なしかの観てきた!クチコミ一覧

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郵便屋さんちょっと2016

郵便屋さんちょっと2016

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

戯曲も読んでみたいが…
つか×扉座第2弾。つかこうへい七回忌にあたる為か、至る所でつか作品の舞台上演はあるが老舗劇団の安定性と戯曲のどこを改訂したかわからない時事ネタ絡めた現代版のつか版新作舞台だった。クライマックスに至るまで徹底したつかイズムに嬉し懐かしでついつい涙が出てしまった。
第1弾はチャイコフスキーで滾らせ、第2弾は一貫したタキシード姿の山中崇史SP。自分の座席からは冒頭の大音量SEに若手役者さんのセリフが聞き取れない部分はあったけど、すぐにそんなことも忘れてしまうセリフの連続と場面についニヤニヤしてしまう。
「郵便屋さん〜」は初見の為、どうやって幕引くんだろな?と思いつつ、辞令を手渡すシーンから盾持った機動隊との格闘に、見ていてカタルシスを味わうような懐かしさ。
ジョンと田所が2人並びセリフの掛け合いをする劇団同期姿にも胸熱。

つか正本や原作戯曲も読んでみたかったが、ロビー物販は扉座関連グッズのみ。版権の関係からかな?
いろいろな関係で多分映像化は難しいと思うので、興味ある人は見に行ったら良いさ〜。約130分。

ネタバレBOX

個人的な印象として、生前時は高橋春男氏や和田誠氏が描くような顔しか思い浮かばないんだが、巨人が好きでバカとブスが嫌いで前向きサディスティックでマゾ体質ぽいという印象をずっと抱いていたんだが、今回の舞台をみたら、出生や国籍とか、とかくそっちに言いたがるマスコミに悪態ついてそうな、つか舞台そのものでした。劇場を出れば選挙演説真っ最中、今後もこの手の演劇が上演出来る世の中であればいいな、と。
最後の精神分析-フロイトvsルイス-

最後の精神分析-フロイトvsルイス-

DULL-COLORED POP

d-倉庫(東京都)

2013/10/04 (金) ~ 2013/10/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

骨太かつ上質で芯のある舞台。
初めて行った劇場、住宅地の一角にある劇場に入れば、座席100席程度だが整然と並び、程よく傾斜がついてどこからでも見やすい。少しだけ空調の効き過ぎはあるものの、話の深さと面白さに「なぜ、どうして」と没頭し、その難しさも楽しめるという奇妙さ、あっという間に90分間たった感じ。もし再演する事があるなら、今度は公演日程をもう少し長めに設定してほしい。役者さんは大変だろうけど(苦笑)

ネタバレBOX

第二次世界大戦が始まろうとしている時代、フロイト宅にルイスが(遅刻して)訪れてくる。
無神論者と有神論者、争う事、道徳心、様々な欲、等、精錬された2人の一語一語が緻密なディベートみたいで、やはり外国人が好きそうな演目と思った。
それを操る、谷さんの翻訳と演出は、言葉と行動の明確さがわかりやすく自分は好き。
フロイト役の木場さんの存在感の揺るがない凄みと、巧みなユーモア。
口蓋の癌に侵され、看護はほぼ妻にしか行なわせない。話が進むにつれ出血するに至ってしまうが、出血の仕方が、見ていて何とも痛々しくもそれすら社会や世界観を現しているようで、意味有りげに捉えられそうな感じだった。
ルイス役の石丸さんのフロイトから受ける重圧にも似た会話から逃げない姿勢や、その会話の柔らかな物腰がまた魅力的。
台詞で「考える事をやめる方が狂っている」(だったかな?)が、妙に心に残り、最後の握手の場面はしびれました。
良い舞台を見せていただきました。
治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

2日目観劇
初演観劇済みだが、劇団の持つ質の高さを確信した一作。初演時の感動をが忘れられず「再演」の一報を目にした時から観劇日を心待ちにしていた。また感想をあげるのも蛇足のような気もするが、すでに観劇済みの皆さん同様、今回も感動したのは確か。
初演の駅前仕様の舞台セットから、少し広めのトラム仕様になった(がセッティングにはあまり変化ない)事や側近の所作など多少の変更はあった気もするが、場面の改変などはあまりなかったような気がする。

天皇一家の家庭劇、と例えるのも変だが、与えられた運命の重さに身構え、フィクションでありながら、さながらノンフィクションの舞台を見ているかのような錯覚。奇しくも前回と同じ場面から涙がつらつらと。
話の重厚さから身体の芯から硬直しそうになるが、見飽きる事なく物語の中に入り込ませた話の巧みさに、140分近くがあっという間に過ぎる。良舞台を見せて戴き、感謝。

全体を見たい場合、上手側からの観劇が良いかも。

白鯨-Moby-Dick-

白鯨-Moby-Dick-

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/22 (火)公演終了

満足度★★★★★

文学座名作劇場みたいな
セットらしいセットはほとんどなく、全ての視覚は船上の役者に注がれる。そこには気温を感じる灯りや靄がかかったり、宿になったり酒場になったり。フレキシブルな白い幕引き使いや生声や小道具を楽々と扱いながら奏でる音楽。
海上で他の船と遭遇して白鯨にまつわる情報を得た後の船長の自尊心に巻き込まれた先の結末まで、最後まで飽きさせない展開に童心に戻って楽しめる演劇でした。
正面座席からの観劇だったので、強大なアレの迫力も体感でき、とても面白かったです。

鎌塚氏、すくい上げる

鎌塚氏、すくい上げる

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2012/08/09 (木) ~ 2012/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

おしゃれなコメディ作
倉持さんの舞台セットはよく廻る。そしてよく動き回る(特にアカシ氏)
歌の場面では思わず拍手喝采、気持ちよく笑えて劇場を後にすることができる。楽しかった。

ネタバレBOX

前回は指輪と首飾り、今回はティアラがキーワード。
モトキとセンリの成長を見守るアカシ氏。といった感じかな。
次回作あるなら、また別のご主人に仕えて、月刊執事のBestバトラー死守してほしい。相手のメイドさんを想像するのも楽しいかも。
そん時はタヅルさん、スミキチさんにも登場して貰いたいものだ。
そのタヅルさんとスミキチさんは二人一緒だと、小狡くって小悪人ぷりがより一層際立って良いコンビ。

六角さん、だた万能だけのキャラじゃない、裏側の事情を明らかにする時の迫力良かった。
満島さんの声は舞台だと、もともとかすれ声になってしまうのかな?歌の挿入場面は楽しかった。
田中さんの出演舞台で、あそこまで砕けた楽しいお坊ちゃん役ははじめて見た気がする。
今回も役者さん全員はまり役でした。
つか版・忠臣蔵~スカイツリー篇~(東京)

