商店街も後継者が少なくなり閉店が相次ぐ。この両家を取り持つような存在の山田屋(今川焼き店)もその1つ。人気店も時代が現代に近づくほど残念な結果になることが多くなってきている。同時に新たな商売も生まれてくる。本公演でも今川焼きはサーファーショプに変わるようだ。
反目・確執から和解する。それに伴って1人ひとりの心の距離が縮まる。その過程で観せるアクションは、自在な動きの妙(跳蹴りでダンボール箱に突っ込む演技?)、脚立や階段を利用した高低差は躍動感が倍加する。
「家族」をテーマに精神的な再生を肉体的な高揚で謳い上げる。そして背景に地域事情という社会問題を潜ませ表層的な喜劇に止まらず、奥深い物語に仕上がっていた。最後に舞台技術(照明・音楽)も効果的で、映画音楽ゴットファザーや宗教曲のようなものまで。
次回公演を楽しみにしております。
フールオンザヒル
劇団もっきりや
ART THEATER かもめ座(東京都)
2017/04/13 (木) ~ 2017/04/16 (日)公演終了
満足度★★★★
真実は丘の向こうで作られる。丘で空を見上げる男…その言っていることは少数意見でほとんどの人が信じない。大方は大勢が言う言葉を信じる。しかしそれが必ずしも真実とは限らない。大衆を扇動して真実を隠す。公演は今国会で議論している共謀罪へ及ぶような物語。
底流にあるのは”表現の自由”の確固たる信念のような(詩)朗読劇のような音楽劇。(詩)朗読に(音)旋律を付けたような。その詩は、詩人による表現だけに魅力的な言葉でシーンに応じて選択しており、心に留められないのが悔しい。
なお、詩よみ拡大ヴァージョンということなのであろうか、上演前・後にテーブルを舞台に置き飲み物、スナック菓子を用意しもてなす。劇団初めての試みだという。
ネタバレBOX
舞台セットはコの字に囲った本棚(知の象徴であろう)。キャストは客席に向かって二列になって並ぶ。普通であれば本棚を後景にコの字に座るところを敢えて向かい合うような配置にしているようだ。それは観客にしっかりテーマを伝えようとする姿の表れであろう。
当日パンフには、引用した詩の作者の紹介。劇中で歌った曲名を記しており、その丁寧さに好感が持てる。また生演奏、歌うグループ「シャリバリー・カンカラ」という団体の協力も得ている。
梗概…ガリレオの嘆き、真実を語っても誰も信じてくれない。なぜ自分の目や耳で確かめないのか。他人(第三者)の言葉を鵜呑みにするという懐疑的な言葉から物語は始まる。時代は下りブレヒトの「真実を書く際の5つの困難」を引き合いに出し真実とは何か。この後、展開はドイツから日本へ移り、第二次世界戦争後からの時代の変化を描き出す。
第二次世界戦争で戦死した男と恋人の繰り返さないこと、繰り返しの言葉が多いと真実を隠そうとするようで怪しい。さらに高度成長期からバブル期(「鐘の鳴る丘」を「金の成る丘」)というシャレに込めた皮肉な台詞。バブルを風船に見立て破裂させる演出やジュリアナ東京を思い出させる衣装・羽根扇子で観(魅)せる。
圧巻は、震災後の放射能漏れに関する情報隠蔽による指定地域への立入禁止、そこへ強行しようとした場合、テロ行為と見なし共謀罪を適用するという、今話題を盛り込む意欲作のようだ。また足元の暮らしを見つめて、資本(家)と労働(者)という階級闘争のような問題も垣間見せるという幅広い内容の話。
物語は一貫して”詩”の言葉の魅力・力強さを強調して展開していくが、それがどう収斂していくのか興味が尽きない。もっとも本公演では解答を出すようなことはしない。言葉を紡ぎ、情報を隠さず拡散する。しかしその情報にも真偽があり”自分力”を磨き正しく認識し判断することが求められる、そんな感想を持たせる音楽劇のような…。
聴かせるだけではなく、視覚的な演出も面白い。本棚への効果的な照明、和服・ヘルメットなどシーンに応じた情景描写。また切り紙を使用した人形劇も楽しい。
