『自作自演』<第10回> 立川談春× 前川知大 公演情報 東京芸術劇場「『自作自演』<第10回> 立川談春× 前川知大」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    違う土俵だけど相通じる組み合わせだった
    リーディング順
    前川知大さん「地下室の手記」の部分編成
    立川談春さん「談春 古往今来」の一編
    朗読65分、10分休憩後、2人だけで45分程度のトーク
    客席も特に男性の年齢層高かったような印象。

    後半は2人による(主に談春師匠が舵取りしているような)トーク。
    カシスウーロン、競走馬、落語界に残る蜷川幸雄伝説や談春さんと談志師匠、気難しくも隙のない会話に感心する事ばかり。
    こちらも興味深い話ばかりで面白かった。

    トーク部分、口述筆記のため、一部発言省略あり。(12/26up)

    ネタバレBOX

    登場時、劇場スタッフによる紹介。
    マイク持って2人登場。飄々とした談春師匠とは違い、普段以上の注目もあり、かなり緊張している前川さん曰く「蜷川さんの現場で稽古前の「作家読み」の本読みした時みたい。あの時は出演者やスタッフ含めて60〜70人近くいる前で喋ったので拷問のような2時間半だった、(今は)それに近い(状況)。
    談春師匠も「普段はマイク持って(喋って)ないし。(前川さんの)今日読むの原作ドフトエフスキーって!自分の書いたやつでしょ〜〜、俺のなんか「古?往?何て書いてるかすぐには読めないし」「高田文夫が書けって言ったから書いた」とかなんとか自虐発言連発、と余裕の構えで談春調に場を和ませる。
    セットも何もないむき出しのステージにはテーブルと椅子、アコースティックライブで演奏するときによく見るようなマイクスタンドがあるのみ。読みが始まると読み手のみ照明あてられる、そんなステージでリーディング。

    緊張の面持ちだった前川さんだったが、簡単な内容説明(現代の日本の男の話、ネット動画、簡単なあらすじ等)から、「え〜と」と自然な流れで朗読し始めるスムーズな導入から(水飲むペースも多かったけど)話に聞き入ってしまった。状況説明の部分も客席に向けて発言してたが、あの表情には演出家としての習性が垣間見えたりして。この続きは次回公演で。

    スーツ姿の談春師匠、マイク持って前川さんと入れ替わり。冒頭から喋りが本業故からくるものなのか、しばし歓談の様相だったのにまるで羽織を脱ぐかのように自然に椅子に座り、「赤めだか」の続編ともいえる今回の話を高田文夫氏とのつながりと解説絡め朗読。(「赤めだか」か「古往今来」どちらか忘れたが、その作品を書いた時期は、自分の境遇が「不遇で怒っていた時期」だったそう。)飲み屋で噺家の若い男と同席した男、ジェネレーションギャップから来る小話。音読しながら客席に目を配るのが様になってて、朗読中なのにとっさのアドリブにも即対応、笑わせ感心させ、まるで高座の噺を聴いているみたいだった。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    休憩後、一人掛けソファに座り、手持ちマイクでアフタートーク実施。
    上手に前川さん、下手に談春さん。立川ボーイズでは(自分の並ぶ)立ち位置が違うので(この配置は)喋りづらいな。とのこと。
    *談春さん、口が滑らかすぎてどこまでが本当でどこまでがネタなのかわからない部分もあるけど、人前に出て喋ってる落語家のトークということを前提に読んでください。

    今回の読み合わせについて
    談/落語にも江戸言葉とか使うので台本ある、昔、志ん朝師匠や談志師匠の前で師匠読みをやった。今日の話は弟子に聞かせりゃ良かったな。
    前/この前(シアターコクーンの「太陽2068」)舞台稽古前の顔合わせで、演出の蜷川さんや出演者、関係者の前で2時間半、脚本家読みというのをやって酸欠になりそうだった。「半分いじめだね」完全いじめです。「蜷川さんは何してんの?」→読んでる横で「ウンウン」と聞いてるだけでした。台本にいろいろ書き込んでいたけど。

    落語界の蜷川さん伝説
    ・昔、まだ蜷川さんが灰皿投げてた時期、杉良太郎さんのドラマ出演していた古今亭志ん駒って人、揉み手しすぎで指紋無くなったっていう人がいるんだけど、あの人、蜷川さんと同級生でその縁で舞台「近松心中物語」(タイトル失念、多分この作品だと思う)に出演した。時代劇だからって着物着て蜷川さんやってたけど、休憩時間には志ん駒が何かと「幸ちゃん幸ちゃん」「駄目だよ幸ちゃん、大事な役者さんに(物投げちゃ)〜」って話しかけるんだって。(演出家なのに)それがあまりにも恥ずかしくって「俺にも立場ってもんがあるし、お願いだからみんなの前で幸ちゃん(呼び)はやめて」って裏でお願いされちゃった、というのが落語界に残る蜷川幸雄伝説。

