たんげ五ぜんの観てきた!クチコミ一覧

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道玄哀歌

道玄哀歌

新宿梁山泊

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2013/07/06 (土) ~ 2013/07/09 (火)公演終了

・・・
実力派劇団だけあって、演技などは強いとは思いましたが、いかんせん物語が面白いとは思えませんでした。

わたしは浅瀬で溺れています

わたしは浅瀬で溺れています

激情コミュニティ

atelier SENTIO(東京都)

2013/07/05 (金) ~ 2013/07/07 (日)公演終了

満足度★★★

関係性の齟齬
人と人とがすれ違う在り方がとてもよく描かれている。
ただ、一時間弱の短篇のため、問題が深まらずに終わってしまったという印象。

ネタバレBOX

具体的な演出で面白かったのは、
ある役を演じている時に、その場面に参加していない役者がその場にいて、ただ待っているだけかと思いきや、微妙に演じている役と同じ動作をしたり、しなかったりしていたこと。
演じている役者と、その場面には立ち会っていない役との心の距離を表しているのだろうか?明確な演出意図はわからないが、微妙な劇中の人間関係を表しているようで面白かった。またその演出によって、舞台上に妙な緊張感・空間の歪みのようなものができていて、その違和感がとても面白かった。この舞台で一番興味深かったのは、個人的には、劇の内容以上に、この点だった。

その役を演じていたのが主人公の兄の元恋人役:金子侑加さんで、彼女の存在感がその違和感をただの違和感というだけではなくさせていたのかもしれない。上手い役者さんという感じはしなかったが、なんだかわからない存在感があった。

そのような演出はとても面白かったが、
アリモノの音楽の使い方には違和感を覚えた。
アリモノの音楽の場合、特に歌モノは、劇の内容と別のイメージを観客に喚起してしまうので、せっかく劇に集中している時に、別のイメージが無駄に付加されてしまい、集中力が削がれてしまった。

映像の使い方にも似た印象を持った。具体的な映像イメージがプロジェクターによって投影されるのだが、表面的にはイメージを広げているように見えても、その映像が具体的過ぎることによって、むしろ観客の想像力を制限しているように見えた。

ダンスについても近い印象。

人と人とのディスコミュニケーションという大きなテーマがきちんと中心に据えられていて、そこときちんと向き合った舞台を作っているのだから、余計な装飾はいらないと思う。必要ないというより、それによって、観客の集中力と想像力を削いでいるという感じ。とてももったいないと思った。

もっとシンプルに、ディスコミュニケーションについて徹底して向き合った長編の芝居が観たい。
『太平洋食堂』

『太平洋食堂』

メメントC+『太平洋食堂』を上演する会

座・高円寺1(東京都)

2013/07/03 (水) ~ 2013/07/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

脚本が素晴らしい
正直、評価が難しいです。(★5は脚本に対するものです)

優れた脚本(言葉)があり、それを演出・演技で舞台化していくという極めて古典的(新劇的)な在り方の芝居。
これは、脚本自体に依るものか、演出や演技に依るものかはわかりませんが、役者の身体や演技よりも、言葉が舞台の中心にある。舞台は言葉で満たされている。
そういう芝居が(も)好きだ、という人にはとてもお薦めですが、
個人的には、3時間の芝居を、言葉に意識を集中させ続けるのは辛かったです。

ですが、逆に言えば、それだけ優れた脚本、言葉の強さであったという証拠。

これだけの強い批評意識を持って、歴史モノを再構築できる力量は凄いことだと思いました。それも、過去を扱いながら、現在の社会を問うている。憲法が改定されるかもしれない、国防軍さえ作られるかもしれない今日の社会状況下で、この作品が上演されることの意味は大きい。このような批評意識の強い作家は現代では稀有であり、とても重要な存在だと思います。

また、女性の脚本家だけあって、女性に向ける視線、特に主人公の妻〈大星ゑい〉への視線が強く印象に残りました。私の中では、彼女が主人公なんじゃないかとさえ思われる位に。その点も素晴らしかった。

文学作品のように舞台を(脚本を)考えるなら、とても力があり、本当に素晴らしい作品だと思いました。
ですが、もう一方で、ならば文学として脚本を読めば良いのではないかとも思ってしまいました。