なお、ヒト型に切り取り総理大臣として登場させて揶揄していた。確かに為政者(中心)であるが、その観せ方が直裁的なような気がする。世の風潮として為政者が変わろうと多数の意見が必ずしも正しいとか限らない、という普遍的な捉え方の方が自身の問題として受け止めると思うが…。
次回公演を楽しみにしております。
新入社員のイジメ方
劇団カンタービレ
ウッディシアター中目黒(東京都)
2017/04/06 (木) ~ 2017/04/10 (月)公演終了
満足度★★★
観劇した4月は、新入社員が入社してくる季節。物語はその新入社員研修という社会人第一歩を教育するというもの…ではなくタイトル通り、どのようにイジメるか、そんな悪意ある話である。もっとも新入社員研修のシーンと別のシーンが並行して展開するようで、交互に描かれる物語は、その関係性が弱いと思われる。
この公演…イジメでも楽しめたが、自分としては研修を通して学生から社会人へ変わっていく姿、または変わらない人間の本質的な面を描いた物語を観たかった。もっとも、そうすると劇としては「How To」的になるかもしれないが、そこは工夫次第であろう。
(上演時間1時間40分)
ネタバレBOX
舞台セット(転換も含め)は、面白いし見事であった。研修先の寺・本堂は素舞台に近く、中央奥に布が被せられた仏像らしき膨らみ。一方、この地の自縛霊が集まるスナック(上手側にカウンター・ボトル棚、下手側にテーブルセットが設える)は、ある程度作り込んでおり視覚的に楽しませてくれる。この場面転換が早く感心する。
梗概…第3次採用組7名(日本人に多い姓-佐藤・鈴木・高橋・田中・伊藤・山本・小林-観客の中の同姓者への共感効果を狙ったか?)が山奥の寺で合宿研修する。この採用時点で第1次・2次組は京都の寺という区別・差別を表現する。確かに初めのうちは、社長の名前、社是を問うような研修内容であったが、段々と陰湿な苛めという仕打に変容していく。
この山は姨捨山ならぬ人捨山と呼ばれており、自殺者が入山しくるという。そこに何故か、ゲイママ=スミ子・カトリーヌが経営?するスナックに悲恋の女性(ハナ)、覆面女子プロレスラー=ミス・マスカラス、東大=受験浪人生、侍浪人=斉藤次郎何某…など個性豊かな霊が集まり、夜な夜な繰り広げる騒ぎ。
この2つの話(場面)が交互に出現し、次元が違うが時間軸は並行しているようだ。そして終盤近くで絡んでくるが、その繋げ方が強引のようだ。新入社員が研修の過酷さに耐えかねて自殺又ははずみによる事故か…この出来事によって交錯してくる。
本公演で、研修中は財布・携帯電話等を人事部の人へ預けるシーンがあった。さて、新人にとって電話対応が第一関門となると思うが、受話器(固定電話)を取って対応する不安。また郵便物、ファクスなど日常生活から縁遠くなった手段も復活してくる。それに絡んだ”非常識”という新人(若者)ならではの常識、経験・体験を面白可笑しく研修として観せて欲しかった。
大事なことは失敗から学ぶ、などキレイごとは言わないが、失敗を恐れることは前に進めないのも事実であろう。タイトルにあるカレーライスの意味、「夢」と「希望」というスパイスが利いて美味しそうだと。そうであればイジメという個人的な鬱憤晴らしの仕打ちから会社の研修・制度という大きな枠組みで描いていれば…少し残念であった。
次回公演を楽しみにしております。
世界☆独創
シャービィ☆シャービィ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/02/02 (木) ~ 2017/02/06 (月)公演終了
満足度★★★★
グリーンフェスタ2017参加作品。
基本はポップであるが、その独特な世界観は浮遊と沈殿という両極端を描いているようで不思議。ステージはプロジェクター映像と効果的な照明が印象的であった。
舞台美術は淡色で軽量なイメージであるが、物語の本質は人の底意地の悪さ、ダークな面を抉り出す、そんな重量を感じさせる。
その世界感で無邪気に遊びまわる少女の姿…ラストの台詞に戦慄する。
(後日追記)
代役!
