ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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孤独行進

孤独行進

劇団百鬼夜行

APOCシアター(東京都)

2012/07/14 (土) ~ 2012/07/15 (日)公演終了

満足度★★★★

舞台裏
 最近、舞台裏を演じて見せる、という内容の芝居が多いように思う。無論、清水邦夫の{楽屋」はその傑作であるが、自分が最近、見る舞台裏は、かつての芸の道の厳しさを舞台裏を使って表現するような作品ではなく、むしろ、もっと下世話な話を舞台化しているように思われる。たとえば、劇団員同志の色恋、たとえば努力しているのに報われない歯痒さ、妬み嫉みとスターシステム、更には、近年、自分の才能を演劇だけではなく政治に発揮し官僚を抱き込んで自己の利を図る輩まで出てくる世の中についてゆく気の無い誇りと貧乏というジレンマに悩む姿などが投影されているような気がするのである。
周知のごとく、この国の文官の文化レベルは異常に低い。従って、既に評価されている文化に対しては、補助金も援助も惜しまないが、自分達の目で見て優れたものを見分ける目は彼らに無いので、有名になった人物が、政治的手腕を用いれば、たやすく籠絡できるのだ。こんな奴バラが跳梁跋扈する今日の演劇界で「芸術至上」を懐に抱えた未成熟でぶきっちょな表現者が、やる気や決意の固さばかりで対抗しようとするとき、このような様式が現れるのではなかろうか? ただ、自分は思うのである。一時、その危うさ、新鮮と見まごうやぶれかぶれ、が評価されるにせよ、それは長続きしない、と。エネルギーの使い方に無理があるからである。それより知的、知恵レベルで武装し、その方面から、敵を殲滅すべきである、と。
 だが、何はともあれ、今の彼らを見ておく必要はあろう。そして、考える必要も。

朗読劇「夢の中では懐かしく」

朗読劇「夢の中では懐かしく」

代野英人プロデュース

キッド・アイラック・アート・ホール(東京都)

2012/07/14 (土) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★

まずまず
 シナリオが凡庸だ。朗読だけで勝負するつもりなら、シナリオのレベルを上げるべきである。その発想、問題意識、日常性からの乖離度合い、何れも、自分の基準では、並みである。芸能人を使ったようだが、彼が、朗読で特別優れていたわけではない。アフタートークでは、その押しの強さで目立ったが。作・演出など全体の責任を負うべき方々の目指しているもののレベルを問いたい内容ではあった。禁じ手とは言わないまでも子供を使ってきつい批評をスルーするような姿勢にも疑問がある。

「宇宙みそ汁」 「無秩序な小さな水のコメディー」

「宇宙みそ汁」 「無秩序な小さな水のコメディー」

燐光群

梅ヶ丘BOX(東京都)

2012/07/02 (月) ~ 2012/07/20 (金)公演終了

満足度★★★★

新たな視点へのお誘い
 今回は“宇宙みそ汁”と“無秩序な小さな水のコメディー中の小品“利き水”“入り海のクジラ”“じらいくじら”の上演である。どの作品もアトリエでの公演に相応しい。
“宇宙みそ汁”の原作は詩である。清中 愛子の詩集とこの詩集の拾遺・数年間に書かれた作品、坂手へ送られた文章などを、演出家として坂手が構成したものだ。
 これらの作品の共通項は、世界への視点だろう。宇宙とみそ汁とのコレスポンダンスの振れ幅には、当然、詩と劇とのコレスポンダンスも共鳴してくる。そして世界への目も。坂手作品は、実際、社会性の強い作品が多い。その分理知的で、距離を置いて見ることを期待される。実に優等生的作品なのだ。無論、レベルは高い。然し、芝居というものの、もう一つの面にも、そろそろ目を向けても良いのではあるまいか。つまり魅惑する側面に対してである。今迄の視座とは対極にあるかも知れないが、このような側面を自家薬籠中の物とすれば、更なる雄飛が期待できる。
 今回の舞台でも、役者陣の演技は、演出家の期待に見事に応えたものであったが、もし、今後、自分の提案したような作品作りもあり得るならば、力のある役者陣にも新たな御自分を発見して頂きたい。

