ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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UndergroundStates

UndergroundStates

EgofiLter

シアター711(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

寿
 日本三大ドヤのある町の名が寿と言うのもおかしな話だ。僅か200X300メートル四方の一角に122軒ものドヤが立ち並ぶ。そこにしか住めない男や女と、そんな者たちから絞り取ろうとする者らに、引き裂かれつつ、逼迫した財政にも拘らず懸命に支援する役所の現場担当者、ボランティア、ハンディキャップなどが絡み合って、ドキュメンタリー調に展開する。ブレヒトのように異化を強調する舞台ではなく、淡々と描かれるタッチに独特の距離感があり、問題提起をされた舞台であった。

チョリズム

チョリズム

有門正太郎プレゼンツ

枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)

2012/05/17 (木) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

寿
 日本三大ドヤのある町の名が寿と言うのもおかしな話だ。僅か200X300メートル四方の一角に122軒ものドヤが立ち並ぶ。そこにしか住めない男や女と、そんな者たちから絞り取ろうとする者らに、引き裂かれつつ、逼迫した財政にも拘らず懸命に支援する役所の現場担当者、ボランティア、ハンディキャップなどが絡み合って、ドキュメンタリー調に展開する。ブレヒトのように異化を強調する舞台ではなく、淡々と描かれるタッチに独特の距離感があり、問題提起をされた舞台であった。

チョリズム

チョリズム

有門正太郎プレゼンツ

枝光本町商店街アイアンシアター(福岡県)

2012/05/17 (木) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★

愛郷
 北九州市に対する愛着と福岡・博多市に対する対抗意識、複合意識は盛んに伝わってきたものの、これからも演劇を続けてゆくのであれば、もう少し対比を使ったり、人生の機微を一人一人の役者が漂わせるような劇団に育って欲しい。対比をする場合でも、たとえば静には動、コミカルにはシニック、はしゃぎには矯め、弧には群れ等々の対比ばかりではなく、それらの対比が、少し次元の異なるレベルでは、グループになったりしつつ、大きな群れを作るが、その大きな群れになった同士が対立したりという構造を持つような、ちょっと手の込んだ作品にも挑んで欲しい。役者陣からは爽やかさを感じたので、良い劇団に成長することを願う。

かたつむり第参部 完結編『彼岸花ノ章』

かたつむり第参部 完結編『彼岸花ノ章』

(有)キィーワード

笹塚ファクトリー(東京都)

2012/09/18 (火) ~ 2012/09/23 (日)公演終了

満足度★★★

イマイチ
 シナリオが論理の徹底性を欠くため、メリハリを失って切れが悪い。それでストーリーが失速してしまった。その隙間を情念で埋めるという発想も安易だ。また演技にも作り過ぎたわざとらしさが折々見えた。科白をかむ役者が多かったのも気になる所だ。

