なしかの観てきた!クチコミ一覧

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ジョギリ婦人

ジョギリ婦人

芝居流通センターデス電所

「劇」小劇場(東京都)

2012/03/21 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

怖いけど面白い
さすがに正視出来ない刺激的な箇所もありますが、そこは自己責任でなんとか乗切りました。
怖いのになぜか微妙に笑い、歌唱力は抜きにしたノリのいい音楽、なんというか、お馬鹿ダーク系ホラーファンタジーといった感じ。
それでもちゃんと舞台劇として成立していたのが興味深かったです。

ネタバレBOX

子供の喪失した後の夫婦の現実逃避、他、話の筋はとてもわかりやすいけど、一夜の出来事で追いつめられていく過程にもうちょっと台詞として補える部分もあったような気も。
子供アイテムの印象はランドセルしか頭に残ってない。
小物ぽい悪役が返って現実的な小悪党ぽくてハマっている。
血糊の出し方は微量だったけど、あまり多過ぎても気分悪くなりそうなんで、個人的にあれ位でちょうど良かったです。

喪服姿のジョギリさん、都市伝説になれるルックスがまた良い。
妻が両膝を怪我した時点から、生死の有無も曖昧になってきたけど、そこからジョギリ婦人は彼女を伝承者にしたんだろうなー。
婦人出てきた時は無意識に両手握っていた、ひー。
最後の電話メッセにわかっていても背筋がぞくっときた。
刺激的で怖いけど面白い舞台でした。
ガラスの動物園

ガラスの動物園

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2012/03/10 (土) ~ 2012/04/03 (火)公演終了

満足度★★★★

家族の回顧録みたいな
全般的に悔いや哀しさ、絶望に覆われ、爽快感はないけど不思議と嫌悪感は湧かず、むしろもう一度見たいと思わされた舞台だった。
印象派絵画みたいな舞台セットと、清廉という言葉が似合いそうな舞踊。

ネタバレBOX

1930年代に生きるアメリカの下層中流家族(父不在)。
過去まだ幸福だった頃の生活の思い出に浸り、子供を知らず知らずの内に無意識に追い込んで暮らしている母親。そんな母親に支えられて暮らしてきた姉弟。端から見れば「母ちゃん!」って呼びかけられるタイプと思った。

現実の生き方に適応出来ない内気な娘。
繊細な内面とコンプレックスがあるが故の孤立。父親の残したレコードで現実逃避する姿に、見ているこちらはその儚さに目を奪われっぱなし。ワンピース姿が似合ってて可愛かった。
弟の回想が夢と現実の狭間で足掻き、母と姉が大切な人なのに批判的で非情さも在り、しこりのような葛藤に常にジレンマを感じ生きている。
天秤にかけられない気持ち、抑制された状況とか、発する台詞の一語一語に胸に詰まる物があった。
古式懐しいアメリカ人、ジムの快活で誠実さの罪。

白い舞台、正面奥に机、上手下手の両側に三ヶ所の扉。紗幕使い。
背景と一体になったり、誰かの心の中から溶け出したかのような踊り。
運命の終わりを告げるかのような、娘の蝋燭を消す場面の鮮烈で静かな幕切れ。
素敵な舞台でした。
個人的に、翻訳物の長塚さんの作品は好みと思った。
Vector(ご来場ありがとうございました!)

Vector(ご来場ありがとうございました!)

613

劇場HOPE(東京都)

2012/03/24 (土) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★

専門用語の解説が欲しかった
遺伝子治療の研究している技術者グループとそれを支えている企業。
企業倫理と研究成果、努力の道程と、それにまつわる者達の生死に対する考えとか丁寧に描いていたと思う。
理化学医療分野に関する専門用語が多々出てきたので、単純な用語でも補完する意味で解説が欲しかった。

ネタバレBOX

企業と研究の狭間、成果の見えそうで見えない使命感と達成感、命に関わる仕事だけど、実際には生身の人間とは接せず、データ等で生命に関わり、一般的には先生と呼ばれるそんな人達の話。