 TPNプレイズ&プレイヤーズ (日本)

TPNプレイズ&プレイヤーズ (日本)

キジムナーフェスタ

まちなか特設会場Ken's(沖縄県)

2012/07/28 (土) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★

不思議なテイスト
 血塗られ、因果律さえ描かれているのに浄化されるのは、父の責任の取り方とレイラの鋭く純粋な魂に救われる少年の魂が描かれているせいだろう。同時に、殺人の血なまぐささは、大自然の中での狩猟と得た獲物によって生かされることの摂理を丹念に描くことによって薄められてもいる。
豊かな自然に囲まれて生活することは、即ちワイルドな自然と直接向き合うことでもある。都会生活には無い厳しさもある。その厳しさとは、間違えば死ぬ、ということだ。然し乍ら、罪に慄く魂は、そのようなまったなしの情況の中でしか安らうことは無い。
ところでレイラという名は、アラビア語ではライラだろう。夜という意味だ? 彼女の持つ優しさは犯罪を犯した者を匿う夜の優しさをも意味しているのではないか? レイラもアラブ系少女として描かれており、彼女は沈黙の女として描かれているが、現在の英国においてイスラム系に対する執拗で馬鹿げた差別への批判と取ることも可能であろう。彼女の劇中の位置を見るならば。この推理が正しければ、この寓意は作家の英国政府、イスラエル、アメリカに対するアイロニーではある。
英国文化圏については詳しくない自分だが、多用される多くの地名は、英国人であればその意味する所を知り、その寓意も簡単に理解できるものなのだろう。
最後になったが、登場する俳優達の身体鍛錬には見るべきものがある。


靴の中の小石

靴の中の小石

Toshizoプロデュース

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2012/07/13 (金) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★★


優れた舞台というものは、観客に一瞬、イリュージョンを体験させるものだ。役者の演技、シナリオの緊密さ、音響効果、照明などは其々の装置と言えるかも知れない。然し、それがどんなに優れていても個々に、独立して動いているだけではイリュージョンは生まれない。息詰まる緊迫感や感動の嵐が、緊張の余り途切れる一瞬前の状態を持続し得た時に、それは起こるべくして起こる。総ての要素が混然と一体となり新たな次元で結晶する。その結晶こそイリュージョンの内実である。今日の舞台ではそのようなことが起こった。  
シナリオの良さは、無論のことだが、その内容に役者の命を吹き込まれ、観客を巻き込むと劇空間は沸点に達する。シンプルだが深い照明、感興を盛り上げる音楽、俳優一人一人のほとんど自然とみまがうような表情、声音と間、観客の押し殺し固唾を呑み緊張を孕んだ期待が、劇空間を坩堝にする。あるポテンシャルを越えるとイリュージョンは一気に結晶化する。そしてイリュージョンが立ち上がる前までと後を一変させ、世界を更新してしまうのだ。

天地に咲く 【全18ステージ無事終演致しました!皆様のご来場まことにありがとうございまいた!】

天地に咲く 【全18ステージ無事終演致しました!皆様のご来場まことにありがとうございまいた!】

劇団熱血天使

d-倉庫(東京都)

2012/07/06 (金) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★


 こちらは、芸妓、舞子を中心に作られたバージョンで、それゆえにこそ、ふんだんに洋式のダンスも挿入されているのではあろうが、それが、志そのものでないところに、必然性の無さを感じ、劇的効果を減じていると感じた。
 狂言回しを幽霊になったもと芸妓がやっているのだが、霊体であるのに、
喉が渇いたり、湯のみ茶碗や急須を持つことができる。而も、飲むと茶は、
ダダ漏れになって、辺りは水浸し、という矛盾を平気で組み込むことによって、男と女、体制と反体制。つまり恋と革命に於ける志と歴史の非情を、志側に惹きつけることにある程度は成功しているのだが、興ざめさせてもいるのだ。今後、矛盾の使い方をもっと工夫すれば、更に練れた作品になるであろう。その為には、大筋には矛盾を持たせず、サブプロットの中で矛盾を出す方が、劇的効果が高まるように思う。
 また、雰囲気を出すのならダンスグループの衣装をもっと工夫した方が良かろう。革命と恋なら深紅の衣装とか、衣装が白なら真っ赤な照明とかいくらでもやり方はあるはずだ。