a Colony

a Colony

劇団だっしゅ

萬劇場(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

沖縄の願いは、当たり前に生きること
 苛めばかりでなく、差別、捜査などについてもこの国の陰険さは格別だろう。実際、検察の切れ者と言われ恐れられた検事が吐いた言葉を思い出す。予防拘禁についての発言であった。かつて学生運動などで、公安から目をつけられていた人々などは、現在、運動に関わっていようがいまいが関係なく、アメリカなどから要人が来日する際には、しょっぴいて檻の中に入れてしまう。容疑はでっちあげのことも多いとのことであった。兎に角、しょっぴくのが目的であるから何とでも言いがかりはつけられる。この検察官「しょっぴくのは当然だ」と嘯いていたのである。これは、現代のことだ。
 自分自身もある取材をしていた時に、恵比寿にある某研究所に仲間が出入りしており、事務所として使っていた自分の電話を連絡先として書き込んだ上で、資料の閲覧などをしていたのだが、暫くすると、その筋と思われる所から「手を引け」と脅しの電話が入るようになり、盗聴器を仕掛けたような雑音が入るようになった。もう随分昔のことにはなるが。それだけではない。自分の住居の周りには、怪しい人物が、何人かのグループで屯するようになったのである。
 福島第一原発1号機導入時にも、アメリカのスパイと読売の正力の懐刀、柴田 秀利との密談があり、政治的に原子力予算をつけたのは改進党に所属していた中曽根 康弘である。正力も中曽根も戦中の内務官僚であった。更にいえば、正力自身、ポダムという暗号名のCIAエージェントであったことは周知の事実である。
 こんなことを挙げたのは、この劇が、中盤迄、殆ど桁外し、おとぼけ、お茶らけに終始していたからである。それでも終盤まで見ていたのは、しょっぱなのシーンでロミオとジュリエットのパロディー場面が入った際、舞台の使い方が見事で力のある劇団であることを印象づけていたからである。その後も、何度かハッとさせられるような沖縄の抱える問題が提起され終盤に期待を繋げることが出来たからである。
 また矢鱈と登場人物にハーフが多いのだ。沖縄の実態に目を向けているヤマトンチュウなら気付く要注意マークである。事実、アメリカによる支配の実態は、占領と大差ない。多くの日本人が勘違いしているのとは逆に、米軍が日本に止まり続けているのは、日本を他国の侵略から守るためなどでは無い。寧ろ、日本を半永久的に属国たらしめる為だ。トモダチ作戦の本質は、米軍主導の米軍・自衛隊オペレーションの実施とエシュロン基地、三沢の防衛、米要人の沖縄差別発言、レイプ、ひき逃げ、傷害、暴行事件などで悪化した反米感情の反転、思いやり予算への民衆的反対運動の事前措置、基地問題の誤魔化し等々があったことは、自分の頭脳で考えることのできる人間なら誰でも気付くことばかりだ。更に、アメリカ製の欠陥原発への抗議、反原発運動を予め骨抜きにすることなども含まれていたであろう。
 こういったことを指摘すれば、当然、目をつけられる。そしてリスクを覚悟しなければならないのは当然のことである。だが、大抵の人々は、家族を持ち、中々リスクを背負う気にはならないであろう。その為にこのような形を摂ったのだと考える。中盤迄、断続的に芝居が中断されるようなシーンが出てきて興を殺がれるが、沖縄が現在、日々経験していることのパロディーと見れば、これは鋭い批評である。ヤマトにもアメリカにも蹂躙され続け、訴えることも思うに任せぬどころか徒労感を増すばかりという実態があるのだから。終盤の訴えは、我々、ヤマトンチュウが襟を正して聴くべき問題提起である。

『つまんなかったら言ってね、死ぬから』【ローション・ペペと提携!】

『つまんなかったら言ってね、死ぬから』【ローション・ペペと提携!】

あんかけフラミンゴ

Geki地下Liberty(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★

おもしろさ
 ”つまんあかったら”というのは、面白いものを目指したと解釈すると、喜劇的なものを目指したのだろうか? それとも、全体的内容の興味深さを目指したのか定かではないが、自分は、一応、喜劇的なものと解釈して続けさせてもらう。自分は、喜劇とは、乱暴な言い方をすれば悲劇に対する徹底的批評精神の産物だと思っている。つまり悲劇に対してはメタ悲劇という形で成立するのが喜劇だと言う事だ。従って、喜劇にするならば、ここで出てくる様々な悲劇と悲劇的状況を徹底的に批評することから始める方が良いのではにかと考える。だが、それはかなり困難を伴う作業になるので、先ずは、徹底的な悲劇を書くことが肝要なことだと思う。まして、扱っている問題がエディプスコンプレックスや共依存という悲劇に相応しい題材であれば尚のことだろう。
 性の問題も真正面から取り上げているが、現体制への批判的視点として見ることができる。これを梃子に、先ず、悲劇的状況の本質を暴き、じっくり観察することから始めても遅くはあるまい。
 演技に関しては、体当たりで勢いがあるが、やや粗い。妊婦のお腹の詰め物にあれだけ大きな物を使っているなら、歩き方などはもっと鈍重にしなければ嘘だろう。特にハケの時などこそ注意が肝要である。こういう点に注意が注がれた上で身体表現ができているか否かで相当評価が変わってくる。

