タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

九十九ジャンクション

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

見事なまでの不穏・嫌悪という負の感情を抱かせる怪作。それは単にヘイト・クライム(憎悪犯罪)でないところに真の怖さを覚える。当日パンフには、3組の家族が紹介されているが、その表記は夫1.2.3、妻1.2.3などという数字であるが、劇中ではしっかり姓・名で呼んでいる。この長いタイトルの種明かしになるため、敢えて形而上の表記にしているところに作者(土屋理敬氏)または演出家(後藤彩乃女史)のしたたかさを感じる。
(上演時間1時間35分)

ネタバレBOX

物語は、ホラーでもサスペンスとも少し違うし、その描き方もスプラッターでもバイオレンスでもない。別人として生きる男、その家族(男の弟)の苦悩。過去を隠して生き続けること、その血脈への慄きが切ない。また若い女(後妻)の心の奥底にある狂気が静かに牙をむく。それは決して社会や家族、周囲の人達に対する怒りや不条理に対する抑制された感情から生まれたものではない。その不可解さは「解らない」という台詞の凝縮されている。

舞台美術は、部屋の一室(リビング)で、3組の家族の住空間を同じに見立てつつも、その異空間をしっかり演出している。フローリング、そこにハの字型に3壁面を作り、それぞれの間を出入り口としてその先に他の空間があることを想像させる。その壁前に食器棚、飾り棚(上には電話兼FAX)が置かれている。上手側にソファー、中央にダイニング・テーブル、椅子がある。3組の家族は、ハウスクリーニングを営む家族1、同じマンションに住む2組の家族2・3(息子同士が中学の同級生)。そして家族1に住み込みで働いている男の弟が、家族2の夫という関係で物語は展開して行く。
このハウスクリーニング店と分譲マンションの2つの場所で流れる時間と運命…知ってしまった衝撃の事実。これから先の人生をどう乗り切っていくのか興味を惹く。

以前マンションで猫の惨殺事件が起きている。そして家族2の部屋ベランダに同じように猫の屍骸が...。それを契機にハウスクリーニング店で働く男の過去、家族2の夫の苦悩が露になり、夫々の家族崩壊が始まる。意外な人物が犯人でその動機が不可解。それだけに不気味で後味が悪いが、逆に言えばそれだけ脚本、演出そして演技が巧みということだろう。

なお、少しネタバレになるが異空間であるがハウスクリーニングの話とマンションでの話は時間軸が1年ずれている。またタイトルとサブタイトルの名字は犯人を示唆している、という凝らしたもの。

次回公演を楽しみにしております。
ジャーニー

ジャーニー

AnK

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★

自己の内面と対話、または兄弟の会話を通して作品への深化を高めようと試みた異色作のようだ。
さて、20世紀ソ連で驚異的な観客を動員した映画「不思議惑星キン・ザ・ザ」(邦題 1986年公開)…地球は遠かったと。その映画は脱力系SFであったが、本公演は脚本・演出の山内晶女史が「星の王子さま」をサンプリングしたあてもない旅の物語である。舞台美術は一見、雑然、雑多な印象であるが、反対に確固たるテーマを掲げた寓話を意識した作品のようだ。もっとも「星の王子さま」そのものが寓話。
(上演時間1時間35分)

ネタバレBOX

舞台セットは、少し高い段差のある長変形六角型を中央に設え、その面は格子模様。その周りに木片、木脚立、綱などが置かれ雑然としている。
「星の王子さま」をサンプリングした物語であることは先に書いたが、サンプリングの能書は省略し、原作の「伝承」をセカンドモチーフにしたという。

本公演では、星の王子さまに出てくるサハラ砂漠が鳥取砂丘に変わり、そのロードムービーならぬロードライブは宇宙の星々を巡る壮大なもの。自星「温泉と音楽」の旅立ち、暗黒星、インドカレー、仮面舞踏…全12星を訪ずれるというもの。目的星は地球であるが、その途中にあるいくつかの星はその特徴を説明するに止まる(例えば「クズ星」「水の星」「岩の星」など)。そしてその星での体験を繰り返す、または回想するような演出はクドイように思う。それよりも表現を省略した星々の体験談を観てみたかった。
ちなみに星の王子さまでも7番目が地球だったと思う。

地球人と異星人の交流・交感を通して人生譚を描き出す。異星人の兄弟は、真上で光っている星(地球)を目指して旅が始まる。先にも書いたが5番目くらいまでの星での体験が描かれているがそれ以降は台詞での説明のみ。それがどうも中途半端なようで…。

寓話性は、環境問題が透けて見える(大切なものは目に見えない)。もっとも公演は、サハラ砂漠→鳥取砂丘→大都会・東京砂漠を連想させるような、その乾き切った夢(ドライ・ドリーム)を潤す瑞々しい感性が感じられるようなもの。その一種独特の表現であるが、しっかりとした主張が見て取れるところに”力”を感じる。この劇団公演は、前回と今回だけであるが、どちらも伝えたい主張が明確なところが自分には好み。
しかし、その表層的な観せ方が繰り返しと抽象的になったことから分かり難い印象を持ったのが残念。
もう一つが死生観のような台詞…死んだら忘れられて寂しい。そこで伝承…生きていたことは子(ヨタカ)、孫(ミタカ)、曾孫(コタカ)へと言い伝えられる。

次回公演を楽しみにしております、と言い伝えます。
リバース、リバース、リバース!~Reverse,Rivers,Rebirth!~

リバース、リバース、リバース!~Reverse,Rivers,Rebirth!~

ピヨピヨレボリューション

虎ノ門ギャラリー(東京都)

2017/02/23 (木) ~ 2017/02/28 (火)公演終了

満足度★★★★

本公演は、「ピヨラボ」という新コンテンツの公演という。ピヨラボの真骨頂である「ライブstyle演劇」を封印し、外部から脚本家や演出家を招き、新しい風を吹かせることにより、劇団とメンバーのレベルアップを図る実験的な公演、ということ。その実験的な試みは脚本・演出はもちろん面白かったが、それ以上に役者陣の演技力が見事であった。

さて、この公演劇場は、虎ノ門ギャラリーという本来は劇場スペースではないであろう場所だが、そこに簡単ではあるが物語の情景が浮かび上がるような工夫が…。少しオカルト的な気もするが、そこには生・死という人の究極な運命(さだめ)が描かれている。
(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

他愛無い意地悪、冗談が招いた悲劇。12年前も小学校6年の時、自分・悠(東理沙サン)の幼馴染を好きになった女の子・逸香(あずさ サン)に腹を立て、逆なで川そばの公園ベンチに呼び出した。しかし、天候が急変し豪雨になり川が氾濫し逸香をのみ込んだ。
あれから12年、悠は東京の大学に通学している。久しぶりの帰省した時、死んだはずの逸香を見かけパニックになる。逸香に瓜二つだが別人、しかし意識下には逸香が宿っているという不思議現象。そしてそれぞれの人が12年前へ邂逅するが…。

