必要とされている、と思う病気
箱庭円舞曲
駅前劇場(東京都)
2015/02/14 (土) ~ 2015/02/23 (月)公演終了
満足度★★★★
同感なところもある
案外、自分がいないと仕事をはじめ、色々なことが出来ない、進まないと思っている人が多いかもしれない。自分がいないと困るだろうという自尊心。それは必要であると同時に面倒で持て余す感情でもある。
本公演ではそんな人の心底をくすぐるような面と不安感を募らせる面の長短が観える内容であった。
この舞台は病院内であるが、そのセットが見事である。上手が入院病室内(4人相部屋のベット)、下手がナースステーション(今は別名か?)でその雰囲気がよく出ていた。その配置は単純な二分割セットではなく、下手・上手を遠近造作することで立体規模が感じられた。ドラマの制作現場を覗いているようである。
ネタバレBOX
コント芸人が結核の疑いで入院し、そこの入院患者、見舞い客、家族、および病院関係者(医師、看護師)との交流を描いた話。入院患者の戸惑いと思惑…長期入院による職場復帰への不安、保険受給・無料入院の恩恵など、その出来事は面白い。そして病院側の診療体勢と人間関係(医師と看護師、看護師同士)…責任が増すベテラン看護師と新人看護師の意識のギャップ、職員看護師と派遣看護師の立場壁がコミカルに描かれる。
入院したコント芸人が漫才でいう「ボケ」「ツッコミ」のいずれでもなく緩衝的な立場に安心している様子。結末はシニカルで可笑しいと同時に悲哀も感じさせる秀逸な演出であった。
今後の公演にも期待しております。
僕の内定先は、ショッカーです
劇団サラリーマンチュウニ
上野ストアハウス(東京都)
2015/02/12 (木) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
働くこと?
この公演の主題はなんでしょうか?”働くこと”の意義や動機付けと言ったところでしょうか。それであればインターンシップという短期間で、真に認識できるだろうか。キレイごとだけでは生活出来ない、社会とりわけ「会社」という組織内では仕事の厳しさ、人間関係での悩み、自己啓発という色々な問題・課題が山積する。それを一つひとつクリアーし、それを経験として…偉そうなことは言えないが、だいたいそんな感じではないだろうか(会社勤めだけではない)。その描き方が芝居とはいえ、真剣さが伝わってこなかった。
ネタバレBOX
就職活動中の学生が秘密結社「ショッカー」でインターンシップとして社会(会社勤務)経験し、働く意義のようなものを”知る”ような物語。朝の挨拶が「イーッ」というような叫び声…。会社それぞれ、ルールや慣行がある。朝の挨拶にしてもラジオ体操もその一環と見れば割り切れるので、些細なことは言わない。しかし、会社にとって重要なこと。敢えて比較していたが、「人材育成」「技術革新」「収益確保」のどれもが大切で、相互関係があると思う。描く構図をわかり易くという意図は分かるが、そう短絡的にしなくてもよかったと思う。
さらに組織内の権力争いの末、敗者の腹いせに個人情報を流出させるという暴挙。完全に犯罪でしょう。表層的には面白い演出であるとは思うが、その描いた内容は有り触れたものであり、深みを感じなかった。
今後の公演に期待しております。
u-you,company 14th STAGE『UTSUKE』三部作
u-you.company
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/02/11 (水) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
等身大…
人との関わりを通じて、自我に目覚め成長していく、というテーマ性は分かりやすい。その描き方は、芝居でよく見かける時空間移動というオーソドックスな手法を用いていた。