つか版・忠臣蔵~スカイツリー篇~(東京)

劇団扉座

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2012/06/15 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

女は凛々しく美しく、男は無様でカッコ良い
つかこうへいさんの舞台は、90年代末期から00年初期作しか見ておらず、その当時は過去作品上演で役者は替わり商業規模が大きくなったリメイク作しか見ていないので、面白さとか興奮とかの印象は思い起こさせず、隔世感のようなものというか舞台の見方が偏っていたと思う。
なので、正直その当時は戯曲からなる、つかさんの凄さというものをあまり感じることが出来なかった。

が、今回は!
横内さんと扉座のつかさんへの作品愛が深〜く伝わる素敵で魅力的な舞台だった。
命の息吹が沸き上がるような、色気あって熱気あって楽しくってド派手で!これがつかこうへいの舞台の威力か!こんなの見せられたら即効ホレるって!
台詞の一言一言が血管切れそうなスピードで喋りまくり叫びまくるが、いい役者さんばかりなので楽しんで聞いてられる。
舞台観ながらこんなに興奮したのも久しぶりかも。
おみそれしました!いい舞台を見せて戴きました!!

亨さんの華麗な殺陣と軽快なステップが見られるのもいい!極上至福!

ネタバレBOX

女はレオタード姿の殺陣で魅せ、男は眩しい白ジャケットで極める。
女だけど男だと言い張る〜、や、劇中歌のチョイスからマイクパフォーマンスに至るまで見ている内にグイグイ物語に惹き込まれ、あっという間に終ってしまった感じ。
最後にスポットライト浴びてタキシード姿で全員踊るのか!?と期待したけど、さすがにそれはなかった。‥ちょっと見たかった気もするw。
劇作家近松と松尾芭蕉の弟子其角、赤穂藩浅野家、吉良家、将軍家、近松一座が混じり合うカオスな展開なんだけど、討ち入りの大義が全てに於いて理屈や理想より、救いを求める人々から垣間見える憤りやその人々への気持ちの故の愛や運命からなるものに、つか作品が脈々と息づいているようだった。

冒頭から機関銃のように捲し立てる岡森近松さん、揺るがなくって凄い。
阿久利麻理さん、凛々しく意志の強さと苦難を逆手に取る刹那な表情が良い。
七五郎美奈子さん、いるだけでぴりっと締まる男装の麗人ぷり。素敵。
源吾有馬さんと内蔵助犬飼さん、闘わない意志を貫こうとする姿勢はリーダーたる姿勢と中間管理職の迷い事が透けて見ているようで、時に重苦しく切実だけどわかりやすい。
団十郎新原さん、かつての萩原流行さんばりのキメまくった表情でたまらんかった。
桂昌院の中原さん、自由自在の行動に存分に笑わせてもらいました。
吉保の佑佳さん、阿久利とはまた違う凛々しさと頭の良さが垣間見えてそれがまた魅力的。
上野介鈴木さん、自ら罠にはまってしまい、殿様なのに小市民ぷりが余計にいい人に見え最後まで気の置けない人だった。
内匠頭野田さん、おぼっちゃまぷりに可愛気が前面に出て面白かった、ちょっとイラっともくるけどw。
人数多いのでヒトマトメにするけど(すみません)イケメンぞろいのチーム赤穂浪士!スケコマシやら家族思いやすぐ生き返る人とか、盛り沢山過ぎて面白すぎる。面白過ぎて忠義へ転ずる場面は哀しく美しかった。あと、某小田さんの季語は「さよなら」と「せつない」だと思う。
山本亨さん、台詞にしろ殺陣にしろ流石の安定感、ぐっとくるシーンが多過ぎて、この舞台で見られた事に思わず溜息。

徹底した扉座版の忠臣蔵つか芝居。
セリフがまるで当て書きのようで聞いてるだけで気分が高揚する娯楽舞台だった。面白かった!
パブリック・リレーションズ

パブリック・リレーションズ

JACROW

OFF OFFシアター(東京都)

2013/01/07 (月) ~ 2013/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

幸先よい今年の初観劇
上司だけど働き盛り、上司と部下の間で自己スキルの計りあい、性差の適性を見誤ったチームの仕事具合とか、見入れば見入るほどどこか合致する部分も多く、自分とは縁もゆかりもない業界のお仕事だが、仕事をする職業の根底はどこも同じ。理想と現実の狭間で仕事をする事がいかに普通で大切な事であるかを見せてくれた舞台でした。面白かったです。
上演前と終演後のスタッフの細かい対応や、もちろん役者さんも全員が上手過ぎて素晴らしかったです。

ネタバレBOX

どの役柄を見るかによって、結末がサッドエンドやバッドエンドになってしまうけど、それもまたそれぞれの人生の道程なんだろうなー。
地震の箇所は、話の区切りみたいなものなのかな。
ハーフ肉まんの件、面白かった。帰り、つい肉まん購入してしまいました。おばちゃんなんで!
雨

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/29 (水)公演終了

満足度★★★★★

東北弁に馴染みが無くても面白さは伝わる。
ロビーで山形キャンペーン絶賛開催中でした。

江戸っ子の金くず拾いから東北の平畠の紅花問屋の旦那に成り済ます羽目になり、成りきろうとするが…。
とある場面の亀治郎さんの二役と最後のシーンは流石歌舞伎役者、思わずかけ声掛けたくなる迫力で。何でも出来る人なんだな〜。
最後のドキドキするような気の利いた展開から、ドンデン返しが皮肉な幕切れまで計算された話でした。
井上作品ではおなじみの洒落っ気のある踊りと歌は牧歌的に聞こえ、優しい印象。舞台中央席で見ていたので、ラストのステージ一面に広がった紅花畑は見事な風景でした。

ネタバレBOX

御城代の為、紅花栽培は必須。紅花屋の女房おたかさんが策士!紅花のようにとげのある一枚上手な女性だった。でもって家老や識者達も結構残酷。江戸っ子風に言うならば「上手い事やりやがる」って言いそう。

大店の亭主になりきろうとする徳。釜六と花虫殺しから、ほころび加減が加速し、味方に付けたかった手代や百姓達にも疑われる。
結局、自分を殺したのは自分という結末が何とも哀れ。

今更ながら井上作品の素晴らしさに感動。
八百屋のお告げ

八百屋のお告げ

グループる・ばる

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/09/01 (木) ~ 2016/09/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

