ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます! 公演情報 おぼんろ「ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    しっかりしたシナリオ
     シナリオの構造がしっかりしているので、廃工場の空間を使い、縦横無尽に動き回る身体能力の高い役者陣のリズム、躍動感、スピード感が活きる。
     構成も巧みだ。だが、最も見事なのは、その言語遊戯だろう。しょっぱな、聞いたことも無いような単語が頻出する詩的導入部があるのだが、演劇の基本に沿って、劇の全容が、この時点で解説される。但し、観客には、その表現の意図する処は、正確には分からない仕掛けになっている。従って、観客は、推理することを強制されながら、芝居を見ることになるのだが、この辺りのシナリオ、構成の巧みは、特筆してもよかろう。ここで、既に観客は、劇作者の呪縛から逃れられないようになっているのだ。
     

    ネタバレBOX

     描かれるのは、運命に翻弄される兄弟とゴベリンドンと呼ばれる呪われた存在との稀有な邂逅と悲劇的な結末。サブプロットに死体洗いを生業とする魔女と兄の話、兄弟の母の死にまつわる真実と兄の思い込み。兄弟の叔母が明かす母の死の真実。この村に刃物、銃など一切の武器が無いことに関する伝説。その結果の平和。兄弟が大切に育てている美しい蝶の蛹。弟が体験する不思議な予知等々。これらが、総て、最後の悲劇に向かって、その逸話が埋めるべき場所にぴたりと嵌ってゆく。パズルのピースを一つ一つ丹念に埋めてゆくような見事さがある。更に、この作品の作者が、若い作家でありながら、内容的に余りにも陰惨な悲劇に、現代の観客にも耐えうるような着地点を用意し、配慮していることだ。
     ゴシック文学に出てきそうな詩的文体を駆使しながら、恰も矛盾の同位体のような言葉の綾を紡ぎ、最終部では其処にあった齟齬を解消し、而も悲劇として成立させたうえで、一縷の救いを与える。見事な手腕である。
     役者同士の連携も良い。下町の廃工場を舞台にするセンスも日本人には珍しいかも知れない。レオス・カラックス的でとても気に入った。役者、スタッフ共に爽やかなことも好印象であった。

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    2012/09/12 17:51

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