本公演のキャストは現役アイドルで、等身大の華やかさがあった。
さて、公演そのものは…
ネタバレBOX
「過去」「現在」「未来」の3編があり、自分が観た「現在」編は過去・戦国時代(織田信長が家督相続する前)に繋がっている、という設定である。物語は、崖っぷちのご当地(キャラ)アイドルグループが起死回生を目指したライブの準備活動中に戦国時代にタイムトリップするというもの。
織田信長と出会ったアイドルは、メンバー毎に抱く思いは異なり、それぞれが思い悩む姿が愛おしくなる。天真爛漫なアイドル(表顔)とのギャップを表現し、成長していく様が印象的である。
残念ながら、本公演しか観ていないので、なぜ繋がっているのかという「理由」が分からず、時空間移動が容易に出来てしまうのも物足りない。何らかの制約があり、それを試練という大袈裟なものでなくても、何か克服または乗り越えたような描写があると、緊迫・迫力感が増したと思う。
今後の公演も楽しみにしております。
蠅取り紙 山田家の5人兄妹
劇団俳協
TACCS1179(東京都)
2015/02/14 (土) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
好公演(Bチーム)
準劇団員の公演…毎回楽しみにしているが、今回も期待を裏切らない好公演であった。脚本は、過去に何回か観たことのある演目であり、今回はその演出と演技に注目して観た。また、毎回感じることであるが、舞台セットが素晴らしい。上手は椅子席のダイニング、下手が畳部屋という二間…小道具等の装飾品も自然に置かれている。
ネタバレBOX
山田家の兄弟姉妹5名(ダブルキャスト)が主な人物。それに三女こずえの亭主・麻倉と母親(共にシングルキャスト)の2名が加わり、計7名が登場人物である。ハワイに行っている母親がいつの間にか帰宅しており、その頃、ハワイで母親が盲腸の手術後の麻酔から目覚めないとの電話が…。”魂”のみが帰宅したと思い込んだ子供たちの狼狽たえが可笑しい。そして、子供たちが現在抱えている「悩み」「思い」を話すシーンが感動的である。子供一人ひとりのキャラクターや役割を描き込んでおり、その気持が手に取るように分かる。家族の在り方に特別な設定はなく、どこの家庭にもありそうな出来事を坦々と描く。しかし、その心情は切ないほど感じ入る見事な演出であった。
それに応えるような演技…同じレベルで調和のとれた芝居は観ていて安心する。本当の兄弟姉妹のようで、その言い争いはどこかの家庭を覗いている様である。
次回公演も楽しみにしております。
poiche
幻想芸術集団Les Miroirs
シアターシャイン(東京都)
2015/02/13 (金) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
雰囲気はあったが…
公演の全体的な雰囲気は、幻想的・神秘的という謳い文句通りであった。その主な要因は、登場人物の妖艶な衣装、メイクおよび仕草であろう。また舞台セットは奥行きのある舞台スペースを作り出し、前後を仕切るように黒いカーテン(緞帳のように重厚ではない)を張っていた。それは部屋間(舞台側・上手には白いシーツで被われたソファー)または屋内外という区分状況を作り出しており、演出は巧み。ただ、その物語を紡ぐには…。
ネタバレBOX
脚本で疑問を生じた。また、キャストおよび演技に違和感のようなものを感じた。
まず、未完の脚本を仕上げることと同時に芝居が進行する劇中劇の様相を呈するが、その結末に導く伏線のようなものが感じられなかった。主人公タクソス(朝霞ルイさん)が、実はマダム・パフィア(乃々雅ゆう さん)の実子ということであったが、その件は最後に一気に台詞で説明されただけ。さらに、パフィアが連れ去ったのが実子でないプシュケ(麻生玲菜さん)ということ。常識的に考えれば、実の子を連れ出すと思う。2人いるうち、実の子とは知らなかったという前提であろうか?
