メフィストフェレスにさえそっぽを向かれた男たちのハナシ
スケアクロウズ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
観応えあり!
2015年も1月にして、早くも好みの公演に出合えた。
魂と交換に願いを叶えるというメフィストフェレスさえも、破綻した魂は要らないと思う「男たちのハナシ」である。
実に観応えのある公演であった。
大変恐縮ですが、当日パンフに記載してある脚本構成・演出 上田ボッコ氏の言葉に感銘している。全文を記載するにはスペースが足りない。
本意が伝わらないかも…心配
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個人個人が 自分の考えをキチンと持つことの重要さを
今ほど 求められるトキは無いのではないでしょうか
(中略)
それでも尚 希望を失わずに 平和を求め続ける
祈るような想いで そんな事を考える毎日です。
ネタバレBOX
会場の座席配置は、入口側と奥壁側が対面になっており、それぞれが3列雛壇になっている。その見立ては放射能に汚染された状況下…シェルターと思われる地下室。薄暗い中にテーブルとソファが舞台の左右に置かれ、テーブルの上には文房具が乱雑に放置されている。まるで心の乱れを表しているようだ。
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ストーリーは、放射能汚染された社会環境を、その抑制された日常生活によって現している。それは濃密な会話によって展開していく。本音と建前、話のすり替え、自己主張、強訴と哀願、暴言…。そこから、男の友情・嫉妬・羨望・見栄という「感情」と、惰眠・食欲・性欲といった「行動」がチラッと垣間見える。
論理的または理屈があるような話の展開は、すぐ話がすり替わり脈略がない言葉、慟哭が自分の心を揺さぶる。これを演じる男優陣の技量が凄い。緊張・硬質・迫力、どれもが陳腐な表現になってしまう。この迫真の演技に若い女優陣が食らい付いてくる。そして、照明を落とした室内を、放射能に汚染されたと思われる子供たちの歩く姿が怖い。
ストーリーテラーであり、メフィストフェレスと思われる「ささやき役=和興 氏」のバリトンで妖言な科白が秀逸である。
今後の公演にも期待しております。
「蛍よ……妖しの海を翔べ」
劇団ギルド
座・高円寺1(東京都)
2015/01/29 (木) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★
中途半端だった
源義経に関する伝説をモチーフにし、昭和時代における学生運動を重ねあわせた芝居。もっとも学生運動をイメージさせるような場面は感じられなかったが…。
自分が義経の英雄伝説を知ったのは、高木彬光の小説「成吉思汗の秘密」が最初だったと思う。この小説は歴史推理小説としては有名で、以降多くの書の参考にされたようだ。
さて、公演であるが平家物語(義経視点)を準えるようで…。
ネタバレBOX
義経は衣川で死んだわけではなく、蒙古へ渡りジンギスカンになったという伝説。壮大なロマンを感じるが、本公演では、エピローグでその可能性を示唆するところで終幕する。
ストーリーは、義経の戦略家としての側面と義経・影武者たちの「役割」と「自我」の相克に揺れる心が描かれるが、その力強さや悲しみが伝わらない。重要な事柄が印象に残らず残念であった。
演出もスクリーン-プロセスを利用し、その映像効果によって壮大さをイメージ出来るよう工夫していた。しかし、多用したことで芝居というライブ感に違和感が生じた。もう一つ違和感があったのが衣装である。義経伝説をモチーフにし、あくまで現代を描くのか、平安末期(源平戦乱記)を描くのか、中途半端な印象を受けた。
今後の公演を楽しみにしております。
6人の法則
劇団平成商品
タイニイアリス(東京都)
2015/01/30 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
もう少し整理しては
北海道から東京へ公演拠点を移して4~5年になるという。多くの観客に観てもらいたいとの心意気のある若者6名による芝居…いろいろな想いを詰め込んでいた。ストーリーはいくつかの回想シーンも交え、サイドストーリーも組み合わせているが、わかりやすい。演出は観せる工夫をしており好感を持った。演技に関しても、それぞれのキャラクター、役割をしっかり捉えていた。