舞台は白基調で少し傾斜している。客席は三面ひな壇席。舞台正面はガラス、外には木立があり情緒を漂わせている。過去の豪雨シーンにはガラスに雨水、木立ちが揺れるという臨場感を演出する。
何気ない意地悪が過ちになり、心の奥底に閉じ込めていた後悔と悲しみの感情が溢れ出てくる。12年間の苦しみ、これから先の人生もその悲しい後悔に苛まれながら生きて行かなければならない。そんな切ない思い出...何気ない言葉、仕草が人を傷つけているかもしれない。そんな人を思いやることの大切さを、少し不思議オカルト的に観(魅)せた珠玉作。

今後の公演も楽しみにしております。
もれなく漏れて

もれなく漏れて

ぬいぐるみハンター

OFF OFFシアター(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/28 (火)公演終了

満足度★★★★

常識と非常識では言い過ぎかもしれないが、何が世の常識なのかを問うような鋭い指摘にハッとさせられる。物語の大半は世間では常識と思われていること、その知っている人と知らない人のかみ合わない会話が面白可笑しく描かれる。その観せ方は会話(内容は重量級だが、喋りは軽妙)中心で、動作(格好)は笑いを誘う程度のもの。

しかしラストは、しっかり物語としてオチがある見事な展開である。

ネタバレBOX

舞台セットは、上手側に住んでいる家屋のようなものが作られている。中央は幕に山奥をイメージさせる絵(子供が描いたような山・雲・空)が描かれているだけ。その幕繋ぎ部分から出入りすることで、山奥(非日常)と外界(日常)を区別している。

物語は、山奥で暮らす少女・満天は大好きな爺さん(実は叔父さん)、山羊飼いの少年、相棒の犬(のような生き物)と共に穏やかな日常を送っていた。
純真無垢に育った満天は、この世界の仕組みを知らない。その満天の体調が優れない。治療のために山を降りようと提案する周囲だったが満天はそれを激しく拒む。已む無く治療のために街から医者がやって来たが、その非現実的な日常に驚き...。

不便だが、そこには何か大事な忘れ物を思い出させてくれるような、懐かしさ優しさがある公演。都会暮らしに夢・希望を求め、一方で現実の生活に先が見えにくくなった場所で彷徨う現代人への清涼剤のようにも思える。純真無垢であるがゆえに、逆にリアリストでロマンチズムを紡ぐ。その少女・満天の目を通して見た世間は”スラッジ”かもしれない。

全体的に少女の記憶に幽かな光を当てるような繊細さも感じられたが、ラストは殺人事件という衝撃的な現実が遮ってくるという展開に驚かされる。その伏線と思える 相棒の犬(刑事の隠語=犬)を早い段階で登場させている。

自由な知的遊戯を展開する印象を与えているが、純粋・単純な疑問・質問という言葉(セリフ)を発するだけのもの。そこには難しい問題が潜み、複雑な思考を要するようだ。言葉に込められた内容、その肯定・否定の混乱するような議論が高尚な哲学のようにも...。現実・可能・論理世界という異なる視点を整理して観るようだが、場面は役者の演技力もあって可笑味をもって観られる。ちなみに満天の変顔を含め、その表情の豊かなことが面白さを倍加させているようだ。

次回公演を楽しみにしております。
オルゴール

オルゴール

劇団Birth

上野ストアハウス(東京都)

2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

大学入学から15年間にわたる友情と愛情を描いた青春群像劇。1980年代にTVで流行した元祖トレンディドラマ「男女7人夏(秋)物語」を連想したが、こちらの公演の場面は冬(12月)が多いことから”冬物語”といったところ。一人ひとりの生い立ち、性格などが描き込まれるが、それは自分の周囲にいる人々、その等身大の人物像に親近感を持たせ感情移入がしやすい。
【メロディ チーム】

ネタバレBOX

舞台セットは素舞台に近く、描かれる内容と異なり演技力による”力”公演という印象である。
梗概は、売れっ子漫画家の戸上真希。彼女の心の中には、いつも“智美”がいる15年前、真希と智美は大学のキャンパスで出会う。天真爛漫な真希に対し、内気で気弱な智美。そんな二人が、旅を目的としたサークル「旅倶楽部」を発足させ7人が集まった。苦楽を共に時間を過ごすうち、真の友へ。

いつまでも続くと思っていた学生時代だが、現実は容赦なく時を刻む。就職活動、妊娠・退学…それぞれの夢へ向かう。卒業後、現実の時間に流される日々が始まる。“今”を生きることに汲々とし出していた。そんな数年後のある日、突然智美から「皆に会いたい」という手紙が。満を持して旅クラ同窓会決定した。その頃、智美は…。

人間関係を丁寧に描きつつ、どこにでもいる普通の男・女が抱える不安、悩み、喜びを緊張感溢れ、抒情豊かに謳い上げた物語。目の前にいる自分の大切な人々をもっと愛おしみたくなる。何よりも二度とこない人生を悔いなく生きていく、そんな勇気付してくれる公演であった。

役者陣は総じて若い。その演技は、若い大学生時代に似合う瑞々しさ、卒業後の若さとは距離が出てきた人物を繊細な演技力で魅了する。

次回公演を楽しみにしております。
全段通し 仮名手本忠臣蔵

全段通し 仮名手本忠臣蔵

遊戯空間

シアターX(東京都)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

ジグソーパズルのように11個(段)のピースをはめ込むことによって物語全体(主筋)が観えてくる。もっとも一つ一つのピースが大きいこともあり、その一片(脇筋)だけでも楽しめる内容になっている。
この仮名手本忠臣蔵は江戸・元禄14年に起きた赤穂事件の史実を基に、それから47年後に注意しながら著されたもの。当時は幕府批判になることから、事件の場所、人物名などを変えて上演している。本公演はその魅力を余すことなく全段を観せる。
(上演時間3時間 途中休憩10分)

ネタバレBOX

舞台セットは、可動式(キャスター付)衝立6枚を自在に動かし、その並びや色合い(衝立に単色の布を掛け)を変えることで情景・状況を描き出す。また小物(扇子など)は、脇差、文などをイメージさせるなど、状況をわかり易くしている。

この道具に対して、衣装はその状況下にある登場人物は皆同じような物を着ている。赤穂浪士という装束による「制服時代劇」は、その制服に象徴される帰属意識こそ、和合と結束を尊ぶ日本人の心をつかむ。また敗者(弱き者)を美化することを好む日本社会特有の精神的傾向を最も顕著に表している物語。その外見ではなく、役者の体現を通して人物像を表現している。(浄瑠璃)形式なのか、その歩き方や所作はある型のように思える。しかし伝統的な芸能を模しているが、そこには自由度、創意工夫を凝らした面白さを観ることが出来る。