演技は、男性キャスト(富樫勘九郎さん)が登場するまでは、声が小さく聞き取りづらかった(最前列に座っていた)。その後、男性の声量に応えるように声に張りが出てき、滑舌も良くなった。また女性だけの演技(発声も含め)は宝塚歌劇団のように誇張したようでもあった。それに比べ男性キャストの演技は極めて普通で、同一舞台上ではギャップを感じた。舞台雰囲気の統一感を重要視するのであれば、男性キャスト(中性的な男性ならOK)の登用要否についても一考が必要ではないか。
舞台雰囲気は素晴らしいものがあり、それが特長であることは十分伝わった。
今後の公演も楽しみにしております。
ユメオイビトの航海日誌
LIVEDOG
シアターサンモール(東京都)
2015/02/11 (水) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★
エンターテイメント…
その表現が合うような公演であった。ストーリーはそれほど複雑ではなく、幅広い客層に親しまれるような芝居である。だたし、登場人物の掘り下げが浅く、物語が表層的になっていたように感じる。
しかし、自分が観た初日には、演技のかたさは見受けられたが、それでも多くの観客(老若男女)が約2時間40分(途中休憩なし)を楽しんだように談笑が聞こえた。
ネタバレBOX
「ユートピア」を求めての航海…それは古からの言伝え「精霊」と「人間」の共存共栄をもたらす場所を探す冒険である。
少女レナ(楠世蓮)が自由を求めて幽閉されているような場所から逃げようとして、監視者(英国海軍軍人)に殺害され、その死の間際に魂だけを精霊ローサ(フォンチー)の体内に取り込んだところから物語は始まる。この精霊は少女の元恋人で海賊ライド(高木万平)と知り合い…一方、英国海軍内では権力闘争や蘇生薬研究といった話が別展開しており、海賊と海軍の接点として精霊(その力の争奪)の存在がクローズアップされ、それぞれの思惑が絡み活劇の見せ場になってくる。
キャストはアイドル系のビジュアル揃い。しかし、殺陣等の動作は的確・機敏であった。そしてなにより華がある公演であった。
次回公演も楽しみにしております。
ゾンビ沼袋
lovepunk
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/02/10 (火) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★
体力の続く限りがんばって
女優・安城久美子生誕50周年記念という副題が付いている。もっとも芝居の中では引退公演という台詞が何回も出ており、その都度本人は訂正するようなコメディ場面もある。その生き方が、といっても波瀾万丈ということでもなく、至って平凡であるが故に感じる”私の半生”はという件は共感できる。今の時代、劇的な生き方をしている人は何人いるだろうか(本人の受け止め方の差異はある)。それでも生きる、ゾンビのように復活する、そんなバイタリティー溢れる公演であった。
ネタバレBOX
女子プロレス界をドキュメント制作するという設定。女子プロレス界へ復帰してくるゾンビ沼袋(安城久美子)を中心に、その業界の裏話・暴露話の筋立は面白い。そこは”マッチ・メイク”としてのプロレス”ショー”がある。筋書のある興行・フェイクと悪態つくTV制作サイド、だからヤラセも当然という姿勢で描く。一方、プロレス業界側もショーであることは認めつつも、真剣に取り組んだ試合を主張する。少なくとも自分の信念は持つべきと…多少説教臭くなりかけたが、軽妙な演出・体を張った演技が絶妙のバランスを保ち、最後まで飽きさせることなく観せた。随所に社会批判、反骨精神を散りばめるなど、全体を通して楽しく面白いが、けっして底浅くはない。
クセになりそうな芝居であり、次回公演も楽しみにしております。
完熟リチャード三世
柿喰う客
吉祥寺シアター(東京都)
2015/02/05 (木) ~ 2015/02/17 (火)公演終了
満足度★★★★
小悪魔的なリチャード三世
女性7名(今までの最少人数)で演じるシェークスピアの「リチャード三世」は、主役のリチャード三世(安藤聖)以外は、一人複数役を行わなければならい。その表現パフォーマンスは、仕草、声色を変える芝居をしているが、それ以上にその人物のキャラクター、役割を掴んだ演技が良かった。
特に、リチャード三世は狡猾、残忍、豪胆な詭弁家であり、シェイクスピア作品の中ではハムレットと並んで演じ甲斐のある役とされている。芝居的には、それを女性ならではの小悪魔に表現(毒々しさは薄れた)しており、魅力ある公演にしていた。
ネタバレBOX
リチャード三世はその醜い容姿を嘆き恨み、その結果心根も醜悪という設定である。誰もが持ちえているかもしれない人間の心底にあるドス黒い感情。そこは認めたくない”闇の部分”ではあるが、それも含め人間という存在が強調された物語である。
怪異な容貌と鬱屈した野心のため嫌われ、恐れられつつも巧みに人を惹きつける男の一生を描いている。彼の野望の犠牲となり親を失った子、夫を亡くした妻、子供に先立たれた親の嘆きから、不幸の底にある者でさえ他人の不幸がわからない密やかなエゴイズムが劇中に映し出されていくさまが見事であった。それを女性7名の感情豊かな表現で描き、魅了してくれた。
今後の公演にも期待しております。
『Fermat's Last Theorem』(フェルマーの最終定理)
ユニークポイント
シアター711(東京都)
2015/02/04 (水) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★