面白かった!
真空圧縮袋とラーメンとそのブログが恋しくなる、名作落語かと思うような舞台。役者も盤石のウェルメイドコメディ。
つい♪鬼のパンツは〜と口ずさみそうになるあの歌が挽歌にならずにホッとするが、よくよく考えてみれば、言うだけ言って、とっととお遍路行く八百屋のオヤジひでぇ。
チラシの文面とチラシ絵のモデルは、その八百屋のオヤジの風貌と話し口調なんだろうな。
笑って泣いて、笑って劇場を後に出来る素敵な舞台だった。

太陽

太陽

イキウメ

青山円形劇場(東京都)

2011/11/10 (木) ~ 2011/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

重くて切ない望み
大窪さんと加茂さんのこれからの活躍が楽しみ、と思わされた舞台。
色っぽい伊勢さんも良かった。
寓話であって欲しい分、現代の問題要素も連想させ考えさせられるけど、良い舞台でした。

ネタバレBOX

若い故からの行動なのか、鉄彦の青臭い考え方と、人の良さと衝動的に怒ったりする森繁のエロ本の心の交流(笑)から始まる二人の間柄に対して、曽我夫婦の関連はちょっと薄かったような印象。
ノクスの差別的感情という言葉を聞いた時、いい子ぶる気はないが胸の奥がヒリヒリするような思いがした。
原因を作った克哉がまた憎たらしいと思わせる行動と発言を繰り返し、強烈なインパクトがあった。

選ばれた人間の明と暗。
キュリオからノクスに変わる様はあっという間だったが、各親子が揃い、結が溌溂と「これから」を吐露し始めるところから涙腺が緩くなってきて困った。
それに応える純子さんと黙って聞いている草一さんの姿が切なすぎる。草一さんの後ろ姿しか見えなかったけど、花嫁の父ぽかった。
故郷は同じ場所なのに、ノクスの金田とキュリオの草一を隔てる見えない壁。何処かでこぼれ落ちた金田の心。彼の最後に取った行動にまたホロリ。
またそれまでの行動から、鉄彦と森繁の間に信頼が芽生えたように思えてたので、尚更、最後の手紙を破るシーンの表情を見たかった。(自分の席からは彼の顔が見えないとこだった)
でも、きっとそこから先に進もうとする決意ある顔をしていたんじゃないか、と希望的想像解釈してみる。

良い舞台でした。
入江雅人グレート一人芝居  「マイ クレイジー サンダーロード」

入江雅人グレート一人芝居 「マイ クレイジー サンダーロード」

キューブ

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2012/05/30 (水) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本一ロックな一人芝居
孤高のミュージシャン的な役者舞台。シンプルだけどカッコいい舞台でした。がっつり2時間越え、劇場内が寒かったのは考えてほしい。

ネタバレBOX

上演作品順
100
デストロイヤー/古田新太 作
富士そばの友人/赤堀雅秋 作
スーパーカーナビ
一人朗読劇「いつか見た青い空」
さらば 劇団 松田優作
Run For The Dream/ブルースカイ 作
ブロークバックマウンテン

マペットと共に始まり、出だし3作は静かな幕開けだったような感じ。
古田さんの作品はうん、下品w!普段の会話をそのまま舞台で上演しているかのよう。赤堀さんのは、拡大させたらまんまシャンプーハットで上演出来そうな作品と思った。
ナンセンスさが勢いついてるブルースカイ作品、ゲスト作家陣の中ではこれが一番好み。

個人作品では最近の世間ネタを巧みに盛り込み、笑えたり切なくなったり。配役事の切り替えも見事だが、日常会話と生活感の眼差しがいつもながら優しい。
最後の隕石の話は「んな、アホな!」と思いつつ人生何が起こるかわからんからねw、油断大敵!
いい舞台でした。
劇団東京乾電池の月末劇場 総集編

劇団東京乾電池の月末劇場 総集編

劇団東京乾電池

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/10/02 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

受付 Eの回 観劇
帰宅前、ぶらぶら街を歩いてたら月末劇場総集編をやってて演目に惹かれフラリと立ち寄り。
不毛な会話からガーン‼︎という効果音に至るまで、気楽に見るには十分過ぎる演目でした。面白かった。
約45分。

ネタバレBOX

雑居ビルの一室で精神科、今なら心療内科というのが一般的か。
その受付で机の上の事務用品を整理している女の元へ仕事の休憩時間を利用し、診療希望の男がやってくる。
女は男の家族構成をきっかけに世界各国の飢餓状況から募金を勧め、アイバンク、臓器提供、安楽死協会と、各階の受付嬢が全員独身であるなどとプロフィールなど話し、なかなか受付をしない。その発言内容に男は、クリニックなんて嘘だろ!と悟り、部屋の奥へ突進し確認する。
「この建物には36(?)の受付があって、36人の女が待っています。」と言う女の平然とした発言に、男は逃げ帰ってしまう。その叫び声を別室で聞き、受付に飛び込んできた医師だったが、受付嬢から「誰も来ていませんよ。」とやんわり否定される。宣伝しているのになぜ患者が来ないんだろうと不思議がる医師に対し「こんなにチラシも出して宣伝しているのだから待っていましょう。」と、受付嬢は悠然と構え医師を自室へ引き帰らせる。そして再び「では、次の方どうぞ!」と受付業務を再開するのだった。

行きすぎた善意の行為に受け止められた受付嬢の行動から、とりあえず受付嬢を変えなさいよ〜、なんて単純に笑って見ていたけど、医師が登場したあたりから究極の人生を選ばされていたのではないかと、どこか薄ら寒い思いも生じてしまった。

今のお笑いコンビのネタって別役作品感覚と思って見ればいいのかな。
面白かったです。
楽屋

楽屋

劇団チョコレートケーキ

「劇」小劇場(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

最終日マチネ観劇
元々、有名戯曲だけど半分はチェーホフで占められてる気がw 70年代後半?の戯曲のようで、台詞の端々に「統括」とか聞かれた気がするが、この作家特有の言葉遣いだなーと感じた。比較する程、同舞台は見てないが、戯曲そのものはあまりいじってないのかな。
4人の女優が「女優」を演じる舞台裏での出来事。それぞれの本番前の平常心、業や気性のような凄ましさも見え隠れし、それもまた魅力的でもあるが滑稽だったり。全員上手すぎて、女優Dはもっとヘタウマな人でも良いのではないか、といらん事考えたり。
関係ないが、鏡見ないで化粧する方法、自分も会得したいw 鏡台に置かれた、それぞれの時代の化粧道具がまた心憎い。紀保さんのあの場面は思わず高麗屋だぁ…と感心。
もう、このキャストで三人姉妹上演してw。
約70分の濃い舞台でした。

