クロッシング・クリスマス・クリアランス(完全版)
バンタムクラスステージ
新宿村LIVE(東京都)
2018/12/21 (金) ~ 2018/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
2018年はこの公演を楽しみにしていた。5年前の初演を観ている。
出演者も申し分なく、スタッフも豪華。事前に公開された衣装つきビジュアルも良く、期待値が上がった状態での初日はその期待を下回る感覚。愕然とした。自分がこの作品に求めているクオリティはこうではないと、はっきり認識させられた。満足できなかった最大の理由はおそらく、上演時間を2時間10分におさめるための速すぎるセリフ運びと、速いがゆえのセリフ噛み、そしてほんのわずかずつの”間”の短縮ではないかと推察。映像作品のような感覚に陥る、目の前を過ぎてゆくシーンたちの連続に、なんだか「あっという間」感を感じて初日は終わってしまった。再演とは難しいもので、物語は分かっているのでお話に対する感動を改めて感じることはあまりなく、しかも無意味に初演と比べてしまう。この初日の印象がやっと塗りかえられたのが3日めくらい。楽日は大変熱量のある演技、客席のテンションも良く満足いくクオリティだった。
上演時間はどうやら2時間20分くらいが最適だった様子。アドリブらしいアドリブなど挟まず適切なスピードのセリフ運びと適切な”間”を設定すればそうなる長さの作品なのだ。そこは無理せずやってほしかったが、休憩無し2時間20分と言われたら「きついなあ、どうしようかなあ」と思うのもまた自然なこと。とにかく、無理に短縮するとこうなるのである。
この作品はとにかく話が良い。どの登場人物のことを思っても、どこかで共感できたり、どんな思いだったんだろうと想像を膨らませることができる。照明はいつもの細川作品らしく青や紫を多用した見えないところを作り出す「ずるい」照明ながらファンタジーパートでは優しいオレンジと緑と赤の照明が穏やかにクリスマス感を演出していた。そしてなんといっても「バンタム銃」である。いつもの銃口の光るモデルガンではなく演者・音響・照明が三位一体となって表現された発砲…はっきり言って、こだわりすぎである笑。体の芯に来る音、そして一瞬視界に広がる光。新宿村LIVEでの新しい表現。良かったです。
その他いくつかNOを突きつけておきたい。まず舞台の高さ。あの低さでは高さのない座席(XB列・XC列)では見えない部分ができてしまう。チケット発売日にチケットを買ってくれた客が一番観にくい席をあてがわれる。今回一番良くなかった、納得のいかなかった点。それから空間のつかいかた。シーンひとつひとつがこぢんまりし真ん中・右・左と場所を移ることで、前方で観ていると密度が薄まった感じがした(後方から観ていると気にならないのだが)。かつ、前方席は段差が無いので前の観客で隠れてどうしても見えない部分が生まれるのである。もったいなかった。
不満をつらつら書いたが。良くなかったと感じた初日でも素晴らしかったご出演者多数、そして速すぎるセリフ運びを調整しただろう公演後半はとても良く、クリスマスイブおよびクリスマス当日の公演は素晴らしかった。初日のクオリティはけして高くなかったが、それでも写真撮影イベントのあとにダブルコールというなかなか無いことが起こったのは、観客の感情をそれだけ揺さぶったということ。千穐楽はトリプルカーテンコール、スタンディングオベーション。そこでおもちゃ3人のコールにあわせ「メリー!クリスマース!」と気持ちよく叫べたのは何よりの思い出である。
以下、ネタバレBOX。
メガネニカナウ4
メガネニカナウ
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2018/11/27 (火) ~ 2018/12/03 (月)公演終了
満足度★★★★
1本目は分かりやすく変わることと変わらないことを考えさせる見やすい作品。
2本目はファンタジックで夢見がちながら演劇ならではの熱量と技術の詰まった傑作。分かりやすくはない。
3本目はまた分かりやすく、時事的なVRネタを絡ませた人間ドラマ。
毛色の異なる3本立てがとても楽しかった!