結婚披露宴会場で演じられる「三人姉妹」

結婚披露宴会場で演じられる「三人姉妹」

Theatre Polyphonic

アンフェリシオン・レガーロ(東京都)

2012/07/10 (火) ~ 2012/07/12 (木)公演終了

満足度★★★★

流石 チェーホフ
 科白の切れ、洞察の鋭さ、深さを描くと同時に、儚い我々、人間の見る夢を描いて秀逸なチェーホフ作品は、だからこそ、最高の演技を要求される。最高の演技とは、役者の身体から滲み出るものだろう。従って、作り過ぎと感じられてはいけない。あたかも自然であるかのように装われなければならないのだ。これは、当に至難の業だ。この理由あればこそ、世界中の演劇関係者が、チェーホフに挑みたがるのだ、と自分は考えている。
 言い換えれば、人間内面の複雑な動きを、身体という外面で表現することの難しさである。これが、真に実現できれば、役者冥利に尽きるのではあるまいか。
 今公演は実際の結婚式場の空間を用いて行われた。空間的に段差が無く、演技空間のちょうど半分辺りに前後を仕切るように大きな格子ガラスがあって、この構図を利用しながら進められる演技には、新鮮な効果があった。
 役作りに関しては、やはり、完璧を目指してもらいたい。かなりのレベルではあるが、滲み出るという所へ至るにはまだ修業が必要かと。

Doll Castle ~人形の城~【当日券あります】

Doll Castle ~人形の城~【当日券あります】

Souse

高田馬場ラビネスト(東京都)

2012/07/06 (金) ~ 2012/07/08 (日)公演終了

満足度★★★

レビュー
 芝居というよりレビューに近い感触であった。踊りは上手い。然し、演劇というにはちょっと内実に乏しい。演技にしても、役者の演技の範疇に入れられるメンバーはごく少ない。チェーホフ以降、内面性をも描くようになった劇という表現行為で、人生を生きていて出会う様々な問題を自分に引き受け、背負うような姿勢が無ければ到底滲み出すような表現はできないことを肝に銘ずるべきである。今後の奮闘を期待する。

ウィンドミル・ベイビー

ウィンドミル・ベイビー

演劇企画集団・楽天団

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2012/07/04 (水) ~ 2012/07/06 (金)公演終了

満足度★★★★★

大方 斐紗子
 大方さんのファーストネームを書き違えました。大変失礼いたしました。正しくは、今回の表記です。お詫びし訂正します。

ウィンドミル・ベイビー

ウィンドミル・ベイビー

演劇企画集団・楽天団

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2012/07/04 (水) ~ 2012/07/06 (金)公演終了

