じゅーこーの観てきた!クチコミ一覧

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『ヘアカットさん』 / 『朝焼けサンセット(朝公演:朝食付き)』

『ヘアカットさん』 / 『朝焼けサンセット(朝公演:朝食付き)』

岡崎藝術座

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

カタルシスある演劇要素の解体と再システム化
いまどき、個人的な心の動きを舞台でそのまま大声で語ったら、イタいやつにしか見えない。この作品では、その演劇的恥ずかしさの回避策として、テキストと身体と音楽の演劇的ポジションを一旦解体してしまった。それも芝居が始まって瞬く間に。で、そこから新たにテキストと身体と音楽の位置を再構築して、この作品独自のシステムを一気に創り上げる手際に固唾をのんだ。この作品がスポットを当てている心の動きは根源的なものであるだけに、恥ずかしさの回避に成功したことにより、強烈かつダイレクトに心に響く。これまでの演劇的成果をすべて取り込んだ後にさらに一歩踏み出した、最先端の舞台表現と言って良い。危惧する点があるとすれば、この次の一歩を踏み出す地点が存在するのか、ということではあるが。

「て」

「て」

ハイバイ

駅前劇場(東京都)

2008/06/18 (水) ~ 2008/06/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

作家の中に神が
こんなminimumな関係性でも、真実なんて実は無い。事実は一つでも、視点を変えれば全く別の存在がそこに。身近な問題ほど一方的な観念にとらわれがちなのに、家族をここまで突き放して冷徹に描くのは、作家の中に神の視点があるとしか言いようがない。突き放した先で唐突に始まるカラオケが理由もなく泣ける。そして、理由が分かってまた泣ける。そういう演劇的構造の妙も、この芝居のスゴさのひとつ。

ジンジャーに乗って

ジンジャーに乗って

快快

王子小劇場(東京都)

2008/05/15 (木) ~ 2008/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

映像的で具体的だから、その背後の根本が滲み出る
地球の、日本の、静岡と東京の、六本木と渋谷の街とそこにいる人を克明描写。その描写手法が半端なく映像的で秀逸。かつ、町や人を見る視点が地に足が着いていてステキすぎる。その結果、具体的な街や人物を描いているのに、現代の、ある若い世代が持つ、共通の空気やら価値観やらがそこら中に滲み出まくり。ある意味、究極のリアルで等身大な描写。一方ある意味、現代に自分たちが存在する必然性を問う、テツガク的で抽象的な根本問題を突きつける、ふるえが来るほどオソロシくて鋭い表現。すげぇや。これ。

mrs,mr.japanease

mrs,mr.japanease

快快

王子小劇場(東京都)

2007/07/25 (水) ~ 2007/07/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

スゲぇ!!
スゲぇ。素晴らしいなんてもんじゃなく、スゲぇ!!
身体表現が、人の心の微妙な機微を語りまくり。
言語が、身体の必然性や、物体としての人間の存在を
饒舌に語りまくり。
で、街を描く視点が、俯瞰的ではなく地べたに座っているような
高さで統一されていて、素敵すぎる。大好きだなぁ、その視点。

身体表現の強度、キャッチコピーのような台詞をちりばめる
言語の表現力の強さ。この両立と相互作用の深さは、奇跡的。
「エースコンタクトでぇ〜すっ。」っていう台詞一つで、
街と、その街の人と、その街の時間のすべてを描けるなんて、
誰が思うんだろう。

今、これを観ないで何を観る、っていうくらい、スゲぇ。

手オノをもってあつまれ!

手オノをもってあつまれ!