たくさんのご出演者がいらしたが、1本目の飯嶋松之助くんの演技には感嘆。あの役になったからにはできるかたはほかにもいらっしゃることと思うが、それでもあの場で感じた驚きはまだ残っている。
個人的には3本目で上杉逸平さんのアバターを演じた東千紗都さんもとてもよかった。
劇場移転前の最後の演劇公演にふさわしいお祭り公演だったと思う。ご関係者の皆さま、お疲れさまでした。
遺産
劇団チョコレートケーキ
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2018/11/07 (水) ~ 2018/11/15 (木)公演終了
満足度★★★★
以前からこりっちの受賞履歴などで名前を見ていた劇団チョコレートケーキさん、初見。
731部隊ものということで構えて観てしまったが想定内。
メインにえがかれているテーマに好感が持てた。(仕事で遺言をあつかうので…ちょっとそちらに思いをした時間が生じた。これはいたしかたない)
脚本に対する好みかもしれないが、淡白に感じる場面も。
重いと感じられるテーマを見やすくわかりやすく見せてくれた。力のある団体さんであることがよくわかった。
会場、すみだパークスタジオ倉。久しぶりにあの硬い座席にすわりました、集中して観ていたからか背中とお尻が痛くなりましたね笑 クッションがなければもっとひどかったでしょう、クッションありがとうございました。
劇団文化祭in大阪2018
劇団6番シード
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2018/10/18 (木) ~ 2018/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★
開幕前に想像していたよりも文化祭感があったのは会場設営と観客が休む間の無いめまぐるしさ(土曜日は1日6ステージ!)のなすわざか。
結局4団体を観劇するにとどまったが楽しませていただいた。
Bobjack theater「大阪ベイブルース」
実名役での出演、大いに本人ネタがあってある意味”内輪”に陥りそうなものだがそれが気にならないシナリオと演技とほっこり感あるラスト。
大阪でボブジャックさんを観られて嬉しいし、俳優の力というものを感じさせてくれる俳優を知ることができるのは観劇する者にとって僥倖。
大阪遠征ありがとうございました。あしたもがんばってください!
劇団6番シード「天気と戦う女」
主演・椎名亜音さんのパワーでとにかく進むのかと思いきや途中で見事なまでのパワーダウン、そこを転機にすばらしく跳ね上がる結末。まさしく起承転結の脚本と着替えまくり熱演が続く出演陣に拍手。
細川博司プロデュース「chocolat, sweet, bitter, die./メキシカン・スタンドオフ」
3回目の「メキシカン・スタンドオフ」はキャストが若返り。これまでには無かった「chocolat,sweet,bitter,die.」がその前に上演されることで「メキシカン・スタンドオフ」がスピンオフだったのだと気付く。バリー、一応、かっこいいオトナだと思っていたのに…。「だれも寝てはならぬ」がかかる中おそらくバリーだけが1人寝こける姿が滑稽。スイート夫人のセリフで初めての解釈を得て、「メキシカン・スタンドオフ」の見方も変わる。
新作「chocolat,sweet,bitter,die.」は見事としか言いようの無い脚本、そして細川作品に貫かれる「人生は続く」を感じるラスト。演じ手の一挙手一投足と表情すべてを見逃せない作品であった。2年前の短編集「THE SHORT CUTs SEVEN.」で上演されていたならこれが中心作品になったのではないかと思わされる力作。拍手!
MousePiece-ree「ピエロ魂」
いつものまうすさんの味がとてもあって、東京から初めて観に来たという観客にも大阪でいつも観ている観客にも楽しめただろう作品。ちょっと内輪感があったのが残念。いつもの謎ゲームがたまらなくいとおしくて、可笑しくて、そして「きっとこれはうそだな…」って思ったことがやっぱりうそで。元気にしていただいた。
開場から開演まで10分しかないというのが少し不安だったがなんのその、実にスムーズな運営には脱帽。
力強すぎる制作チームの皆様お疲れさまでした。あと1日がんばってくださいー!