劇団ヨロタミ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/02/22 (水) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★
グリーンフェスタ2017参加作品。タイトル通りトラブルが生じて代役!を立てることになったドタバタコメディ。設定が舞台劇(イベント)ということであり等身大、日常の行動をそのまま公演に持ち込んだようだ。いわゆるバックステージものであり、公演は舞台上のキャストだけではなくスタッフ、関係者の協力なくしては成り立たない。
もっとも演劇に限ったことではなく、社会(企業)においても同様のことが言えるだろう。例えばプレゼンテーションで発表する人、その資料作りに汗をかいたメンバーがいること。そんな縁の下の人々に謝意を込めて創った作品のようだ。
(後日追記)
ドラゴンカルト
劇団ショウダウン
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/01/27 (金) ~ 2017/01/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
グリーンフェスタ2017参加作品。サスペンス・ミステリーという分野の作品であるが、ノックスの十戒が気になるきわどさ…しかし、そんなことは卑小なこと。過去と現在を交錯させ時間軸を操る事で簡単に犯人へ辿りつけない。その重層的な構成、そこに潜ませた悲しい思いが心に響く。
この劇団、林遊眼という看板女優がいるが、本公演でも主役であることは間違いないが、一人芝居と違って群像(集団)劇である。その中にあって違和感を感じさせることなく、それでも存在感ある演技で観(魅)せてくれた。
(後日追記)
ギンノベースボール
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
グリーンフェスタ2017参加作品。この劇団、というか主宰の井保三兎氏の思いかもしれないが「高齢者」と「野球」というあまり結びつきが感じられない切り口。それを古希野球という聞きなれない設定で観せてくるところに、引き出しの多さ豊富さを感じる。
人は誰でも老いていく、それを決して悲観的に描くのではなく、むしろ前向きに明るく描いた秀作。高齢(化)社会という問題と人間の尊厳の両面から鋭く捉える、社会派ドラマ(「戦争」と「平和」も絡め)の中にヒューマン性を取り入れたか、逆に人間ドラマに社会状況を背景として従えたか。いずれにしても奥深い作品である。
(後日追記)
見上げたら、ものすごい星空
らちゃかん
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/02/23 (木) ~ 2017/02/27 (月)公演終了
満足度★★★★
グリーンフェスタ2017参加作品。賞は惜しくも逃したが、実に観応えのある公演であった。
この公演の見所…舞台美術が登場人物の心象形成に寄り添うようで、物語の展開をより分かり易くしている。また、劇団の特長である舞台となる場所の設定が、この物語を成す重要な役割を果たしている。郊外の人情味溢れるような街、そんな場所だからこそ物語として成立し、また人間ドラマとして心に残る作品になっている。
最前列は子供用のミニ椅子を用意し、子供を優先しているようであった。この公演は小学生でも十分楽しめる内容で将来の演劇ファンを取り込んだかのようだ。
(後日追記)
鬼泪 〜激情編〜
カプセル兵団
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2017/03/04 (土) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
グリーンフェスタ2017で「BIG TREE THEATER賞」を受賞。本公演は再演であるが、キャラクターを増やしてテーマを掘り下げ、「激情」をテーマに新たに作り上げたという。物語に寓話性を盛り込んでいるが、決して教訓臭くならずビジュアル面も含めて観(魅)せる作品であった。