長年研究を重ねてきた遺伝子治療の成果がようやく完成し、発表を待つばかりだった。そんな中、研究チームにいた同僚の一人が退職してしまう。「一身上の都合」を信じ気持ちよく送り出す主人公。その直後、他社から自分達とほぼ同内容の研究成果の発表が世間一般に報道される。
元同僚は既にその会社に入職し、産業スパイだったと判明するが後の祭り。ギリギリとした時間が過ぎて行く。
一方、研究者の一人が余命一年余りの末期癌に侵され研究を退く事になり、その告知を同僚の主人公に告げる。
自分達が身近に接してきた遺伝子工学から得るもの失うもの、心境の変化を狭い舞台で何気ない雰囲気に見せ、繋げていき興味深かった。
多少、駆け足過ぎて説明の端折っている部分も多く、演者の数人台詞の聞き辛さもあり、ちょっとマイナス点も。
医療面か企業面、人間関係どっか一本に絞ってほしかったかも。

怒号場面が多くそれが過剰に見え、ちょっと煩くてくどく感じた。
また舞台上の端と端で会話をやり取りされると(個人的にだけど)観賞の視点が散漫に見えて前方席だと非常に見辛かった。
ステージ上で場面展開に挿入歌入りのBGMを多用していたけど、あの歌詞は彼女の心境を現していたのかな?

モリヤさん役のコメディアンヌぶりがもっと徹底していれば、とも思った。始まったばかりに見たので、後半の日に見ればもっと活気あるシーンになりそうな予感。
ワンダーガーデン

ワンダーガーデン

玉造小劇店

座・高円寺1(東京都)

2012/03/08 (木) ~ 2012/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

四獣バージョン観劇
時間の都合上、男優編のみ観劇。
あ、舞台転換時に四華の女優さん達出てたか。
洋館に住む三姉妹の生き方模様を、明治末期から大正期〜昭和初期にかけての時代背景を彼女達の庭を中心に舞台に話が進む。
舞台は庭のみ!
青春期から中年になってまでの生き様がその庭を通して、結構厳しい時代だったと思うが活き活きと明るく描かれている。
昨今の大阪版の朝ドラを見たような、後味良く気持ちのいい舞台でした。

ネタバレBOX

女性から男性へと切り替わりは自然過ぎて違和感なし。
三姉妹+義理妹でもカツラつけず、素のままでも乙女心がきゅんきゅん(笑)伝わってくる花組4人のチャーミングで艶っぽさのある事!
それに対して、相反するような終わり間際のグダグダさというかゆるゆる加減のやりとりの軽妙さに、それまでの話が飛んでしまったw。

最後の出会いの締め方に思わずジンときた。
きれいごと。なきごと。ねごと。

きれいごと。なきごと。ねごと。

Cui?

新宿眼科画廊(東京都)

2012/03/17 (土) ~ 2012/03/21 (水)公演終了

満足度★★★

初日ソワレ観劇
散文詩のような台詞の青春メッセージ、と思った。
約65分、座る場所によっては台詞の聞き取り辛さがあるかも。

ネタバレBOX

登場人物の大半はティーンエイジャー。彼女、彼らの台詞は冒頭から終盤まで一言半句のような絶叫、絶呼のキレキレの状態で突き進む。
音響と微々たる照明のみでメリハリをつけていくがリフレインが頻繁だったのと、個人的に人間関係の絡み方にあまり入り込めなかった。
着地する術を待たない終り方に、あの年代特有の時間の間隔の焦燥感や怒りが見え隠れしているようだった。
サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2012/03/06 (火) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★

ブラボーな舞台
実際「ブラボー」と声かけた人はいなかったけど、なんとなく声に出てしまうような6人の女優さん達でした。
特に大きな動きや目立つセットはない、あんまり見た事ないけど能舞台を観てきたような感じ。そういう演出なのかな。
格調高く華美で嘆美な台詞劇。でも不気味な怖さも感じた舞台。
出演者の衣装が黒基調で、和洋折衷といった感じ。
麻美さんの乗馬服ぽい衣装カッコ良かった。
白石さんのスターウォーズに出てきそうな衣装もまた似合ってて凄かった。