一段ごとは個々の人物状況、例えば早野勘平・お軽という浪士とその女の挿話という視点で観て取れるが、全段を通して観ると、そこには当時の武家社会という視座に変わってくる。至誠を全うする死生観、そこにある武家社会の理不尽さが江戸町民の好奇によって支えられている。

大序から討入りまで、エピソードを割愛することなく全ての段を網羅して主要人物を漏らさず登場させた、という。浅草の舞台ではリーディングであったが、本公演は”聴く”という魅力に”観る”という視覚の刺激を加え、より物語を分かり易くしていた。もっとも視覚に訴えることは、その観たことが全てで、物語の情景なりを想像するという楽しみは少なくなるが...。それでも初めて「仮名手本忠臣蔵」を堪能するのであれば、本公演の試みは素晴らしいと思う。

次回公演を楽しみにしております。
オペレッタ「天国と地獄」

オペレッタ「天国と地獄」

東京オペレッタ劇場

内幸町ホール(東京都)

2017/02/17 (金) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

オペレッタであるが、その音楽の素晴らしさに加え、(現代)演劇の物語性を少しコミカルにしっかり観せる。その絶妙なバランスが巧み。天国または地獄の世界観であるが、そこにいる神々などは人間よりも自由奔放な行いをしている。
また日本の郷土色豊かで、秋田県の”だまこ鍋”というのが出てくるのには笑った。
(上演時間2時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは、舞台奥に稲穂、客席側の上手には丸テーブルに籐椅子。物語はラジオ局の新任プロデューサー・世論(里中トヨコ サン)がこの音楽家夫婦を取材するところから始まる。この取材の成否がプロデューサーの今後の仕事に影響する。このプロデューサーをストリーテラーに仕立て、劇中劇のようにして描く。2幕目は、上部から張りぼての大きな仮面が降りてくる、業火の後景、何故かマッタリした鍋光景、フランス国旗(作曲:オッフェンバックが第一回パリ万博で賑わうシャンゼリゼ通りにオペラハウスを作り、オペレッタというジャンルを始めたことに関係か)に地獄行きと書かれたものが出てくる。この品々に脈絡があるのかどうか、その雑然とした演出が、神々の人間らしい振る舞い、自由奔放さを表現していたようだ。

1幕目
バイオリニストのオルフェ(小貫岩夫サン)と妻のユリディス(針生美智子サン)は倦怠期、お互い飽き飽きして妻は浮気をしている。オルフェは、ユリディスの恋人で羊飼いのアリステ=実は地獄の王ブリュトン(島田道生サン)を懲らしめようと罠を仕掛けるが...。
2幕目
地獄の王に連れ去られてしまう妻ユリディスに、うるさい妻が消えてくれて自由になったと喜ぶ夫オルフェ。しかし、それを「世論」が許さない。
「世論」に責められ渋々あの世へ妻を迎えに出かけるオルフェだが、そこには人間界以上に人間らしい神・ジュピター(小栗純一サン)がいた。神々とともに妻探しの“地獄めぐり”がはじまる。

下手側にはピアノ、バイオリンの演奏者がおり情景、状況に合わせて見事な演奏を行う。その生演奏が物語の情感を豊かにする。

次回公演を楽しみにしております。
「シン・浅草ロミオ&ジュリエッタ」

「シン・浅草ロミオ&ジュリエッタ」

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2017/02/18 (土) ~ 2017/02/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

タイトルからシェイクスピア「ロミオとジュリエット」(邦題)を連想するのは容易い。原作ではジュリエットは13歳、ロミオは18歳で、国た時代は違うがティーンエイジの恋愛は拙いようで、ラストは死ぬところまで振り切っていく。永遠のテーマ”愛と死”にしっぽりと浸れる公演である。
この「シン・浅草ロミオとジュリエッタ」は、舞台を日本・江戸時代(元禄14年頃」の浅草界隈、吉原遊郭へ案内される。こちらはシェイクスピア劇と違って大人の妖艶な変容が観てとれる。
(上演時間2時間20分 途中休憩10分)

ネタバレBOX

舞台セットは、日本の伝統的建築様式・唐破風(からはふ)が中央にある館出入り口、横塀はこの劇団の定番造作。掲げられた提灯が風情を醸し出す。

『ロミオとジュリエット』は恋愛悲劇であるが、若い恋人たちが社会によって課された障壁をはねのけて愛を成就させようとする話は、むしろ伝統的な恋愛喜劇に近いものである。しかし全体的に悲劇と言うよりは、敢えて喜劇的に見える表現、ジャンルの境界を曖昧にするようにして、別の魅力付けをしていたように思う。

原作の家同士の確執(憎悪)に対し、吉原の亡八者、六道の外れ、川原者に一目置かれている犬神弾左衛門の一人娘・樹里恵(古野あきほサン)と武士、それも当時最も注目されていた赤穂浪士の一人・毛利小平太(丸山正吾サン)という身分違いの悲恋。死出の旅路が運命(さだめ)の男との添い遂げられない仲。そう思えば思うほど短くも儚い恋に燃える男女の仲がよく表現されていた。内なる情念と外の肢体・姿態を見事に演出し体現させていた。そのダイナミックかつ壮麗な演出が見事であった。

物語の底流には武家社会における理不尽、不条理、さらには階級社会という大きな問題が横たわっているが、それでも中心は男女の恋物語。時代劇にすることで情緒が漂う。現代劇にすると価値観が多様化していることもあり、共有の倫理観を持ちにくいし、無言により深く伝わるという関係性が成りたたないような気がする。しかし時代劇は、顔を合わせただけで情感が漂う。その男女の機微が激しい動きの中にもしっかり観てとれる。この劇団ならではの少しエロチックな場面さえ叙情に浸れる秀作。

この公演は、恋愛という普遍的なテーマ、その人間ドラマを固くならず観て楽しむ。そんな演技・ダンスパフォーマンスが魅力の一つ。外見的には異様な化粧、威容な衣装などビジュアル面も見事で、観客を楽しませることに長けている。和と洋、時代を固有しないような混在した衣装を通して明色が見えてくる。登場人物の個性が身に付けたものによって一段と強調されてくる。
大勢のキャストが登場するが、それぞれ役割がありキャラクターも立ち上げていた。

次回公演を楽しみにしております。
凍てつく夜にはライムを温め

凍てつく夜にはライムを温め

サンハロンシアター

小劇場 楽園(東京都)