熱い議論が
学生時代はどちらかと言うと、数学は苦手な科目であった。数学を専門に学んだわけではないので、「フェルマーの最終定理」という言葉さえ知らなかった。本公演では、ワイルズがフェルマー予想を証明する歴史的講義に立ち合った、若き日本の数学者たちを巡る物語、である。この証明していく過程の場面は専門に数学を研究している者にしか分からないだろう。むしろ、証明に至る過程を熱く議論・検討する姿、世紀の出来事に立ち会える喜びといった感情が観ていて面白かった。
自分は、別に示された問題意識に興味を持った。
ネタバレBOX
当時、いや今でもそうかもしれないが、研究者、特に女性が研究を続けていく困難さが如実に現われていた。研究生活を続けたいが、将来の生活・研究者としての道があるのか?保障もない不安な気持ち、夢半ばで諦めるような厳しい状況が描かれる。
また一概に「数学」と言っていたが、その中にも幾何・代数など数学的な専門があり、その専攻が違うと分からなくなるという内容にも新鮮な驚きを覚えた。いろいろな意味で興味深い公演であった。
今後の公演にも期待しております。
あたしゃあなたの、
ぐらうんど・れべる
荻窪小劇場(東京都)
2015/02/04 (水) ~ 2015/02/11 (水)公演終了
満足度★★★★★
丁寧なお芝居
都会暮らしと田舎暮らしのどちらが良い、などという単純比較はできないだろう。その場所に住むには理由や動機があるものだが、本公演では、その田舎暮らしの不便さ、厳しさがあまり感じられなかった。逆にその種の問題や課題を超えるようなヒューマニティー溢れる描き方が強調されている(「リージョナリズム」というほどではない)。その展開が自然であり、日常生活を切り取ったようである。
そのように観える理由は…
ネタバレBOX
脚本の力と演出の妙が上手く作用し観応えのある作品に仕上げた結果である。さらにキャストの演技(特に小川剛生サン)がよく、役柄としての人間性とその土地に住む人間味が醸し出されており、観客の心を温かくする。
この公演では、母娘、兄妹、夫婦および近所付き合いという生活の基盤となるような関係を中心にしつつ、そこに抱える問題、悩みを吐露する場面が秀逸である。過疎化、高齢介護という身近な社会問題をあまり深刻にならないよう、努めて明るくユーモラスに描く。そして展望が見出せるような結末が、やわらかな日差し、そぅ小春日和を感じさせる。ラストシーンの心地良い余韻…見事です。
今後の公演にも期待しております。
『灯籠』
【カタオモイ.net】
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2015/02/05 (木) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★
透明感ある芝居
タイトルと説明文である程度、内容が想像できるが、その演出は透明感、幻想的で面白い。ストーリーは可視化したようなものであるが、そこは演出・演技の妙で楽しめる。
また若いキャストで初々しく、この物語がもつ瑞々しさにマッチしていた。
ネタバレBOX
物語の進行役以外は既に亡くなっている、という設定。舞台は高校・音楽室が中心で、そこに現れる男女3人の淡い恋心、憧憬が描かれる。
原作とは流れだす季節が異なるが、その主筋はそのまま描かれている。夏にしか出会えない”君”を待ち焦がれる女子高生、その女子高生に恋心を持つ男子生徒、さらにはその男子生徒を好きな後輩女子高生が登場するが、みな自縛霊または地縛霊である。女子高生が待っている霊は自殺者で、その霊が良くない、と描いているところに違和感があったが…やはり死に方にも善し悪しがあるのだろうか。
演出は盆灯篭が舞台周りに置かれ、間接照明として幻想的な雰囲気を醸し出していた。また、いくつかのボックスを配置し、その組み合わせで簡単に教室内の椅子やお墓をイメージさせ、あまり暗転させなかったのも集中力を保つには良かった。逆に舞台奥壁にイメージ映像を映す意味があったのか。韻文表現を映像に頼らなくて十分、その旋律は舞台上にあったと思う。
今後の公演にも期待しております。
シロ
惑星☆クリプトン
千本桜ホール(東京都)
2015/02/05 (木) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★
芝居には真摯であるが…
特に感じ入ったのは、受付、会場案内等、周りの対応が丁寧であった。
さて、公演であるが、旗揚げということもあるのか、緊張していたというのが第一印象である。オムニバス公演であるが、その第一は芥川龍之介原作の短編小説「白」だという。その描き方はあまりに忠実で教訓的なことが前面に出ていた。よく言えば真面目であるが、ストレート過ぎて芝居を観せ、そして魅せる工夫が足りないと思われる。
他は当日パンフによれば、朗読劇「メモ」とある。
ネタバレBOX
体色が”白“の飼い犬「シロ」は、街中で知り合った飼い犬が保健所職員に捕獲された時に助けなかったことにより、体色が”黒“に変化した。その結果、飼い主に「シロ」として認識されなくなり野犬になった。その後、助け犬として世間に認知されることになり…。あまりに教訓色が前面に出過ぎていた。もう少し味わいのある演出が欲しかった。
また、役者の演技がかたく、噛む場面が何回かあり少し残念であった。
朗読劇「メモ」は、子供が座るような小さな椅子(脚が短い)に座って行っていたが、前屈の姿勢になった時、発声に難があった。これも緊張だろうか?
