ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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【当日券あります!】第32進海丸

【当日券あります!】第32進海丸

カズカン

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2013/03/15 (金) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★★

土佐の鰹漁師
 海に生きる者たちの掟、その感覚が良く伝わってきた。評価は4にしたが、海での生活を知る者だけが読者であれば、5をつけてよい内容だ。ただ、一次産業に携わる人間が殆どいなくなった現在のこの国で、深読みできる者が減っているであろうと考えての評価4。

ネタバレBOX

 カツオ釣り漁船での、こませの撒き方や要領、カツオが海面を目指して興奮状態で浮上してくる様子と疑似針での釣り方、男ばかりが、半年から10カ月もの間、狭く、落ちれば命の保証は無い、ストレスの多い空間に閉じ込められてする、キツイ仕事と人間関係を纏めてゆく漁労長の知恵と冷静、優れた人心掌握術も隋所に描かれ、説得力を持つと共に、現在の水産界の置かれた、魚資源そのものの枯渇問題まで織り込み、それゆえの男達の複雑な利害も射程に収めて、其々のキャラクターの立つ演技で表現して観せた。
 役者陣の演技、演出、漁師達の大勢集まる飲み屋が2階にある、こじゃれて居るが故に人気の無いスナックに設定したことも、現在とこれからの漁業を見据えた新漁労長と伝説になった前漁労長の対比を暗示して絶妙。人間関係の絡み方も見事である。気配りが利き大団円では、新旧の行き違いもアウフヘーベンしてみせた自然な筋書きも良い。
花束を渡すのは誰だ?

花束を渡すのは誰だ?

コマイぬ

Gallery&Café FIND(東京都)

2013/03/12 (火) ~ 2013/03/16 (土)公演終了

満足度★★★★

二人芝居
 登場人物の数からいうと、演ずるのが最も難しいと言われる二人芝居に、よい感じで立ち向かっていた。二人のうち、一人は、モデルを職業にしている。その為か、メイという女性型ヒューマノイドはやや中性的な感じが出ていて、それが、この作品にマッチしていた。
 ジョージを演じていた男性が役者稼業である。中々、力のある役作りであった。緩急を上手くこなし、メイの居場所を創りだすだけの力を発揮している。

ネタバレBOX

 設定は2058年。核戦争後、シェルターに避難しているジョージは、孤独と孤立に耐えかね、自らハンド・メイドと称される女性型ヒューマイドを制作、成長型のプログラムを組み込んで、その後1年をメイと名付けたヒューマノイドと暮らす。但し、成長型と言ってもメイの成長は身体的なものではない。身体的な変化はなく、知性や精神の成長である。そして、そのスピードは人間の約20倍だ。1年後にメイは既に大人の女性の精神性を具え、知性でもジョージを遥かに凌駕する。
 遂に彼女は彼に質問する。なぜ、自分達しか居ないのか? 父や母、他の人たちは居ないのか? と。仮に人間は、ジョウ-ジだけで、あとは生殖機能を持たないメイしか存在していないのであれば、子孫を残すことができない。子孫を残すことのできない生き物に、生きる意味はあるのか? と。
 無論、この議論を通じて「二人」の間にコンフリクトが生ずるのだが、思い掛けないラストが待ち受ける。それは観てのお楽しみだ。
劇場版マサ子の間男〜ある小男の一生〜

劇場版マサ子の間男〜ある小男の一生〜

マサ子の間男

シアターブラッツ(東京都)

2013/03/11 (月) ~ 2013/03/11 (月)公演終了

満足度★★★★

腹の皮が捩れる
 一回だけの公演というのは勿体ない!

ネタバレBOX

 何ともヒトを食った始まり方だが、音と言葉の間を巧みに操り、登場人物各々が持った懐中電灯で己を照らしたり、誰かを集中的に照らしたり、と暗転中の舞台に意味と無意味を立ち上げたかのようだ。無明を身体化してみせたと言ったら褒めすぎだろうか? 何れにせよ、導入部のインパクトは、非常に効果的だ。
 この後、関西弁、見事な英語、間の芸、幽霊の登場に因る滑稽場面などを鏤めながら中盤、終盤の始め辺りまで引っ張ってゆく力は圧倒的で、白鳥の湖、ボレロなどの名曲を使ったパフォーマンスは腹の皮がよじれそうなほど面白い。
 更に主人公の高校時代、パシリで盗みを働かされて、饂飩好きの自分に出会い、その後、大ヒット商品を生み出して、日本はおろか海外に迄支店を出すほどに成功するが、この時のCMの様子なども見物である。その箍の外し方の上手さ、微妙に垢抜けない微笑ましさ、絶妙のバランスには、甚だ感心させられた。更には、まるで無関係なホットパンツ姿の男性の踊りが名曲と共に紛れ込む。
 無論、意味など無いのだ! おまけにタイトルに関しても悪戯が仕掛けてある。「マサ子の間男」がメインタイトルのはずなのだが、マサ子も登場しなければ、女性も一切登場しないのである。寧ろ、サブタイトルの“~ある小男の一生~”が、この作品の全体を通じて描かれているものなのだ。
 惜しむらくは、この作品が最後迄、抱腹絶倒の喜劇として描かれなかった点だろう。サブタイトルの流れに落とし込んでしまった。最後迄、喜劇のバージョンを是非作って欲しい。これだけの力があれば、それも充分可能であろう。今回は最後まで喜劇でなかったので星4つにした。次回作に期待している。