ネタバレBOX

舞台裏での女優達のそれぞれの平常心、気性、気骨。
それほど華々しくはない経歴に誇りを持っている女優AとB、幸運そうに見えるが実はそれほどでもない女優C、これからの活躍に心躍らせている女優D。

存在していた世代の差異はあったり、女優AとBの軽妙なやり取りの後に訪れる「女優」という意識から見える意地と執着心。世代と役の違いによるニーナの台詞の印象も違って聞こえてくるのは興味深く、それぞれの対比が浮き彫りにされた後に訪れたラストシーン女優3人の瞳に映える照明が綺麗だった。
暗闇に浮遊する魂のような終り方も、残像のように印象に残った。
良い舞台でした。
治天ノ君

治天ノ君

劇団チョコレートケーキ

駅前劇場(東京都)

2013/12/18 (水) ~ 2013/12/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

苦労人の大正天皇
大正時代の話と聞いて、自分の知識の中でぱっと思いついたイメージというのが、はいからさんが通る、竹久夢二、日本と西洋の混合文化、関東大震災、位の低レベルさ。今回の舞台の作品も、フィクションのはずなのにノンフィクションの舞台を見ているかのような錯覚。

大正天皇と節子(さだこ)皇后の品位を見失わない生き方、現人神、時流に変化する政事、それを受け入れる運命。若き日の極々普通のやりとりが後になれば儚く見える。
終盤の展開からあの荘厳な君が代を聞くと日本人と自覚する反面、自分はきちんと生きているのか、とも思う。大正天皇の誕生日を初めて知った。
デリケートな題材で、思想とか信条は置いといて、近代日本人の感情が伝わる華美さは控えめだがいい舞台だった。

ネタバレBOX

明治、大正、昭和、と時代を経た天皇がそれぞれ登場するが、父、息子、孫、と単純に当てはめられない肉親関係。まだ20代の皇太子から退位させられる経緯が実際に起こったやり取りのようにも見え、このやり取りの後に自分達が生まれてくるのかと思うと、いつのまにか歴史の引き継ぎの中にいるんだと思いと、どこか妙に生々しく感じられた。

紀保さん演じる節子皇后、「わたくし」という言葉がこれほど似合う女優さんも貴重だし、これまでの彼女の舞台を見た中では一番適した配役に見えた。元々、伝統文化の素養はある方とはいえ、皇后、皇太后の演じ分けが美しく優しい声色に品があった。また男性陣の所作も厳粛かつ綺麗。昔の男女は人前やいついかなる場面でもピシッとしてたもんなー。

不満と言えば、劇場内入り口から赤絨毯が敷かれて、そこを通っての着席だったが、構造上仕方ないとはいえ、役者さんが演じる場を汚したくないので、出来れば直前までなんか保護カーペット敷いて欲しかったかな。上演台本は既に売り切れてた。残念。
リーディング公演「耳なし芳一」

リーディング公演「耳なし芳一」

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2012/04/07 (土) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

贅沢なリーディングでした
古典作品の「耳なし芳一」に作者の八雲と節子の挿話を盛り込み、日本的な怖さに加え、小泉夫婦の美しくて優しい温もりに触れ、畏怖だけでなく魅せて聞かせた贅沢で素敵な70分でした。
そしてこの作品における木村了さんの和風美青年は貴重な存在。
限られた観客数だったが、50代以上の男女が多かったなー。
やっぱり怖い話には和蠟燭が付き物ですな。
舞台化希望したいが、その時はキャストは変えないでほしい。(あくまで希望)

ネタバレBOX

会場全体暗くさせ、ステージはひな壇仕様。
八の字型に椅子が置かれ、最前列中央にスペースがある。その真後ろにはスクリーン状の白幕、舞台最前列と後方列に和蠟燭が1本設置。
時折入る影絵が綺麗、和蠟燭との陰影に映えて、それにまつわる音響も良いアクセント。
「耳なし芳一」のリーディングに加え、所々に小泉夫妻の会話が挿入される。芳一と怨霊が接する場面では、中央のスペースに芳一とスクリーンに映し出された武士との対面し物語は結末へ。
それに合わせ小泉夫妻のその後も八雲が蝋燭を消し、節子が二人の話と共に舞台の幕を降ろすかのように蝋燭を吹き消し終焉。
暗転した中、客席に訪れた静寂に形容し難い贅沢な余韻を味わいました。

冒頭、演出家の宮本氏が挨拶と解説。
琵琶演奏の平田さんの随所に入る演奏と効果音に緊張したり、気が緩んだり音色のバリエーションが豊か。
木村さんのしっかりと溜めの効いた台詞回しから、大げさだけど狂気の苦悩が良かった。
横田さんの威厳と迫力の伴った武士から佐吉の違いぷりにホレボレ。
春海さんのバランス良いナレーションと和尚さんの痛烈な誤算ぷりの切り替え。佐吉と和尚のやり取りにちょっと吹き出しそうになった。
高畑さんの徳のある幼子の気高さが聞きやすかった。
グレッグさんと大西さんの小泉夫婦、死を受け入れる潔さと覚悟。全てを言い表わさなくても愛情が伝わる言霊が溢れているような厳粛だけど、ほのぼのした関係にも見えた。

八雲の傍にホラ貝あったけど、吹かなかったなw。
て

ハイバイ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2013/05/21 (火) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

満足
初演のみ未見。
数箇所変更はあったけど、今回もハッピーでもバッドでもサッドでもない泣きながら笑っているベターエンド。
デフォルメ家庭の芝居風なんだけど、リアル家庭劇。
観終わった瞬間、充実さと切なさの飽和状態で、すぐには次の行動の動きがとれない。良い舞台見たなー。
当分の間、リバーサイドホテルのイントロが聞こえたら涙腺が緩むと思う。
6/4 アフタートーク部分をざっくり追記

ネタバレBOX

収録日で最終アフタートークの日、トーク部分が収録されるのかは不明。
事前質問記入形式なのだが、あれもこれもと思い出しては書きたかったが、観劇の余韻であまり上手い事書けず、無念。
自分が感じた疑問点の質問に、ちゃんと答えて下さったのでそこは満足。