冒頭記載したが、公演に対する姿勢は良く、好印象を持っているので頑張って欲しい。
今後の公演に期待しております。
新「復活」
劇団キンダースペース
シアターX(東京都)
2015/02/04 (水) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
すばらしい!
劇団キンダースペース創立30周年記念公演第一弾が「新・復活」である。もちろんタイトル通りトルストイ原作を日本近代演劇と重ねあわせたストーリーは面白い。演出はオーソドックスであるが、役者の演技は安定・安心して観ることができる。
この「新・復活は、描く主筋が恋愛偏重になっているが、原作の帝政ロシア下における権力・裁判や下層農民の喘ぎ、苦しみと対峙した骨太なイメージをもっと描き込み、当時の日本の状況が浮き上がってくれば、もっと印象深い作品になったと思う。
後日追記
ネタバレBOX
脚本はトルストイ原作「復活」を日本近代演劇の黎明期に活躍した島村抱月と松井須磨子の抜き差しならぬ関係と創設した芸術座の興行不振を立て直す、まさしく復活をかけて上演した「復活」を掛け合わせた劇中劇である。
本公演は、新劇を学究・研修の対象から興行として自立する公演に育てる、との当時の志・思いが伝わるようであった。
シアターXの舞台にしっかりセットを作り込み、その中で役者は確かな演技を行っており、充実した芝居を観ることが出来た。
今後の公演にも期待しております。
メンタルトレーナーのくせに
護送撃団方式
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
コメディでしたか?
メンタルトレーナーという、聞き慣れない職業に携わる講師と受講生の話。「メンタル」からクリニックを想定し、心療内科的な芝居かと思ったが、少し違ったようだ。
芝居を進行するにあたって、定石とも言える登場人物の紹介から始まる。本公演はコメディという謳い文句であったと思うが、確かに場面場面での表情・仕草はコミカルで笑えるものがあった。しかし、話の内容はメンタルに相応しい知的で骨太な作品であった。
ネタバレBOX
シチュエーションは”メンタル”を扱っているが、妄想・幻想のような脳内現象ではなく、しっかりとした現実ドラマとして描いていた。メンタル強化などを目的とした受講生と個性豊かなメンタルトレーナー(受講生ごとに担当トレーナーが決定、マン・ツー・マン指導)の関係性が面白おかしく描かれる。この場面ごとの表情・仕草は面白いが、真に笑えない。人の心根に関わり、鋭い指摘になっている。さらに役者自身が笑えていないように感じた。場当たり的なコメディでは笑顔になれない。大上段にコメディを打ち出さず、芝居の中でさりげなく”クスッ”とした笑いであっても十分に楽しめる(内容には共感)。
また、主人公・滝沢の過去も気になり、もう少し人物像を掘り下げても良かったと思う。そして担当した少女との関係について、今後の展開が垣間見えると…。そこは観客のイメージに委ねたのでしょうか?
今後の公演にも期待しております。
ここにいる!?