スロウライダー

新宿シアタートップス(東京都)

2008/01/04 (金) ~ 2008/01/07 (月)公演終了

満足度★★★★

世界の創造と、俯瞰する視点
この芝居では、ある架空の世界が創造されている。この世界と概ね一緒だが、微妙にルールが違っていて、その世界なりの秩序があるらしい。さらに、それを演劇にする上でも、微妙な「お約束」が舞台上にあって。そうした演劇的な「世界」が組み上がっていく様を見るのは、抜群に面白い。

芝居が進むにつれて、その世界の「物語」が見えてくる。物語というのは、その世界の事象に対する価値観であって、それは、言ってみれば、その世界をどう見るかの視点のこと。この芝居ではスペシャルな視点が用意されており、そのインタラクティブなポジションが、我々の住む世界と、想像された世界をつなぐインターフェイスとなる。それって、我々が、自分の住む世界を理解しようとする方法そのものだよね、ってことで、それが物語であり、しかも、得体の知れない想像された世界に鮮明な説得力を与える要素となっている。

ここではない世界の創り方が、本当に鮮やか。その手つきを見ているだけで、わくわくした。で、その世界の物語を語る構成も抜群な戦略を見せる。後で思い返すと、ああ、あれはそういうことだったのか、と気づく点がちゃんとちりばめられていて。

このストーリーで、おそらく映像(映画)の脚本も作れそう。それくらい、ある種の普遍性がある世界の描き方である。

脳みそフル回転で、ぜひ、ご覧あれ。

天国

天国

ブラジル

ザ・ポケット(東京都)

2007/07/18 (水) ~ 2007/07/22 (日)公演終了

満足度★★★★

手練なストーリ
事情を小出しにしていくストーリ展開は手練。役者の演技も演出も安定感があり、上手な物語世界を創り上げていて飽きない。ただ、あまりに安定で。もっと激しくカタルシスが欲しいなあ。緻密に創った世界がグラつく一瞬があったら、その精巧さが逆に際立つと思うのだけれど。

プール

プール

タカハ劇団

王子小劇場(東京都)

2008/05/02 (金) ~ 2008/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★

心に潜む普遍的な闇へのカイダン
冒頭から、イヤな匂いが漂ってきそう。気持ち悪いモノを眼前に見せないのに、観客を終始キモチ悪い気分にさせ続ける台詞や演出の巧みさ。ストーリーが進むにつれ、次々と明かされるキモチ悪い事実の数々。何かイヤな汗が流れてきそうで、これはまさに怪談。その上手なストーリー展開を支えるのが、人の心に潜む、普遍的な闇に対する鋭い洞察。誰の心にも住む魔物を健全なスタンスで描く物語には、ただ怖いだけのホラーを越える迫力がある。個人的には、闇の暗さがあと一段階さらに暗かったらパーフェクトに思えた。惜しい。

岡田利規 新作「ゴーストユース」

岡田利規 新作「ゴーストユース」

桜美林大学パフォーミングアーツプログラム<OPAP>

PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)

2007/11/20 (火) ~ 2007/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★

刺激的で意義ある実験
チェルフィッチュ的な演劇世界が成立する理由を抽出する検証実験として、本当に面白く、興味深かった。現実と虚構のシームレスな移行により、「現実のドラマ性」と「虚構のリアリティ」が鏡面構造となって、この物語世界を形成している(というより、その鏡面構造無くしては、この物語世界が成り立たない)というのが明確にわかる。ノスタルジーと将来への不安という逆ベクトルの「時間」を同一象限で表現するアイディアも、大学での演劇という条件から担保を得て鮮明となった。ねじれ、うねる、決して平坦ではない演劇空間に、多くの若い役者が賢明に食らいついていたのも印象的だ。完成度、という尺度ではなお物足りない点が多々あるが、その先鋭性、実験性に目を向けるべきであろう。なにより、この演劇空間の遙か延長線上には、まだ見ぬ新たな演劇が存在するような予感がして、本当に刺激的であったのだ。

人間♥失格

人間♥失格

ポツドール

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2007/07/06 (金) ~ 2007/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

いまのダメ人間
今のダメ人間を上手な構成で描きまくり。ダメ〜な感じが芝居が進むほどに淀んできて。観終わると「太宰に出てくる『失格な人間』って、今思うとそんなにダメじゃないよね」って感じがしてきた。ラストシーン、あった方が構成が明確になるが、わたしには親切すぎて冗長に思えた。

なだれる

なだれる

劇団競泳水着

王子小劇場(東京都)