アフタートーク覚え書き ※( )内は私見です。
・劇中同様、一度、岩井家全員集まろうとしたが失敗
・劇中の真実度、岩井さんは80%、母は70%位と思っているので、間を取って75%で。
・現実の牧師は劇中の人物よりもっとひどかった、葬儀後の会食の場に正体不明の赤いボディコン姿の女性を連れて来たりしてた。その行動に一家ドン引き。
・お母さんの「森君」の件→ほぼ実話。同窓会の件は初演時の稽古でボツにしたが今回復活。
・鳥の糞のシステム→改良しました。
・ハイバイの稽古はメソッドあるのか、どうやっているのか→特になし。喋りを行動として捕らえて欲しかったり、再演を重ねると、役者も慣れてくるので台詞を変えてくれと説明している。
・終わりの棺のシーンの意味→〜アドリブなしの会話だが、終り方はどうでも良いと思っている、家族が協力しないのが良いと思うまま終らせた。

・現在の父や母、兄との関係→父は実家で仕事しているが、顔をあわす事はない。母と兄とは交流ある様子、以前舞台を見に来た母と兄の感想は「だいたいそう」と。戯曲化の際、母に、兄について話を聞いたら自分の思い描いていた兄のイメージとは違う一面を聞き「まずい、悪者に出来ない」と思って書き直した。結果、かなりいい人に盛ってしまった。母や兄が観劇した時は、兄に感想を聞きたくて役者や関係者が集まってきて、エラそーに話を喋っていたのを見たら、上から目線で答える姿にイラッときたのか、もう芝居を見にきて欲しくないと思ったとか。
・父の陽水歌うシーン→(岩井さんがそのまま歌ったりしてくれたのだが、説明するのがムズイのでパス。ほんのちょっとだったけど面白かった)
・ハナクソの件→(色々言っていたけど覚えているのはこの一言)燃やすとクサイ。
・岩井さんは誰ですか→次男です。

・前回のタイトルの名前と違うのは→中身は同じでも主に芸能人の方がやっていたので別物として変えた。芸能人が演じれば、芸能人がしてる芝居になる、知らない人がやればどこかの家族として見る事が出来るから。
・「て」というタイトル→単純にお父さん指、お母さん指と家族の象徴(イメージ?)に使われる。作業をする時も隣り合う指がソッポ向いたら何も出来ない、嫌いなのに近くにいるしかないのはツラいだろう、そんな思いでつけた。
・長女よしこが嫌なヤツに見えた→岩井さんはそんな事は思ってなかったらしく「そう?そんな事ないですよね?」と客席に問うも反対の反応。それが予想外だったようで、その解釈に「感心する」と何度か答えてた。
・笑いながら作ったのに泣いている人がいてビックリした
・父の狼藉について→初演の時もそうだったが、東京の観客は静かに(引いて?)観ていた。福岡の公演の時は大ウケだったので不思議に思ったらしく、アフタートークで尋ねたら「(ウチにも)居るから」という共感のウケ方だったらしい。笑って受け止められる耐性ができているのか、そういう父親に寛大な風土なのかな?と。
・母の通子さんについて、姉と話した。離婚したくてもしなかった、劇中の描写に大体当たっているとの返答だった。
・おなじみのドアノブ→劇団旗揚げの時から使っている。演劇関係者の方、どーぞ使って良いですよ!

・女性役を男性が演じる事について→自分が母親を演じる事や年齢を重ねた事でおばさんも出来るし、その方がリアルじゃないから見ている方もイメージを膨らませやすい、おばあちゃん役をおばあちゃんに近い年齢の人に演じさせるのは客席も心配してみる事になる、男の人がやった方が「おばあちゃん」と表現しやすい、とか。

箇条書きの上覚え書きの為、正確ではありませんがこんな感じでした。
芸劇+トーク 異世代作家リーディング『自作自演』 <第7回> 松尾スズキ×岩井秀人

芸劇+トーク 異世代作家リーディング『自作自演』 <第7回> 松尾スズキ×岩井秀人

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2013/11/14 (木) ~ 2013/11/14 (木)公演終了

満足度★★★★★

貴重で次に繋がる組み合わせ
上演順:
岩井さん エッセイ「自意識がびゅっびゅー」より大検予備校時代の話を3〜4話?
松尾さん 「この日本人に学びたい」小説・哀川翔「コーナー、待てよ」より
「同姓同名小説」第7話「力の魂」ーー竹内力 より の2話
ラフな格好の岩井さんとスーツ姿の松尾ちゃん、どちらも魅力的な声と話す間の取り方や姿、素敵でした。

11/15 PM アフタートーク部分、思い出した箇所を加筆修正

ネタバレBOX

リーディング
役者もやる2人だけど、自著の為か1つ1つの読み方のテンポが良く、この調子で執筆しているのかなとも感じさせ、また読み込みが深くなると1人舞台を見ているかのような面白さだった。
松尾さんの作品は既に10年前の作品なので、今では銀行名称や登場人物の活躍の変化はあるものの、それすら笑いに変化させる口調が可笑しかった。

アフタートーク/進行は徳永京子さん、松尾さん、岩井さんの並び
岩井さん時々マイク手放して話し込む、松尾さんへの尊敬の熱視線が度々見受けられたような(あくまで個人の感想ですよ!)
松尾さん、いつもの調子でいい感じに肩の力を抜いたトーク
以下、思い出し書き
・松尾さんと岩井さんは干支一回り違い
・松尾さんもテレビブロスで連載しているので、それを読んだら後一歩でTV Bros.朗読会になってしまう「〜小説」発行時、実名の方ばかり題材にしたが特に怒られなかった
・岩井さんのアトリエヘリコプター新年会からのSYABU&アンカナの話、松尾さんの薬の名称をさらっとすらすら述べる発言に驚愕苦笑い
・岩井君は平田オリザの「口語演劇」でしょ?役者もこんな感じの格好だよね?の2人の笑えるやり取り
・岩井さんは岸田國士戯曲賞受賞時の松尾さんの手書き評価を飾っている、それくらい嬉しかった!
・松尾さん、最近とある所に書いたコラムが、やんごとなき内容だったので丸ごと没になった話、歌ってみた踊ってみた渡してみた、じゃ一体何を渡せば良いの〜、他、国歌ネタ
・リーディングで読んだ哀川氏のディナーショーに(その当時)参加したが、参加者は女の人が多かった、男の方は哀川翔ぽい人ばかりか田代まさしぽい人が多かった、その中でディナーを食べた
・TVだったらピー音入るライバル話
・ステージ上の衣装について、松尾さんはスーツ姿のまま電車に乗ってやってきた。岩井さんは着替えたが、これでも芸劇に来た時よりましな格好、どーもすみませんでしたー!と恐縮しまくり
・映画「桐島、部活辞めるってよ」について
松尾さんと吉田監督は20年くらい前によく一緒に仕事をしたそう、その映画に出演した岩井さんの役を見て、20年前だったら自分がやっていただろうなと思ったそう。それを聞いて岩井さん感激の面持ち
・小説とエッセイ、コラムの違いについて
松尾さん
雑誌によって違う、コラムは日記を書くようなもの、リズム感が大事(だったかな?)演劇についても書きたいが真面目に書いても(読み手が)しらけてしまう
「あまちゃん」人気、話題になり特集記事で「劇団員の人が俳優として出ている〜」等を目にして、その扱い方にかなり「ん〜〜〜〜?」と腑におちなかった様子
その流れで岩井さんはご近所のオバさんから「演劇なんて」と事あるごとに言われていたらしいが、CMやドラマに出るようになって「よかったわねー」と言われるようになった、その態度の変化に「なんで?」と思った(と言うようなニュアンス)
・最近DJもやっている松尾さん、オクイシュージさんと一緒にやった時、彼の劇団員とその演奏に間が開いた時のやりとり話
・その松尾さん、リーディングの為、前もって読む稽古をマネージャー立ち会いでやってみた、iPhoneのストップウォッチ機能つけ、いざ練習を始めたものの途中でマネージャーさんいなくなるし、時間見ようとしたらロック掛かって見られない、結局時間わからないまま独りで読み遂げた