芝居における脚本・演出・演技という要素はそれぞれ良いと思うが…
ネタバレBOX
公演全体のバランスが今一つと思われる。特に次の点が気になった。
1.主筋から派生する脇筋への話が多く、それを丁寧に描こうとするから、何の話であったか反芻しながら観なければならない。もう少し祖父との関わり (例えば子供の頃の回想シーンを厚くするなど)を濃密に描くことで、現在の 祖父への愛情に繋がりを持たせるとか。
2.演出は、舞台を上手・下手に二分割しているが、どちらかと言えば上手はサイドストーリーのようだ。それにも関わらず同じスペースを使用しているから2話が同時進行しているかのようだ。上手は、浮気疑惑にドタバタしている夫婦の話。実は奥さんが下手の主筋(死期が近い祖父とその家族。孫娘が主役)にいる主役女性の不倫・浮気コラム(インターネットで配信)の読者という繋がり。
3.プロローグとエピローグが関連しているようには思えないので、冒頭のパフォーマンスを省略しても…。枝葉末節と思われる場面を整理し、訴えたい (大切にしたい)場面を濃密に描き込むことで、話が鮮明になりもっと観応えが出ると思う。
今後の公演にも期待しております。
空飛ぶ自転車
水色革命
萬劇場(東京都)
2015/01/29 (木) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★
温かいが…
昔ながらのアパートに住んでいた戦争孤児たちのハートフルドラマ。ストーリー的にはわかり易く、演出も特別に奇抜なことはない。戦争を大上段に振りかざし社会問題を問うものではない。あくまで戦争孤児たちの人間交流を時を刻むように坦々と描く。子供から大人まで楽しく安心して観られる内容である。
その情景を描くキャストの演技が…
ネタバレBOX
少し硬い感じがした。特に前半は演技がぎこちない。特別ゲストのジャガー横田サンの演技は、テレビで見るような感じで、他のキャストに比べ自然体に観えた。少し声がしゃがれていたが、堂々とした主役であった。
さて、登場人物は結論から言えば、全員が善人である。小さい時から兄弟姉妹のようにして育ち、その後、数十年も交友する姿は、公演全体の雰囲気を和ませる。しかし、その描き方が表層すぎて感情移入が出来なかった。
もう少し、深く掘り下げても良かったと思う。
演出は軽妙・コミカルであっても、十分に伝えたい内容のある話だと思う。
今後の公演にも期待しております。
アルマ
THE TRICKTOPS
ザ・ポケット(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
テーマ性重視かな
前編・後編(途中休憩)で2時間30分ほどか。ストーリーはわかり易く、その演出も軽妙・コミカルといった場面が多かった。
特に本公演はテーマ性重視で、それを前面に出しているように感じた。そのための脚本・演出に腐心したようだ。
ネタバレBOX
テーマが浮き彫りになるように、あえて比較描写を多くしたように感じた。例えば人間性では「天才」と「凡人」、事象面では「インターネット(仮想)」と「テロ(現実)」というように、光と影ではないが、対比は説得性を増す手法の一つだと思う。
さて、そのテ-マであるが「孤独な心の拠りどころはバーチャル世界(インターネット)」といったところであり、主人公が抱いている素懐は現代社会の一つの問題かもしれない。
公演全体としては、仮想世界でしか生きられなくなった理由、高校生の時に出会った女子高生(同級生)との淡い想い、オタクとして警察に協力する様、一方、テロ組織の話が別ストーリーとして描かれる。両方の話は交錯し一つのストーリーを紡ぐが、同じような比重で描くため主筋(人間性)・脇筋(国家権力という社会)が峻別できない。面白い内容をいっぱい盛り込み、観客を楽しませようという心遣いは嬉しい。しかし、もっと絞り込む(例えば、暗号解読の3バージョンを1つ減らす)、家族内の問題(母親の役割は軽い)など、ほんの少し整理すれば、もっとシャープに問題を訴求できると思う。
今後の公演にも期待しております。
夜と森のミュンヒハウゼン