2017/02/14 (火) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

初日ソワレを観劇。寒風が吹き、凍てつくような夜にライムならぬライブ(公演)で心が温められた。物語は、地を這う虫の目から見た、都会というジャングルを生き抜くことの難しさを思わせるもの。
物語は面白い。しかしシチュエーションが関係していると思うが、気になるところが…。そちらの方の印象が強くなったのが残念。
(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

梗概…街の片隅に集まり惰眠をむさぼるホームレス。そのメンバーの素性は、元「ながし」の演歌歌手・永ちゃん(よこやまよしひろサン)、「祭り太鼓」の花形・ギスやん(ナガセケイ サン)、風俗通いのイカサマ野郎・フー太郎(内藤トモヤサン)、空き缶拾いの文字中毒・オーさん(田野良樹サン)、知的障害者のトオル(垣内あきらサン)、存在感ゼロの京都老舗料亭の三男坊・ガッソ(山岡弘征サン)ということがナレーションで紹介されるが、その真偽は分からない。いずれにしても何らかの才能・特技があり、それを活かして今一度夢を見る。
その方法が既存には無いようなラップをyoutubeで配信すること。伝説のyoutuberになること。帰る家を捨てた中年男どもの悲喜交々。その男たちに80歳代の魅力的な婆さま2人が絡み、夢が実現出来そうであったが…。

公演は、地を這うような人々(ホームレス)の目から見た政治や経済に対する不平・不満を吐き散らしながら、何とか生きている。そんな状況下でも夢を失わない。その過程で昔とった杵柄も活きてくるが、現実はそんなに甘くない。実に卑小な人間の姿が見えるが、その心底にある人間らしさのようなものに共感を覚える。

気になるのが、1990年代の新宿西口にあったホームレスの人々の住む ダンボールが強制撤去されたことを思い出す。公演では2020年の東京オリンピックに向けてかかる費用が豆腐を数えるように一丁二丁(兆)と膨れ上がってくるが、足元を見れば生活困窮者がいるのも事実。外観・風紀を建前とした都会のホームレス問題、それをナレーションによる説明だけでは弱い。上演時間からすればもう少し膨らませることが出来たのではないか。

もう1つは、舞台小道具が新聞紙の張りぼてだ。味わいはある。場面に応じて配置を変えるなど状況説明も丁寧であった。しかし、ホームレスの描きだとしても、群衆イメージがダンボールを人型に刳り貫いただけというのはどうだろう。人間が薄っぺらく見えてしまう気がする。

ちなみに、ライムはラップ”韻(rhyme)"のことを指すらしい。
次回公演を楽しみにしております。
帝都天籟

帝都天籟

劇団熱点

千本桜ホール(東京都)

2017/02/11 (土) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★

明治20年代の帝都にある陸軍御用達の館…ここに男3人が集まり1人の女性を巡っての回想劇といったところ。説明によれば「陶酔と崇拝、高揚と快楽、そして惨劇。誰が最も彼女を愛しているのか。」というサスペンス風な仕上げ方になっている。
もっとも男3人は、道化・兵士・狂人というイメージを持ち、それらの人物を投影して観る女性像が鮮明にならなかったのが残念である。

本公演は、この劇団(慶応義塾大学の卒業生及び現役生の有志団体)の旗揚げ公演である。脚本は手堅く、演出は巧み、演技も安定・バランスも良い、という好印象であるが、中心に入(要)るはずの愛されている女性が暈けてしまったように思う。その意味で物語の世界観自体も曖昧になり、テーマとして据えた不条理が観えてこなかったのが残念。それでも力強さはあり、今後の公演が楽しみである。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは、上手側に背凭れが段通様の椅子2脚とミニテーブル。下手側に同じような段通様のソファーが置かれ、瀟洒な居間という感じである。

梗概…館が焼失し遺体が見つかった。そこでの出来事を記事にするため、帝国編集記者・雨森咲子(井田愛実子サン)が生き残って収監されている男・四阿喜一(宇都宮志保サン)に面会に来て尋ねるシーンから始まる。先に記した1人の女を介した3人の男による回想。そこで描かれる危うい人間関係、サスペンス風で一触即発の室内劇はスリリングであった。何より個人の回想が、国家的な思惑へ変質し、たたみ掛けるようなテンポが自分には心地良かった。

3人の男は、劇作家=道化(ストーリーテラー役でもあるような)、陸軍大佐=軍人、商人=狂人という役回りのようで、それぞれが女との出会い関わりを話し出す。そこには色々な形の愛情が表現される。道化は、新時代を演劇に準(なぞら)えた視点、軍人は戦争における女(軍)神として崇拝する視点、狂人は生活と自我(アヘン中毒)の破綻という視点から見つめている。端的に言えば、女は精・神・肉の象徴のようである。そこに「近代国家」へのアイロニーが見えてくる。一方、女の視点はどこにあるのか。帝都の男たちの視座が強調されているが、清国の女という視座は皆無に等しい。出来れば男たちの視点を通じて女の存在、その役目の理不尽さ、国家に翻弄される哀しさが見えると良かった。

冒頭、中盤で発せられる記者の台詞「ストレッチでもしませんか?」は観客に向かって笑いを誘うもの。手堅いような演出にも遊び心が窺える。
演技も熱演であり盛り上げ方も上手く、当日パンフに主宰の松岡大貴氏が「あなたに、ステキな騙まし討ちがありますようー。」とあった。そのラストは幕引きに相応しく印象的なもの。

繰り返しになるが、清国スパイという役割を担わされた花琳・ホアリン(三井賀央里サン)の悲哀と理不尽さ、その大いなる不条理が帝都(日本)と清国の両方の視座から観えたならば…その意味で勿体無いと思える公演であった。
なお、大佐が花琳をミューズに見立てて、平和への希求を激白する、そのシーンはさながら歌舞伎の観得を切り主張を強調したかったと思うが、自分にはあざといと思えるような…。

最後に明治時代という時代状況があまり感じられないこと、それは衣装なども影響している。雰囲気を出そうと努めているが、何となく中途半端。物語に訴求する力があれば、そんなことは卑小なことだが…。

次回公演を楽しみにしております。
探偵物語1980

探偵物語1980

劇団東京ドラマハウス

明石スタジオ(東京都)

2017/02/09 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

タイトルと同じ、1980年の某TV局の人気番組「探偵物語(主演:松田優作)」、また少し後になるが映画でも「探偵物語(薬師丸ひろ子、松田優作)」も公開されているが、どちらとも違う、別の意味で観応えがあった。

「探偵物語」というと謎解きがメインのように思っていた。探偵小説・推理小説の類は必ず名探偵が登場し難事件を解決する。その謎解きの過程が面白いのであるが、本公演、表層的には探偵業のうち、案外、地道な活動を描いている。