ただ、私が観たのが「プレビュー公演」だったために、舞台としての強度が完全には高まっていなかっただけなのかもしれません。

少年王マヨワ

少年王マヨワ

ニットキャップシアター

座・高円寺1(東京都)

2013/06/28 (金) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

満足度★★★

興味深い演出
視覚的・空間的な部分での演出はとても面白かった。音楽の付け方もとても良かった。ただ「演劇」と思って観てしまうと、脚本や演技が弱く感じてしまった。
だが、「演劇」と思って観ずに、コンテンポラリーダンスか、どこかの国の民族芸能を観るような心づもりで観ていたら、より深く作品世界を感受できたのかもしれない。

ネタバレBOX

視覚的・空間的な演出はかなり面白かった。
音楽も舞台の脇で役者さんたち自身が音を付けたりするのがとても面白かった。生音の強さも感じた。
ただ、芝居自体の演技や脚本は、興味深くはあったけれど、弱く感じた。

だが、「演劇」という固定観念で観ない方が、より深く作品世界を受け止めらたのかもしれない。
インドネシア辺りの民族芸能の現代版を観たような印象なので。

そう考えると、
実際、『古事記』を元にした物語でもあるし、神話を演じていた訳で。

そういう視点で観たら、印象はだいぶ変わるのかもしれない。
寺山修司作「盲人書簡」

寺山修司作「盲人書簡」

雲の劇団雨蛙

サブテレニアン(東京都)

2013/06/28 (金) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

・・・
闇である意味が微塵もわかりませんでした。闇である緊張感も、闇に堪えうる役者の身体もない、間延びした暗がりでの芝居というだけ。
また元脚本を大きく削っていますが、それがただ作品をスカスカにしているだけという印象を持ちました。
なぜこの作品をやろうと思ったのか?
上演からも、上演後のトークを聞いても、何ひとつわかりませんでした。

あやかし相談承り〼。萬屋ツジモリ

あやかし相談承り〼。萬屋ツジモリ

劇団だるま座

「劇」小劇場(東京都)

2013/06/25 (火) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

実力派
正攻法できちんと見せる実力派。役者さんたちがとってもよかった。
特に主演のツジモリ役:剣持直明さんの気持ちの入った演技と
磯村和樹役:中嶋ベンさんの独特な感じがとてもよかった。

鴉よ、おれたちは弾丸をこめる

鴉よ、おれたちは弾丸をこめる

さいたまゴールド・シアター

大里生涯学習センターあすねっと ホール(埼玉県)

2013/06/22 (土) ~ 2013/06/23 (日)公演終了

満足度★★★

なぜ?
素人の老人が、それぞれの人生を背負って舞台に立つ。
そこには役者のプロには決して出すことのできないものが内包される。
その点に関しては、素晴らしいと思える部分もあった。

だが、なぜこの戯曲なのか?

蜷川さんの想いは理解できなくもないが、
演じる側にそれは伝わっていたのだろうか、、、
いや、その想いは共有できるのだろうか、、、

ネタバレBOX

これは1971年に現代人劇場で上演された芝居だ。
政治闘争も下火になってきた中での敗北を扱った芝居。
歴史は常に勝者の歴史だ。そこでは、負けていく者の想いは行き場もなく宙づりにされ続ける。だから、この芝居の主人公は老婆なのだ。
男ではなく、女。若者ではなく、老人である必要があった。

当時の劇評にはこうある。
「・・・この“民衆裁判”の末尾で老女たちは、同志であるはずの青年に対してさえ、「私たちの期待にこたえなかった」として、死刑を宣告する。この戦闘的な民衆像に三里塚の農民のたたかいが濃い影を落としていることは容易に見てとれるが、いずれにせよ、もはや若者によっては、根源的なアジテーションをなしえないこの“閉塞状況”に対する作者の切ない悲しみは充分に伝わってくる。」
(扇田昭彦「朝日新聞」71年10月21日 <劇的ルネッサンス』より孫引き>)