サスペンデッズ
吉祥寺シアター(東京都)
2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
不思議感覚が心地よい
冒頭の演出が上手い。多くの公演は完全に暗転させて、キャストを舞台上に登場させてから始まる。ところが、本公演は上手からアユミ(石村みかサン)がゆっくり森の中を散策するような感じで幕が開く。その舞台セットは樹木(6本)が立ち、その根元に枯葉が…実に落ち着いた、そして雰囲気のある情景を演出していた。もちろん登場する人間・動物などは魅力的に描かれているが、それは透明感・神秘性ある大きな風景画の中で活かされている産物のようであった。
ネタバレBOX
虚実綯い交ぜの世界観であるが、その感覚は人の「心」か「脳」内というものである。目に見えないことは、表現することが難しいが、逆に言えば自由に描くことが出来る。その演出は幻想とも違う…静寂な森の中で不思議な空気が流れているようだ。人間に擬態化した動物たちの本当の人間との出会い、交流もあったが、現実の世界か虚構の世界か判然としない。その「曖昧さ」が不思議さを「鮮明な表現する」ものになっている、という反対感覚を醸し出している。現実話(森での迷い、不倫恋愛など)と空想話(動物擬態化、生存への戦いなど)が交錯しながら、一つの話(迷った森から抜ける)へ紡いでいく。
森を抜けたら何が、またはどうなるか、という興味は尽きない。
最後まで余韻を漂わせた、魅力的な公演であった。
今後の公演にも期待しております。
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★
組立て感が好き
子供の頃、電池・モーターで動くプラモデルを作って遊んだが、その時の感覚に似ているような芝居であった。そぅ、パーツを1つ1つ組み合わせて完成させ、最後にスイッチを入れたら動き出す。設計図通りに作ったが、果たして動くのだろうか、というドキドキ感が忘れられない。
ネタバレBOX
本公演は家族ごとの話が一つの歯車になっており、それが絡み合い公演全体を構成していく。その一つ一つの過程が面白いと感じるか長時間公演のために整理が必要と思うか、観客によって違うだろう。自分は前者のタイプで面白く楽しめた。そして見事なループ劇に結実させた演出に感心した。パーツが段々と噛み合い、少しずつ公演全体の姿が明らかになる。その原動力がキャストの魅力的な演技であったと思う。もちろん舞台セットも手作り感があり、温かみがあった。
文脈が逆転したが、テーマ性については、社会的教訓のような側面も描きつつも、その演出は軽妙・コミカル仕立で堅苦しくない。最後まで飽きることなく楽しめた。
今後の公演にも期待しております。
鬼のぬけがら
ナイスコンプレックス
OFF OFFシアター(東京都)
2015/01/21 (水) ~ 2015/01/26 (月)公演終了
満足度★★★★
業(ごう)の深さが…
東日本大震災を背景に人間の業(ごう)が浮き彫りになるようなお伽噺。現実にあったような内容だけに、お伽噺…絵空事にしないと哀しい印象だけが強調される。被災という特異状況下における人間心理・行動は、平時のそれとは違う。むしろ違っているほうが当然かもしれない。その時の状態こそ「鬼」なのかもしれない。逆に「鬼のぬけがら」を纏って人間らしくという逆説的な発想がユニーク。とても興味深い芝居であった。
ネタバレBOX
被災者の生活状況を背景に父子の確執が描かれる。被災者に心を添わせながら、その実態をスクープネタにする息子。被災地に留まり本音を言い続ける父、という構図が主軸であったと思う。被災地から離れ、安寧した場で外見よく惨劇をルポネタとして探す子の深層は”鬼”。逆に父の歯に衣着せぬ言動は、被災者を困惑・憤怒させるが、その心裏は”人”。「心」という目に見えない動きを見事に浮き彫りにした演出手腕(タイトルが意味深)は素晴らしい。そして鬼(子)が人(父)の心魂に迫る過程とラストシーンは感動ものである。
舞台セットは、震災によって倒壊した家屋内をイメージさせるもの。その薄暗い照明、怒涛の音響効果は芝居の質(重厚)感を高めたと思う。その空間の中でキャストはそれぞれの性格付け、・役割の人物になりきっていた。実に観応えのある公演であった。
今後の公演にも期待しております。