    前川さんと談春さんの繋がり
    ・昨年1月、談春さんが鈴木おさむ作演の舞台「The Name」に出演し、そこでイキウメの大窪人衛さんと共演した。そこで知り合ったらしい。一番若手でランドセルが似合いそうだけど、自分も舞台の演技は初めてで、あの時は一番若い彼に救われた。(鈴木氏は演技指導をしないタイプで様子見する方らしい。それでかなり悩んだようで)自分は屈折した自意識持っているから毎日どーすればいいんだと悩んだ。出来ることなら公演丸ごと買い取ってなかったことにしたいくらい追い込まれたらしい。それを見ていた大窪さんが「うちの前川は違います。ちゃんと教えてあげたいです。」等々、彼流のアドバイスを送っていたらしく、最終的には「お願いだから芝居を嫌いにならないでほしい」と言われ、人衛に救われたと。それらがあって舞台期間中、世話になっているし、毎回タクシー手配して乗せて帰らせたら、なぜか困惑した表情を浮かべる。理由は車に酔うから。却って迷惑だったらしいと自らオチを振る師匠。
    ・その時の舞台共演者の方と休憩中の雑談で、前座が前座に教えてる、という話。その時の舞台とそれに絡めた内容から、なにも言わなくても「出来る人もいる。出来るから聞かない。出来ちゃうから。でも出来ちゃうから(それ以上の進展が望めないから却って)かわいそうだなーと。求めてくると客の目が上がってくるのに。」との感想。
    ・いつも書けるものなの?→だいたい3つ(くらい考えてる?)。本当はゼロだけど、と言ってしまうけど。
    ・今日の朗読の内容は2人とも「怒り」だね。

    トークについて
    談/今回前川さんが出るっているから来たんだよ。凄そうだなーと思って。
    前/トーク自体もあまりやらない。この前(「新しい祝日」公演中)にイキウメメンバー全員集合のアフタートークみたいなお話会をやった。意外と楽だった。それまで(イキウメでトーク)やったことないから(やるまで)カチカチだったけど、(話を振る立場だったので)僕、楽だった。
    談/(役者は)役を与えないと。ずるい。他の人格になるし。痩せたり毛抜いたり歯抜いたり。

    談/深夜、落語家や役者や集る某所に有名店があるそうで、そこで飲んでいたら「演劇なんて儲かるはずないのになんでやってる」落語界似たような状態で「知っているのになぜ聞く」と話が極論まで行ってしまい、役者と落語家が喧嘩ふっかけられたりして。あそこは凄い店だよねー。(みたいな感じ)
    ・(舞台)儲かんないのに、いい加減飽きない?→表現は昔よりも落ちているのがある。社会に物申すわけではない。単純に言ったら面白くないかなー、大勢の人に言っているわけではない。溜まっていたものを出しただけ。

    現在の仕事に就くキッカケ
    前/(始めて)5〜6年くらい動員出来てないけど。(客の)1/2は友達、(それが動員できるようになって)お客来る時には自分の考えもかわって(今度は)続けられるかと疑問になってた。
    談/落語家になったのは普通に働けないからやっているだけ。競艇選手になれなくて落語家になった。

    前/高校は中退した。単純に面白くなかったら。実家は新潟、父親は庭師職人。(自分も)サラリーマンにはならないだろうしそんな環境でもなかった。冬場、出稼ぎ行っている人もいたが(父は)親方なんで家にいた。仕事しようにも雪深いところなので、1〜3月は基本やることないから暇。家にずーといて酒飲んでる。冬の間、父は映画を見るのが好きだったので、その影響で自分も映画見てた。勉強して大学行くとは思わなかった。独学で(映画の脚本?)書いてたら、ある時、兄から大学に行けと言われ、そこで入りなおした。その時もなんとなく、という感じだった。
    ・劇団の長(オサ)でしょ、弟子より大変だよね→それなりに大変(と同意)

    イキウメの「獣の柱」を見て
    ・見たら全員シャブ中みたいな感じなんだよ!劇団員がみんなシャブ中の動きなんだよ、いつもこんなことやっているの?って聞いたら「は?」って顔された。それを日常的にやってるんだよ。いや凄いよ。凄いことをやっているのにそれを凄いことだと気づかずやっている劇団が凄い。難しい。感動した。考えた。あの後、三茶(トラム前)のタバコ吸うところで難しい顔して(感想を)喋りまくっている男たちがいて「めんどくせ」と思ったら安井さんと人衛だった。ここでも人衛つながり。

