満足度★★★★★
復帰40年
きびきびした動きに、かなりリアルな作りの戦場風景が、いやでも戦地の緊迫感を伝える。飛来する敵機、機銃掃射、沖縄戦では島民の4人に1人が亡くなったと言われ、艦砲射撃によって島の形が変わったといわれている。このような激しい戦闘の場へ狩り出された少女たちの無垢で美しい歌声は、悲惨と切なさを倍加する。個々の出演者のキャラを立てる場面、集団で演ずる場面の連携も非常にバランス良く構成され、過酷な状況の中で理不尽に命を奪われる友や兵士たちの苦悩や嘆きをしっかり捉えながら、それでも生きようとする姿を対比させ、命の儚さと同時に尊さ、強さも描いて見せた脚本、演出も見事だ。今まで、自分が日本国内で見たミュージカルでは最も出来の良い作品である。(ブロードウェイからやってきたアメリカ人のミュージカルも見たことがあるが、完全に日本を舐めた上演であり評価外であった。その時の演目はガーシュウィンの「マザーレスチャイルド」だ。NYのブロードウェイで見た「ミス・サイゴン」は良く練れた作品であったし、金も掛けていたが、ベトナム戦争をアメリカに都合よく描き、単なる恋愛物に仕立てていた図々しさには呆れた)
本題に戻ろう。優れた作品を力のあるメンバーで上演したことには、施政権返還40年の節目ということもあろうが、自分は、ヤマトンチュウの卑劣を考えずには居られなかった。現在も国土面積の0.6%に約75%の基地が集中し、レイプ、殺人、暴行、ひき逃げなど米軍人・親族による犯罪は絶えない。因みにレイプは親告罪なので、数字に表れている数十倍の被害者がいるはずである。そこに、アメリカ国内でさえ、”空飛ぶ恥”と言われるオスプレイを配備しようと躍起になる日本政府とは何か? 国民の生きる権利を蔑にする姿勢は、原発問題や水俣、薬害などに対する反応同様、戦争中、沖縄島民にスパイ容疑を掛けて殺したファシストと一切変わらない。我々は、このような政府を成立させている我々自身の恥を知らねばなるまい。
このようなことを改めて考えさせてくれたこの作品に改めて感謝したい。