2007/08/22 (水) ~ 2007/08/28 (火)公演終了

満足度★★★★

正統派ラブストーリー
もどかしい純愛を場所と時間軸を縦横に行き来しながらまっすぐに語る。映像作品のような構成を巧みに舞台化しており、本格派の趣。終着点へたどり着くまで、右へ左へ揺れ動くストーリーは飽きることなく面白い。見事。個人的には、終着点前でもう一波乱あったほうが好みではあった。

繭

reset-N

シアタートラム(東京都)

2008/01/23 (水) ~ 2008/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★

拠って立つ地点
この作品を観ながら、自分の存在が、何に拠って立つのかを考えていた。reset-Nのこれまでの作品では、登場人物は本人と本人の関係する人という「手の届く範囲」に拠って存在していたと思う。が、今回は「手の届かない範囲」もまた、自分の存在の拠り所となり、また、存在を危うくするものとして描かれていたと感じる。そういう意味で、等身大を脱却し、その先の世界へ踏み出した、大きな一歩だと思う。しかも、表現上のテイストは、これまでの美学を保ったままだ。スタイリッシュなスタイルを維持しつつ、どこまで射程距離が伸ばせるのか、次回以降の作品もとても気になる。

あなたの寝顔をなでてみる。

あなたの寝顔をなでてみる。

珍しいキノコ舞踊団

吉祥寺シアター(東京都)

2007/07/10 (火) ~ 2007/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

愉しいな
リフティング多用で強度の高い身体表現。でも、観ていて「愉しい」。この「ゆるい感」を醸し出す実力は素晴らしい。いつもながらダンス表現の守備範囲がやたら広く、ダンスってまだまだ可能性いっぱいあるよね、って、わくわくしてくるステージ。

[get] an apple on westside / R時のはなし

[get] an apple on westside / R時のはなし

快快

STスポット(神奈川県)

2007/09/15 (土) ~ 2007/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

身体表現の最先端へ
ファンタジックなストーリーを2作品。演劇というより「ダンス」としての魅力全開。もちろん、台詞ありありで一般的なダンスではないが。情景、状況は言うに及ばず、気持ちや情緒、記憶・追憶まで「身体らしきもの」で浮かび上がらせてくる強力な表現。あまりに飛ばしすぎて、一気に表現の最先端に飛び出たもんだから、「身体表現に身体は必須か」という根源問題にまで超ショートカットで到達。この壁を勢いで打ち破って、この先をぜひ観たいところ。応援せずにはいられない。

もう一度スプーンを曲げよ。

もう一度スプーンを曲げよ。

タカハ劇団

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2007/10/05 (金) ~ 2007/10/08 (月)公演終了

満足度★★★★

見せない強み
その場の外の「物語」を観客の想像力に委ねまくって描ききってしまう作劇の技量は極めて高い。大衆から仲間・家族というミニマムな社会まで、その関係性を冷徹に見抜く、物語の視点も頑強。ただし、従来の演技・演出技法を無反省に取り入たことが、物語世界のある種のリアリティを失う結果となり、ものすごく惜しい。切り取られた物語世界は精緻にして堅牢であるのだから、クセになっている演劇技巧を一旦捨てる度胸が欲しい。

顔よ

顔よ

ポツドール

本多劇場(東京都)

2008/04/04 (金) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★

トランス状態を生むほどの過剰さ
序盤の1〜3章までで、この物語の根底をなす視点を余すとこなく表現しきる辣腕ぶりは見事。で、その後の「過剰さ」が作品に凄みを与えていて。繰り返される人のイヤな部分は観ている観客側にも思い当たるところがあるはずで。その、ふたをしておきたかった部分を「お腹一杯」見せられたことで、観ていて「負のトランス状態」になった。これは作演出家の底力と言わざるを得まい。実は新たな演劇的手法を取り入れ演劇表現の先端性を保とうとしているし、大きな劇場サイズに対処するための演技法を取り入れたりして、エンターテイメントとしてのクオリティ向上にも余念がない。このあたりのバランス感覚には、いい意味でのしたたかさを感じさせられた。う〜む、凄すぎる。