『                        』

『 』

荒川チョモランマ

日本基督教団 巣鴨教会(東京都)

2013/03/11 (月) ~ 2013/03/11 (月)公演終了

満足度★★

無題
 基本的に聴聞僧と女二人の思い出話。

ネタバレBOX

 聴聞僧は二人の女の内の一人をストーキングしており、彼女は幼馴染でもある彼を無碍に扱う訳にもゆかず、レズであることを隠したまま、彼の追求を免れる為に、風来坊ということにしている。だが、恋は否定されれば燃え上がるのが常、御多聞にもれず彼の恋も炎上するが、携帯も着信を拒否されてしまう。おまけに彼女は、海外へ旅立ってしまった。
 もう一方の女は、彼を恋しており、終には彼を伴侶とするが、海外へ出た彼女は、大地震と津波の被害に遭った模様で連絡がつかない。
 キリスト教の教会で演じられたのだが、脚本、演出、演技、舞台美術、小道具など、どれも配慮と力が足りない。幼稚園を経営している教会ということからか、演技にも演出にも必要の無い子供向けの本やたくさんの風船などが、舞台空間にそのまま放置されているのは、問題だろう。こういうものが、演出の邪魔になるのであれば、シーツなどで覆えば済む話だ。演劇をやるならば、そういったことにも気をつけて欲しい。
 受付でチケットを宛名を手書きした封筒に用意してくれたり、善意はとてもよくわかるし有り難いのだが、芝居は、善意だけで出来上がるものではない。寧ろ、人々の心理や考えが、どう動作や身体に現れるかを冷徹に観察した上で、善意も含めて人間とは何か? を追求するものだろう。人間総体を見るような眼を養って欲しい。
カウラの班長会議

カウラの班長会議

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2013/03/08 (金) ~ 2013/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