満足度★★★★★

大方 斐沙子
  名演である。差別とはどういうものか。丹念に描かれたシナリオの良さに改めて気付かされると共に、大方さんの演技力の素晴らしさに心を打たれた。因みにこのシナリオの作者、デービッド・ミルロイは演出家、ミュージッシャンとしても知られる才人で、アボリジニの作家としては初めて、オーストラリアで最も権威のあるパトリック・ホワイトの名を冠した賞を受賞している。2003年のことだ。因みにP.ホワイトは、20世紀の英語圏で最も才能豊かと言われた作家で、ノーベル文学賞を受賞した。
 今回、上演されたウィンドミル・ベイビーは、白人至上主義などという馬鹿げた差別をし続けた英国からの移住者に1788年以来、獲物として銃で狩られ、惨殺され、辱められ、土地を奪われ、差別され続けてきたオーストラリア先住民であるアボリジニの老婦、メイメイが、かつて自分が働いていた農場へ50年ぶりに帰還し、遣り残した仕事を終える話である。無論、登場人物はたくさん居るのだが、12名の人物を大方さんはたった1人で演じ分ける。その芸の質の高さ、滲みでる人間味の豊かさ、愛嬌や品、素朴やしなやかさ、白人農場主の冷酷性やその夫人のたおやかさ、アボリジニの純朴と知恵などを見事に演じ切る。無論、差別され、虫けらのように殺される立場でもあるので生きる為の知恵も巧みに表現されている。ミルロイ自身がアボリジニであるから、実体験も多く含まれよう。まして演出は、このような問題に関わり続けてきた和田氏である。肌理の細かい演出は流石である。
 一方、白人と雖も、時代の流れには逆らえない。2008年2月13日には、オーストラリア首相として、ケビン・ラッドが初めて先住民に対する公式謝罪をしている。とは言え、未だ、差別は息づいており、オーストラリア先住民の置かれている情況は、酷いものである。平均年齢の差が、白人より20年も短いことも見ておくべきだろう。
 舞台に登場した人が、実は、もう1人いる。生演奏で舞台を引き立て、劇中のシチュエイションに合わせたコラボでも笑いを誘うなど、舞台に膨らみを持たせてくれたボードビリアン、バロン氏。
 この後、福島でも7月12日の公演がある。今回、見逃した方、遠方で見に行けなかった方も是非、観劇して頂きたい。

ミュージカル「ひめゆり」

ミュージカル「ひめゆり」

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/10 (火)公演終了

満足度★★★★★

復帰40年
 きびきびした動きに、かなりリアルな作りの戦場風景が、いやでも戦地の緊迫感を伝える。飛来する敵機、機銃掃射、沖縄戦では島民の4人に1人が亡くなったと言われ、艦砲射撃によって島の形が変わったといわれている。このような激しい戦闘の場へ狩り出された少女たちの無垢で美しい歌声は、悲惨と切なさを倍加する。個々の出演者のキャラを立てる場面、集団で演ずる場面の連携も非常にバランス良く構成され、過酷な状況の中で理不尽に命を奪われる友や兵士たちの苦悩や嘆きをしっかり捉えながら、それでも生きようとする姿を対比させ、命の儚さと同時に尊さ、強さも描いて見せた脚本、演出も見事だ。今まで、自分が日本国内で見たミュージカルでは最も出来の良い作品である。(ブロードウェイからやってきたアメリカ人のミュージカルも見たことがあるが、完全に日本を舐めた上演であり評価外であった。その時の演目はガーシュウィンの「マザーレスチャイルド」だ。NYのブロードウェイで見た「ミス・サイゴン」は良く練れた作品であったし、金も掛けていたが、ベトナム戦争をアメリカに都合よく描き、単なる恋愛物に仕立てていた図々しさには呆れた)
 本題に戻ろう。優れた作品を力のあるメンバーで上演したことには、施政権返還40年の節目ということもあろうが、自分は、ヤマトンチュウの卑劣を考えずには居られなかった。現在も国土面積の0.6%に約75%の基地が集中し、レイプ、殺人、暴行、ひき逃げなど米軍人・親族による犯罪は絶えない。因みにレイプは親告罪なので、数字に表れている数十倍の被害者がいるはずである。そこに、アメリカ国内でさえ、”空飛ぶ恥”と言われるオスプレイを配備しようと躍起になる日本政府とは何か? 国民の生きる権利を蔑にする姿勢は、原発問題や水俣、薬害などに対する反応同様、戦争中、沖縄島民にスパイ容疑を掛けて殺したファシストと一切変わらない。我々は、このような政府を成立させている我々自身の恥を知らねばなるまい。
 このようなことを改めて考えさせてくれたこの作品に改めて感謝したい。

ワンダフル・ワールド

ワンダフル・ワールド

劇団フライングステージ

駅前劇場(東京都)