当時の文脈を考えれば、三里塚闘争ならびに学生運動が衰退していくことと関連付けて考えるのは当然だろう。
現在、この作品を観る場合には、より広い意味での敗北の歴史が視野に入る。

鴉婆(老婆)は言う「狂うといえば、あたしゃとうから狂ってるのさ。とうから憎悪の炎にせつなく身を焦がしてきたんだよ。百年、二百年、いや一千年前から・・・・・・わかってるのかい、お若けえの。あたしら子孫なんぞ、蝶よ花よと育てようとは思わなかったねぇ。あたしらのこの胸のうちに燃える憎悪を、どうやって子や孫に塗りこめるかそれだけが生甲斐。・・・」

学生運動の敗北とともに、多くの人は政治問題から関心を失っていった。それどころか、政治に関心を寄せることそのものが、悪いことであえあるかのようになっていった。それでも、政治と権力は厳然として残り続ける。そのツケがまわってきたかのように、原発事故が起こった。私たちはただ目を逸らしてきただけなのだと気づかされた。

原発推進も戦後のアメリカによる日本統治政策の一環でもある。それは、二号研究など戦前の日本の原子力爆弾開発の流れも汲んでいる。

いずれにせよ勝者たちの歴史。その陰にある敗者の歴史、想い、憎悪とは、、、。

自身も74年に商業演劇に転位した蜷川氏が、現代人劇場で問いかけていたことを、ゴールドシアターで問い直そうと考えたのかもしれない。

だが、ゴールドシアターに集まっている面々は、それぞれの人生を背負っている重みは感じるものの、その背負っているものは、蜷川氏のそれとは大きくかけ離れているのではないか。端的に言えば、政治的な憤りなど感じずに生きてきた人が多いのではないか。敗者の想いを背負って生きている人はそこにいないのではないか。勿論、そういう生き方が悪いとは思わない。それが圧倒的多数だ。ただ、この芝居を、素人がやる上で、その点が重なっていないと、必然的に強度のないものになってしまうと言いたいだけだ。実際、その演技はとても空疎だった。単にヘタだと言いたい訳ではない。演技の上手さなど端から期待していない。歴史に埋もれていく敗者の想いを少しでも見せてほしかったと思っただけだ。

また、蜷川氏の演出にも疑問が残る。
最後に、虎婆が「なんをぶーたれてんだい、死ぬんじゃない。くたばってたまるか。生きるんだ、若者の血をよみがえらせて生きるんだ……」
と言い、鴉婆が「真の闇よ……日本の一万年前にあった真の闇よ……あたしたちの憎悪をはぐくんでくれた真の闇よ……あたしたちに甦る力を与えておくれ。」と言い、闇の力を借りて、老婆たちが若者へと転身していく。
ここで蜷川氏は、ネクストシアターの本物の若者の肉体を持って、転身(若返り?)を表現した。
初演時の若者が老婆を演じていた設定ならば、老婆から若者へと歴史を背負った想いが受け継がれていくという解釈も成り立つだろう。
または、これがゴールドシアターの公演ではなく、ネクストシアターとの共同公演ということであっても、そういう解釈は成り立つ。
だが、あくまで、ゴールドシアターという老人が主体の劇団でのこの演出では、老人の身体が若者の身体に変わるということは、私には単に老人の肉体の敗北にしか見えなかった。もちろん、それが負けていくということなのだと言われれば、残酷なことだが、納得せざるを得ない。だが、そういう意図で演出されたようにも見えなかった。年老いた身体が若者の身体に転身するというきらびやかなスペクタクルとして演出されていたからだ。(ただ、このシーンのスペクタクル性は確かに感動的ではあった。)私としては、見た目は一切変らないのに、老人自身が、若者のような活き活きとしたエネルギーに満ちていくという姿が観たかった。

いずれにせよ、なぜ、この劇団でこの戯曲だったのか、、、私にはわからなかった。
魔王、勇者僧侶盗賊魔法使い、現実。

魔王、勇者僧侶盗賊魔法使い、現実。

ローリングあざらし撲殺

サブテレニアン(東京都)