『鬼切丸』再演
タンバリンステージ
あうるすぽっと(東京都)
2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
観せる…魅せる…
90年代カルト的人気を誇った楠桂の人気コミック「鬼切丸」の舞台化である。この公演は、2013年夏に大盛況で終演した作品の再演だというが、その魅力は何といってもキャストのビジュアル性と殺陣の素晴らしさであろう。キャストは当日パンフの紹介によれば34名が登場している。そのメイク・衣装が妖しげな雰囲気を醸し出す。
そのお話は…
ネタバレBOX
はるか昔、少年の姿をした鬼が生まれたが、彼には角(つの)はなく、一振りの神剣「鬼切丸」を携えて鬼と戦う。すべての鬼を倒せば、人間になれると信じている。同族同士の争いかと思われるが、そうではないようだ。修験僧も現れ、人間、特殊能力を身に付けた修験僧、そして鬼という三竦みの戦いが繰り広げられる。この戦いの場面は、「あうるすぽっと」という中規模舞台を目一杯使用した殺陣シーンは迫力があった。もっとも本当に殺せているか、という疑問がある踏み込みではあるが…、そこは魅せる芝居である。
また、鬼退治に深い理由・動機付けが説明されている訳でもない。敢えてその深みにはまり込むことはしていないようだ。娯楽性を重視した制作になっており、それが純粋に観て面白いに繋がっていた。
まさしくエンターテイメントを目指した作品として印象に残った。だからこそ多くの観客に支持され、再演に至ったと思う。またキャストは、初演から引き続きの人と再演からの人とバランスよく配役しているらしい。そこにも初見の観客に楽しんでもらう、という制作側の想いも伝わる。
今後の公演にも期待しております。
義務ナジウム
公益社団法人日本劇団協議会
劇場MOMO(東京都)
2015/01/23 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
民俗学的な…
「九州の、とある山奥にひっそりと在る陸続きの孤島・美女都村」が舞台。昔から住んでいる村人と新しく移住してきた人の、その土地に伝わる因習をめぐるお話である。その因習というか風習はよく仄聞した内容だが、改めて芝居として見ると、あぁそうなんだと納得する局面もある。それだけ脚本が魅力的であり、それを上手く演出している。また、キャストはワンツーワークスの2人の女優はもちろん、各キャストが魅力ある人物を演じていた。その性格付け、役割が明確でわかり易い公演であった。しかし、その描いている内容はある種の問題提起をしており、見応え十分であった。
ネタバレBOX
さて、問題提起とは、古くからその土地で行われてきた「14歳男子の『筆おろし』」と「女子の『水揚げ』」(通俗的で失礼)をめぐる村人と新しく移住してきた人の意識のギャップ。地方にはそれぞれ生きるため、生活するための習わしがあるが、一方、新住民にとっては理解し難い習わしである。自分が思っている常識が時と場所を変えれば非常識になり得ることも確かだろう。その状況下での自分の信念とは何という鋭い問いが発せられる。実に興味深い公演であった。
また、古城十忍 氏の演出であり、舞台美術もその土地感覚、雰囲気を出した素晴らしいものであった。
次回公演も楽しみにしております。
ひだまり
BEE
テアトルBONBON(東京都)
2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★
普通の生活から…
9歳の少女(美輪ひまりチャン)の普通の生活…それは毎朝決まったTV番組を見ることから始まる。この何気ない普通のことが普通でなくなる、チョットとしたことで破綻する狂気を描くが、その内容が表層的すぎた。
舞台セットは上下の二階建。一階はリビングルームのようで、公演の主筋を展開する。2階部分は、その時の状況によって場面設定が変わる。
そして、説明にあるように「偶然出会った男とのできごとが、少女達を違う日常へと連れていく。」ことになる。この男と出会うまでの前後で芝居の雰囲気はガラリと一変する。ある出来事とは…
ネタバレBOX
