フールオンザヒル 公演情報 劇団もっきりや「フールオンザヒル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    真実は丘の向こうで作られる。丘で空を見上げる男…その言っていることは少数意見でほとんどの人が信じない。大方は大勢が言う言葉を信じる。しかしそれが必ずしも真実とは限らない。大衆を扇動して真実を隠す。公演は今国会で議論している共謀罪へ及ぶような物語。
    底流にあるのは”表現の自由”の確固たる信念のような(詩)朗読劇のような音楽劇。(詩)朗読に(音)旋律を付けたような。その詩は、詩人による表現だけに魅力的な言葉でシーンに応じて選択しており、心に留められないのが悔しい。

    なお、詩よみ拡大ヴァージョンということなのであろうか、上演前・後にテーブルを舞台に置き飲み物、スナック菓子を用意しもてなす。劇団初めての試みだという。

    ネタバレBOX

    舞台セットはコの字に囲った本棚(知の象徴であろう)。キャストは客席に向かって二列になって並ぶ。普通であれば本棚を後景にコの字に座るところを敢えて向かい合うような配置にしているようだ。それは観客にしっかりテーマを伝えようとする姿の表れであろう。

    当日パンフには、引用した詩の作者の紹介。劇中で歌った曲名を記しており、その丁寧さに好感が持てる。また生演奏、歌うグループ「シャリバリー・カンカラ」という団体の協力も得ている。

    梗概…ガリレオの嘆き、真実を語っても誰も信じてくれない。なぜ自分の目や耳で確かめないのか。他人(第三者)の言葉を鵜呑みにするという懐疑的な言葉から物語は始まる。時代は下りブレヒトの「真実を書く際の5つの困難」を引き合いに出し真実とは何か。この後、展開はドイツから日本へ移り、第二次世界戦争後からの時代の変化を描き出す。
    第二次世界戦争で戦死した男と恋人の繰り返さないこと、繰り返しの言葉が多いと真実を隠そうとするようで怪しい。さらに高度成長期からバブル期(「鐘の鳴る丘」を「金の成る丘」)というシャレに込めた皮肉な台詞。バブルを風船に見立て破裂させる演出やジュリアナ東京を思い出させる衣装・羽根扇子で観(魅)せる。
    圧巻は、震災後の放射能漏れに関する情報隠蔽による指定地域への立入禁止、そこへ強行しようとした場合、テロ行為と見なし共謀罪を適用するという、今話題を盛り込む意欲作のようだ。また足元の暮らしを見つめて、資本(家)と労働(者)という階級闘争のような問題も垣間見せるという幅広い内容の話。

    物語は一貫して”詩”の言葉の魅力・力強さを強調して展開していくが、それがどう収斂していくのか興味が尽きない。もっとも本公演では解答を出すようなことはしない。言葉を紡ぎ、情報を隠さず拡散する。しかしその情報にも真偽があり”自分力”を磨き正しく認識し判断することが求められる、そんな感想を持たせる音楽劇のような…。

    聴かせるだけではなく、視覚的な演出も面白い。本棚への効果的な照明、和服・ヘルメットなどシーンに応じた情景描写。また切り紙を使用した人形劇も楽しい。
    なお、ヒト型に切り取り総理大臣として登場させて揶揄していた。確かに為政者(中心)であるが、その観せ方が直裁的なような気がする。世の風潮として為政者が変わろうと多数の意見が必ずしも正しいとか限らない、という普遍的な捉え方の方が自身の問題として受け止めると思うが…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/04/16 15:52

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