太陽と灰二 vol.2 / 壊れないジェン我 ・ アンバランス

太陽と灰二 vol.2 / 壊れないジェン我 ・ アンバランス

9-States

相鉄本多劇場(神奈川県)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/18 (火)公演終了

満足度★★★

時空の歪みと若者の歪
 時空を交錯させながら登場人物の過去と未来が入れ子細工になって展開してゆくのだが、そこで描かれるのは、閉塞的で諦観の漂う受け身の世界観だ。現代をこの国で生きる若者の遣る瀬無さを見るような気がして暗澹たる気持ちになった。多分、自分には合わないタイプの作品なのだろう。

クールの誕生

クールの誕生

ワタナベエンターテインメント

PARCO劇場(東京都)

2012/09/12 (水) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★

日本
 義理と人情の物語と見ることができる。所謂、イケメン俳優を多用したステージの割には演技も上手い。この手のグループでは上位にランクされるだろう。だが、小劇場の役者たちのような人生を感じるレベルでは無いので、その分、シナリオがかっちりしていると言えば言えるだろう。悪く言えば、ディレッタントであるべきはずの才能が、この国の大衆レベルまで精神を下げて書いているという事も可能だ。社畜としてのサラリーマンの生活は、義理の世界であり、男が代表している。一方、人情の方は、恋の世界であり、女が代表しているという構造は、近世と変わる所が無いのだ。無論、このように書くことで冒険的要素を削ぎ、受けを計算できるのは確かだが、折角の才能をアートとしての演劇にまで昇華させない職人に寂しさを覚えるのも事実だ。

たけしの挑戦状【ご来場ありがとうございました!!】

たけしの挑戦状【ご来場ありがとうございました!!】

劇団東京ミルクホール

ウッディシアター中目黒(東京都)

2012/09/12 (水) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

エンタメ
 しょっぱなTVネタの楽屋落ちが多くて閉口したが、寸劇の中に、まずまずのものがあって、集中力を繋いでゆくことができた。中盤、伝統的なものを演る基礎力もあると感じてからは、面白く見ることができた。エンターテインメントとしてある程度成功しているのは、ストーリーテリングな展開をきちっと追いかけるより、弾けて歌や踊りに持ってゆくタイプのエンターテインメントだからだろう、ドライで楽しめる。

ファイティングポーズ

ファイティングポーズ

劇団光希

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

背負うものに感動
 "ファイティングポーズ”を見た。冴えないサラリーマン阿部は、運動神経零。妹に「子供の頃から、お兄ちゃんのせいでずっと恥をかかされてきた」と非難されるばかりである。然しながら、兄とてもそんな妹の言葉に釈然としないものを感じている。
 そんな時、妹の彼が通っているボクシングジムへ行ってみないか、と妹から提案が為される。同時期、阿部は妻が妊娠3カ月であることを知る。子供が出来たことを喜ぶ阿部だが、無論、ジムへ行くか否か迷いはある。何にしろ、運動神経は零なのである。迷った末に一念発起、ボクシングジムへ出掛けるが、ジム会長の妹からいきなり止めておいた方がいい、と言われてしまう。

ネタバレBOX

 徹底的な駄目男が、男を立てて行く話であるが、内容的には凄絶と言っていいほどだ。何しろ、ボクシングの話である。格闘技を実際やっていた人で他流試合を経験した人なら分かるであろうが、実際ボクサーはどんな角度からでも打ってくる、という経験を持っているだろう。動体視力も良い。スピードもある。何より、実戦的である。寸止めルールのある空手などより遥かに実戦的なのである。当然、死の危険も高い。テンプルへのフックなどは頭部へのダメージが大きいし、チンへの打撃も脳が大きく揺さぶられる。
 スポーツとはいえ、以上のようなリスクを伴うスポーツであるのも事実なのである。その分、実際にボクシングをやり続けようとする者は、本人は無論のこと、応援する家族や友人、恋人たちの内心は試合の在る度、胸ふたがる念である。
 単に自分自身のプライドや勝ち負けでなく、自分を応援してくれる人々の念を背負い、生き様を背負ってこその格闘を描いている点にこそ、この作品が、これだけ感動を齎す原因があろう。
ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