BIG MOUTH CHICKEN
劇場MOMO(東京都)
2015/01/27 (火) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
チームB拝見
幼い時の事故が原因で霊体質になってしまった青年が経験した奇妙な出来事の話。
軽妙・コミカル風であるが、描かれている内容は奥深い。
自分という人間の存在を証明するには…他人との関係性で説明することになるのだろう。 あれ、この公演の人間といえば…
ネタバレBOX
基本的には、主人公(霊児役=大熊祐我)とその恋人しか登場しない。それ以外は彷徨って冥界への入り口にいる、またはそこに居る冥界者ばかりである。
人との関わりが苦手ではあるが、彷徨っているものたちとの交流は出来るという、不思議な体験をしている主人公…そのありえない様を通して自分を認識していく過程が面白い。終盤は彷徨っている、その者たちの経緯を説明し黄泉へ仕分けされていく。主人公との真の別れであるが、ラストは少しホッとするような幕切れである。
脚本の描かれている内容は鋭く、心を揺さぶられた。演出はわかり易く観せるために楽しい工夫?(モノマネ、オーバーアクションなど)を取り入れ、サービス精神が旺盛であった。ただし、芝居への集中力が途切れるギリギリであったが。
今後の公演にも期待しております。
メフィストフェレスにさえそっぽを向かれた男たちのハナシ
スケアクロウズ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
観応えあり!
2015年も1月にして、早くも好みの公演に出合えた。
魂と交換に願いを叶えるというメフィストフェレスさえも、破綻した魂は要らないと思う「男たちのハナシ」である。
実に観応えのある公演であった。
大変恐縮ですが、当日パンフに記載してある脚本構成・演出 上田ボッコ氏の言葉に感銘している。全文を記載するにはスペースが足りない。
本意が伝わらないかも…心配
*************************
個人個人が 自分の考えをキチンと持つことの重要さを
今ほど 求められるトキは無いのではないでしょうか
(中略)
それでも尚 希望を失わずに 平和を求め続ける
祈るような想いで そんな事を考える毎日です。
ネタバレBOX
会場の座席配置は、入口側と奥壁側が対面になっており、それぞれが3列雛壇になっている。その見立ては放射能に汚染された状況下…シェルターと思われる地下室。薄暗い中にテーブルとソファが舞台の左右に置かれ、テーブルの上には文房具が乱雑に放置されている。まるで心の乱れを表しているようだ。
f
ストーリーは、放射能汚染された社会環境を、その抑制された日常生活によって現している。それは濃密な会話によって展開していく。本音と建前、話のすり替え、自己主張、強訴と哀願、暴言…。そこから、男の友情・嫉妬・羨望・見栄という「感情」と、惰眠・食欲・性欲といった「行動」がチラッと垣間見える。
論理的または理屈があるような話の展開は、すぐ話がすり替わり脈略がない言葉、慟哭が自分の心を揺さぶる。これを演じる男優陣の技量が凄い。緊張・硬質・迫力、どれもが陳腐な表現になってしまう。この迫真の演技に若い女優陣が食らい付いてくる。そして、照明を落とした室内を、放射能に汚染されたと思われる子供たちの歩く姿が怖い。
ストーリーテラーであり、メフィストフェレスと思われる「ささやき役=和興 氏」のバリトンで妖言な科白が秀逸である。
今後の公演にも期待しております。
「蛍よ……妖しの海を翔べ」
劇団ギルド
座・高円寺1(東京都)
2015/01/29 (木) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★
中途半端だった
源義経に関する伝説をモチーフにし、昭和時代における学生運動を重ねあわせた芝居。もっとも学生運動をイメージさせるような場面は感じられなかったが…。
自分が義経の英雄伝説を知ったのは、高木彬光の小説「成吉思汗の秘密」が最初だったと思う。この小説は歴史推理小説としては有名で、以降多くの書の参考にされたようだ。
さて、公演であるが平家物語(義経視点)を準えるようで…。
ネタバレBOX
義経は衣川で死んだわけではなく、蒙古へ渡りジンギスカンになったという伝説。壮大なロマンを感じるが、本公演では、エピローグでその可能性を示唆するところで終幕する。
ストーリーは、義経の戦略家としての側面と義経・影武者たちの「役割」と「自我」の相克に揺れる心が描かれるが、その力強さや悲しみが伝わらない。重要な事柄が印象に残らず残念であった。
演出もスクリーン-プロセスを利用し、その映像効果によって壮大さをイメージ出来るよう工夫していた。しかし、多用したことで芝居というライブ感に違和感が生じた。もう一つ違和感があったのが衣装である。義経伝説をモチーフにし、あくまで現代を描くのか、平安末期(源平戦乱記)を描くのか、中途半端な印象を受けた。