いつものとおりTVを見たあと登校する。違うのは母親と一緒に出掛けられなかったこと。母親は就職面接のため、いつもより少し早く出掛けた。少女は通学途中で男に襲われ重傷を負う。一命を取り止めたが体に大きな傷跡を残した。その後、刑事が犯人(視覚障害者)を逮捕し、少女も元通りとはいかないまでも、退院し自宅に戻ってくる。
母親が悔悟・苦悩、父親(知的障害者?)の無垢な仕草が…しかし、感情移入できず泣くこともなかった。ストーリー上は大事件が起きたが、その場面は事後処理として病院ベットに臥した姿で登場する。その演出でもよいが、犯人逮捕にいたる場面(少女の目撃は大きい。しかし、他の証拠があるという台詞はあるが、何のことかは不明)が省略された。また犯人は一貫して無実を訴ったえている。視覚障害者を犯人として決定付ることを避けたのでしょうか。その件が不気味になっている。
ハッピーエンドのようであるが、結末が何かモヤモヤとした感じである。これは芝居でいうところの観客の想像力にお任せ、または余韻を大切にという問題ではないと思う。
演技について一言、子役(美輪ひまり)の明るく、そして傷ついた心の変化が見所であるが、見事に演じており感心した。
今後の公演に期待しております。
死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜
世の中と演劇するオフィスプロジェクトM
座・高円寺1(東京都)
2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
月並みだが、面白かった
大括りにいえば、フランスと日本・江戸時代/明治初期および現代の死刑執行人に関わる人間の苦悩といった話だろうか。日本に死刑制度がある以上、直接か間接かの違いはあるが、その執行に携わる人間がいることには違いない。
この公演を通して「死刑制度」そのものの是非を問うには材料が不足している。まぁ、観客がどう感じ思い描くかは勝手であるが…それほど強いメッセージを発していたか疑問である。
家制度における死刑執行人は世襲であり、その役割(罪人の処刑)こそが自分も含めた一族の「生きる」道だった、という皮肉な話である。現代における問題は「家」という世襲から、個人と家族の悩みとして描かれていた。この公演は、多面的・深耕的な問題提起をしているようだが、芝居としてはわかり易い見せ方になっていたと思う。特に、フランスと日本という国の違いや時代の切り替え演出には、暗転だけでなく、ダンスパフォーマンスを取り入れ魅せる工夫をしていることに好感を持った。
観客が思い、考えるという芝居の醍醐味が感じられ、十分楽しませてもらった。
なお、些細ではあるが疑問も…。
ネタバレBOX
なぜ、フランスのサンソン、日本の山田浅右衛門の両方を取り入れたのだろうか。もし「死刑執行人」=「死刑制度」に対する問題提起であるならば、あえて日本における時代比較(幕末・現代)でも十分に説明できると思う。
説明に「ことの是非を声高に問うことは芝居にはあまり向きません。」と記しているのだから。
また、公演タイトルの「死刑執行人~」という表現は、少なくとも現代における職業・刑務官にはそぐわないのではないか。職業観と人間倫理が混同した捉え方になっているように思う。死刑の執行をする人間の苦悩が、ギロチンという機械の導入で精神的に緩和したのだろうか。そのことが、現代日本の刑務官の気持に繋がるかが疑問として残った。
今後の公演にも期待しております。
ミクちゃん、お風呂の時間です。
劇団青い鳥
小劇場B1(東京都)
2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
年代層によって印象が違うかも…
観る年代層によって受け止め方に濃淡がある公演だと思う。アフタートークでも話していたが、「みなしごハッチ」(両親が亡くなっている)の劇団員も数人いるとのこと。そう言えば、キャストの年齢層も高いような…。しかし、髭(ひげ)ダンスのようなコミカルな動作での登場に、年齢のわりには、お茶目(失礼)な印象を受けた。
ネタバレBOX
舞台セットは、内容に合った趣のあるもので良かった。広さの異なる平台が二段になっており、上の台には二人掛のベンチが置いてある。床には枯れ葉…芝居の中で静かに舞う景色が美しい。