必見の舞台
 いつ観ても質の高い、社会性の強い作品を観せてくれる燐光群だが、長い間あたためていたこともあって、この作品は抜群。必見の舞台だ。

ネタバレBOX

 オーストラリアに実在した捕虜収容所で暴動が起きた。以下後送
ハットと呼ばれた捕虜収容用建物と同じサイズで作られた舞台は、完全では無い。実寸取りしているので、劇場のサイズが間に合わないのだ。そこで、シナリオを工夫し、収容者達の定員オーバーに起因する問題の結果、火鉢に収容者用の寝具が掛かって、半分は燃えたという設定にしてある。但し、詰め込まれた人間の窮屈な状態を視覚化する為には、矢張り実寸を選んだのは正解だと言えよう。
 ここに、卒制で映画を作る女子学生達が、やってくる。彼女たちのアプローチはユニークだ。先ず、誰がどんな役割をこなすのか最終的に決まっていない。そこで当然、宙ぶらりんの彼女たちは、迷い、自ずと様々な可能性を自ら考えるのだ。そのような過程を経て漸く決定した役割分担の後、指導教授は、各々の学生が、カウラに収容されていた、其々の兵士に自らを仮託し、各々の兵士の日常を想像力を用いて具体的に再構成することを求める。
 登場人物は、この女学生らと教授連、それに、1945年8月5日、オーストラリア、カウラの捕虜収容所で実際に起きた史上最大規模の捕虜反乱事件に参加した兵士達である。双方が、女学生たちの映画製作過程に於いて、その日常をどのように過ごし、何故、多くの犠牲者が出ることを知りながら無謀な行動を起こしたのかを事件として知られる史実以外の部分で肉付けし観客の前に提示して見せた。
 この作品で描かれたのは、日本の特質である。つまり、2013年3月時点にこの国で実際に起きていることと、1945年8月5日に至る僅かな間にオーストラリア、カウラのハット内で起こった日本人グループの捕虜収容所脱出事件とを巧みに交差させることで見えてくるこの国とこの国の民の意識に関する詳細な演劇レポートなのである。
 ちょっと振り返ってみれば、直ぐ気付くことであるが、日本は、私小説の伝統を含め、身の回りの細々とした生活や其処に生起する出来事を作家の個人的な資質というフィルターを通したということで特殊化し、どちらかと言えば家の内側、塀の内側の美意識、愛憎を職人芸の粋を尽くして描くことには長けるが、時代の中でヒトがどう生き、何をどのように選択し、その結果どのような責任を負うことになるか? それが社会の一員としてどのような意義を持ち、意見の異なる他者や他の社会集団とどのような関係を取り結ぶかについての展望も、見通しの不可欠なことや生き抜く為の技術も弱いように思われる。
 その点、坂手 洋二の作品は、常に時代、社会とのコンフリクトの中で生まれ、作品自体が、各々の事象を描くに必要とされる形式を求めて生々流転しているように見える。坂手自身、自分が遅筆であることを表明しているが、その理由はこういう所にあるだろう。同時に彼の作品はどれを取っても、その質に於いて高いのもこういった理由に因るのだと思い至る。
作品のまとめ
 さて、「カウラの班長会議」は、実際に起こった暴動事件を扱い乍ら、現代日本の抱える基本的な日本人の在り様を抉り出した作品である。中国、北朝鮮、韓国の脅威を煽りたてるマスコミと付和雷同して追随する日本国民、福島第一原発人災事故を既に終わったこととして忘れ去ろうとしている大手マスコミと報道されないのをいいことに、真相を追求しようともしない日本人。更に隠蔽と嘘によって、事実、真実を覆い隠しとおせると勘違いしている無能な政治屋、官僚、司法、マスメディア、御用学者等々。こ奴らの齎す結果に気付いていながら、波風の立つことを嫌い、事実に覆いを掛けて素知らぬ振りを決め込む日本人。どんなことをしても、また、誰が、責任ある地位に就いても変わらないと諦め、愚にもつかぬ弁明をダラダラ垂れ流す、諦めの良い見栄坊の日本人。このような日本人の変わらない在り様を、海外に生きた日本人グループを通して抉った。見事な作品である。
黄昏の笑顔

黄昏の笑顔

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2013/03/09 (土) ~ 2013/03/17 (日)公演終了

満足度★★★★

“誰そ彼”の笑顔
 流石に良くできたシナリオだ。だるま座の質の高さは今日も健在!

ネタバレBOX

  ヒューマノイド研究が秘密裏に行われている孤島。現在、上層部から与えられているミッションは、限りなく人間に近いヒューマノイドの作成だ。そこで、研究チームは試作機AMを完成するが、ソフトの調整不足から暴走したAMは、マザーコンピューターの攻撃を受け、2度目のラボ破戒を招いてしまった。所長は、非常呼集を掛け、研究者及びAMを呼び出し、現在AMに装備されている、小火器、ミサイル、低周波音波砲、デビルイヤー、デビルアイ、超高速残像生成措置、飛行能力、水面歩行能力、超軽量・高強度の躯体等々の軍事的能力を廃し、人間に近いヒューマノイドに作り変えるよう命ずる。
CASE

CASE

劇団伍季風 ~monsoon~

小劇場 楽園(東京都)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

初サスペンス
 どういう場を設定するか? これが上手くゆけば、芝居は滞りなく運ぶ。それほど大切なことなのだ。今回劇団MONSOONが使った小屋は、小劇場楽園、客席は舞台に直交して2か所。小さな小屋でレイアウトもちょっと特殊。その小屋の特性を見事に活かし、密室のサスペンスを織り上げた。シナリオの緻密さ、役者陣の落ち着いた演技と適確な間、やや落とし気味の照明と全員黒で統一した衣装が、いやが上にも観客の集中力を舞台上に、その筋の展開に絞り込んでゆく。そのことを意識した演出である。無駄な物が何一つない舞台上には、想像力を刺激するアタッシュケースが一つ。これが、シナリオの展開のコアにもなれば、観客が、舞台上に馳せる想像力のコアにもなって重層的に作用しているのだ。
 サスペンスなので、内容説明は避けるが、ラストも含みのある良い作品である。
 

「ジャパニーズ・ジャンキーズ・テンプル」

「ジャパニーズ・ジャンキーズ・テンプル」

ハイブリットハイジ座

シアター風姿花伝(東京都)