息・秘そめて

息・秘そめて

ポかリン記憶舎

こまばアゴラ劇場(東京都)

2007/06/19 (火) ~ 2007/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

日常に紛れ込んだ非日常な時空の快感
艶やかな日本語で紡がれる、ちょっと昂ぶった、でも、日常の続きの情景。
その中に、ハッとせずにはいられないエピソードやドキリとする一言がちりばめられていて、息を呑む。
さらに、別世界から来たかのような人物が登場するや、もはやそこは日常の続きですらない、ポかリンワールド。
この、不条理なまでの落差が、たまらない快感。

演劇LOVE 〜愛の三本立て〜

演劇LOVE 〜愛の三本立て〜

東京デスロック

リトルモア地下(東京都)

2007/09/30 (日) ~ 2007/10/09 (火)公演終了

満足度★★★★

劇構造の新発明
「3人いる!」は凄い。演劇の構造を「解体」したから凄いのではなく、『n人n役(n≠1)』という演劇の新たな構造体を発明したから偉いのだ。(更に、これは「n人m役(n≠m、n≧1、m≧1)」という構造の成立を予想するものでもあった。)で、この技術的に完成困難な芝居を演じきった役者も偉い。さらに、この構造を違和感なく観客に伝える演出も偉く、その演出に応えた役者も偉い。この見応えこそが、現代演劇の楽しみ。

「リサイクルショップ『KOBITO』」

「リサイクルショップ『KOBITO』」

ハイバイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/06/05 (金) ~ 2009/06/16 (火)公演終了

満足度★★★★

涙なくして笑えない
リアルな人生に比べたら、演劇なんて所詮は茶番なんだという冷徹な認識からスタート。で、表面的にはその茶番を繰り返しながらも、気が付くと舞台にモノクロームでノスタルジックな、記録映画で見たような昔の日本の情景が浮かんでいて。まさにスペクタクル。どんな苦境も成り行きと図太さで凌いできたおばちゃんの生き様と、茶番だろうと亜流だろうとイジケること無くあらゆる手を尽くして雑多な舞台に大河ドラマを立ち上げるこの芝居の演劇構造がシンクロして。途中までは気楽に笑ってたんですけど、終盤は涙なしには笑えないですよ。それがこの芝居のすごみでもあり、おばちゃんのすごみでもあり。たかがおばちゃん、されどおばちゃん。そして、たかが茶番劇、されど茶番劇。すばらしすぎます。

投げられやす~い石

投げられやす~い石

ジェットラグ

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2008/01/24 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★

感情のジェットコースター
狭い空間に絶妙な舞台装置を配し、あらゆる広さの空間を表現してしまうのは演劇の醍醐味。広大な景色が広がるのみでなく、心理的な深遠なる闇なんていう、見えない情景まで眼前に広がったりして。
なんと言っても、この狭い時空に、およそ人生で経験するであろう感情の大波をすべて濃縮して繰り込んでしまったのは、ただただ唖然。「泣ける」なんて、そんな甘いものではない。ホントにキビシイときは、人は泣くことすらできないのだ。
この作者は、自分の人生や感情を、上空から冷徹に見ているのだろうか。そんなことしていて狂っちまわないのだろうかと心配になるほど。
あらゆる意味で、抜群にドラマチックな作品。

革命日記

革命日記

青年団

アトリエ春風舎(東京都)

2008/01/30 (水) ~ 2008/02/12 (火)公演終了

満足度★★★★

ドラマチック
脚本は、あまりにレベルが高い。組織と個人、本音と建て前、罪悪感と正義感、日本的な議論など、非日常的な集団の中に日常そのものな意識・無意識を織り込んでいる。それは、この内容が「リアル」であった先輩たちへの、力強い批判ともなっているし。ただ、この戯曲が役者に要求するハードルもあまりに高い。その結果なのか、あまりに「ドラマチック」に仕上がりすぎているのではないだろうか。この時空は非日常なのではなく、どこかにある日常と捉えた方が、より切実な気がするのであるが。

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