おぼんろ

ゴベリンドン特設劇場(東京都)

2012/09/11 (火) ~ 2012/10/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

しっかりしたシナリオ
 シナリオの構造がしっかりしているので、廃工場の空間を使い、縦横無尽に動き回る身体能力の高い役者陣のリズム、躍動感、スピード感が活きる。
 構成も巧みだ。だが、最も見事なのは、その言語遊戯だろう。しょっぱな、聞いたことも無いような単語が頻出する詩的導入部があるのだが、演劇の基本に沿って、劇の全容が、この時点で解説される。但し、観客には、その表現の意図する処は、正確には分からない仕掛けになっている。従って、観客は、推理することを強制されながら、芝居を見ることになるのだが、この辺りのシナリオ、構成の巧みは、特筆してもよかろう。ここで、既に観客は、劇作者の呪縛から逃れられないようになっているのだ。
 

ネタバレBOX

 描かれるのは、運命に翻弄される兄弟とゴベリンドンと呼ばれる呪われた存在との稀有な邂逅と悲劇的な結末。サブプロットに死体洗いを生業とする魔女と兄の話、兄弟の母の死にまつわる真実と兄の思い込み。兄弟の叔母が明かす母の死の真実。この村に刃物、銃など一切の武器が無いことに関する伝説。その結果の平和。兄弟が大切に育てている美しい蝶の蛹。弟が体験する不思議な予知等々。これらが、総て、最後の悲劇に向かって、その逸話が埋めるべき場所にぴたりと嵌ってゆく。パズルのピースを一つ一つ丹念に埋めてゆくような見事さがある。更に、この作品の作者が、若い作家でありながら、内容的に余りにも陰惨な悲劇に、現代の観客にも耐えうるような着地点を用意し、配慮していることだ。
 ゴシック文学に出てきそうな詩的文体を駆使しながら、恰も矛盾の同位体のような言葉の綾を紡ぎ、最終部では其処にあった齟齬を解消し、而も悲劇として成立させたうえで、一縷の救いを与える。見事な手腕である。
 役者同士の連携も良い。下町の廃工場を舞台にするセンスも日本人には珍しいかも知れない。レオス・カラックス的でとても気に入った。役者、スタッフ共に爽やかなことも好印象であった。
ナイアガラ

ナイアガラ

劇団HOBO

駅前劇場(東京都)

2012/09/05 (水) ~ 2012/09/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

新宿
 実在する新宿の中央公園の一角に住むホームレスたちの日常を描いた作品だが、舞台美術、演出、演技、シナリオどれをとっても素晴らしいできであった。演技では、やまさん役の俳優がとぼけた味を出して普段演出ばかりやっているとは思えないほどの演技を見せたし、他の役者陣もそれぞれのキャラが立つような、それでいて自然なレベルの高い演技であった。また、シナリオでは、新宿という街の持つ特性も良く出していた。

ネタバレBOX

 一種の都市伝説である小山からの人声は、誰もいないのに聞こえてくるが、其処は誰も立ち入らぬ方が良い場所でもある。新宿に集まる膨大な「人々の念が凝り集まって聞こえるのだ」という科白からは、ごった煮、東京の当に中心・中核を為す新宿の掃溜めの漏らす寂しい吐息そのものだと言うことができよう。
 更に、細かい点まで行き届いた配慮が素晴らしい。やまさんの小屋を撤去する時、小屋の屋根にはちゃんと落ち葉が積もっているのだ。
 作品のスタンスも良い。たとえ今では野宿者になったとはいえ、それぞれが抱えた事情の中で人間の尊厳を失わず共生している。そのような彼らの生き様をそっと、とても自然に提示しているからである。
[◯]A“Lone” ロン