2013/06/21 (金) ~ 2013/06/23 (日)公演終了

満足度★★★

形になっていない面白さ
学生劇団特有の(という言い方をしたら上から目線で申し訳ないが、他に形容のしようがないので悪く思わないでください)
完成度は高くないけれども、形になっていない面白さが随所に見られた。

ネタバレBOX

どこまで自覚的に演出されたものかはわからなかったが、
演劇の嘘をドキュメンタリー性とでもいうべき役者の身体で解体する(相対化する)ような演出が興味深かった。

例えば、ロールプレイングゲームの登場人物に役者は扮しているのだが、そのファンタジー的な世界観の衣装を着ている役者もいれば、普段着で役を演じている役者もいる。その普段着も、魔王役の女の子は、ダボダボのジャージ姿という、間違ってもオシャレとは言えない部屋着のような姿で役を演じている。そこには、衣装や美術などで虚構世界を作り上げようという演劇の一般的な在り方を解体しようという意志を強く感じる。

また、役者の演技も、意識的にそう演出させられているのか、単にヘタなだけかわからないが、役者が役になりきることで生まれる演劇的リアリティではなく、役者が役になりきれないという生身の人間のリアリティがよく出ていた。特に魔王役の櫻井美穂さんの演技は、そういう意味で興味深かった。(意識的なものでなかった場合、この言い方はけなしているように聞こえるかもしれないが、その感じも、作品によっては強い武器になると思うので、決してけなしている訳ではありません。悪しからず。)
渡部太一さんと小杉香穂里さんの演技は、そういう意味ではちょっと上手い感じもするのだけれど、やはり同じ質感を有している。ということは、これらは演出されたものなのだろうか?
(渡部太一さんは、〈TEAM▷りびどー大戦争〉の『libido』という作品で拝見していて、とても良い役者さんだと思ったが、その時の印象も、演技が上手いというよりは、彼の人間性みたいなものが役の中から滲み出てくるような良さだなと思っていたので、今回の作品で見た印象と近い感覚。)

いずれにせよ、どこまで意識的に演出されたものかはわからないが、その点がとても面白かった。

脚本は、題名からただのエンタメ作かと思っていたら、ロールプレイングゲームという形式を借りた、正義と悪の問題、個と世界、虚構と現実の問題などが様々に提起されて、深い問題意識のもとに作られているのだなと感じられてよかった。

ただし、演出も脚本も、面白いものがたくさん含まれてはいても、いかんせん荒削り過ぎるとは思った。何が中心なのか、演出も脚本も見極めきれていないのではないか。


今後の活動に期待しています!

と言っても、洗練していく上で、完成度は上がったけれど、普通の芝居になっちゃったねということにはならないでほしい。
この作品の面白さは普通の意味での面白さではではなかったので。
ライダーになれなかった人のための

ライダーになれなかった人のための

カムヰヤッセン

スタジオ空洞(東京都)

2013/06/14 (金) ~ 2013/06/24 (月)公演終了

満足度★★★★

作者の意志がいい
作品に作者の強い想いがあり、それが社会への批評性にもなっている点がとてもよかった。

ネタバレBOX

(内容解説をしないで、感想だけ書いているので、観ていない人にはわかりずらい文章になっています。申し訳ない。)

素晴らしかったのは、最後に中心テーマがグッと起ちあがってくる場面。
それまで、何がテーマなのかよくわからずに進んでいた話が、
川島辰郎(川本直人さん)が堰を切ったように企画案を述べる場面で、この作品の問いかけがグッと浮上してくる。
社会はライダー(ヒーロー)になれなかった多くの人たちで溢れている。その「なれなかった人」の視点から世界を見返すと、その像は全く違うものとして見えてくる。「なれなかった」というのは、夢であり、希望であり、、、それらがかなえられなかったという多義的な意味を持つ。また、かなえられなかった理由も、努力だけが問題とも限らず、環境や、条件や、運など様々だ。

社会は、表面的には、成功者と言われる夢を叶えた人たちの言葉でみたされているが、実際は、思い通りに進めなかった多くの人達によって支えられている。それも、人だけではなく、規格外の野菜の話なども含めて、モノの視点からもその構造をあぶり出している。