2時間を越える物語で、その世界観は壮大であるが、時々笑いを誘うような小ネタを入れ退屈させない工夫をしている。
また、子供デーを設定するなど、将来の演劇ファンを取り込むような姿勢に共感する。
後日追記
Melody
TEAM 6g
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/02/08 (水) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
グリーンフェスタ2017において「BOX in BOX THEATER賞」、「グリーンフェスタ賞」のダブル受賞…その授賞式で涙ぐむ阿南敦子女史の姿が印象的。グリーンフェスタ2017の参加作品は、どの公演も観応えあるものであったが、特にBOX in BOX THEATERは、過去のグリーンフェスタや池袋演劇祭で数々の賞を受賞している実力・実績がある劇団がエントリーしており、実力伯仲といった感があった。
本作品は高校生から40歳位までの時間軸の長い物語であるが、その主人公は阿南女史が演じており感慨深いものがあったかもしれない。
KILL&DAD
劇団ベイビーベイビーベイベー
d-倉庫(東京都)
2017/04/06 (木) ~ 2017/04/10 (月)公演終了
満足度★★★
映画「レオン」(1994年)をモチーフにしたようだが…。設定は似ているところもあるが、物語の世界観はそれほど孤独・悲壮したところはない。
タイトルは父と娘の名前、その2人を中心に無法地帯における殺人請負から足を洗いたいと…。その世界では名の知れた殺し屋が、実はものすごく家庭人のようである。そのギャップが公演全体の雰囲気を中途半端にさせたかもしれない。
描く世界は「非情・無情」なのか、「愛情・友情」なのか判然としない。演出もアクションに非情さ、父・娘の関係に愛情という違いを観せようとしていた、と思う。
さて、映画「レオン」では孤児になった娘を同居させ、殺しのテクニックを教えていく。その目的は娘の家族が殺され復讐を助けるため。和ませるシーンとして、ブタのぬいぐるみが映し出される。
一方、本公演の目的とするところは…どこへ向かうのであろうか。そしてクマのぬいぐるみが出てきた時には笑えた。
(上演時間2時間45分 途中休憩10分)
ネタバレBOX
舞台セットは二階部があり高さで見せるシーンの数々。その建物は左右対称に階段を設けたレンガ作りの家屋(時に酒場内)。シンプルであるが、アクションシーンを考えると舞台中央のスペースを確保し、上下空間を空けることで躍動感を演出している。
梗概…ダッド(田村総サン)は赤い銃弾を使う腕利きの殺し屋。その彼が仕事の仲介人であるカラー(長田陽サン)”子育て”のため足を洗いたいと告げる。キル(森崎真帆サン)という10歳の娘がいる。カラーは、娘が20歳になるまでに殺し屋へ育成することを条件に認める。父親に憧れをもつ彼女は喜んでそれを受ける。しかし彼女にも思春期が訪れ…。父との距離感も微妙に変化してくる。
この娘は実子ではなく、妻の元恋人との間に生まれた子であるが、事情があって引き取って育てている。こんなところも「レオン」を連想する。
殺し屋というダークな世界観という印象は弱く、物語のスケールが小さくまとまってしまったようだ。物語の展開は分かり易く、アクションに加え情感・愛嬌に溢れたシーンもあるが、それがダークなのかヒューマンなのか。
全体としては、娯楽に徹した公演で売りは”アクション”と”気の利いた会話”であろうか。白兵(銃撃)戦を随所に挿入しテンポよく観せる。
それでも少し長いような…。
次回公演を楽しみにしております。
座長芝居Ⅳ
ネコ脱出
小劇場 楽園(東京都)
2017/04/04 (火) ~ 2017/04/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