2013/03/06 (水) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度

痴的
 何事にも“ずれ”が生じてしまう主人公の話。ずれの原因も一応明かされるが、何ら演劇的説得力もなく、シナリオの内的関連も無い。ぐちゃぐちゃのシナリオでジャンキーの生態を描こうとか、ジャンキーの見た夢、という落ちがついているわけでもない。矢鱈にダンスパフォーマンスが入るが、シナリオとの連携を欠くが故に、何の説得力もなければ、感動もない。ないない尽くしの公演であった。

ブルーシートチルドレン

ブルーシートチルドレン

川崎インキュベーター

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

ファシズムの時代
 芝居はベタだが、大切な事は全部入れ込んで尚且つダンスに移るタイミングやシナリオとの連携も自然である。また、川崎インキュベーター合同公演ということもあって、通常舞台上には余り登場しない、制作、演出家、シナリオライター、振付役なども、其々の関係を役者役と共にこなし自然に展開させていた。

ネタバレBOX

 ブルーシートチルドレンとダンサー達が襤褸を纏って踊るシーンは美しい。但し、ダンサーならばタップはもう少し上手に踊って欲しい。感心できるレベルには至って居なかった。
 時代はファシズムの方向へ完全に振れている。最後は救いがあるものの、その先に何があるかを描いて時代感覚も良い。骨太なシナリオの評価を高くし、評価は4.但し、演技は、まだまだ磨くべき点がある。
フェアリーテイルアレゴリー

フェアリーテイルアレゴリー

なば缶

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2013/03/05 (火) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度

学芸会
 申し訳ないことに10分ほど遅刻をしてしまった。だが、シナリオ、演技、演出どれも悪い意味でTV的。つまりなっていない。

ネタバレBOX

 中盤、核汚染の恐怖をにじませた点、きちんと舞台作品のレベルに持ってゆくのかと考えたが、TVで話題になったネタを下敷きにした駄洒落が多用される地の部分に時折間歇的に鏤められた”泣かせ”が、パッチワークのように展開する。但し、これも、何処かで既に聞いたような科白ばかりだ。
 舞台美術ばかりが、金を掛けた豪勢なもので、まるで、其処で起こっていること総てを、嘲笑っているかのようなレベルであった。その意味では、自分達をパロディー化したのであろうか? それが意識的であったら、TV界への批評として面白くもあるが。
消失・ from メガロポリ子

消失・ from メガロポリ子

mimimal

新宿眼科画廊(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/06 (水)公演終了

満足度★★

無聊をかこつ
 この作品の創作コンセプトはオープンソースリアリティーということのようだ。会場で貰った説明では、“舞台芸術の身体性を舞台上のノイズという形で展示する”ということだ。確かに、我々がイメージする現代日本の若者たちの会話から、きっかけを通して物語の世界へ入ってゆくのだが、ここで言われている舞台芸術とは、生きながらの死のことなのか? と問い質したくなる内容であった。ノイズというほどイライラしない。

ネタバレBOX

 劇中、至る所で、世界に対する不信感のようなものが、発散する。そのような半睡状態に近い感覚の中で、男と女、都市や地名を媒介にネットレベルのニュース、地図情報などを繋ぎ合わせてパッチワークを作ろうとしているのだが、いかんせん、情報の裏読みもなければ、鋭い情報リテラシーも感じない。平板でありきたり、おまけに情報に操られっぱなしがミエミエの、イマジネーションの欠如が心配だ。
 ジョギングをするシーンで映し出された紛争地の映像の何を理解したつもりでいるのか? 所謂「テロとの戦争」を大義として攻撃を繰り返して来た、米、英、露、イスラエルなど大国の犠牲者に、無辜の子供、女性が如何に多く、一般市民が圧倒的に多く虐殺されている事実をどう捉えているのだろうか? 人の生き死にを単なる情報として扱い、そこに人々の日常生活があることも、親子、兄弟、親族、眷属、地域社会の助け合い、恋人たちの愛があることも一切捨象して、偶々豊かな時代に、この国で育って、操作された情報を簡単に入手しただけでの知ったかぶりは、グロテスクでさえある。
 以上のような生き方しかしていないから、若いとはいえ既に大人になっているのに、世界を見る視座が浅いのだ。疑似恋愛やセックス場面も表現されるわけだが、描くべきは、自身の人生さえ無聊をかこつだけのものに貶められたことに対しての狼煙であろう。
DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2013/02/28 (木) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

作法
 基本的な物語作法通りの作品。

ネタバレBOX

 邪悪と義、究極の愛、永遠の命、権力・力と弱者、差別と被差別、など基本的構造にそれぞれの要素を絡み合わせて、余りにも単純化することを逃れ日本版ハリウッドとでも形容したい内容になってはいた。然し、独自の発想や視点が見られるわけではない。この点、作家は、知恵を絞って欲しい。
 動き、や演出は悪くない。殊に、銀河連合の旗艦が、ザレムに襲われ、死体が山のようになっている所へ踏み込んだダストシューターズが、それらを吹き飛ばすシーンの演出、照明は良かった。アクションが多様され、多くの人が楽しめよう。
秘を以て成立とす