基本的には、母親(三国トキ役 芹川藍)と娘(次女カヲル役 森本恵美=クジ引きで決定)の二人芝居。父親の葬儀のため帰省していた娘が帰るまでの短い時間…母親と娘は一緒の時間を過ごしているが、少し認知症気味な母親の時間はゆっくりと、娘(離婚協議中?)の時間の流れは早い。この時間感覚の微妙な違いが、今二人の生活を現わしている。その様子を遠くから眺めている猫キャストの優しい眼差し。実に秀逸な演出である。
施設に入居している母親…気掛かりな気持を残しながら帰京していく娘の姿…。自分も生きている、という強い気持が込められた感動的シーン。大きな起伏がある芝居ではないが、一定の年齢以上の観客には共感を持たれる、そして余韻が残る好公演だった。
今後の公演にも期待しております。
『タダノヤサイダ』
7millions-ナナミリオンズ-
小劇場B1(東京都)
2015/01/14 (水) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し深みがほしい
育てる男、枯らす男という真逆のコンビが巻き起こす農業研修先でのお話。その研修先の同僚など、多くのキャストが登場し、それぞれが自己紹介する場面から、人物描写が均一であまりメリハリが感じられなかった。
しかし、アグリビジネスに絡んだところから人間くさい話に展開しだすが…
ネタバレBOX
育てる男が耕した土地で収穫できた野菜は、その形が大きく(酵素もたっぷり含むと誤解)、”奇跡のヤサイ”として販売することになった。その甘い話に便乗しようとする研修生たち。しかし、それが実は”タダノヤサイ”であることがわかったときの反応。人間の魂胆がアリアリと感じられる愁嘆場ならぬ醜態場であるが、なぜか笑い転げ、開き直る姿に白けた。「奇跡のヤサイ」から「タダノヤサイ」への転換は、一瞬の暗転で大きさく状況が変化する。突然の状況変化は、観客の心を置いてきたのではないだろうか。少なくとも自分は丁寧な説明が欲しかった。その後、研修先が閉鎖することになり、研修先の人間や、育てる男の元妻、枯らす男を恨む女…など、全登場人物の身の振り方を説明する。更にその後が続き、結末とその余韻が残らなかったのが残念である。
もう少し、日本の農業問題を絡めて、社会性が垣間見えても良かった。
今後の公演に期待しております。
キネマ狂想曲
シノハラステージング
戸野廣浩司記念劇場(東京都)
2015/01/20 (火) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★
映画ファンとしては、少しガッカリ
タイトル通りカプリッチオというのが第一印象である。
初日に観劇した際、視覚障害者の方のため、通常の前説に加え、舞台セットの配置の説明をしていた。多くの観客に観てもらいたいとの思いが伝わる。そのセットは、間口6m、奥行き4mの全体スペースに、上手・下手に長辺2m、短辺1m、高さ60~20cmの長方形台座が横向き、縦向きに5台置かれているシンプルなもの。ただし、このセットが演出上、どのような効果があったかは分からない。
さて、公演であるが、シネマに関する…
ネタバレBOX
映画業界の裏本・噂本の類が描かれるが、その中心的ストーリーが姉弟の恋愛感であり、話の広がりがない。
映画監督が、実姉を主演女優にしたいとの思いが、周りを巻き込んでてんやわんやの騒ぎになる。しかし、そのプロットに新鮮味もなく、納得性も感じられない。単に、姉弟の近親恋愛(U15はこの場面ではない)であるが、そこに愛欲が感じられない(設定上も肉体関係はなかった)。ストーリーを引き立たせるエピソードもなく、40歳過ぎの熟女を主演女優にするためのスタッフによる裏工作(一般的に仄聞できる程度)が…。もう少し業界暗部を炙り出す、抉り出すような見せ場がほしかった。
また、キャストの演技力に差があり、バランスを欠いていた。その結果、感情移入ができなかった。初日で緊張か?左右の手足が同時に出る、また歩くときに手を振らず体(腰あたり)につけたまま、まるで機械仕掛けの人形かロボットのような演技であった。
全体的に未完成のような気がしてならない。
今後の公演に期待しております。
雪のくれた時間
メガバックスコレクション
キーノートシアター(東京都)
2015/01/17 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
温かい心に…