インターネットの功罪、その罪の方はフェイク記事や憎しみ心ない言葉があふれ、政治の世界では嘘でも強く言っ(書い)た方が勝ちという危険な世の中を作り出しているかもしれない。「偽ニュース」が巧妙なのは、いくつかの事実と嘘をうまく融合すること。それぞれ関係ない「事実」の点を「嘘」という線で繋ぎ人を誣いる。
偽ニュースを拡散し、それによって翻弄された人…書店でフィギュアを盗んだ疑いで人生が転落していく。人の心の闇と社会の闇、その隠蔽しようとする問題を鋭く、そして軽妙に描いたブラックコメディ。
映画「すべての政府は嘘をつく」(2017年公開)を連想する。
(上演時間1時間30分)
ネタバレBOX
各劇団・団体の座長公演で、その表現力(丁々発止)は見事!舞台は素舞台であるが物語の状況・情景はしっかり浮かび上がる。その演技であるが、この劇場は真ん中に柱があり演出が難しいところもあるようだ。舞台上と劇場出入り口を閉じた壁を背に演技するシーンでは、同時に両方を観ることができないのが少し残念。
物語…不都合な出来事は、それ以上のゴシップを大衆に与えることによって、”出来事”が隠せるという、まさに木は森の中といったもの。最悪の隠蔽手段を面白可笑しく観せる。
梗概…失職した男(ネコ脱出主宰・高倉良文サン)は、ナックルパーク編集部にスカウトされるが、そこはダーク・ゴシップにまみれ、偽りまたは捏造する、そんなブラック企業である。彼がフィギュアを盗んでニュースになっていたころ、別の事件が起きていた。その事件を隠蔽するため国・内閣調査室が仕組んだ謀略だということが判る。国(政府)にとって不都合なニュースは、より国民に興味を惹かせるような事件を起こし隠す。この隠蔽(消す魔法)と事実・真実を暴く(出す魔法)との戦いの行方は…。
本公演は、大企業における組織的犯罪や公的機関における隠蔽工作ニュースが日々報道される? 現代社会を生きる今、「個人はどう情報を収集し分析するか」を鋭く問うているようだ。現代は非常時でもないのにデマが世界を駆け巡り、本公演にあるようなウソで人を誣いる。また、”でまかせ”発言、”つぶやき”情報が溢れ、真実より見たままの事実が大事との気分、風潮が蔓延している。そのうち何が本当のことか分からなくなる。
人はデマやウワサに惑わされやすい。その根っこにある人間の弱さに警鐘を鳴らすような公演、観応えがあった。
次回公演を楽しみにしております。
「凹⇔凸」
teamキーチェーン
遊空間がざびぃ(東京都)
2017/03/30 (木) ~ 2017/04/03 (月)公演終了
満足度★★★★
2人の作・演出家による2つの物語であるが、それを見事に融合した内容になっており、観応え十分であった。タイトルもシャレており虚実の世界を凹凸という表現を用いている。当日パンフの並びから言えば凹が虚で、凸が実であろう。その間に⇔があるが、その異空間のようなところを”往還”する訳ではない。ただ、その間にあるのが”人間の意識・行為”という事実が存在する。だから「一つの出来事」から成るのである。
(上演時間1時間30分)
ネタバレBOX
舞台はほぼ素舞台から始まる。冒頭配置されていたのは立方体のカラー椅子と同じ色の額枠(縁)が6つ。この世界は「www(world wide web)」(作・演出:Azukiサン)でパソコン画面のイメージ。もう一つの話「あれから 此れから」(作・演出:岡田奏サン)は、喫茶店という現実の世界。
「www」ではインターネット上の見知らぬ者がいろいろな悩み、相談事をしている。
一方、喫茶店は夫婦で営んでいるが、その妻の妹が亡くなって3年が経つ。その死に際に間に合わなかった父を怒り責める次女(18歳)。この次女が先のインターネットの住人であり物語を繋ぐ人物になる。困った父は偶然にも同じインターネットで相談を始める。その和解の相談に次女が協力し始めるという仮想世界ならではの滑稽さ。
この物語では、人と人の感情、それも父と娘との関係は微妙のようだ。
人間関係は面と向かって話をすると本音が言えないが、インターネット(仮想)だと相手が見えないだけに気軽に言いたいことが言える。しかし、仮想であるがゆえに混合玉石の情報、清濁、真偽さまざまな思いが渦巻く。そんな不安定な状況を確かな歩みがある喫茶店・接客業で繋ぎ偶然であるが父と娘の蟠りを氷解させていく。2人の作・演出家の異なる世界観が一つに結実する巧みさ。