Q&A
・映画「ゴッドタン」について、珍しい形態の作品だと思ったが
岩井さん)元々劇団ひとり氏の(ト書きは「こんな感じで」等はあるものの)台詞はアドリブで構成している作品、他の演者は指示通りやっていた、2日で撮影した、20台くらいのカメラと一緒に一斉に撮った、DVD出ます
・今後の予定や過去作品の再演について
松尾さん)まだ発表の段階ではない、最近過去作品上演が続いているが再演をする事によって、その作品の内容に足したり引いたりする事が出来るのがわかり良い事だと
大人計画の初期の稽古状況、その内容は今では笑い話、ウケてました
「ある女」は岩井さんと猫ホテの菅原永二さんが演じたが、それをやる人は顎が細い人がやるんじゃないの?ヒゲは?と、松尾さん
ハイバイ作品には大人計画の荒川さんが出演しているが、松尾さんも出てほしい趣旨に前向き発言?
・演出についてアドバイスを
質問者が某大学の生徒さんで演出を担当しているそうで、授業の一環の為、(確か、菊池寛の父帰る)正攻法でやらなければならないらしい、それについて2人とも考えた末「(台詞を)力一杯熱く言ってみれば?」「それで場面事に言う人が変わっていけば?」とのお答えでした

以上、覚え書き
とても楽しく充実したイベントでした。
First Contact

First Contact

ハム・トンクス

シアター711(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白かった
プライベートでビジネスな会話も、間合いの応酬が次第にコント会話に変化していく。内容は常に他愛なく緩い会話だが。
70年代ヒット歌謡、妥協は許さないレディース文化の継承、茨城の郷土愛が溢れた面白舞台だった。楽しかった。
東京コンバットみたいな舞台も好きだけど、今作も面白かった。
約2時間。

非家族【ご来場誠にありがとうございました】

非家族【ご来場誠にありがとうございました】

オーストラ・マコンドー

サンモールスタジオ(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

公演期間が短い
戦前の実在した場所。その当時の人達にすれば、もう80年なのか、まだ80年なのか。決して故郷を捨てるわけではない。必要に迫られた選択はいつの時代にもある。
各々訳あって暮らす場所が無くなり、帰らない、帰れない覚悟を持った上で移民として海外の新天地で生きる決断をし、故郷を去ろうとしている4人の男女の姿。
3日間足らずの出来事。
多くを語らずとも、沈黙という行動でも気持ちは伝わる。
メトロで見せる月船さんが「動」なら、今作では「静」を全面に出している。

港から聞こえる優美な汽笛。この選択は決してこの世の終わりではない、彼らの道程に光輝を見いだすのはかなり先だと思うが、ゆっくり動き出した4人の「生」の息遣いが存分に伝わるいい舞台だった。約90分。

ネタバレBOX

その当時の女性の下着姿って、木綿のシミーズ(スリップ?)の様な気がするが。

家長にあたる男、アキノリ。起床時には太陽に向かい、一日の無事を祈り念仏を唱える。自ら喋り出す事はあまりないが、新天地には希望を持っているよう。着慣れない一張羅を人前でなんとかしっかり着ようとしたり、手際は悪いがシャツの下線を合わせ、ボタンをきっちり確認する仕草にその当時の真面目な日本人の姿が想像出来る。そんな彼が見せた最後の取り乱し方はひたすら悲しく切ない。
フサエ。冒頭彼女がつぶやく一言から物語が始まる。朝になれば、普段と変わらず家族に接する。オオギが入った事により、それまで忘れようとしていた、不注意で亡くした実子の存在を思い出す。凛とした佇まいが前半の姿なら後半は脱力、放心、惜別、悲しみ、と無力に尽きた表情が、見ていて何ともツラく重い。でもそんな顔も美しかった、と思うのは酷い事なのかな。
トカチ。息子。生まれた時から実の親の顔を知らない、アキノリの家の納屋で知り合う。若いからか、家族の中では文字が読める。行く宛がないから一緒にいる感じだが、時代が変わっても彼の様な無気力さと女性に対する勢いに似た無謀な覚悟が見える若者って今に通じてる。悪い事は出来そうにない一線が見えた性格と態度が良かった。
オオギ、監督者から勧めらて加わった女。身体一つで女の商売をしていたため、色々あけっぴろげ。フサエの息子に話かけてる様子は、彼女も子供であり女親でもあり、優しい表情だった。終盤、フサエとの言葉を考えながら話す場面はとても良い場面だった。

彼らは日本に居るうちに、家族写真撮れたのかな。
公演期間が短いのが残念、同じ規模で是非再演してほしい。
『自作自演』<第10回> 立川談春× 前川知大

『自作自演』<第10回> 立川談春× 前川知大

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/12/22 (月) ~ 2014/12/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

違う土俵だけど相通じる組み合わせだった
リーディング順
前川知大さん「地下室の手記」の部分編成
立川談春さん「談春 古往今来」の一編
朗読65分、10分休憩後、2人だけで45分程度のトーク
客席も特に男性の年齢層高かったような印象。

後半は2人による(主に談春師匠が舵取りしているような)トーク。
カシスウーロン、競走馬、落語界に残る蜷川幸雄伝説や談春さんと談志師匠、気難しくも隙のない会話に感心する事ばかり。
こちらも興味深い話ばかりで面白かった。

トーク部分、口述筆記のため、一部発言省略あり。(12/26up)