以下ネタバレありの雑感。
リミット・オブ・タイムラグ
RINCO PRODUCE STAGE
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2018/10/05 (金) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
おおむね満足。終演したときに時計の針がぴったり垂直に上を向いていたので「おお!」となった。
開演1分前から開演後5分間は入場できないので注意されたし。
あらすじとして公開されている通り、テレビ局が舞台、これから生放送だというスタジオでの出来事になる。となれば「時間に縛られる」のは納得なわけだが、そこをしっかりとリアルタイムにしたのが今作の非常に挑戦的な点。
力のあるご出演陣がリアルタイムに進行させていきながらも観客にはそれを悟らせない。さすがである。
物語としてはわかりやすく、一度でしっかりと把握できるのだが。
登場人物の名前をいじるのは不快(個人の感想です)。
そういった点はどうにももやもやするので星をひとつマイナスに。
オープニングとエンディングが秀逸。いわゆる「目が足りない」状態になる観客多数と思われる。
わかりやすい・想像しやすい・終劇の快感を得られるという3点で観劇初心者におすすめできる。
トップガールズ
道頓堀セレブ
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2018/09/14 (金) ~ 2018/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★
1982年に英国で初演された戯曲の翻訳もの。ガールズ、まさにガールズ!
今でこそ「オトナ女子」「30代女子」「40代女子」なんて言って「その言い方どうなの」とつっこまれているわけだが英国では36年前この作者にはもうガールズでしかなかったんだなあなんてニヤニヤしながら1幕を観た。とはいえただ楽しいだけではないのは1幕だけでも充分に感じられる。2幕でその予感は大いに当たる。
女性の生きづらさは古今東西変わることなく横たわっている、それが関西の名だたる名俳優たちの口から出る見事な台詞回しと間合いとで小気味よく表現される。(※ラテン語の訳はちょっと聞き取りづらかったです。東京公演では改善されることを願います)男性にはフィクションに見えることがたくさんあるかもしれないが、女性にはよく分かる話であった。
東京公演はこれからなので、純粋に演劇を楽しむ目的で、ぜひご覧頂きたい作品。
ルルドの森
おでんの楽
なんば御堂筋ホール8F 8A会議室(大阪府)
2018/08/18 (土) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★
会議室での観劇というのがなかなか新鮮で、動きのあるシーンなど振動が直接響くような感じがして興味深かった。
最後のシーンに行き着くまで、集中できないようなシーンもあったが。
きちんと、引き込んでくれました。きちんと怖かったです。
あの幅のある空間にあれだけの照明機材であそこまでできるんですね。
ほんと、いろいろと興味深く観させていただきました。
高額時給制アシュトレト
演劇企画 heart more need
コフレリオ 新宿シアター(東京都)
2018/08/01 (水) ~ 2018/08/06 (月)公演終了
満足度★★★★
あらすじから想像できる部分が大きかったものの、予想していなかったこともじゅうぶんに見せてもらえて満足。
つねに緊張のある演技を心地よく味わえた。
W主演のおふたり、感情の揺らぎがよく伝わる素晴らしい演技。
お話がシンプル、そして見せていない部分・わからない部分が多い。これは満足度に非常に関係するところ。ネタバレBOXに記入するが、あるキーワードのために満足度が過度に上がってしまっていて冷静に判断できない…星は3とするか4とするか迷うところ。ご出演陣の魅力をたくさん感じたので甘めに4とさせていただく。
舞台美術、下手の金網は挑戦的。あの席から観るのは勇気がいる。2回目以降なら座ってみたい場所。
フライヤー、目をひくすばらしいもの。良かったです。