2012/07/04 (水) ~ 2012/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

上手い
 セクシャルマイノリティーと被災者の置かれた位置を重ねつつ、実際には父を登場させずに父的なものとの葛藤を描く所など実に上手い。また個々の役者の役作りがとても丁寧で好感を持った。
 演出面では、机と椅子が倒れているシーンと通常使う状態との差だけで、被災地の根こそぎ状態を象徴していて、さりげないが渋い演出である。科白の中にもさりげないが、実に深く被害の実態、心の傷の深さをあらわしているものがあって、感心した。
 ひとつだけ、自分の得ている情報とは異なる科白があった。内容的には、被災地での放射能の影響について、心配する人達の言っていることがデマだと決めつけていた。
 然しながらIAEA、WHO、ICRPの言っていることが嘘ですね。

骨唄

骨唄

トム・プロジェクト

あうるすぽっと(東京都)

2012/06/28 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

蜃気楼
 初見の劇場としては、現代的過ぎた気がする。舞台装置は見事なものであった。然し、その入れ物たる劇場は、言って見ればエミュが象徴していたウエスタンであった。これが、浅草の木馬亭のような小屋や江戸時代風の作りが今も残る地歌舞伎の小屋での公演ならば、遥かに効果が上がったと思う。
 演出、演技共に、こなれたものであったが、世界に対する戦きのような要素をもっと出して欲しかった。ことに、栞は、引き裂かれた存在としてもっとおどおどした作りであって良いように思う。ちょうど、「ガラスの動物園」のローラのような。それとも、そういう類型化を演出家が嫌ったのであれば、世阿弥の”初心忘るべからず”という恐ろしいテーゼに向き合う形で。

のぞき見公演#3 「恥知られたら恥ずかしい」

のぞき見公演#3 「恥知られたら恥ずかしい」

ガレキの太鼓

都内某所【のぞき見型】(東京都)

2012/06/28 (木) ~ 2012/07/03 (火)公演終了

満足度★★★★

あり得る
 バイオレンスラブ編を見たのだが、男女の大人間のDVだと思っていたら、小気味よくスカされた。だが、この国にあっては、実際あっても不思議ではなかろう、と思わせる内容で、家庭内で起こり得る悲惨な現実を描くことでこの国の病巣を炙り出している、と見ることのできるような社会性を持った作りであり、役者たちの演技レベルも中々のものであった。

『(諸事情により)よろず相談始めました。人間科学隙間研究所』~お陰さまで全日程終了致しました。次回作も御期待下さい。

『(諸事情により)よろず相談始めました。人間科学隙間研究所』~お陰さまで全日程終了致しました。次回作も御期待下さい。

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2012/06/29 (金) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★

現代音楽
 ノリとしては現代音楽のそれだ。つまり、不協和音が快感足りうるか、というレベルである。今回、実験では無いことが実験という触れ込みであったが、小プロットをインプロビゼーションという手法で演じるという形式を取ったことになっている。然しながら、インプロビゼーションがインプロビゼーションとして成立するための条件があるだろう。それは、演者のテンションが高止まりしていることである。このレベルで合格点を差し上げられるのは、教授役の俳優さんだけではないか。そもそも、普通のテアトルに対する戦いとして実験をするというのであれば、その問題意識は、常にハイレベルでなければなるまい。現代音楽の巨匠であった、メシアンにしろシェーンベルグにしろ、そうであることは当たり前であった。また、インプロビゼーションの音楽としてジャズは外せないが、コルトレーンにしろ山下洋輔にしろ優れた演奏家たちのテンションの高さは周知の事実である。研ぎ澄まされた表現を望む。

12人のそりゃ恐ろしい日本人 2012

12人のそりゃ恐ろしい日本人 2012

劇団チャリT企画

座・高円寺1(東京都)