ネタバレBOX

登場時、劇場スタッフによる紹介。
マイク持って2人登場。飄々とした談春師匠とは違い、普段以上の注目もあり、かなり緊張している前川さん曰く「蜷川さんの現場で稽古前の「作家読み」の本読みした時みたい。あの時は出演者やスタッフ含めて60〜70人近くいる前で喋ったので拷問のような2時間半だった、(今は)それに近い(状況)。
談春師匠も「普段はマイク持って(喋って)ないし。(前川さんの)今日読むの原作ドフトエフスキーって!自分の書いたやつでしょ〜〜、俺のなんか「古?往?何て書いてるかすぐには読めないし」「高田文夫が書けって言ったから書いた」とかなんとか自虐発言連発、と余裕の構えで談春調に場を和ませる。
セットも何もないむき出しのステージにはテーブルと椅子、アコースティックライブで演奏するときによく見るようなマイクスタンドがあるのみ。読みが始まると読み手のみ照明あてられる、そんなステージでリーディング。

緊張の面持ちだった前川さんだったが、簡単な内容説明(現代の日本の男の話、ネット動画、簡単なあらすじ等)から、「え〜と」と自然な流れで朗読し始めるスムーズな導入から(水飲むペースも多かったけど)話に聞き入ってしまった。状況説明の部分も客席に向けて発言してたが、あの表情には演出家としての習性が垣間見えたりして。この続きは次回公演で。

スーツ姿の談春師匠、マイク持って前川さんと入れ替わり。冒頭から喋りが本業故からくるものなのか、しばし歓談の様相だったのにまるで羽織を脱ぐかのように自然に椅子に座り、「赤めだか」の続編ともいえる今回の話を高田文夫氏とのつながりと解説絡め朗読。(「赤めだか」か「古往今来」どちらか忘れたが、その作品を書いた時期は、自分の境遇が「不遇で怒っていた時期」だったそう。)飲み屋で噺家の若い男と同席した男、ジェネレーションギャップから来る小話。音読しながら客席に目を配るのが様になってて、朗読中なのにとっさのアドリブにも即対応、笑わせ感心させ、まるで高座の噺を聴いているみたいだった。
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休憩後、一人掛けソファに座り、手持ちマイクでアフタートーク実施。
上手に前川さん、下手に談春さん。立川ボーイズでは(自分の並ぶ)立ち位置が違うので(この配置は)喋りづらいな。とのこと。
*談春さん、口が滑らかすぎてどこまでが本当でどこまでがネタなのかわからない部分もあるけど、人前に出て喋ってる落語家のトークということを前提に読んでください。

今回の読み合わせについて
談/落語にも江戸言葉とか使うので台本ある、昔、志ん朝師匠や談志師匠の前で師匠読みをやった。今日の話は弟子に聞かせりゃ良かったな。
前/この前(シアターコクーンの「太陽2068」)舞台稽古前の顔合わせで、演出の蜷川さんや出演者、関係者の前で2時間半、脚本家読みというのをやって酸欠になりそうだった。「半分いじめだね」完全いじめです。「蜷川さんは何してんの?」→読んでる横で「ウンウン」と聞いてるだけでした。台本にいろいろ書き込んでいたけど。

落語界の蜷川さん伝説
・昔、まだ蜷川さんが灰皿投げてた時期、杉良太郎さんのドラマ出演していた古今亭志ん駒って人、揉み手しすぎで指紋無くなったっていう人がいるんだけど、あの人、蜷川さんと同級生でその縁で舞台「近松心中物語」(タイトル失念、多分この作品だと思う)に出演した。時代劇だからって着物着て蜷川さんやってたけど、休憩時間には志ん駒が何かと「幸ちゃん幸ちゃん」「駄目だよ幸ちゃん、大事な役者さんに(物投げちゃ)〜」って話しかけるんだって。(演出家なのに)それがあまりにも恥ずかしくって「俺にも立場ってもんがあるし、お願いだからみんなの前で幸ちゃん(呼び)はやめて」って裏でお願いされちゃった、というのが落語界に残る蜷川幸雄伝説。

前川さんと談春さんの繋がり
・昨年1月、談春さんが鈴木おさむ作演の舞台「The Name」に出演し、そこでイキウメの大窪人衛さんと共演した。そこで知り合ったらしい。一番若手でランドセルが似合いそうだけど、自分も舞台の演技は初めてで、あの時は一番若い彼に救われた。(鈴木氏は演技指導をしないタイプで様子見する方らしい。それでかなり悩んだようで)自分は屈折した自意識持っているから毎日どーすればいいんだと悩んだ。出来ることなら公演丸ごと買い取ってなかったことにしたいくらい追い込まれたらしい。それを見ていた大窪さんが「うちの前川は違います。ちゃんと教えてあげたいです。」等々、彼流のアドバイスを送っていたらしく、最終的には「お願いだから芝居を嫌いにならないでほしい」と言われ、人衛に救われたと。それらがあって舞台期間中、世話になっているし、毎回タクシー手配して乗せて帰らせたら、なぜか困惑した表情を浮かべる。理由は車に酔うから。却って迷惑だったらしいと自らオチを振る師匠。
・その時の舞台共演者の方と休憩中の雑談で、前座が前座に教えてる、という話。その時の舞台とそれに絡めた内容から、なにも言わなくても「出来る人もいる。出来るから聞かない。出来ちゃうから。でも出来ちゃうから(それ以上の進展が望めないから却って)かわいそうだなーと。求めてくると客の目が上がってくるのに。」との感想。
・いつも書けるものなの?→だいたい3つ(くらい考えてる?)。本当はゼロだけど、と言ってしまうけど。
・今日の朗読の内容は2人とも「怒り」だね。

トークについて
談/今回前川さんが出るっているから来たんだよ。凄そうだなーと思って。
前/トーク自体もあまりやらない。この前(「新しい祝日」公演中)にイキウメメンバー全員集合のアフタートークみたいなお話会をやった。意外と楽だった。それまで(イキウメでトーク)やったことないから(やるまで)カチカチだったけど、(話を振る立場だったので)僕、楽だった。
談/(役者は)役を与えないと。ずるい。他の人格になるし。痩せたり毛抜いたり歯抜いたり。

談/深夜、落語家や役者や集る某所に有名店があるそうで、そこで飲んでいたら「演劇なんて儲かるはずないのになんでやってる」落語界似たような状態で「知っているのになぜ聞く」と話が極論まで行ってしまい、役者と落語家が喧嘩ふっかけられたりして。あそこは凄い店だよねー。(みたいな感じ)
・(舞台)儲かんないのに、いい加減飽きない?→表現は昔よりも落ちているのがある。社会に物申すわけではない。単純に言ったら面白くないかなー、大勢の人に言っているわけではない。溜まっていたものを出しただけ。