この世界観の反転こそ、作者の強い批評性だ。素晴らしい。

また、今自分が立っている場所(就いている職業)も、明確な理由があってそこにいるとは限らないけれど、その根拠を見出そうとするテーマも内包されている。この点も素晴らしい。


だた、序盤は、芝居に入り込めずにいた。
それは、日常に起こり得る、会社の企画会議の一場面という設定なのにも関わらず、役者の演技は過剰であり、そこで交わされる会話もとても芝居がかった台詞のやりとりだったからだ。

おそらく、脚本も演出も役者も、エネルギーを放出する芝居はとても得意なのだと思う。実際、素晴らしかった。だが、表面的なエネルギーを抑えて演技するたんたんとした場面などは、あまり得意でないのかなと思った。
その点がより良くなれば、更にメリハリがつき、そのエネルギー溢れる部分がより活きるのになと思った。

また、テーマが最後に表面化することによる驚きはあったが、表面化してから物語はすぐに終わってしまうので、その表面化したテーマを味わったり、自分の人生と重ねて考えたりなどの時間はほとんどなかったので、少々物足りなさは残った。
ただ、それは上演時間が短かったことにも起因しているかもしれない。

いずれにせよ、おもしろい短篇(中篇?)でした。
キャンベラに哭く

キャンベラに哭く

桃尻犬

王子小劇場(東京都)

2013/06/05 (水) ~ 2013/06/09 (日)公演終了

満足度★★★★

飛んでいて、面白い!
展開のぶっ飛び具合もとても面白かった。
飛びながらも、きちんと中心のテーマらしきものがあるのも良かった。

演劇的な嘘を全面に出しつつ、その嘘に役者自らツッコミを入れながら物語を進める演出もとても面白かった。

作・演出の野田慈伸さんが、役者さんでもあるということで、とても役者の魅力を活かすのが上手い脚本と演出だったと思います。
それにより、役者さん達の演技もとてもよかった。

ネタバレBOX

演技・演出の質や表面的なものは全然違うので、影響は受けていないかもしれないが、ある部分では、とても唐十郎さんの舞台に近いものを感じた。

それは、まずは、物語の飛び具合。イメージが様々に飛んで行くが中心軸はきちんとあるという点。それはとても刺激的で面白かった。

そして、役者の演技が脚本を食い破ってくる点(唐さんで言えば、特権的肉体ということになるのかもしれない)。脚本ありきで舞台ができているように見えないのだ。役者の演技を面白くするために脚本があるようにもみえる。当て書き、もしくは当てて書き加えた部分などの多かったのでは?そして、舞台を作りながら、かなり本も変えていったのではないか?
とても面白い脚本・演出だった。

たぶん、唐さんに似ていると思ったのは、作・演出の野田慈伸さんが御自身で役者やられていて、出演もされているということと関わりがあるような気がする。舞台を舞台の外側から見ているという感じがしない。舞台の面白さは役者の中にあるということをよく知っているという感じがした。


また、設定に無理がある部分も多々あったが、そもそもリアリズム演劇では全くない(演劇的嘘に自分でツッコミを入れながら物語が進んだりもする)ので、そのご都合主義もそれほど気にならなかった。
ただ、少年時代に殺人を犯した人間が、地元で教師になっているという設定だけは、その部分が、この物語の中で最もシリアスな場面と関わるところだったので、そこだけはちょっと気になった。あそこは真面目なシーンだったので、嘘っぽい設定には見えない方がよかったと思う。殺人を犯した人間が、その場所で教師をしていくことはあり得ないので。(笑いの部分だったら、それ位の設定はこの作品においては全く気にならないのだが。)

下ネタの描写は、私はそれほど嫌とは思わなかったが、ことさら下ネタだから面白いとか、下ネタであることにより一般的な倫理観を挑発しているという感じでも無かったので、これだけ面白い作・演出ができるのだったら、あえて下ネタをこれほど大々的にやらなくても良かったように思う。下ネタに頼る「にぎやかし」の作家だと思われては損なのではないか。

物語が縦横無尽に飛んでいくイメージはとても面白かったが、作品が問いかけてきているものも、同様に散漫になっていたようにも感じた。観終わった後、心に残るものが少なかったので。