    今後
    談/50になると一つのことに打ち込みたくなる。それまでは自由に。(だんだん)落語好きになってきた。考えたら(これまでは)なめてたのかなー。終わった後の(客の)顔見て嘘の落語は出来ない。(客の)本当の素の笑顔を見て「ああ、これでいいんだ」と思えるようになった。それ分かったら中村(勘三郎丈の両手合わせの姿)屋みたいに、手を合わせたくなっちゃう。(気づけば)自分も近頃そうなってた。好感度上がっちゃうね。談志死んだ後、真面目にやってる。褒めてくれる人いないのに。やっぱ好きなのかな。…ね、こういう事言うとあとでいいように上書きされるんですよー。こんなこと言った時には脳が萎縮してるんですよー。
    ・なんか質問ありますか、なんなら私がマイク持って行きましょうか。といい雰囲気を自らぶち壊す談春師匠。ここからQ&Aへ。

    Q&A
    1)イキウメという劇団名、かなり変わった名前で驚いたが、なぜこの名前に?
    前/勢いでつけた。生きたまま死んで世界を覗いてみようというのがコンセプトで。
    談/「イキウメ」なんて普通はつけないわな。アングラだと思われる。「イキウメ」だったら「火炙り」「どざえもん」でもいいんじゃねぇか。

    2)イキウメの上演舞台はほとんど観劇した女性。今夏シアターコクーンで上演された蜷川演出の太陽2068の舞台内容には落胆。自分の作品が他の人に演出される時、不安などはない?
    前/ない。落語の噺のように、噺家によって違ってくるし、いろんな人にやってもらう方が面白いと思う質(タチ)なので。蜷川さんは個性強いから(作品の変化が)わかっていたから(変化を)むしろ楽しんだ。

    3)客と自分が一体化するような、または自分の考えと客席の反応の違いを感じることはある?
    談/落語30年やって2回あった。やりすぎないように。今の落語は演劇に近づいている。今の俺のやっていることは落語じゃない。きっと「らしい」ことをやっている。その通りやっててもそれは落語じゃない。この前、横浜(にぎわい座?)でやった時は何やっても「わー」ってウケてた。自分でもやりすぎ。リミッターを外してたというか。お客さんにやらされ「やった」感じだった。あの後疲れた。(あの感じは)何だったんろうねー。あ、終わっちゃった、と思った。
    前/作品的に笑いをとる作りではないし。笑いの反応が大きい時もある。演目によっては(笑うような場面が)全くない時もある。不要と思う。ただ、終わった後の拍手の反応で一体感を感じる事はある。綺麗にハマる(瞬間)ことが嬉しい。お客さんの中で座って見るのが苦痛。隣の反応が気になる、初日だけは反応見るために座って見るけど、他は裏で反応見ている。
    談/やっているとね、誰が喋っているだろう、と思う時がある。なんというか、一人トリップ?こんな感じで(ここで握りこぶしを目の前に差し出し「これ観客」拳を頭上に移動し「これ神様」)…イタコ…?みたいな関係…?20〜30ステージやっていると俳優が精密に動くと儀式化してくる。その感覚。「儀」が抜ける瞬間がみえて、それが何に捧げているんだろうと思う。祝詞(ノリト)になればいいけど。ダンドリ(?)になってしまわなければいいけど。
    ・終了後の観客の表情は嘘をつかない、で意見一致。

    4)劇場や客、大きくなると伝わりづらくなるのでは。その違和感はある?
    前/イースト(の規模なら)はわかるがコクーンでは全身動かないと〜という変化はあるかもしれないが、そのまんま。書いている分では演劇のお客さんがついてきてるから。ただ(3月のスーパー)歌舞伎の時は、とにかくわかりやすく書いた。(これまでとは違う客層なので)歌舞伎関係のスタッフから「このセリフ伝わりません」「おじいさんおばあさん達ここまでやらないとわかりません」と毎回指摘されたので。セリフで「寝ます!」に至るまで3行あるとしたら、それを10行に(わかるように)書き直してた。ここまでやらないとわからないかと思って書いた。
    談/感情に流されず。(立川)志の輔なんて「個人芸なのにチームリーダーにならないといけない」と言って頑張ってるふりしてるけど、それだけの技?努力してるし。パルコの客席から1000人近い客前に、同じ演目なのに聞かせる。ま、人のことはいいか。

    ここで時間となり「そろそろ時間ですか。このまま残って、私たち2人がコントやってもしょうがないんで、帰ってくれませんか。」
    という談春師匠の締め言葉でトーク終了。
    前川さん、時間たってからはスラスラ会話していたから、今後も人前に出て作品トークしてほしい。
    談春師匠は場慣れもあるけど、最後の振る舞いまで皮肉交じりの軽妙洒脱、さすがでやんした。

    0

    2014/12/24 14:48

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大