フライヤーと舞台美術がリンクするような感じだったのも良かったです。
黄雏菊 Rudbeckia : anjir zero
犀の穴プロデュース
犀の穴(東京都)
2018/06/22 (金) ~ 2018/06/27 (水)公演終了
満足度★★★★
めちゃくちゃおしゃれなオープニング曲が最高。観られてよかった作品。
細川作品の「強い女」がこれでもかと出てきて男たちのダメさ加減が浮き彫りになる構図。
anjir zeroの名の通り、「映日果」で連呼された「クズ」がここにもいた、という感じ。
まさしく「映日果」前日譚であったが、それゆえの安直さもあってそこは残念な部分であった。
土田卓さんと椎名亜音さんの演技に酔うのに最高の作品。
三宅法仁さん、島田雅之さん、田辺理沙さんも素敵でした。
以下ネタバレBOX。
山茶花
ENG
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/06/06 (水) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★
ご出演者さんがたのお芝居にはほぼ文句無し。手練れが揃っていた。
お話の筋に納得いかないようなことはそこまで無いがいかんせん、内容が薄い。物語、脚本に関する不満が残ったので星3つとさせていただく。手練れのご出演者さんたちが作り上げているため星3つの感覚であるが、作り手によってはこれは星3つに届かないだろうと感じる。
物語にメリハリが無いからか、いつもなら公演後頭に残るはずの音楽があまり残っていない。かろうじてオープニングが少し。せっかくオリジナルサウンドトラックまであったのに、残念。
舞台美術もちょっとお粗末。シンプルと言えばシンプルだが、森の緑と炎の赤を兼ねるあたりなど、細部まで見てしまうと作り込みが浅いというか、適当さを感じてしまうつくりだった。
衣装は悪くなかった。ただしわたしが観劇した土曜日にはすでに破れてしまっているお衣装が散見された。もちろんそれだけ激しい動きをされているということである。出てきた人物の衣装を見てしらけるということは最も良くないこと、それがあまり無かったのはありがたかった。お着物の裾が…とか、思うことはあったが、、それは許容できる。
アクションがとても良い、皆さま凄かったのだけれど、見続けているうちにだんだんと見慣れてきて飽きてしまうのはとても勿体ない。
それに、やっているかたの消耗具合が心配になってしまう。舞台を観ながらハラハラすると、物語の世界から現実に立ち戻ってしまう。全てが悪循環だ。
物語にしろ、殺陣にしろ。
「見所」のために総量を減らすこと、そして「ポイントを絞る」ことは良いことだと考えて欲しい。
観客だって疲れるのである。今作は情報過多だったように思う。
人間の世界とは違うところからのスタートでわくわくする幕開けだったのだが。判断ミス、優柔不断、思い込み…そういったものによりこんがらがっていく人間模様の行く先、破綻の種類、読めてしまう。
終演後、「良い芝居観たなあ」とはならなかった。
正義姦
TAAC
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2018/04/13 (金) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★
脚本が好みでなかった、それに尽きる。
好みではないだろうなと予想しながらも、この豪華なご出演陣を観に行かないなんてもったいないと思って観劇。結果、お目当てのご出演者の演技は素晴らしく、なにかにつけこだわりと手間をかけた作品であったことはよく伝わったし、制作まわりのすばらしさは特筆すべきと感じた。
休憩前にある花びらが散るシーン、とても豪勢! あれはとても良かった。
音楽など演出もおしなべて良かったのだが、とにかく、脚本が好みではなかった…こればかりは、しかたがない。
Game of Laplace ~パノラマ島の怪人~
合同会社シザーブリッツ
シアターサンモール(東京都)
2018/04/13 (金) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
とても良かった。
とても良かったし、1回では足らない。