(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台セットは、木枠の立方体を横にし可動させる。レンガ模が描かれた箱数個。それらを場面に応じて動かし、ベルトコンベアー、椅子、テーブル等に見立てる。その組み合わせによって場面の状況が瞬時に分かり、物語に入り込める。親切で丁寧な展開であり物語に集中できるのが嬉しい。

物語は1980年から現在(2017年)までを描くが、中心は1980年の1年間のみ。父の懇願に応じ大学へ入学したが、その勉学に興味が持てず中退した男が主人公。新聞の求人欄にあった”調査”の文字で入所したのが磯村調査事務所。その実態は探偵業である。仕事には浮気”調査”、企業”調査”など色々な”調査”があった。この物語で主人公が行うのは内偵”調査”というもの。
物語は、立花製菓という中小企業というよりは零細企業に近い工場で労働組合結成の動きがあり、それを阻止してほしいという依頼である。もちろん労働組合結成は労働者の権利であるが、そこには何らかの意図的なものが感じられ…。この件、漫画「課長 島耕作」のある場面(海外出向時の企業)を思い出す。
物語は埼玉県を舞台にしているが、この製菓工場の従業員が紹介する蒲田(大田区)など東京の城南地区は中小企業・零細企業が多くあり、日本経済を支えているという社会性の描き。

さて、内偵が仕事であったが、その実、主人公の”心の内偵”のようにも思える展開である。冒頭、この物語の契機になった(ドイツ)ノンフィクションとしての説明…母を思い、今後の生活に悲観した少年がジャングルジムで縊死したと。その時の心の在りようは子供だったのか、大人だったのかという問い掛け。本公演は37年の歳月をかけて主人公が最後に答える。心の成長は、子供から大人になる歳月に伴うようだ。その時期は明確に現れるのではなく、人それぞれ違う。

探偵業は、都会(ジャングル)という光景が似合うような気がする。見知らぬ人間同士が身近に存在し接触し合う。地方の共同体では住民の素性が知られ過ぎている。そこでの事件、動機は怨恨・金銭・痴情のもつれなど比較的簡単に特定できる。しかし、都市では人間関係が希薄な分、事件も不可解になる。探偵業の特有な状況が、この物語では潜入先の人との交流を通した人間ドラマになっている。その意味で単なる謎解きドラマより社会性があり、人間味に溢れる観応えのある公演であった。

次回公演を楽しみにしております。
CABACRAT

CABACRAT

junkiesista×junkiebros.

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2017/02/09 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

キャバクラという男のオアシスとも言える場所で働く女性の夢か現か幻か…この数奇な物語は、1人の男と6人の個性あふれる女性が織り成す甘美で切ない話である。この物語の情景をしっかり観せてくれる豪華な舞台美術。
本公演は9年前の再演ということであるが、とても魅力ある舞台であった。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

「CBGKシブゲキ」というこの公演に相応しい様な豪華感ある劇場。客席上部にはミラーボール、舞台上手奥に少し高くなったママの部屋らしきスペース。客席側が店内の応接セットがおかれ、下手が店の出入り口にあたる。その横に「招き猫」の置物。またその横は階段になっており2階部に別スペースが設けられている。舞台中央には、店看板”KIT CAT”が掲げられているが、少し斜めになっている。客足が遠のき閑古鳥が鳴くような斜陽状況をイメージさせる。

全体的に真紅というよりは、深紅という豪華にして重厚という雰囲気が漂う。その美しく幻想的な色調に彩られた店内。一方、そこで働く女性たちは、辛苦ある思いを心の奥に封じ込め、何事も無いかのように振舞う、その透明感が対比を成しているようだ。

物語はママ(林希サン)の亡きオーナー(大村俊介サン)への想いを中心に、店キャスト、隣店(珍獣クラブ?)の元同僚が巻き起こすドタバタ喜劇。しかし、底流には、一人ひとりの女性の”心の対話の物語”が挿入され、その観(魅)せるパフォーマンスもダンス、歌、またはその組み合わせというサービス。本当にこの店に遊びに来た時のショーを観ているような錯覚になる。もっともダンスは、シャープさというよりは面白さを意識した緩いものであったが。出来れば、スピード感あるキレキレなダンスとスローダンスという緩急、そのメリハリがあればもっと楽しめたと思う。
店もそこで働くキャストも往年のような勢いはないようだが、古く感じるかもしれないが、別の意味で新鮮…大事な忘れ物を思い出させてくれる、そんな初心を…。

さて、小道具というよりは演出上重要なのが、招き猫。この猫が落ちて割れたことを契機に、オーナーが事故死、店が流行らなくなった等、キャストの思いはそこに集中している。その招き猫の破片が見つからず、前足部分に穴が開いている。そんな時、地方からキャバクラ勤めを望み現れた女性(よねこ)…自分では”寄猫”と思っていたが、その心を見透かされたかのように、ナレーションで”米子”という名であることが紹介された。それでも八十八の末広がり。この店、いやこの団体junkieのミュージカルという枠を飛び越えまくった新感覚エンターテイメント、こんなのまた見てたい!!!

次回公演を楽しみにしております。
冥途遊山

冥途遊山

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2017/01/03 (火) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」の新春祭り3館同時公演の1つ。
この松飾内で行われる恒例公演は、3館の上演物語が重なり1つの物語を成している。その連動というか連携した描き方は見事である。また、正月ということもあり、時代劇(女優陣は着物姿)として華やかな雰囲気を漂わせている。

タイトルの”冥土”から「彼岸」と「此岸」を往還するような物語であるが、”遊山”とは…その場所と期間が気になるところ。

ネタバレBOX

舞台セットは、劇場の天井が高いことを利用し、多層通路のようなものを作る。そこが遊山の途であり、現世という次元の違いを表出している。

梗概は、「此岸」における話…本筋に大店の娘と奉公人。その娘に言い寄る商売敵のような店の若旦那。その陥穽によって娘は吉原遊女になる。その奉公人はその仇の若旦那を…。本筋とは別にいくつかの脇話を従えて物語を振幅させる。「彼岸」では、現世の話に呼応するよう四十九日法要に向けて七日間区切りで生きてきた時の所業に応じて逝く先(天国・地獄など)を決める、そんな裁決の場面が繰り返される。
人それぞれの生き方をしてきており、その思い(悔悟・愉悦など)が此岸の場面として描かれる。この彼岸・此岸の往還を通して人の死後、その死出の旅路がコミカルに描かれる。