ネタバレBOX

女同士の生々しいやり取りの数々。姉妹との口喧嘩、親子で口喧嘩。
しかし三島文学、そこはかとない美しい言葉遣い。
毎回サド公爵本人は出て来ないけど、演出の野村萬斎氏が今回のサド公爵かもと、イメージ。

円形状になった箇所でテーブルと椅子が2〜3脚あるのみ。象徴となるシャンデリアを操作する町田さんカワイイ。
白石さんと麻美さん、相変わらず素晴らしいが「個」の力が大きすぎて見えたが、それぞれの品位、高貴、風格、色気、ふてぶてしくもしぶとさのある存在感は見応えあり。
神野さんの聖女から修道女に変化するが優美さがあって素敵。
姉を出し抜いて他国へ行く妹の若さが美波さんに合っていた。
虫も殺さぬようなかわいい顔した蒼井/ルネなのに、二幕終わりの独り語台詞の後の表情がまたおっかなくも良かった。全般に凄みが加わればもっと迫力あるように思えた。

サド侯爵が釈放されてルネ宅へ訪問した際、「二度とお目にかかる事はないでしょうよ」と突き放す一言は彼に対しての侮蔑?

素晴らしい一日

素晴らしい一日

自転車キンクリーツカンパニー

駅前劇場(東京都)

2012/03/07 (水) ~ 2012/03/13 (火)公演終了

満足度★★★★

ロードムービー風な舞台
借金取り立ての一日の出来事なのに、深刻にならず見終わったあとになんかほのぼのした感じになる不思議でゆったりした、いい感じの力加減の舞台でした。
舞台セットが器用に出現して見ていて飽きない。

達者な女優さん達の中で黒一点(?)の内浦さんが、結構いい加減でデタラメな性格をしているだけど、あの行動力があるから、ついつい心開いてしまうんだろうなーと思わせるようなナイスな笑顔でした。
徐々に態度と表情が変わって行く伊勢さんの最後の笑顔も良かった。

「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2012/03/02 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

最終日観劇
ザ・シェルター/切羽詰まった状況でロウソク灯し家族集まり話す様は奇しくも昨年の夜を思い出した。
寿歌/シス版がポップスならカトケン版はノリの好い演歌っていう感じ。相変わらず小松さんは身体の動きが面白い。

ネタバレBOX

2作品に赤い傘差してレインコートを着た女性が絡む事なく登場したけど、あれを入れた事で作品の繋がりを見せたのかな。
占部さんの小学2年生可愛かった。
パーマ屋スミレ

パーマ屋スミレ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/03/05 (月) ~ 2012/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

九州女の気風の良さ
説明にある通り、「たとえば〜」→「パーマ屋〜」→「焼き肉〜」の時代並び。
配役の設定や舞台進行が前作に似ていたように思うが、当時の社会背景の状況(在日一世〜、韓国籍や日本籍の選択、生きて暮らす国とか)を考えれば、設定が近くなるのは仕方ないのかも。しかし、なぜか笑え、また涙する家族愛に包まれた良い舞台だった。
大人になって登場している大吉の最後のセリフが、現在の状況とリンクしているようだった。

ネタバレBOX

元々自分が九州の生まれなので、ローカルニュース等で伝聞として見聞きする機会はあったように思うが、過去の出来事という認識度で、なんというか、炭坑節=盆踊りのイメージ。
昭和の三人姉妹を軸にした話。
物語の語り部となる成人した長女の息子、大吉の目を通して話が進む。
炭坑=山の事故をキッカケにいろんな歯車が狂う。

長女・初美は息子と一緒に実家に出戻り、小さい飲み屋?をやっている。
次女・須美の夫は炭鉱事故で一酸化炭素中毒になり、自暴自棄気味。そんな暮らしを支えている須美。
三女・春美の夫も炭鉱事故でCO患者になり、新婚間もなく介護生活へ。
年月が進めば病状もじわじわと身体を蝕み、自由が利かない夫はそれぞれの妻を痛めつける。
弱者救済は看板だらけと息巻いて、弱者(炭坑夫)救済に奔走するスミ。だが、肝心の炭坑組合からも排除されるハメに。
崩壊が拡がって行く中での、それぞれの夫婦と家族。