と、厳しいことも書きましたが、とても面白かったです。

役者さん達がとにかく活きていてよかった。

主演の長井短さんは、その独特の存在感がとても魅力的でした。
日高ボブ美さんもエネルギーに満ちてとても魅力的でした。
津和野諒さんのちょっと空回っている感じも面白かったです。
森崎健吾さん、糸山和則さんもとてもよかった。
言い出したらきりがないですが・・・・全員、それぞれに、とても魅力的でした。
のぞき見公演♯4 巻き込まれ部屋用ページ

のぞき見公演♯4 巻き込まれ部屋用ページ

ガレキの太鼓

都内某所、とあるマンションの一室(東京都)

2013/05/30 (木) ~ 2013/06/04 (火)公演終了

満足度★★★★★

ある意味、最上のエンターテイメント
作品を観ることは、日常では感じられない非日常的な興奮を味わうことだ、と考えるならば、この作品ほど、その興奮を味わえるものはない。

もはや、観るという受動的な態度ではおさまらず、巻き込まれてしまうのだから。

ネタバレBOX

ただ、結局、その興奮も、10分の公演時間の終わりとともに終わってしまう。
本当はそのような興奮を実人生で味わえることの方が遥かに重要なのだと思う。
そういう意味では、興奮の余韻は残っても、この10分間で体験した興奮が、日常の現実の中に持ちかえられることはない。そういう問いかけも作品には内包されていない。

極上のエンターテイメントであるとは確かに思ったが、エンターテイメントでしかないとも思った。

観客を巻き込む演劇としては、寺山修司が行った市街劇などがある。
寺山が意図したことは、むしろ、観客の実人生が劇に出逢ってしまうことによって変わってしまうかもしれないようなものだった。一時的な興奮よりも、その後の観客の人生にこそ力点が置かれていたといえる。

そういう作品だったら、より良かったのになぁと思う。

それでも、充分、面白かった。
のぞき見公演♯4

のぞき見公演♯4

ガレキの太鼓

都内某所。劇場ではない空間。(東京都)

2013/05/30 (木) ~ 2013/06/04 (火)公演終了

満足度★★★★★

「風営法違反編」
こういう構造でしかできない舞台、素晴らしかった。

ネタバレBOX

マンションの部屋をまるごと風俗店見たてている点、そこで演じられる演技、とても素晴らしかった。

風俗店での面白い話だが、その内容よりも、役者さんの演技にとても魅せられた。
部屋の一室での演技なので、舞台と違って声を大きく出したり、演技らしい演技をする必要はない。仮に、現代口語演劇的なものであっても、舞台でやれば、それはどうしても「演技」らしいものになってしまう。だが、この作品では、それらがとても自然なのだ。自然と言っても、演技は演技なのだが。そう考えると、どこかで映画の演技に近かったのかなと思う。映画を生で見ているような感じ。とても新鮮で惹きつけられた。

特に、るね役の工藤さやさんとピン役の竜史さんの演技がなんだかとても良かった。

ただ、他の作品でも感じたが、この風俗店の一室の一時を描写し観客に見せることで観客に何を問いかけているのか、よくわからなかった。
のぞき見公演♯4

のぞき見公演♯4

ガレキの太鼓

都内某所。劇場ではない空間。(東京都)

2013/05/30 (木) ~ 2013/06/04 (火)公演終了

満足度★★★★★

「あやういカップル編笠木さんちの場合」
公演形態がとにかく凄い。一見の価値あり!素晴らしい。

ネタバレBOX

ある場所に集められて、とあるマンションの一室につれて行かれる。

そこで、案内人を待つ間の緊張感も面白いし、そういう視線で街を見ると、何の仕掛けもしていない街のささいな移ろいさえも、何か劇的なものであるかのように思えてくる。

作品としては、
演じる役者と観客との距離が異常に近い。それだけで、もう、内容云々とは別のレベルでの妙な緊張感と興奮がある。

役者さんの演技も、本当にその部屋で起こっていることのような自然な演技。
観客が近いので、所謂「役者の演技」的な発声や演技などをする必要は微塵もない。

内容としては、親友の異性と一夜の過ち(?)をしてしまった二人の翌朝のこと。
その微妙な二人の関係性を上手く描いている。

基本的にはとても面白いのだが、ただ、その関係性の微妙な問題を、観客に提示することに何の問いかけが孕まれているのかということがわからなかった。
(それは他の作品も)