この芝居の冒頭、いや上演前から上手側に「地蔵」が立っている。何度も弄ばれる様な場面があるが、この地蔵尊こそ物語の重要なカギ(キーウーマン)となる。

死の瞬間から次の世に生を受けるまでの期間が 四十九日といわれ,人の死後その冥福を祈る。初七日は、故人が三途の川のほとりに到着する日。故人が激流か急流か緩流かのいずれを渡るか裁きで決まる大切な 日で、緩流を渡れるように法要をする。 故人は七日ごとに冥道の裁判官によって裁判を受け、 故人の最終的な行くべき道が 定まるのがこの七七日(四十九日)ということ。 極楽に行くのか、地獄 に行くのかの分かれ目である。
この仏教に纏わるところを、現世の行いを観せながら勧善懲悪のように描く。そのコミカルな演出と切なく悲しいラストの落差が印象的であった。

次回公演を楽しみにしております。
【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

稲村梓プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2017/01/31 (火) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

前回公演(2016年・中野)の時と比べると、 つかこうへい の思いが強く感じられた。物語に大きな変化はないが、前回公演にあった遊びのような緩衝さは少なく、その分、硬質さが増した仕上がりになっていた。その意味で演出に違いを持たせ、それに伴って演技も変化する。それゆえ再演であっても前回と違った面白味を感じた。
(【Kチーム】 上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台セットは、前回公演同様、古びた机、その上に黒電話、捜査資料などが置かれている。音楽は冒頭の「白鳥の湖」は定番であるが、それ以降の劇中音楽は変えている。その点でも公演の印象は違ってきている。音響は前回公演と同じ 久志瞳女史が担当しているが、そのセンスは光る。

また前回公演でもあった観客を立たせること。他方、前回はなかったと思うが、木村伝兵衛が走り仰向けに倒れるシーンなど、偶然か必然(演出)か判然としない。そのハラハラ、ドキドキ感に酔う。さらに、前回は警視総監を登場させているが、本公演では別の人物が登場し…。再演に対する工夫と楽しませ方、そのサービス精神が心憎い。

さて、物語は警視庁の木村伝兵衛部長刑事の取調べを中心に熱海の殺人事件の概要をなぞりながら、その過程で事件の底流にある問題を抉るもの。
つかこうへい のペンネームの由来と言われている”い つか公平 に”を強く意識した公演のように思う。

在日への人種差別への思い(代弁)を独白・激白、その故郷を追われた慟哭が胸をしめつける。また同性愛者を登場させ、その性への偏見差別、職業・職場、さらには社会進出における男女差別、権力至上への揶揄など、色々な問題・課題を浮き彫りにしてくる。一方、人が感じ持つ優しさ、哀しさ、孤独、気概などの人間讃歌とも受け取れるシーンの数々。大山金太郎(容疑者)を一流に仕立て上げることが、事件の底流にある本質を炙り出す。この硬質で骨太い描きの中に、ダイコン割り、モノマネなどの小ネタを挿み和ませる。この緊張・弛緩のほど良い刺激が2時間という時間を飽きさせない。

つかこうへい の思いは、やはり役者の演技力という体現なしでは伝わらない。特に主人公の木村伝兵衛部長刑事(稲村梓サン)の力強く凛とした姿と愛嬌ある仕草、また山口アイ子の切なくも強かな女、その異なる女性像を自在に演じ分けていた。それを支える男優陣との絶妙な遣り取りに人間味が…そんな滋味溢れるものがしっかりと観てとれる。

原作の意を表した脚本、それに魅力付けした演出、そして充実した演技、さらには舞台美術(音響・照明)など全体が調和した公演は観応えがあった。

次回公演も楽しみにしております。
うえをむいてあるこう

うえをむいてあるこう

劇団天動虫

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2017/01/28 (土) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★

本公演「うえをむいてあるこう」の説明文は「空に心を吸われたままに、熟しはじめた女の世界が、今、解き放たれる。」…なんとも抽象的というか詩的な表現。この公演は劇団「天動虫」の5周年のしめくくりでスペシャルなものだという。その思いがしっかり伝わる心温まる作品である。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

登場人物は7人、そのうち主人公にあたる人物は翔子(平野直美サン)、旭(劇団の主宰・帆足知子サン)、それから木曽・藁科・黒部・姫川、そして常願寺 天龍(ジョニーサン)。何となく地名(川の名)のような苗字。

この人達は、ある老朽化したビル屋上に集まってくる。そこは色々な思いを抱いた人達の溜り場である。そして高校時代の友人・翔子がいる。死者は別のところに逝くだけ。彼岸(ひがん)とは自然や現実とは異なる時空のよう。そして現世・此岸(しがん)にいる生者と対話できるような言葉…。いつでも死者と魂と通わせ合うことができる。
そして翔子に向かうように叫ぶ…その儀式のような台詞「アンゴルモア、コイ(来い)コイ(乞い)」と繰り返す。もちろん、世紀末のノストラダムスの『予言集』に登場する言葉である。話の途中で翔子が亡くなっていることが解るが、それでも結末がどうなるのか最後まで興味を持たせる。この物語では、登場人物が「死」んでいるが、それでも「生」きていることを感じる。地縛霊になっている死後の人と交感する。「空」には道がないが、それでも一歩ずつしっかり歩く。上ばかり向いて歩くと少し不安だが、それでも歩く…そんな”生”を思わせる台詞が印象的である。

5周年記念ということだろうか、「おひさま新聞 ①号」が配布された。そこに主宰の帆足さんが好きなものとして「てんとう虫」が紹介されていた。それは色々な世界で幸せの象徴になっているからだという。またてんとう虫はお日様に向かって飛ぶ習性があるらしい。この芝居の主人公の女性2人は「翔子」と「旭」、そんな意味合いを込めて名付けたのだろうか。この2人の演技は息もピッタリ。さすがかつての流山児事務所の先輩・後輩の間柄。

最後に衣装について、この劇団の拘りの1つになっているらしいが、この芝居でもカラフルな飾りが付いた帽子が印象的であった。死は、無色または鯨幕のようなイメージであるが、カラフル=その極際色は、ここでも”生”という躍動感を思わせる。

次回公演を楽しみにしております。
『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

無頼組合

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/30 (月)公演終了

満足度★★★★

B級活劇ストーリー「騎士」シリーズ第9作目。その手馴れた物語の展開は、架空の都市(サウスベイシティ)を疾走するような早いテンポで進む。この都市、街は殺伐、退廃したイメージを持たせているようだが、一方その佇まいのようなものはスタイリッシュ、洗練されているという感じでもある。そんな混沌とした街での探偵業は、今日も仕事の選り好みをしている。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台はほぼ素舞台。シーンによって探偵事務所内、BarカウンターやオカマBarのソファなど簡易な家具が置かれる。全体が走り回るようなアクションシーンであることから、ある程度のスペースを確保しておく必要がある。その情景・状況は役者の演技で体現しており、緩急ある動きは思索とアクションというメリハリを表している。