もちろんそれは「1回ではわからない」というのではなく「あのシーンのあそこも観たい」「もう1回○○のシーンを観たい」という類いのことである。
原作アニメのエピソードを膨らませたり変えたりしているのだがそこに妙な違和感は無い(個人の感想です)。
脚本が良くできているしご出演者さま皆さま間の取り方が絶妙、音楽に音響、そして映像との見え方が素晴らしい。宣伝美術と同じテイストの舞台美術も圧巻。
なお、舞台本番では主題歌が歌詞つきで流れるが配信・DVD・ブルーレイでは主題歌が歌詞無しとなる。客席で鳥肌が立つ歌詞つき主題歌が流れる瞬間、ぜひ味わっていただきたい。
後方から俯瞰で観られたのが本当に良かった。
来週の日曜日22日まで、各公演当日券あり。また観に行きます。
それと、パンフレット最高です。
ありがとうございます。
以下ネタバレBOX。
ネタバレをかなり書いていますので、すでに舞台をご覧になった方・ネタバレを知った上でご覧になりたい方以外は見ないほうが賢明です。
クレプトキング
ENG
六行会ホール(東京都)
2017/11/15 (水) ~ 2017/11/20 (月)公演終了
満足度★★★
正統な少年漫画感、あるいはライトノベル感といったところだろうか。テンポ良く話が進み非常に気持ちよかった。
が、観ながら頭のどこかが疲れているのか、見どころであるはずの戦闘シーンで集中が切れてしまった。作中に「なかだるみ」らしきところは全く無いのに戦闘シーンがまるで「なかだるみ」のように頭が休んでしまう…それくらい情報量があり楽しませてくれる作品とも言える。そのあたりは表裏一体なのだろう。
登場人物たちが魅力的であった。だが深入りしすぎることなく、さらりと物語の中を駆けて行ったような感覚。力あるご出演者さんたちが的確に表現される人物たち、とても良かった。
とはいえ平山佳延さんの誰が観ても文句のつけようがない熱演とほかのかたのお芝居、ちょっと熱の差が見えていたのでは、と感じることも。あれだけの熱を見せられてしまうと、同じ場所に立っていても違って見えてしまう。もっとも、そういうギャップが見えてもいい、そんな役だったのかもしれない。
お話にはあまり深みが無かったが、これはこれで良いのだろう。
個人的な好みになるが、満足度はだいたい3。オープニングのすばらしさを加味して4にするか迷うが、、うん、3です。
ストロボライト
PAPADOG
HEP HALL(大阪府)
2018/03/07 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★
映画とほぼ同じように物語が進み、ラストは映画と違いがありながらも希望と絶望が入り交じった雰囲気が秀逸。観た後の感じがとても「ストロボライト」だった。
上演時間90分予定、カーテンコール込みで100分あった回もあったがよくまとまっていた。
満足度は難しい、、プラスもマイナスもあっての4とした(「ストロボライト」が作品としてしっかりとあの舞台の上にあったこと、福地教光さん演じる小林秀がやはり素晴らしかったこと、この2点を考慮)。
観客として、どうしても気になる点が一つ。
作品は初日までに完成させてほしいし、初日と千穐楽に差があるのはよろしくない。チケット代金は初日も千穐楽も同額なのである。
舞台作品としてとても難しいことにチャレンジしていた作品であることは観ればわかるし、稽古が少ない・足りていない、完成には至っていないことも観ればわかるのである。
完成度が上がっていくことは好ましいが、それを正しいと思ってもらっては困るというのが観客の本音だ。
群唱。コロス。複雑な物語、複雑な役の心情、その場の空気の揺れ。とてもよく表現されていた。が、どうにも伝わってこないキーワードがあると、それでもう客の頭はついていけなくなる。「南第三埠頭」「殺人教唆」「被疑者の単独犯行で手打ち」…なかなか難しいワードが続くコロスだがこれがなければ「舞台ストロボライト」はもっと難解だっただろう。何が起こっているのかを何度も繰り返し解説してくれただけでなく、だんだん癖になっていく感覚に陥った。観客としても貴重な経験だった。…のだが、当初はなかなか伝わってこないワードなどあったのである。難しいことにチャレンジしていたことは賞賛したいが、初日に完成していなかったことには否定的な気持ちを残しておきたい。