土壇場まで踏ん張り続ける須美の心意気に、九州女の気風のよさが垣間見えるが、必死に見えない所がまた良い。
やりきれないもどかしさと怒りが混じった松重さんのソンフン。
屈託ない春美夫婦の苦しさ故の悲劇に思わず泣けた。
帰りたくても帰れない場所となってしまった生まれ故郷の状況に、つい現在の原発事故を思い出してしまった。
それについて苦しんだり悩み続けてたりが、この先続いている状態があるのは、嘆かわしい。
レシピエント

レシピエント

ドリームプラス株式会社

紀伊國屋ホール(東京都)

2012/02/29 (水) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★

手塚治虫の医療系漫画読んだ感じ。
縁あって観劇。
冒頭、若手キャスト(女性客多かったが自分が無関心な故、誰がどんな活躍をしているのかわからない)の登場の仕方を見た瞬間、G2の演出とこのキャストについて行けるか不安でしたが、想像以上に見応えがありました。

感情を表に出さず、だからって陰になるわけでなく静の動作の多かった佐藤さん、生真面目っぽさが似合ってる。
ほぼ出ずっぱりだったが、作品の要になる艦長が安定していて良かった。

ネタバレBOX

生死を彷徨う大怪我をおい、運ばれた先は腕は優秀だけど訳あって違法スレスレの医療行為を行っている医師。
術後、移植した腎臓を介して、元の持ち主(ドナー)の性格や趣味思考が移植された側の優秀な取り立て屋・会田(レシピエント)の行動として、随所に出てくる。
疑問を生じた会田は担当医師と共に原因を探って行くが、術後の会田の変化をキッカケに手下達の下克上も絡まっていく。

終盤の会田の決断は、ドナーとレシピエントが一体感となった故の行動と思う。
前半笑わす場面もあったけどちょっと硬かったのが惜しい。
音楽の挿入の仕方は違和感、というか苦手だった。
朗読劇「幻色江戸ごよみ」

朗読劇「幻色江戸ごよみ」

Team申

PARCO劇場(東京都)

2012/03/01 (木) ~ 2012/03/07 (水)公演終了

満足度★★★★

最終日観劇
連日ゲスト出演があったらしいが、最終日はメイン3人のみの出演。
本番前の場内アナウンスとマナー注意が三者三様+劇場スタッフによる出来過ぎのコント芝居。見てて楽しかった。
チーム申に限らず、パルコはこんなリーディング公演を固定化して上演企画してくれないかな。

宮部みゆきの時代物小説。
最終日演目「器量のぞみ/神無月/紙吹雪」

ネタバレBOX

舞台上は落語の高座そのもの、座布団3人分。そこでリーディング開始。ト書きと多様な役柄を起用に演じ分け、見ている(聴いている)観客はその世界を頭の中に情景として容易に思い浮かべる事が出来る。
時折効果音や映像?の演出も交えて表現。

蔵さん、神無月の止むに止まれぬ盗人と器量のぞみの茫洋としたお信が良かった。
亀治郎丈の声色変化は流石。落語口調になったり、ナレーター声も聴き易い。
佐藤さんは朴訥とした役柄と柔和な話し方が聴きやすかった。
うれしい悲鳴

うれしい悲鳴

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2012/03/03 (土) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★

ダンス乱舞
主人公達を悩ませ苦しめる、タブーと使命感、とある問題。
一筋縄では理解出来そうにない本筋に、不思議で静かで残酷な結末。
刺激的で華美さの少ないシンプルな舞台上にマスゲームのようなダンスパフォーマンスシーンはまさに乱舞。
その乱舞の華麗さと完成度の高さと洗練さに目を奪われる。
一人の人物を複数で演じ、句読点の無い詩を読んでいるような台詞回し。