ただ、そんな作家主義的な批評意識は必要ないという立場もあるので、むずかしいが、、、個人的には、それがあればより良かったと思ってしまう。
イカルスの星

イカルスの星

ヅカ★ガール

小劇場 楽園(東京都)

2013/05/31 (金) ~ 2013/06/22 (土)公演終了

満足度★★★

エンターテイメント
エンターテイメント作。

エネルギッシュな上埜すみれさんがよかった。

木村希さんには魅力的なものを感じた。

プルーフ/証明(元田 演出ver.)

プルーフ/証明(元田 演出ver.)

DULL-COLORED POP

シアター風姿花伝(東京都)

2013/05/29 (水) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

同作品でもこうも変わるのか
中村梨那さん主演版を拝見しました。

谷賢一さん演出版とは違った味わいのある作品になっていて、とても興味深かったです。

ネタバレBOX

谷賢一さん版では、百花亜希さん演じるキャサリン像は、極度に繊細で過敏であるが故に、一般的な感覚の人からは、ある種の狂気をまとっているようにも見えてしまうというものだった。

それに対して元田暁子さん版では、中村梨那さん演じるキャサリンは、とても朗らかな普通の女の子。数学の才能以外は普通の女の子が、置かれた状況によって、勝手に狂人扱いされてしまうというものだった。

同じ戯曲なのに、演出や演技によって、作品が問いかける内容自体が変わってしまうのだということに驚きを覚えた。


ただ、比較してしまうと、どうしても、谷さん演出の絶妙なテンポや間・アイデア、百花さんの演技の凄まじさの方に軍配が上がる思ってしまった。

それでも、比較するとというだけで、充分に素晴らしい演出・演技だったと思います。
蒲田行進曲

蒲田行進曲

インソムニア

Geki地下Liberty(東京都)

2013/05/29 (水) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

熱演!
劇団チョコレートケーキの演出家:日澤雄介さんが役者として演じる銀ちゃん、素晴らしかった。ヤス役:長瀬良嗣さんの演技も素晴らしい。小夏役の佐竹海莉さんもよかった。

脚色も、劇団チョコレートケーキの脚本家:古川健さんということで、大胆な書き換えを期待していたが、その点は映画版の『蒲田行進曲』を割と忠実に舞台化したものだった。と言っても、とても上手く舞台化していた。

ネタバレBOX

『蒲田行進曲』は、舞台戯曲よりも、映画シナリオの方が、よりシンプルな設定・構造になっている。
その映画版を更に簡略化しているので、正直、その作品が持っている深みや多義性は損なわれている。
だが、シンプルな作品にしていることで、作品の意味や内容よりも役者の演技に意識が行く。そこに焦点を当てて作った脚色なのだと思う。
(そうでなかったら、敢えて、戯曲があるものを、わざわざ映画版から舞台脚本に直す必要はないので。)

そういう意味ではとても成功していると思う。
役者さんたちの演技がとっても良かった。

ただ、せっかく古川健さんが脚色するのならば、、、驚くような何か、、、つかこうへいさんに古川さんが挑むような何かが観たかった、、、と思ってしまうのは、ファンの勝手な妄想だろうか。
ビョードロ 終演いたしました!総動員2097人!どうもありがとうございました!

ビョードロ 終演いたしました!総動員2097人!どうもありがとうございました!