笑みがこぼれる公演である。メガバックスコレクションという劇団の芝居としては、ずいぶんと優しい感じがするが、楽しめる。
まず驚くのが、いつもそうだが、その舞台美術の素晴らしさである。今回も小劇場…といっても貸スタジオといったところが、見事にミニパーキングエリアを作り出していた。
そこで繰り広げられる人間模様。説明にあるとおり「大きな謎やどんでん返しがあるわけでもありません。ただ、日常の風景を切り取った」だけであるが、やはり終盤まで”謎”を引っ張り観せようとする。
しかし、「今回、キャストの半分が新メンバーと言うこともあって挑戦」ということもあり、いままで本劇団の公演を観て来た方には物足りないかも…。
ネタバレBOX
メガバックスコレクションという劇団の得意とするシチュエーション(限定条件下での人間観察・模様)は同じようであるが、決定的に違うのは、そのエッジの利かせ方である。今まではもっと極限状態・緊迫状況であったが、今作はそのスリリングさに欠ける。もっとも説明文からそのことは承知した制作であることがわかる。
劇団特長の”光”ともいうべき魅力に陰りがあり、訳あり女性の苦悩も、少し肩透かしの理由だった。
少し気になった点は、大雪という前提であるが、出入り口のドアが開放されたままの時があり、厳冬感が損なわれるシーンが何回かあった。寒ければ誰かしらドアを閉めると思うが。
上演後、脚本・演出の滝一也 氏に聞いたところ、また深層を抉るような芝居をすると話してくれた。
(Aチーム観劇)
今後の公演も楽しみにしております。
琥珀-elektra-
EgHOST
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
今後が楽しみ
ギリシャ悲劇「エレクトラ」「オレスティア三部作」を題材にした公演であるが、西荻小虎 氏の真面目な?性格を反映してか時間、場所も「書」と同じイメージで制作したようだ。その描いた内容は、王家での愛憎劇そのままであったが、もっと自由に扱っても良かったと思う。いわゆるモチーフとして、その核心だけを租借して、自分なりの劇に挑戦してほしかった。
ネタバレBOX
2014年12月公演「the end of evrything(兼忘年会)」は、宇宙の壮大なストーリーから身近な恋愛観へ呼び寄せる巧みな芝居(客席が舞台になっていたので公演とは言わず)を見せてくれた。今回公演でも宇宙(特に「太陽」や「月」との会話)をイメージした場面がいくつかあった。
もう一つ特徴的だったのは、ダンスパフォーマンス…導入部で女性キャストが踊っていたが、妖艶や神秘とは違い、そぅ呪詛をかけている印象だ。
公演を経ることによって、その劇団のイメージが出来てくると思う。EgHOST
に対する自分の感じ方は”宇宙との関わり”と”不思議なパフォーマンス”である。劇団カラーを確立しつつ、一方、いつでも変化する柔軟性が大切だと思う。それにはしっかりと潮目(時と場所)を捉えてほしい。また、「何か」をモチーフにしたEgHOST版愛憎劇(時)と劇場(場所)を見極め、西荻小虎 氏の特長が感じられる脚本・演出を楽しみたい。
今後の公演にも期待しております。
子どもの頃から
演劇企画集団LondonPANDA
小劇場 楽園(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
確かな芝居
東北地方における家庭の何の変哲もない日常生活が描かれている。坦々と話しが進んでいくが、表面上は穏やかな生活が実は…。
文章でいう起承転結のある分かりやすい脚本だと思う。その演出も手堅いように感じた。もちろんキャストの演技力は素晴らしく、演技のバランスも良い。ホームドラマはその導入部が、その後のストーリーの牽引に影響すると思うが、この公演では見事にクリアーした。とても確かな公演であった。
しかし、気になることが…。
ネタバレBOX
次の点が気になった。
1.衣装から冬季であることは間違いないが、東北地方のわりには外出から 帰ってもその寒さが伝わらない。
2.季節感だけでなく、東北地方の土着性のようなものが感じられない。確か に、青年団、婦人部という地域コミュニティの名は出ていたが、台詞が方 言でないことも一因しているかも。それよりも、少し前(昭和50~60年 代、黒電話等)の雰囲気が漂う(この時代に携帯電話、スマホ等はないの で矛盾もするが)。