ネタバレBOX

前の方の席で見た為か、少し女優陣の声の出し方がうるさく聞こえた。
空間を自由に行き来する内容の為か、これから変更していきそうな箇所もありそう。
上演アナウンスで、惜しくも降板になった寺田ゆいさんのメッセージあり。
慣れの果て

慣れの果て

演劇チーム 渋谷ハチ公前

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/02/22 (水) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★

静かで熱い舞台
事情があって施設暮らしの少年少女、青年達が町の片隅の何かの工場で働いて暮らしている。そんな彼らの家族、友情、日常の葛藤やせめぎ合いは常に起こっている。
前半というか話の導入から中盤まで静かに話が進んでいたので、このまま行くのかと危惧していたら終盤に全てが凝縮されていた。

彼らは幸せなのか、不幸せなのかと考えたが、でもどこか煮え切れない部分も見え、それは自分が彼らより年代がずれている上の世代だから?とか不毛な考えがつきまとってしまい、誰かに手引きしてもらいたくなった。

客席から登場した彼がメインになるのかと思いきやそうでなく、舞台上で出演者がそのまま、演技というより待機しているように見えた。
また、誰でも主役になれる立場に見えたので、役名の一覧表を添付して欲しかった。

Turning Point 【分岐点】

Turning Point 【分岐点】

KAKUTA

ザ・スズナリ(東京都)

2012/02/23 (木) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

この先の人生
女性二人の友情から分離、30代になってからの再出発までを、明るく直球で、しかし熱くならず、淡々と本音を探り合いながら二人の対比を見せてくれた15年の年月は、KAKUTAの歴史にも受け捉え出来るし、観客の歴史としても振り返らせてくれました。

出会いがあって、その個人と係わってきた状況により優勢や優劣をつけたくなるのが感情というもの。いろいろ経験して全てをぶちまけて一歩踏み出したその先は明るく、それが出来た二人が羨ましくも思った。
変に飾り付ける「希望」とか「未来」とかに括られそうだけど、そんなもんつけなくても充分活気あって、心豊かになれそうな舞台だった。

ネタバレBOX

キローランさんの鋭い眼光がまさに東欧というかヨーロピアン。
海老原さんが新納に抱きつき「種蒔いたんでしょ」の台詞と行動は、格好良過ぎて思わず肝が冷えそうになった。
「ひとよ」の意外な人物の登場の仕方は15周年のファンサービス?もう一度見たい人だったので、嬉しかったw。
モナリザの左目

モナリザの左目

Nana Produce

劇場HOPE(東京都)

2012/03/04 (日) ~ 2012/03/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

初日観劇
作演出の高橋いさをさんの2作品の上演作のひとつ。
昨年のロクソドンタフェスティバルグランプリ(関西の舞台芸術の賞らしい)作品。
前作タイトルは「知らない彼女」

作品自体はシリアスで重めの題材だけど、配役各々がしっかりしているので見ていて苦にならない。舞台位置がやや高めなので後方から見た方が首が疲れないかもw。
最初から中盤までに短いやり取りする弁護士と探偵さんの会話に和める。
見応えのある2時間近くの舞台。

初日の為か、小さい劇場はあっという間に満杯。
ここからはやや愚痴になります。すいません。
この作品に限らず「自由席なので」と自分が舞台が見えやすい位置に座っていたら、開演時間直前になって来る人に席を詰めて位置をずらすのって、なんかモヤッとする。あと終演後の関係者挨拶の為に追い立てるように誘導するのは考えてほしい。もうちょっと一般客にも優しくしてw。

ネタバレBOX

舞台壁セットの一部がよく見るとジグソーパズルのピース。
タイトルにあるように「モナリザ」のジグゾーパズルを、加害者の義兄であり弁護士でもある滝島と、その案件を引け受ける事になった平田が(殆ど滝島が持ってたけど)片手間でやりながら話が進んでいく。