今後の公演を楽しみにしております。
6人の法則
劇団平成商品
タイニイアリス(東京都)
2015/01/30 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
もう少し整理しては
北海道から東京へ公演拠点を移して4~5年になるという。多くの観客に観てもらいたいとの心意気のある若者6名による芝居…いろいろな想いを詰め込んでいた。ストーリーはいくつかの回想シーンも交え、サイドストーリーも組み合わせているが、わかりやすい。演出は観せる工夫をしており好感を持った。演技に関しても、それぞれのキャラクター、役割をしっかり捉えていた。
芝居における脚本・演出・演技という要素はそれぞれ良いと思うが…
ネタバレBOX
公演全体のバランスが今一つと思われる。特に次の点が気になった。
1.主筋から派生する脇筋への話が多く、それを丁寧に描こうとするから、何の話であったか反芻しながら観なければならない。もう少し祖父との関わり (例えば子供の頃の回想シーンを厚くするなど)を濃密に描くことで、現在の 祖父への愛情に繋がりを持たせるとか。
2.演出は、舞台を上手・下手に二分割しているが、どちらかと言えば上手はサイドストーリーのようだ。それにも関わらず同じスペースを使用しているから2話が同時進行しているかのようだ。上手は、浮気疑惑にドタバタしている夫婦の話。実は奥さんが下手の主筋(死期が近い祖父とその家族。孫娘が主役)にいる主役女性の不倫・浮気コラム(インターネットで配信)の読者という繋がり。
3.プロローグとエピローグが関連しているようには思えないので、冒頭のパフォーマンスを省略しても…。枝葉末節と思われる場面を整理し、訴えたい (大切にしたい)場面を濃密に描き込むことで、話が鮮明になりもっと観応えが出ると思う。
今後の公演にも期待しております。
空飛ぶ自転車
水色革命
萬劇場(東京都)
2015/01/29 (木) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★
温かいが…
昔ながらのアパートに住んでいた戦争孤児たちのハートフルドラマ。ストーリー的にはわかり易く、演出も特別に奇抜なことはない。戦争を大上段に振りかざし社会問題を問うものではない。あくまで戦争孤児たちの人間交流を時を刻むように坦々と描く。子供から大人まで楽しく安心して観られる内容である。
その情景を描くキャストの演技が…
ネタバレBOX
少し硬い感じがした。特に前半は演技がぎこちない。特別ゲストのジャガー横田サンの演技は、テレビで見るような感じで、他のキャストに比べ自然体に観えた。少し声がしゃがれていたが、堂々とした主役であった。
さて、登場人物は結論から言えば、全員が善人である。小さい時から兄弟姉妹のようにして育ち、その後、数十年も交友する姿は、公演全体の雰囲気を和ませる。しかし、その描き方が表層すぎて感情移入が出来なかった。
もう少し、深く掘り下げても良かったと思う。
演出は軽妙・コミカルであっても、十分に伝えたい内容のある話だと思う。
今後の公演にも期待しております。
アルマ
THE TRICKTOPS
ザ・ポケット(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
テーマ性重視かな
前編・後編(途中休憩)で2時間30分ほどか。ストーリーはわかり易く、その演出も軽妙・コミカルといった場面が多かった。
特に本公演はテーマ性重視で、それを前面に出しているように感じた。そのための脚本・演出に腐心したようだ。
ネタバレBOX
テーマが浮き彫りになるように、あえて比較描写を多くしたように感じた。例えば人間性では「天才」と「凡人」、事象面では「インターネット(仮想)」と「テロ(現実)」というように、光と影ではないが、対比は説得性を増す手法の一つだと思う。
さて、そのテ-マであるが「孤独な心の拠りどころはバーチャル世界(インターネット)」といったところであり、主人公が抱いている素懐は現代社会の一つの問題かもしれない。
公演全体としては、仮想世界でしか生きられなくなった理由、高校生の時に出会った女子高生(同級生)との淡い想い、オタクとして警察に協力する様、一方、テロ組織の話が別ストーリーとして描かれる。両方の話は交錯し一つのストーリーを紡ぐが、同じような比重で描くため主筋(人間性)・脇筋(国家権力という社会)が峻別できない。面白い内容をいっぱい盛り込み、観客を楽しませようという心遣いは嬉しい。しかし、もっと絞り込む(例えば、暗号解読の3バージョンを1つ減らす)、家族内の問題(母親の役割は軽い)など、ほんの少し整理すれば、もっとシャープに問題を訴求できると思う。
今後の公演にも期待しております。