おぼんろ

d-倉庫(東京都)

2013/05/29 (水) ~ 2013/06/16 (日)公演終了

満足度★★★

客席を巻き込む力
主宰の方の熱意と、それを受けての役者さん並びに劇団全体の熱意の凄さに圧倒されました。
観客を巻き込む力は他の劇団では見たことがないレベルに凄かったです。

ネタバレBOX

客入れの段階から、役者さん達がお客に声をかけて場をあたためる。
その流れで、上演前の前口上でも、お客さんとの対話を丁寧にすすめる。
それは、幕が開いてからも続く。
こんなに客席が舞台と一体になっている作品に出逢ったことはありません。

美術も素晴らしかったです。

物語も、エンターテイメント・ファンタジーですが、実は強い問いかけも孕んでいる作品でした。シンプルな物語にも関わらず、様々な問題に置き換えることができる内容。戦争、民族問題、差別問題、、、、など。私は、原発などのことを重ね合わせながら見ました。

ただ、芝居自体に感激はしなかったので、私個人の「満足度」は高くないですが、とても完成された世界観でした。
好きな人にはたまらないのだと思います。
【当日券有】スタイルカウンシル

【当日券有】スタイルカウンシル

かもめマシーン

STスポット(神奈川県)

2013/05/28 (火) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★

実験精神と向き合う姿勢。
一見、奇を衒っているかにみえる演出が、実はきちんと考えられて行われている点がよかった。
また、震災から2年強の歳月が流れた現状と向き合おうとする姿勢、安易に答えの出せない問題と必死で格闘している様がとてもよかった。

ただ、作品としては・・・

ネタバレBOX

言葉や意味に変換できる問いとしては、受け取るものがあったが、舞台からそれ以上のものを感じることはできなかった。

チラシには、むしろ、言葉や意味ではないものをこそ、、、という主旨のことが書いてあったので、その点がとても残念。


メッセージや言葉や想いは、未来にも、他者にも届かないという、そのディスコミュニケーションのことが繰り返される。
それを演出するためだろう、役者同志が向き合って演技をすることも少なく、客席にお尻を向けて演技が続く部分も多い。それ自体は、きちんと意図があってやっている演出なのでいいのだが、必然的に舞台と客席との関係も遮断されてしまう。関係性の断絶を扱うために、一般的には、舞台表現で最も重要とされる役者と役者との関係、役者と観客との関係という有機的な繋がりを、敢えて切断する。それは、試みとしては凄い方法だが、結果としてできた作品は、そこで捨てたものを埋め合わせるだけのものにはなっていなかったと思う。

それでも、その実験精神は素晴らしいと思う。

震災の問題などを安易に結論づけてわかった気にならない点もよかった。
鉛の兵隊

鉛の兵隊

劇団唐組

雑司ヶ谷鬼子母神(東京都)

2013/05/24 (金) ~ 2013/05/26 (日)公演終了

満足度★★★

さすが
役者さん達の熱を帯びた演技には「さすが唐組」と思いましたが、どうしても唐さんの不在を感じてしまいました。

プルーフ/証明(谷 演出ver.)

プルーフ/証明(谷 演出ver.)

DULL-COLORED POP

シアター風姿花伝(東京都)

2013/05/24 (金) ~ 2013/05/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

とても良い。
ミニマルな構造の会話劇で、とても好きなタイプの作品でした。

役者の演技は勿論、美術の使い方や転換の仕方など、とても丁寧に演出がなされていて、その辺もとてもよかった。

百花亜希さんの演技もとてもよかったです。

元田暁子さん演出バージョンも拝見することにしました!

ネタバレBOX

役者への演出は勿論、
美術を演出と絡めて使うやり方や、
音楽の切り替わりで、場面転換をする手法など、
とても計算されていて、無駄がなく、しかも丁寧。素晴らしかった。

役者の演技も素晴らしかった。特に百花亜希さん。

物語もとても良かった。
『プルーフ/証明』という表題が、単に数学の「証明」の問題を扱っているからだとばかり思っていたら、最後の最後で、実は、「どうやっても証明できないものに関しては、信じることしかできない」ということが見えてくる。うなった。
ラストが大団円になる前に、急に切断されて終わるのもよかった。

ただ、、、というほどのことではないのだけれど、
改めて翻訳モノの難しさも感じた。
設定などを日本に寄せると、脚本の意味が変わってしまうし、
外国の設定のままやると、日本人が外国人を演じている違和感はやはり残ってしまう。見た目だけではなくて、演技も含めて。
だから、やはりその点は、最初ちょっとひっかかったけれど、、、他にやりようもないから、しょうがないのだと思う。設定を日本に寄せることはできない脚本だから。

元田暁子さんの演出も期待しています!

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