さ程手のかからない案件かと思いきや、ある告発文が届き。

被害者(最終的にやっぱクズ)と被害者の弟(頑張って生きて)。
被害者から加害者と加害者の妻になってしまった2人。
弁護士と探偵さんの時々ちゃんとしてる会話と軽い会話の面白さ。
弁護士と加害者の義兄になってしまった弁護士の苦渋の色が見え隠れする葛藤の発言。

事件の当事者同士が顔を合わせた瞬間、めぐみの顔が哀しみと歓びと揺れる陽炎のような顔で迫る衝撃。劇中では見る事の出来ないモナリザの左目からの視線もこんな感じなんだろうか。
事件が解明され始めた後の真実の重さ、めぐみへの気遣いとそれを受け止めた事の決意と行動、愛情といたわり。
判決時、それらが重なり合った佐野の表情が何とも切なく胸が痛かった。
現実世界では裁判員制度があって。
こんな事件の担当になったら、自分だったらどうしたら良いのかわからない。悩みながらも舞台上の佐野とめぐみの道行きは幸福であってほしいと思った。
コルトガバメンツ -revisited-

コルトガバメンツ -revisited-

東京ハートブレイカーズ

南青山MANDALA (東京都)

2012/02/29 (水) ~ 2012/03/03 (土)公演終了

満足度★★★★★

チーム男子
タイトル同じだけど、毎回加筆して話を変えてくる舞台作。
今回はライブ演奏と芝居がミックスされているけど、心躍る演奏に歌って騒いで楽しんでるうちにあっという間に終っちゃったといった感じ。
お祭りは終った後が切ないけど、この舞台もそんな感じでした。
客席の傍らで見ていた右近さんの表情が、穏やかで楽しそうで印象的でした。

ネタバレBOX

小学生時代の仲良し4人組がバンド演奏と、30代の成人した3人と1人の対比の構成。ドラえもんのタイムマシンのように、ピアノ下から順番に登場。
フジイは中学入学を機に3人とは別の中学へ、何も知らない3人。
同窓会がキッカケで全員会う事になるが、いろいろ事情があって。
そんな中、仲間の男がモデルガンを持ってきていた。

会えば会ったで、子供時代の遊びを懐かしがり「戦争(自己流?に作ったゲーム)」やら、コブラツイストかけたり、長嶋の無茶ブリ物真似させたりと、男の子特有の騒々しさに思わず微笑んでしまう。

小説書いていると思われたゾメは引きこもり同然の在宅ワーク。
アキは家族で自営業だがあまり景気は良くない。
銀行員だと思われてたフジイは銀行の警備員だった。
寿司屋のシンちゃんの子供は来年中学に上がる。
自分も持っていないパソコンを強請られたりして、ふいにフジイに「なんで別の中学に行ったのか」と詰め寄ったり、コブラツイストかけられて腰を痛めたゾメに湿布探して、フジイの母親の部屋に入った時に何か見つけ、たわいない話から無意識にフジイを追いつめていく。
それぞれの胸の内と今の生活の葛藤が交差した瞬間、フジイの心に今までのジレンマの様なものが一気に吹き出し、隠してたモデルガンを手にして銃口をかつての友達に向けて引き金を弾いてしまう。
が、もちろん玉は入ってない。
そこのフジイの切なくって複雑な表情が良い!
仲間内で集まり、寄り添って救っていく場面が見ていてホッとしました。
かつての状況からの「卒業」に至るまでを、ちょっと懐かしめの心躍るバンド演奏で騒ぎ、舞台脇で小さく振付けて楽しんでいる4人組を見てるこちらも楽しめました。
お酒飲みながら見ていたので一部解釈に語弊があるかと思いますが、楽しい舞台でした!