[◯]A“Lone” ロン

「XXXX」

梅ヶ丘BOX(東京都)

2012/09/07 (金) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

視座
 登場人物、男1人、女1人。この男女の関係に意味を見出そうとすると、不分明になる。意味に拘泥するならば、ピストルの強制する世界と考えるのが、最も近いかも知れないが、それだけに終わらない要素も孕んでおり、ピストルを男性性器と捉える事も可能ではあろう。然し、それでも釈然としない。
 自分は、むしろ想像力の生まれる場所で、役者は身体を用いて互いをインスパイアし、観客がその様子を見て、イマジネーションを広げる共同作業へのエチュードと見た。役者は、当然、観客からのレスポンスに反応して新たなイマジネーションのヒントを身体化する。この行為はループ構造を為していて、少しずつ内容に変化が起こる。その過程をこそ、見るべき作品だったのではないか。肝心なことは、このような視座・視点を持つことによって、意味という監獄から自由になることである。観た者にこのような発想をさせてくれた役者陣、演出家に感謝したい。

El Diablo~BARHOPPER vol.2 ご来場ありがとうございました!

El Diablo~BARHOPPER vol.2 ご来場ありがとうございました!

BARHOPPER

池袋 DiningBarでんでけ(東京都)

2012/09/08 (土) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★

préciosité
 バーの中での朗読劇。壁には、映像が流れ、ギターの生演奏が入るが、ギターがイマイチ。シナリオを洗練を装っているが、むしろ、プレシオジテが鼻につく内容であった。
 

ネタバレBOX

 男を惹きつける一人の女を巡る4人の男の物語であるが、女を美化する余り、男の特性である鉄砲玉のような存在の軽さを嘲る、独りよがりな視点が目立った。
 彼女の持つテクニックと美しく見せるコツに対抗し得た唯一の男は、軽薄極まるナンパ師であるが、それもそのはず、軽薄同士だから、表層で一致するのは、当然である。
 だが、このことは、より悪しき主題を孕んでいることに注意したい。死を嘲笑するニヒリズムである。これが、如何に危険極まる態度であるか。我々は既に充分体験してきたはずである。この点で深化を遂げられないのであれば、我々は、再び、軽佻浮薄を通って悪しきダンディになることであろう。
 ハッキリ言っておこう。悪しきダンディとは、精神性の高み深みを欠き、誇りを無くし、自らの宿命を他者の意のままに操られることをよしとし、生殺与奪の判断を他人の手に預けて恥じない態度を実践する輩である。
恋のロジスティックス

恋のロジスティックス

江戸川あどりぶギルド(旧 広域河川劇団江戸川即興職人劇団)

ワーサルシアター(東京都)

2012/09/07 (金) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★

恋のオペレーション
 ロジスティックスを担当する物流会社が、業務命令を用いて、社内恋愛を推進してゆく話なのだが、当然、計画通りにはゆかず、嫉妬や連絡ミス、指示ミスなどが、幾重にも絡まって喜劇的様相を呈する。
 ある程度こなれた公演だが、ブランクがあったせいだろうか。若干、切れが悪かったようである。物資の保管移送をするために、倉庫の空き状況、配車の合理的且つ有効な利用を、基本的には机上で決定し管理・運営してゆくのが、この会社の仕事だが、舞台を見ていてもシチュエイションが似ている分、メリハリがつけにくいので、シナリオも冗長になりがちだ。
 更に、舞台上に役者が一人も居なくなる場面では、電車が近くを通り過ぎる音を使って時間を埋めていたが、ワンパターンでは、すぐ飽きられよう。
 更に、演技にも、細部に対する配慮が足りないケースがあった。神は細部に宿る。誰でも言う事ではあるが、やはり、そういった点に気付いてしまう者には、興ざめである。

スキッパーハイ

スキッパーハイ

発条ロールシアター

タイニイアリス(東京都)

