ライダーになれなかった人のための 公演情報 カムヰヤッセン「ライダーになれなかった人のための」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    作者の意志がいい
    作品に作者の強い想いがあり、それが社会への批評性にもなっている点がとてもよかった。

    ネタバレBOX

    (内容解説をしないで、感想だけ書いているので、観ていない人にはわかりずらい文章になっています。申し訳ない。)

    素晴らしかったのは、最後に中心テーマがグッと起ちあがってくる場面。
    それまで、何がテーマなのかよくわからずに進んでいた話が、
    川島辰郎(川本直人さん)が堰を切ったように企画案を述べる場面で、この作品の問いかけがグッと浮上してくる。
    社会はライダー(ヒーロー)になれなかった多くの人たちで溢れている。その「なれなかった人」の視点から世界を見返すと、その像は全く違うものとして見えてくる。「なれなかった」というのは、夢であり、希望であり、、、それらがかなえられなかったという多義的な意味を持つ。また、かなえられなかった理由も、努力だけが問題とも限らず、環境や、条件や、運など様々だ。

    社会は、表面的には、成功者と言われる夢を叶えた人たちの言葉でみたされているが、実際は、思い通りに進めなかった多くの人達によって支えられている。それも、人だけではなく、規格外の野菜の話なども含めて、モノの視点からもその構造をあぶり出している。

    この世界観の反転こそ、作者の強い批評性だ。素晴らしい。

    また、今自分が立っている場所(就いている職業)も、明確な理由があってそこにいるとは限らないけれど、その根拠を見出そうとするテーマも内包されている。この点も素晴らしい。


    だた、序盤は、芝居に入り込めずにいた。
    それは、日常に起こり得る、会社の企画会議の一場面という設定なのにも関わらず、役者の演技は過剰であり、そこで交わされる会話もとても芝居がかった台詞のやりとりだったからだ。

    おそらく、脚本も演出も役者も、エネルギーを放出する芝居はとても得意なのだと思う。実際、素晴らしかった。だが、表面的なエネルギーを抑えて演技するたんたんとした場面などは、あまり得意でないのかなと思った。
    その点がより良くなれば、更にメリハリがつき、そのエネルギー溢れる部分がより活きるのになと思った。

    また、テーマが最後に表面化することによる驚きはあったが、表面化してから物語はすぐに終わってしまうので、その表面化したテーマを味わったり、自分の人生と重ねて考えたりなどの時間はほとんどなかったので、少々物足りなさは残った。
    ただ、それは上演時間が短かったことにも起因しているかもしれない。

    いずれにせよ、おもしろい短篇(中篇?)でした。

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    2013/06/16 23:01

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