作品に関することはネタバレBOXに書くとして、制作の面でいくつか。
まずチケット。指定席の番号が手書きされているほかに、公演日時が表示されていない。今回たまたまトラブルが無かったのならそれは運が良かったということ。指定席の公演であればそのチケット券面に何日の何時の公演であるかを表示するべき。
そしてパンフレット。いわゆる「当パン」というものが挟み込みに無く、フライヤーも公演中にいただくことができなかった。公演ホームページは役名と出演者名、出演者の顔写真もあるしっかりしたものを作ってくれていたが、千穐楽一週間後の本日3/18にはもう削除されている。有料パンフレットのみでしか情報が無かったのは残念(その有料パンフレットの塗り足しが足りておらずページ端に白い線がある件はまったくもってデザイナー氏のお粗末ぶりでありまた別の話である)。
販売ブロマイドは全て1枚200円とリーズナブル。しかも良いお写真!これは好感を持った。
特筆したいのはHEP HALLの座席。最前列・2列目・3列目はプレミアム席と銘打って4列目以降より1000円高かった(ブロマイドつき)のであるが、最前列の椅子を多めにし2列目と3列目もずらして並べることで2列目でも視界が良好であった。全ての2列目3列目が良く見えたのではなかったはずだが、椅子の並べ方ひとつで観客の満足度は大きく異なることを公演主催者側の皆さまには広くご認識いただきたい。前方3列が高額の場合で2列目になり視界の大部分が前のひとの後頭部なんていう経験はやはり悲しいもの。劇場の構造、客席の構造は大事なことなのである。
あの子の宿題
犀の穴プロデュース
犀の穴(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/21 (日)公演終了
満足度★★★★
中学3年の5月に転校してきたあの子を巡る(現実と妄想の混じり合った空間を含めた)思い出たち。
正解を導きだせないつくりの作品。
6割がた義務教育である中学時代を舞台にしていて、観客はどこかのシーンで必ず「あるある」を見つけられたのではないだろうか。
「あの子が消えた」という大事件はあるものの、それ以外は基本的に平穏な日常が綴られ、ごく普通の中学生がえがかれる。あの子に何があったのかは示されない。ばらばらの順番で出てくる場面の中にやがてエッセンスが見えてくる。
演劇としての見所は充分。楽しませていただいた。
それにしても、30代の皆さまが演じる中学生たちの爽やかなこと!なんだか心洗われました。
憑依だよ!栗山ハルコさん!
ホットポットクッキング
赤坂RED/THEATER(東京都)
2017/01/13 (金) ~ 2017/01/19 (木)公演終了
満足度★★★★
評価付けの難しい作品。PMC野郎吹原さんとビターチョコレート4人ありきの企画作品で、どうしてもいろいろな制約が目に見えてしまう…。
とはいえ、今作はわたしの好みであった。具体的にコレと指摘できないでいるのだが、どうにも心の琴線に触れた作品だった。
ペーパーカンパニーゴーストカンパニー
OIL AGE OSAKA
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/06/14 (水) ~ 2017/06/18 (日)公演終了
満足度★★★★
出演陣の力量に疑いはなく、全員が良い仕事をしている作品なのは間違い無い。
のだが…
わたしには脚本が合わなかった。
客席が笑いに沸く中、わたしはイライラ、ドン引きの連続。
ただし。
それは受け手であるわたしの問題であって、今この「観てきた」を読んでいるあなたに当てはまるかどうかはあなたが観てみないとわかりません。
そしてわたしには脚本が合わないだけで、演出も演技も素晴らしいと思うのだ。心から。変な音楽も無く、ダンスも無い。ただただ純粋に、出演者の力量に魅了される2時間15分である。
観劇の初心者はこれを観てしまうとこれを超える作品にはなかなか出会えないかもしれない。
以下、イライラとドン引きについてネタバレboxに。
サンサーラ式葬送入門
シアターKASSAIプロデュース
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/03/03 (金) 19:00