ネット上の危うい社会性も垣間見えるが、それよりもヒューマン性を選択したようだ。
1つ気になるのが年齢設定の違和感。喫茶店を営んでいるのが次女の伯母・朱美(Azukiサン)にあたるが、見た目も若い。何よりも長女・琴美(夕貴羽サン)が28歳という台詞があり、そう考えるとこの伯母は50歳前後と推定。その伯母がこれから不妊治療を始めると…厳しい現実があるな~。
次回公演を楽しみにしております。
「泣いた紫の花」「43回混ぜても灰色」【ご来場いただきありがとうございました!】
劇団えのぐ
高田馬場ラビネスト(東京都)
2017/03/29 (水) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
【泣いた紫の花】
観劇した4月は別れと出会いの季節。チラシの「もう一度、あなたに会いたい」というフレーズがピッタリの公演であった。この劇団のチラシはタイトルに合わせた色彩で漫画風に描かれているが、本公演は「紫」と「灰」の2色をうまく使い分けている。さらに「泣いた紫の花」は物語に出てくる原稿用紙が涙で滲んだ絵柄で印象的である。
誰にでも訪れる大切な人との別れを決して悲観的な視点ではなく、受け止めながら思い出を胸に前向きに生きていく家族の姿、そんな愛情物語である。
さて、物語の展開としては理解しつつも感動という感情の扉が全開にならないのが少し残念な…。
(上演時間1時間40分)
ネタバレBOX
舞台セットは居間・渡り廊下、中庭がある一軒家。庭(上手側)には紫陽花が咲いている。居間の中央にテーブル、上手側にラジカセや父親の位牌等がある。下手側に低収納棚、電話子機がある。
ある年の6月下旬から7月1日迄、その一週間程で家族の思い遣りを再認識するような物語。目の前(傍)にいる自分の大切な人をもっと愛おしみたくなる、そして自分自身の人生を見つめ直す。その新たな思いを胸に旅立ちを後押しするようだ。
梗概…篠崎家の4人の姉・兄・妹・弟とその周囲の人々の日常を切り取った物語。父は亡く母(登場しない)は単身赴任のキャリアウーマンといった感じである。些細なことで言い争いをしているが基本的に仲が良い。兄・律(松下勇サン)は小説家であり著作が出版される7月1日を目前に事故死する。同じ1日は大好きな弟の17歳の誕生日でもある。その伝えたいこと…その思念が強かったのだろうか。現世に未練が残りその姿が弟だけに見える。
気になったのは、母が息子・律の葬儀後1週間もしないうちに仕事先へ行ってしまうこと。確かに紫陽花の花言葉を引用して家族への想いを描き涙を誘うが、その感情、感覚にしっくりこなかった。子が生まれ寝返り、掴り立ちし、少し前に流行った「保育園落ちた、日本死ね!」にある保育園・幼稚園へ入園する。初めての親離れ、子離れは旅立ちと言えるだろう。親・子ともに嬉しい様な不安な様な複雑な感情。親の感情は子の成長過程にある、喜び楽しみや難しさや苦しさの中にあると思う。
そんな思いをめぐらせると、この母親の行動があまりにアッサリしているようで釈然としない。もう少し母親の事情、喪失感を上回る使命感のようなもの(勝手な設定→海外の紛争地域または国内僻地の医療など留守が気になる等)が解ると…。
次回公演を楽しみにしております。
あるいは友をつどいて
ハツビロコウ
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2017/03/28 (火) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
当事者、関係者、第三(傍観)者という視点がいつの間にか緊密になって行く。その視点が目まぐるしく変化させることで、物語を重層的に観せる。室内劇であるにも関わらず、当時の社会状況・情勢が浮かび上がってくる秀作。
ネタバレBOX