梗概…クリーンな市政を標榜して当選した初の女性市長の秘書が自殺した。その市長にはゴミ処理場の入札をめぐる収賄疑惑が持ち上がっている。未亡人が夫の自殺に納得できず、その理由・原因を探ってほしいと。その調査を進めると市が絡む利権問題が浮き上がってくる。さらに依頼主の真の目的も明らかになってくる。
この物語は、登場する人物が魅力的である。特に主人公・風吹淳平(シラカワ タカシサン)はお茶目にして外柔内剛といった性格のようだ。さらに一癖も二癖もあるような人物、そしてマイノリティを思わせるようなオカマ(Bar)を描き、人の性癖などの内面も弄る。その坩堝(るつぼ)的な様相は、混沌とした街の概観と重なる。

観(魅)せ方、その展開は次元や時間を越えることなく、”今”という時の中で描かれる。それだけに分かり易いしストーリーに集中できる。事実は芝居(小説)より奇なりかもしれないが、この公演もリアル(現在の東京都政・初の女性都知事、築地移転などから連想)と虚構の狭間を彷徨し、あわいの危うさに心が躍ってしまう。そんな面白さのある公演であった。
当日パンフにも書かれていたが「色々な陰謀や謎が絡んできますが、謎解きよりも、気楽な感じ」とあったが、まさにその通りに楽しませてもらった。

次回公演を楽しみにしております。
少女仮面

少女仮面

劇団座☆名張少女

川口総合文化センター リリア(埼玉県)

2017/01/28 (土) ~ 2017/01/28 (土)公演終了

満足度★★★★

宝塚歌劇団の伝説の男役、春日野八千代をモチーフにその人間が持っている精神と肉体の相克するような物語。その描き方は現世か来世か、はたまた夢か幻か、そんな幻想的な雰囲気が漂う。話は舟を漕いでいるのか漂流しているのか、その行き先が気になるような興味を持たせる。

前説では昭和44(1969)年に初演。今と時代が違い、不適切な言葉(台詞)があるかもしれないが、原作通りに演じる。また本公演の感想(アンケート)に率直な意見-解り難いなどを書いてほしいと…。
当日パンフにも「決して分かりやすい作品ではなく観る者の解釈に委ねられる部分も大きい」と記している。自分は初めて観る作品であったが、とても観応えがあった。
ちなみに、翌年に岸田國士戯曲賞を受賞している作品である。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台は、地下喫茶店。その店内は、バラの花を浮き彫りにしたような焼け板が何枚も張り合わして壁面を覆う。上手側は厨房イメージ、下手側は店出入り口がある。店にはテーブルと椅子が置かれている。後景(絵画ではない)には水道蛇口、風呂、3段ほど高くした通路が下手側から舞台中央まで設けられている。

梗概…宝塚スターを夢見る少女・貝は老婆と一緒に、往年の宝塚のスター・春日野八千代を訪ねるため、とある地下喫茶店にやって来る。その名も「肉体」である。店内は、腹話術師と人形が客として座っていたり、水をせがむ男が来たりして、一見荒唐滑稽のようだ。ボーイに邪魔されながらも、時間が止まったような日々を過ごし、春日野に見初められ演技指導を受けた貝は、夢心地になる。そして地上では地下鉄工事が始まり、喫茶店の天井からは砂が落ちてきて……。

現在では肉体も衰えた春日野八千代が、かつて満州で公演を行っていた時代(当時19歳)の自分自身や慕っていた甘粕大尉と邂逅するような場面が甘美に描かれる。現実の肉体と虚構の精神、その倒錯した世界観が妖しく蠢き、そして切ない。
「老いていく肉体」…その生身の人間の姿(時間の経過)が戦後日本の歩みと重なるようだ。公演チラシ「屍累々嵐が丘、巣食うは花の幽霊たち」は戦前・戦後の大きな転換を宝塚の男役スターの肉体の変化を持って表現している。自由を謳歌するようになった現代、しかし、その少し前の時期の悲惨な出来事の上にあることを忘れることは出来ない、そんな思いにさせる。

演技は、落ち着きのある重厚さと、コミカル軽快さというテンポの違いを上手く表現しており、メリハリがあったと思う。総じて年配の役者陣であるが、それだけに安定感もあった。そして着ている衣装が時代を遡行させ、時代感覚を呼び起こしてくれた。そしてシーンに応じてバラの花びらが落ちてくるという印象、余韻付けも巧い。

次回公演を楽しみにしております。
ハムレット

ハムレット

ラゾーナ川崎プラザソル

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2017/01/25 (水) ~ 2017/02/01 (水)公演終了

満足度★★★★

本公演は、ラゾーナ川崎プラザソルの開館10周年記念公演の第二弾(第一弾は「マクベス」)として上演されている。
「ハムレット」…シェイクスピア四大悲劇の1つ。その作品群の中でも台詞に関しては有名であり、翻訳も色々ある。明治期の坪内逍遥から現代に至るまで翻訳家が原文の意を汲み取るよう腐心している。
本公演でも当日パンフで松岡和子女史が「kin(姻戚関係)とkind(親子・兄弟などの肉親の情)とが同じk音で始まることとか、縁語であることをもっと打ち出す」ことを思っていたと。そして新たな表現は、劇を分かり易くするだけではなく、物語そのものの魅力を引き出していると思う。日本のシェイクスピアの翻訳者は男性が多く、女性は少ないと言われている。昨年亡くなった蜷川幸雄氏は1998年以降、埼玉県の彩の国さいたま芸術劇場でのシェイクスピア戯曲を松岡女史の翻訳を使用して上演していた。
その翻訳劇による本公演の魅力は…観応えがあった。
(上演時間2時間15分 途中休憩10分)

ネタバレBOX

舞台セット…素舞台であるが、張り出した床面は赤を基調にしており、奥壁にあたるところは白い幕にスリット。その何か所かにある切れ目から自在に出入りし場面転換を演出する。その多空間処理は物語の展開を途切らすことなく観客(自分)の集中力を惹きつける。また幕の上部には白いシャツが掛けられているが、何を意味しているのか判然としない。全体的な色調は赤・白という、一見対極のようであり豪華な(ダンス)ホールを思わせる。

梗概…夜の城壁にあらわれた亡き父王の亡霊は王子ハムレットに、現王 クローディアスが自分を殺害し王位を奪い、ハムレットの母でもある妻の ガートルードを王妃にしたことを語る。亡霊の言葉で、父の死因を知ったハムレットは 復讐を誓うが、なかなか実行出来ない。その躊躇と懊悩が交錯しハムレットの苦悩が表現される。一方、オフィーリアとの恋物語が純愛のような狂気のような展開も目が離せない。