3.カレンダーへの丸印…アフタートークで時間堂・黒澤世莉 氏も同様の疑問が出された。 いろいろな解釈ができるとのこと、観劇してイメージしてほしいとのこと。
4.最後に、これが最大の疑問であるが、実姉妹であっても自分の妹が夫と 浮気し、堕胎までしていることを聞き、結末のような思いに至るだろうか? ハッピーエンドという予定調和のような気がした。
今後の公演にも期待しております。
新宿版 千一夜物語
Project Nyx
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
寺山ワールドを現代風に
説明にあるとおり「新宿版 千一夜物語」は、寺山修司が1968年に書いた問題作。古書店で手にした時、200頁を超えていたような気がする。それを途中休憩をはさみ2時間30分程の上演時間にまとめた。
1968年といえば、日本は東京オリンピックを終え大阪万博の準備をしている、いわば活況を呈していた時だったと思う。自分はよく知らないが、東京(新宿)では男性は長髪、女性はミニスカートが流行っていたと聞く。そんな中心街(特に夜)での華やかで幻想的な様子が描かれていた。
とはいえ、当時の時代感覚をそのまま描かず、敢えて現代風に演出しているところが良かった。
ネタバレBOX
1968年当時の風俗的な描写を入れても、それはその当時を知る人たちのノスタルジーを彷彿とさせるだけだろう。もっと若い観客を意識した、新しい「新宿版 千一夜物語」にしたことで、今後も寺山作品が生きていくと思う。そういう意味では寺山修司の作品らしいエッセンスを取り入れながら、時代に相応した見応えのある公演であった。
また、この1968年は寺山修司と羽仁進が共同で「初恋・地獄篇」という映画のオリジナル脚本を執筆している。「第36回PIA FILM FESTIVAL」(2014年9月)で鑑賞したが、この映画はドキュメンタリー8㎜作品であるが、その時代を切り取った映像は見事。
翻って、やはりその時代の一部を切り取った「新宿版 千一夜物語」…”歌舞伎町で繰り広げるアラビアンナイト、詩と幻想とエロティシズムとロックパッション!!”の謳い文句に大いに酔いしれた。
今後の公演も期待しております。
マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015
劇団ショウダウン
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
やはり素晴らしかった!
2014年池袋演劇祭参加作品として観た時も素晴らしかったが、再演も色褪せていなかった。一人何役も演じ分け、人物像もイメージ出来た。また物語の背景・状況説明などストーリーテラーの役割もキチンと行い、その演技力には改めて驚いた。
些細だが、”おぉ”という驚きと”あれ”という傾げの両方があったが…。
ネタバレBOX
まず、”おぉ”の方だが、演劇祭の時にはなかった小ネタの演じとラストシーンの彩りの2つである。
前回観た時以上に表情が豊かになったと思う。それだけ感情表現が上手になったということだろう。なお、小ネタは舞台上手にある船甲板で海軍軍人(副官)が「命などいらない」旨のセリフを吐いた後の部下達の表情…一様に驚いた顔・顔がコミカル。屈んでの演技だけに後ろ席では観にくいかもしれない。
ラストシーン…前回は単に暗転しただけであったが、今回は少し色彩が添えられた。これは観てのお楽しみ。
”あれ”は、前回に比べ立ち回りが小さくなったと思う。前回の劇場・シアター風姿花伝では、舞台をフルに使用していたと思うが、今回は舞台中央での演技が中心であった。大海原に船出するイメージ、格闘・乱闘シーンのスケールが小さくなったなど、物語の壮大さが少し失われたような気がした。立ち回りと引き換えに感情表現が豊かになったのかもしれない。
もう1つ、客いじり的(休憩)シーンがやはり前回と比べ長くなったようだ。
観客の集中力が途切れない程度に(ギリギリだった)…。逆に役者としての集中力はどうなのだろうか?
しかし、公演全体は素晴らしいの一言。
自分は前回公演との比較で書いているが、初見の人は十分楽しめるのではないか。
次回、9月の あうるすぽっと での公演を楽しみにしております。