舞台セットは、中央にテーブル・椅子というシンプルな作り。それにもかかわらず室内という限定空間に「時間」と「状況」が移り変わる様をしっかり見せる。一方、時として自己内面と対話し物語を深化させる。その観せ方はドキュメンタリー要素(時間経過)を取り入れつつ、全体をフィクションとして包み貫く。
当時の日本社会に対する不満、鬱積が爆破行為という蛮行(手段)を実行させた。犯行グループの主義・主張を誇示するような行為は、多くの死傷者を出し、経済街の中心を恐怖に陥れた。使命に従った先にある「罪と罰」という大きな代償、その表現は「手記(手紙)」というシンプルな媒体で著す。
登場人物は6人…事件が起きた時代、現在という時間軸を往還する。事件を起こした背景、その時代の閉塞的な状況の打破する場面、現代という視座から当時を俯瞰した分析、その醒めた場面が対照的。しかし現在の自分が当時の人との繋がりを知らされた時のザワザワした気持の変化。時代は常に繋がっており、そこで生きる人々も何らかの関係性があるかもしれないと覚悟させられる。外的面(社会)と内的面(人間)を絶妙な構成で描いた力作。また沈鬱した雰囲気で時代背景や追い詰められた人を表現する演出も見事。
役者は、それぞれのキャラクターを立ち上げ、その佇まいは重厚感に溢れ、物語の雰囲気にマッチしていた。少人数だからこそ関係が緊密さを持たせ易く、話の中にグイグイと引っ張り込まれる。もちろん役者の演技力、バランスの良さがそう観せるのである。さらにプラットホームの喧騒、駅アナウンスなどの効果音、薄暗い照明による閉塞感などの照明効果も良かった。
国際テロの脅威が世界中に広がる中で「事件を過去の遺物と考えてはならない」と。
次回公演も楽しみにしております。
『上野パンダ島ビキニーズ』
ネルケプランニング
クラブeX(東京都)
2017/03/30 (木) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
無人島に漂着した個性豊かな7人の少女が、時に反目し助け合いながら成長していく物語。映画「十五少女漂流記」(1992年吉田健 監督、喜多郎 企画・音楽担当)やジュール・ベルヌの「二年間の休暇(または十五少年漂流記)」を連想する。
公演は2部構成で、第1部は劇、第2部は歌になっており、アイドルのイベントを兼ねたような華やかさが魅力であろう。
タイトル通り女性が始終水着姿で躍動する姿は、魅惑的であり清々しくもあった。
第1部:1時間45分、第2部:15分)
ネタバレBOX
舞台を半円形に囲んだ客席。正面上部映像スクリーン、両側に熱帯樹のような木々が生い茂る。メインの盆舞台を所狭しと動き回り、時に歌う。
少女たちは、アイドル「TAKURU」のファンとして知り合ったが、その性格は個性豊か。
そのメンバー…地味だが好きなものへの愛は貪欲な 暁島朱里(西川美咲サン)、悪気なく人を見下すプライド高きお嬢様 紫岡スミレ(矢萩春菜サン)、一見ヤンキーだが実は寂しがりの 柿次橙子(小瀬田麻由)サン、大家族の長女でギャルの 雛菊りん(水原ゆきサン)、特技は黒魔術、無口で冷酷な 蒼井雫久(石原千尋サン)、手先と舌先が器用なお色気(レズビアン)桃山つき乃(松岡里英サン)、超スーパーネガティブガールの 金平もえぎ(小田切瑠衣)サンという面々。
個性派だらけの彼女たちが無人島で反目し和解し成長していく姿…。無人島と思われしところに中年の男(野添義弘サン)、さらには猿ボス(小野寺ずるサン)が登場する。そして何故か監視カメラのようなものが…。
キャスト7人は、それぞれの性格・立場をしっかり体現しており、個性豊かな少女たちが織り成す”思い”と”行動”に成長…という物語が面白く見られる。また中年男の少女たちとの絡みが小気味良いアクセントになっている。また猿役の小野寺サンの少し悲哀のある表情が印象的。
演出として、個人ごとのキャラを丁寧に描き人物像を立ち上げる。一方、利便性に溢れた生活から何も無い現実を突きつけられ、戸惑いながらも知恵を絞り、協力するという関係を築いていく過程が可愛らしくも力強い。そこに生きて行く、友情と命の大切さを見るようだ。
次回公演を楽しみにしております。