「昔の事は美化したがる」という台詞に共感。
少しはみ出て殴られた

少しはみ出て殴られた

MONO

吉祥寺シアター(東京都)

2012/02/17 (金) ~ 2012/02/26 (日)公演終了

満足度★★★

目に見えない線
囚人男子の行動は小粒なイジメと国と国のわかり合えなさ加減が馬鹿みたいに繋がる。

ネタバレBOX

平和な架空の国の刑務所での話。ある日管轄の国が分断されて、それがキッカケでそこから出身国別にわかれ、良くも悪くも集団心理となってそれぞれまとまっていく。
小さいイジメが連日起こり、人間の嫌な部分の気持ちの移ろい易さがよく出て、自分もあの状況下ではああなってしまうかも、とつい思ってしまったり。
ベルが鳴る前に

ベルが鳴る前に

ペンギンプルペイルパイルズ

本多劇場(東京都)

2012/02/16 (木) ~ 2012/02/22 (水)公演終了

満足度★★★

ちょっと混乱
話の内容と登場人物の多さにちょっと混乱。
善人の行動やホムンクルスの活躍、片腕銃の暴発とか、印象に残るシーンは多々あったけど、異世界に放り込まれたまま終ってしまったような感じ。苦い寓話のような造形。以前見た「機械」を思い出した。

ネタバレBOX

選ばれた人、そうでない人という二分割に見え、何となく現世界の悲惨さを忘れて、未来を考えての行動と思いたい。
最後、全員が集合し旅立つ先を見つめる場面は写真に残してほしいくらい綺麗だった。
ロマンサー-夜明峠編-

ロマンサー-夜明峠編-

モダンスイマーズ

シアタートラム(東京都)

2012/02/23 (木) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

三部作の第一弾
峠に暮らす人達の元へ、里から来た熊退治のマタギ一行。
凍てつく集落で暮らしていくルールと欲と変化への一歩。
オドとスズ夫婦の絶叫夫唱婦随ぷりが愛嬌あって良かった。
千葉さんのマタギ姿が妙にカッコ良い。
んーでも、松永さん贔屓派としてはちょっと出番少なくって物足りなさもあり。

ネタバレBOX

ヒグマは登場しないが、それを巡る里の人間、峠の人間、マタギ達の人間模様が静かに画策して金と人間のエゴと共に失われてしまう。
水墨画のように見える荒涼とした舞台セットがまた寒さを助長させるような印象。
犬井の静かで冷淡、それによって見ているこちらは容易に状況を想像することのできる語り部の口調がひたひたと迫って不気味に良い。

雪原の中、手ぬぐい一本で道筋を表す方法に、コロクとツグミの二人の強力な間柄が見えて、思わず見ているこちらも力が入ってしまった。
それだけで「完」って出てもいいような完成度なのに三部作の第一弾とは。
このままこの世界に浸っていたいが、次回も楽しみ。
狂おしき怠惰

狂おしき怠惰

TRASHMASTERS

駅前劇場(東京都)

2012/02/18 (土) ~ 2012/02/29 (水)公演終了

満足度★★★★

緊張と集中
大学病院で繰広げられる人間模様。
仕事の倫理観は職種により様々だろうけど、今の日本を取り巻く濃い現場が痛い位伝わってくる。
女は嫉妬と逆風の断片を跳ね返したら、より一層強くなると実感。
一幕終了間際〜司の発言挿入シーンが一番響いて印象に残ったかな。

演じてる役者さんの年代が見事にその年代を生きて来たような造形で更に驚く。

ネタバレBOX

誰でもお世話になるであろう病院現場。
ストレスを溜めない為にいろいろ発散しなければと発言する医師の本音。あけすけな発言に聞こえず、ごく自然に言っているので、なんか妙な説得感があり、納得するやら感心するやら。

医療現場や製薬企業の倫理観、昨年の震災後からの甲状腺がん患者の増加を思わせる話が進む二幕より、翔と司兄弟の父親の看護・臨床実験、湊の仕事と心の逃避の仕方とかの一幕の方が入り込めやすかった。

終盤、司の行動は正しいとは思う。ただ現在からこの先の日本にかけて、そのメッセージは悲しいかな絵空事のように空しく聞こえる。
湊の行動から退職する行為は自業自得に寄るものだけど、仕事に対しては真面目に接していたと思いたい。
一幕で自己顕示欲が強いのかと思った(名誉)教授だけど、二幕の湊に「命の尊厳」を問いかけた場面は、医師と父親の両方の発言からなるものなんだろう、と思った。

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