さて有名な台詞…「To be,or not to be,that is the question」も色々な訳がある。それは時代とともに言葉が変わること。翻訳者の創意工夫によって作品の世界が広がっていくことらしい。松岡女史にしても先に書いたk音は従来の訳に変わり「近親関係は深まったが親近感は薄まった」にしたという。物語の解釈に沿って原文の意を表現しようと努めているようだ。女性の視点を踏まえた翻訳で、女性が男性に対して過剰な敬語は話さない。そこには自然な言葉遣いが聞かれる。それゆえ、現代風で分かり易いのではないだろうか。

役者陣の演技はバランスよく、その軽快なテンポは心地よい。
感じ入ったのは、オフィーリア(逢沢凛サン)の純真な気持と錯乱狂気した姿の演分けが素晴らしかった。特に仰臥し顔だけを客席に向けた時の目の虚ろさは見事。

次回公演を楽しみにしております。
とても精鋭な男たち

とても精鋭な男たち

トライヲンズ

上野ストアハウス(東京都)

2017/01/25 (水) ~ 2017/01/30 (月)公演終了

満足度★★★★

自虐的なタイトル…「とても精鋭な男たち」ではない、そんな駄メンズのような人たちが必死に頑張る一週間の物語。短期間、限定空間での共同生活を通じて顕わになる人格、行動が面白可笑しく描かれるシチュエーションコメディ、観応えがあった。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セット、冒頭は折りたたみ長テーブル2つを付けて並べ、それぞれ3人ずつ向かい合わせで座っている。中央奥、3~4段ほどの階段を上ったところに室外へ出る扉がある。下手側に飾り棚があり、その上にスチール製の引出しが置いてある。その後、場面に応じて変化する。

梗概...高額な報酬に誘われた男5人、女1人が一室に集まり、あるミッションのため訓練を行う。その期間が一週間。報酬は1日2万円、6人×7日間分の84万円が既に用意されている。その金額で一週間分の生活費(食費や雑貨)を賄うことになる。使う金額が少なければ残金が多くなり、手取り額がそれだけ多く貰える。途中脱落者がいればその分は残った人たちで分配できる。

指令のようなものは、携帯電話へのメール(着信音はマリオゲーム)で確認する。まずはリーダー選びから始まる。ここに集まった人たちは「特別」ではなく、市井にいる人々のようだ。チラシには「社会不適合者かもですよ...でもね人に迷惑をかけるような事はしちゃいませんよ?」という弱気な気持が物語全体を包んでいるようだ。逆に気弱さが人を陥れないような救いに感じられた。人が脱落すれば分配金が多くなるのだが、何だかんだ助け合いながらミッションをこなして行く。

公演は、限定空間での物語であることから、登場人物の人柄なり経歴を紹介し、その人物関連を描く。その個々の視点と、このミッションなりが何なのか、そのミステリアスな展開に興味を持たせる。この両方を上手く取り入れ、物語を膨らませることになるのだが、物語性が弱くシチュエーションの魅力が今一つ伝わらなかったのが残念。
ここに居る人たちは、仕事がない、もしくは薄給の仕事に甘んじている。そして過去を振り返るでもなく、未来の夢を大きく見るわけでもない。その日暮らしに汲々としているが、それでも諦念している訳でもない。そのあがく姿が、観客のそれぞれの場であがく姿と大差ないと気づかされるような...。そこに等身大に近い自分の姿が見えるようだ。その姿は滑稽であるかもしれないが、それでも必死に生きている。
物語は、あがいた先に安易な希望は見せないが、しかし金銭とは違う”何か”を得て、この場所を後にしているようで、そこに微かに差す光をみたような気がする。

役者陣の演技は見事。しっかりキャラクターを立ち上げ、その悲喜交々とした演技が最後まで飽きさせることがない。常時登場している6人と教官役(香取佑奈サン)の艶ある演技(歌・ダンス?)が中盤の見所。実にバランスの良かった。

次回公演を楽しみにしております。
RS(2017年版)

RS(2017年版)

演劇制作体V-NET

演劇制作体V-NETアトリエ【柴崎道場】(東京都)

2017/01/20 (金) ~ 2017/01/22 (日)公演終了

満足度★★★★

自分では、既知したような物語であり、公演の最大の魅力は演技力だと思った。もちろん、脚本・演出も面白く巧みであるが、それを体現して魅力を引き出すのはやはり演技であろう。柴崎道場には初めて来たが、このアトリエではしっかり演技を磨いている、そんな感じを受けた。

仮定が事実を生み出してくるが、それが真実であるかどうかは分からない。なりきり人物の視点から見た、その主観が変形し客観的に形成されてくるような怖さがあった。
パンフレットには井保三兎氏の渾身の作とあったが、話のイメージと演出手法はそれぞれある内容を思い出すが…。
(【Aチーム】 上演時間50分)

ネタバレBOX

舞台セットは、真ん中が直方体の空間イメージで、床(白い)は少し窪んでいる。周り(黒い回廊のような)はそれを支える支柱。この支柱の間隔が狭ければ「檻」といった感じである。

冒頭、白衣を着た女性・阿笠(江崎香澄サン)がワゴンを押して場内へ。その衣装と”実験”という言葉から医療・研究施設のような印象を持つ。しかし直ぐになりきり人物による某事件の検証を始める。プロファイリングした人物像、その家族関係を仮に置いて、事件を確認するような内容は緊迫感に溢れていた。
この件は、設定こそ違うが、ある立場と役割を持たせた時、人(感情)はどのように変わるのか。スタンフォード大学の心理学実験を思い浮かべる。大学・心理学部で刑務所(実験監獄はスタンフォード大学地下実験室を改造)を舞台にして、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験。大学生などの被験者を看守役と受刑者役にグループ分けし、それぞれの役割を演じさせた結果…。

また劇中、真っ暗にし数分間は聴覚に集中させる演出があった。これは某興行の暗闇劇を思い出す。この暗闇劇(商標登録)の演出支援方法は特許を得ているものである。もちろん全編暗闇で、本公演のように一部シーンのみ暗くするのとは違う。

この脚本と演出については、既知(視)のような気がしていることから、どう臨場感を盛り上げるかという演技力に注目した。役者陣は、実験としての劇中劇キャラクターとしてなりきり観応え十分であった。

気になった点が2つ。どちらも自分の思い違いかも…。
●成りきり人物のうち、刑事とストーカー(女性)はどのような経過または理由で登場することになったのか。その役割がはっきりしない。他の登場人物は罪の軽重はあるにしても囚人とのこと。よって収監先からこの実験場(室)へ来ているようだが、先の2人は? 
●ラスト、森先生(中川悠史サン)と阿笠の素に戻ったような緩い会話(森先生役の本名、苗字ではなく名の方を知っているか)は本編に関係していたのか。それとも重い雰囲気を和らげる演出であったのか。

次回公演を楽しみにしております。

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