2012/09/06 (木) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

壮大なオプティミズム
 中盤までは結構ファミリードラマ的に展開するが、それ以降は、SFらしいSFが展開する。

ネタバレBOX

 光を超える物理学も出てくる展開で物理学を文科系にも分かるように書いたニュートンなどの雑誌は、かなり読んだだろう。そう思わせる物理学混じりの話が入ってきて、実に面白い。当然のことながらヒッグス粒子の概念や次元、パラレルワールド位は雑誌で調べておいた方が楽しめる。
 おまけに、ラストでは、別宇宙・地球に住む宇宙船遭難者と故郷の星の宇宙人が話をするシーンなども出てくるが、どうやら彼らは恋人同士。その片割れが、それぞれの物理法則が異なる為に、自力では二度と故郷の星へ戻ることもできず、地球探査プロジェクトが終了するため未来永劫救済される望みも断たれ「永久に別宇宙の空間を漂うんだ」と独白するシーンが出てくるのだが、痛切である。だが、凄いのは、彼が、流れ着いた星・地球の在り様を肯定し、其処で希望を持って生きることを選択することだ。このオプティミズムが素晴らしい。
八月納涼公演  松井誠・池畑慎之介

八月納涼公演  松井誠・池畑慎之介

新歌舞伎座

大阪新歌舞伎座(大阪府)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/18 (土)公演終了

満足度★★★★

きっちり
 原作もメリハリのきいた作品であるが、舞台に工夫を凝らして、様々なトリックを上手に見せている。もともと、「四谷怪談」は「仮名手本忠臣蔵」外伝として描かれたと説明にある通り、主君切腹、お家断絶と公の恨みが、忠臣蔵で描かれているとすれば、四谷怪談は、この公に翻弄される私の恨みを表現したととることができよう。この辺りの関係を視覚化し得た舞台であった。裾捌き、時と所によって異なる刀の置き場所など、細かい点にも配慮がなされ、楽しめる舞台になっている。

アンダーグラウンドワンダーランド

アンダーグラウンドワンダーランド

ハイバネカナタ

サンモールスタジオ(東京都)

2012/09/06 (木) ~ 2012/09/10 (月)公演終了

満足度★★★★

演出
 効果の強い視覚表現を多用していて、初めて見ると驚かされるのだが、
視覚的効果の高い物は飽きられやすいのも事実である。

ネタバレBOX

 導入部、アンダーグラウンドへの道行で用いられる凸面鏡に映るクイズ王のimageは、光で彼の足もとに楕円が描かれるだけでも新鮮なのに、更に凸面鏡に反射させることで、不思議の国への導入部として鮮烈な印象を与えるのだが、クイズショウの放射状緑光線の多用などで、折角の効果が意味を減殺してゆくのはいかがなものか。
 また、シナリオには、もう少し明晰さが欲しい。ドッジソンの作品を下敷きにしているのだから、数学的明晰さをベーシックな部分で忍び込ませて欲しいのだ。
Overruled/悪魔のいるクリスマス(二本立て)

Overruled/悪魔のいるクリスマス(二本立て)

もんもちプロジェクト

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2012/09/06 (木) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

英国風紳士の厭らしさ
 イギリス紳士たちの気取った厭らしさが男女のカップルの欺瞞的な会話の中に描かれて楽しめる。swapのような汚い言葉は使わず、互いの相手を取り替えるという遊戯で取り繕う辺り、如何にも狡賢いイギリス風である。皮肉な見方をすると、とても楽しめる。

Overruled/悪魔のいるクリスマス(二本立て)

Overruled/悪魔のいるクリスマス(二本立て)

もんもちプロジェクト

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2012/09/06 (木) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

Lucifer
 神よりも人を知るのは悪魔なのかも知れぬ、との思いが根差してくるような舞台であった。実際、神などよりヒトの心を知るのは悪魔であろう。このシナリオでも神の側の要求は、スタティックであるのみならず、ドグマティック且つ無責任であった。それにひきかえLuciferの何と人間的なことか。この作品を題材に神学論争など始まると面白い。

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