2012/06/28 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★★

茶番
 毒入りカレー事件をベースに国名こそ出さないものの、アメリカであることが明らかな「対テロ戦争」「誤爆」事件とを絡めて、事実と正義のギャップを笑い飛ばした作品ではあったが、笑い飛ばすことで何が見えてくるというでもない所に自嘲と世界の茶番を見抜きながらどうにもならない憂さ晴らしが見て取れるようであった。実際、和歌山の事件の犯人が誰であるにせよ、事件は、エアコンの効いたビューローで制作されるのである。アフガニスタンを攻撃したアメリカの目的は明らかにBTCパイプラインであり、タリバンがビンラディンを遇したことではない。またイラク攻撃にした所で、イラクは大量破壊兵器を持ち、且つ迅速に西側に多大な損害を与えることができるという大ウソも捏造されていた。9.11も未だにヤラセ疑惑を払拭できないばかりか、イランの「核」開発については矢鱈、とやかく言うのに、イスラエルの核武装については口を閉ざしたままである。情けないのは、こんな茶番に我が国も大きく関わっていることである。その日本の、事実に対する、また、人間の権利に対する哀れな対応も笑われているとみてよかろう。

狐狗狸狐狸九九二錠の1/2

狐狗狸狐狸九九二錠の1/2

mimimal

新宿眼科画廊(東京都)

2012/06/22 (金) ~ 2012/06/27 (水)公演終了

満足度★★★

主体
 シチュエイションとしては、核被害後、ヒトは滅んでいるかもしれないような状態の閉塞状況である。そこで、生きるもの達に起こる展望の持てない不如意と不安を解決するに、出口の無い状況を生きる手立てを、外へ向かって行動し、状況を打破しようとする主体としてではなく、むしろ、状況変革をあきらめた者として、内破しメタモルフォーゼする領域として提示していた。然しながら、それを意図的に主催する主体としての提示ではなかったことに、作者の曖昧な立ち位置が露呈してしまった。更に哲学的、生存論的、分子生物学的、複雑系的追及を望む。

Diamond Ray【ご来場ありがとうございました!】

Diamond Ray【ご来場ありがとうございました!】

東京ROSE company

SPACE107(東京都)

2012/06/27 (水) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★★

荒削り
 シナリオには光る科白が見受けられるが、自分の観た回の序盤は、演技が荒く、間の取り方も、身体の動きも、必然性を欠き、集約点を見失っているように見えた。中盤から後半に掛けては盛り返して来、展開の面白さも加わって、劇的表現と言えるレベルに回復したが、舞台に立ったら真剣勝負で臨んで欲しい。

隅田川の線香花火

隅田川の線香花火

遊戯空間

浅草木馬亭(東京都)

2012/06/26 (火) ~ 2012/06/29 (金)公演終了

満足度★★★★★

本質を見る目
 緻密でバランスの良いシナリオ、キャスティングの妙、演技の質、それら総てを自然に見せる照明、効果、古典の定法を用いた音入れが、抑制を効かせ効果的に山、谷を盛り込んだ演出と響き合い、重層性を持った物語として、観客に沁み込んでくる。表層的でオーバーな表現を避け、タメを活かした登場人物たちの発するエネルギーの糸、網、帯が舞台上でぶつかり合い、演技を引き締まったものにしている。
 無論、筋の運びも見事だ。定石通り、しょっぱなで、最も本質的なことが、総て表現されているが、わざとらしさや衒い、臭みなどは微塵もない。逆に本質を捉えて創っているだけに劇を支配する力学の拮抗感さえ生まれている。
 ネタばれは避けたいので詳細は記さないが、タイトルにもなった「隅田川の線香花火」のシーンは、完全な象徴である。而も、物語から象徴への移行が実に自然で、シンボルの意味するものもそれぞれ明快である。
 作・演出者の本質を射抜く目が、ここにも生きているといえよう。

教室短編集

教室短編集

劇団「14歳」

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2012/06/19 (火) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

ダイヤ&スペード
 ダイヤは「山に登る」をテーマにした作品。シナリオの良さに、ストイックな演技が効果的に組み合わされていて、驚いた。演出の技量も高いのだろう。特に、少女たちのべシャリの無い時の表情には、大人には出せない真剣さがあって好感を持った。
 スペードでは、女子同士の憧れ・疑似恋愛をタイトルの「りぼん」やボタンなどの授受で象徴し、女子校ならではの微妙な心理の綾を描いていたが、こちらは、ダイヤほどの完成度は感じなかった。然し、ストーリーの運びなどに関してはちゃんと落とし所も拵えてあり、一定の成功を収めているといえよう。

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