価格3,800円
ある種の「どうしようもない人たち」を、観る者が思わず味方してしまうようにえがく引力ある細川作品の力、ここに極まれりという感じの作品であった。
観客を味方にしておきながら、最後の最後で落とす。
いつものように観客に見させない表情があったり、タイミングを外した銃声が響いたり。細川さんのSさ加減を観客は存分に味わうことになった。
初見時、一度拝見しただけでもかなりの満足度であった。
が、あまり好きな後味の作品でもなく、このページの満足度をつけるなら星4つかななどと考えていたが、千穐楽も無事に終わって4日経つ木曜日でもまだこの作品のことを考えてしまう。
尾を引く作品が良いのか悪いのかということはこの際置いておく。星は5つに。
以下ネタバレboxを使用予定。
「THE SHORT CUTs SEVEN」
バンタムクラスステージ
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2016/09/10 (土) ~ 2016/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★
つまみ食い感覚、楽しい短編集
初演がおよそ2年以内の比較的新しい短編の再演3作と、新作短編4作を3公演に分けて上演する短編集。
美麗さに息を止めて見つめたくなる作品、腹筋崩壊というレベルで笑いの起こる作品、席でそのまま続きを観るのが怖くなる作品、海外ドラマを観ている感覚に陥る作品……バラエティ豊かな7作である。どれもが短編ゆえに深くしみわたるような、考察に考察を重ねたくなるような作品ではないかもしれないが、ベースにある「バンタムらしさ」──ギャングやマフィアだったり、犯罪であったり、銃声であったり、家族の絆であったり、常にうつくしい瞬間が観られることだったり、音楽の妙であったり──を手軽に、存分に味わえる。そういう意味で、やはり短編集は楽しい。
当日パンフレットに全7作のあらすじ・役名・キャストがしっかり載っているのが嬉しい。有料のパンフレットには各話の「ないしょばなし」があって興味深く拝読。
一点残念なのは、劇場のつくりのため入場と物販と面会がシビアであること。
ブロマイドを大量に用意してくれているが、開演前に購入希望ブロマイドの番号を提出し支払いを済ませ番号札を受け取り、終演後に引き取りに行くシステムになっている。これは正解だと感じた。ブロマイドを買われるかたは開演前の支払いをおすすめする(強烈なネタバレのブロマイドがあるのでそこのところご了承ください)。
開演のきっちり50分前からしか受付待機列を形成できないのはなかなかのストレス。公演としてこの点が非常に気になるため、星をひとつ減らした。作品たちに対しては星5つとしたい。
誤人(ごにん)
企画演劇集団ボクラ団義
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2016/03/23 (水) ~ 2016/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
面白いのは間違いないが……
面白かった。休憩無しの2時間30分という上演時間だったのでちょっと構えていたが、結果的にひきこまれて時間は気にならなかった。
面白かったのだが、
脚本の骨子がそもそも受け入れがたいという個人的な好みの問題と、
普段観劇している劇団の会話劇のレベルと比較してしまいもっとブラッシュアップできるのではと思ってしまったというのがあり、結果的には☆3.5といったところ。
ボクラ団義さんが普段会話劇というジャンルの公演をされているわけではないことを重々承知しているし一観客が上から目線で言うことではないこともわかっているのだが、そう感じた観客もいるということ。ただそれだけです。
映像の使いかたが巧み。
これも個人的な好みになるがオープニング映像の感じはかなり好きな部類だった。
(残念ながら、映像は中段より上くらいでないと綺麗に見えないかと思います)
また、途中映像効果的な演出が入るのだがそのシーンも良い。
セリフで説明されたことを映像的に確認でき非常に楽しめた。
以下、ネタバレ欄記載。
(物語の骨子についての記述があります)