現在の仕事に就くキッカケ
前/(始めて)5〜6年くらい動員出来てないけど。(客の)1/2は友達、(それが動員できるようになって)お客来る時には自分の考えもかわって(今度は)続けられるかと疑問になってた。
談/落語家になったのは普通に働けないからやっているだけ。競艇選手になれなくて落語家になった。

前/高校は中退した。単純に面白くなかったら。実家は新潟、父親は庭師職人。(自分も)サラリーマンにはならないだろうしそんな環境でもなかった。冬場、出稼ぎ行っている人もいたが(父は)親方なんで家にいた。仕事しようにも雪深いところなので、1〜3月は基本やることないから暇。家にずーといて酒飲んでる。冬の間、父は映画を見るのが好きだったので、その影響で自分も映画見てた。勉強して大学行くとは思わなかった。独学で(映画の脚本?)書いてたら、ある時、兄から大学に行けと言われ、そこで入りなおした。その時もなんとなく、という感じだった。
・劇団の長(オサ)でしょ、弟子より大変だよね→それなりに大変(と同意)

イキウメの「獣の柱」を見て
・見たら全員シャブ中みたいな感じなんだよ!劇団員がみんなシャブ中の動きなんだよ、いつもこんなことやっているの?って聞いたら「は?」って顔された。それを日常的にやってるんだよ。いや凄いよ。凄いことをやっているのにそれを凄いことだと気づかずやっている劇団が凄い。難しい。感動した。考えた。あの後、三茶(トラム前)のタバコ吸うところで難しい顔して(感想を)喋りまくっている男たちがいて「めんどくせ」と思ったら安井さんと人衛だった。ここでも人衛つながり。

今後
談/50になると一つのことに打ち込みたくなる。それまでは自由に。(だんだん)落語好きになってきた。考えたら(これまでは)なめてたのかなー。終わった後の(客の)顔見て嘘の落語は出来ない。(客の)本当の素の笑顔を見て「ああ、これでいいんだ」と思えるようになった。それ分かったら中村(勘三郎丈の両手合わせの姿)屋みたいに、手を合わせたくなっちゃう。(気づけば)自分も近頃そうなってた。好感度上がっちゃうね。談志死んだ後、真面目にやってる。褒めてくれる人いないのに。やっぱ好きなのかな。…ね、こういう事言うとあとでいいように上書きされるんですよー。こんなこと言った時には脳が萎縮してるんですよー。
・なんか質問ありますか、なんなら私がマイク持って行きましょうか。といい雰囲気を自らぶち壊す談春師匠。ここからQ&Aへ。

Q&A
1)イキウメという劇団名、かなり変わった名前で驚いたが、なぜこの名前に?
前/勢いでつけた。生きたまま死んで世界を覗いてみようというのがコンセプトで。
談/「イキウメ」なんて普通はつけないわな。アングラだと思われる。「イキウメ」だったら「火炙り」「どざえもん」でもいいんじゃねぇか。

2)イキウメの上演舞台はほとんど観劇した女性。今夏シアターコクーンで上演された蜷川演出の太陽2068の舞台内容には落胆。自分の作品が他の人に演出される時、不安などはない?
前/ない。落語の噺のように、噺家によって違ってくるし、いろんな人にやってもらう方が面白いと思う質(タチ)なので。蜷川さんは個性強いから(作品の変化が)わかっていたから(変化を)むしろ楽しんだ。

3)客と自分が一体化するような、または自分の考えと客席の反応の違いを感じることはある?
談/落語30年やって2回あった。やりすぎないように。今の落語は演劇に近づいている。今の俺のやっていることは落語じゃない。きっと「らしい」ことをやっている。その通りやっててもそれは落語じゃない。この前、横浜(にぎわい座?)でやった時は何やっても「わー」ってウケてた。自分でもやりすぎ。リミッターを外してたというか。お客さんにやらされ「やった」感じだった。あの後疲れた。(あの感じは)何だったんろうねー。あ、終わっちゃった、と思った。
前/作品的に笑いをとる作りではないし。笑いの反応が大きい時もある。演目によっては(笑うような場面が)全くない時もある。不要と思う。ただ、終わった後の拍手の反応で一体感を感じる事はある。綺麗にハマる(瞬間)ことが嬉しい。お客さんの中で座って見るのが苦痛。隣の反応が気になる、初日だけは反応見るために座って見るけど、他は裏で反応見ている。
談/やっているとね、誰が喋っているだろう、と思う時がある。なんというか、一人トリップ?こんな感じで(ここで握りこぶしを目の前に差し出し「これ観客」拳を頭上に移動し「これ神様」)…イタコ…?みたいな関係…?20〜30ステージやっていると俳優が精密に動くと儀式化してくる。その感覚。「儀」が抜ける瞬間がみえて、それが何に捧げているんだろうと思う。祝詞(ノリト)になればいいけど。ダンドリ(?)になってしまわなければいいけど。
・終了後の観客の表情は嘘をつかない、で意見一致。

4)劇場や客、大きくなると伝わりづらくなるのでは。その違和感はある?
前/イースト(の規模なら)はわかるがコクーンでは全身動かないと〜という変化はあるかもしれないが、そのまんま。書いている分では演劇のお客さんがついてきてるから。ただ(3月のスーパー)歌舞伎の時は、とにかくわかりやすく書いた。(これまでとは違う客層なので)歌舞伎関係のスタッフから「このセリフ伝わりません」「おじいさんおばあさん達ここまでやらないとわかりません」と毎回指摘されたので。セリフで「寝ます!」に至るまで3行あるとしたら、それを10行に(わかるように)書き直してた。ここまでやらないとわからないかと思って書いた。
談/感情に流されず。(立川)志の輔なんて「個人芸なのにチームリーダーにならないといけない」と言って頑張ってるふりしてるけど、それだけの技?努力してるし。パルコの客席から1000人近い客前に、同じ演目なのに聞かせる。ま、人のことはいいか。

ここで時間となり「そろそろ時間ですか。このまま残って、私たち2人がコントやってもしょうがないんで、帰ってくれませんか。」
という談春師匠の締め言葉でトーク終了。
前川さん、時間たってからはスラスラ会話していたから、今後も人前に出て作品トークしてほしい。
談春師匠は場慣れもあるけど、最後の振る舞いまで皮肉交じりの軽妙洒脱、さすがでやんした。

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