秘を以て成立とす

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

質の高い舞台
 演技、演出、脚本、舞台美術や音響、照明を含めて総てが、高いレベルだ。何を書いてもネタバレになりそうなので、あとはネタバレで。

ネタバレBOX

 多重人格者の抱える深いトラウマを、町医者一家の日常に組み込む手際、発想の妙と主人格が、困難を克服して、明日を迎える方向を示唆して迎えるラストに畳み込み方、からくりを分からせるタイミングの良さ、肌理の細かい演技、演出、効果、舞台設定・美術などの完成度も高い。主人公夫妻の終盤の掛け合いは、心理学的ケアのレベルを超えて圧巻。

逆鱗に触れるまでの細くて長い道《真昼間の章》《真夜中の章》

逆鱗に触れるまでの細くて長い道《真昼間の章》《真夜中の章》

Cui?

STスポット(神奈川県)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

情報過多とアイデンティファイ
 「真昼間の章」を観た。我々を取り巻く情報量は大変なものだ。目覚めていようがいまいが、寝る必要のある我々の生理に無関係に情報は我らに関与する。金融、デマ、政治、法、食糧、健康、医療、飲み水、仕事、生き方等々総てに亘って情報があり、多かれ少なかれ我らはそのネットワークの中で起き且つ眠るのである。情報がかように我らに影響を及ぼすにも拘わらず、我らの方では情報の全体像を掴むこともできなければ、真偽を確かめることさえできないのが、多くの人の持つ実感だろう。結果、人々は自己を守る唯一の方法として“知らんぷり”を決め込むのであるが、それは同時に、孤立をも意味する。その孤立が、社会性を失った時、孤は、孤のみを増殖する。他に方法は無い。そのように孤絶を強いられた孤のあがきを表象化して見せたことは大きい。

あんかけフラミンゴ2

あんかけフラミンゴ2

あんかけフラミンゴ

王子小劇場(東京都)

2013/02/28 (木) ~ 2013/03/05 (火)公演終了

満足度★★★

評価
 良い悪いというより生理的に受け付けるかどうか分かれる作品かも知れない。話としては、グロテスクだと感じた。

ネタバレBOX

 母の死の弔いに三姉妹、長女の元彼などが集まるが、末娘をレイプした父も参列していた。姉二人は、父と母が8年も付き合っていたことも知らなければ、妹が父にレイプされたことも知らないが、父は、マゾヒズムを売りにする会社の経営者であり、母もマゾヒスト、長女もマゾ、二女もDVに耐え、楽しんでいるマゾヒストである。長女の元彼はサディストであるが、一応、長女との間のSMでは愛が主題になっている。長女の癖は首を絞められることを喜ぶことと言った内容の中で、件の会社のスタッフが、元彼に殺され、それを長女が庇いだてすると、死体処分に300万掛かるから、それをSMモデルをすることで支払え、と父に強要され、二人とも豚として生きることを余儀なくされる。が、電気ショックなどを加えられ、困憊気味の姉に代わり二女をモデルにしようと画策した父により、妹夫婦が、新たな餌食になる、といった具合だ。更に、元彼はお笑い芸人を目指していた過去を持つが、その相方は、末娘とセックスフレンド関係にあり、この関係も父にレイプされた妹のトラウマ絡みで異様なものである。近親相姦とSM、近い者同士の人倫を根こぎにする肉体関係と凶悪犯罪などを妙にベタに描いているので、自分には、グロテスクに見えた。
 音響の使い方も、もっと抑えた方が、自分には好みである。ディスコ並みの音量を出して、音を歪ませる効果を狙っているのかも知れないが、自分は、ただシラケタだけであった。
Pink Punk Pamper~ピンクパンクパンパー~

Pink Punk Pamper~ピンクパンクパンパー~

アフリカ座

劇場MOMO(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

芸能というもの
 肌理の細かいジョークで異世界に引きずり込み、妖怪が跋扈する不可思議な世界を自然に楽しむことができた。妖怪の大立者、九尾の狐・尾裂狐役の存在感も中々のもの。所謂、冒険譚の基本を忠実に守りながら、詰めを怠らず緊迫感のある科白で責めた点でも、芸能の奥深さを感じさせた。

後ろの正面だあれ!

後ろの正面だあれ!

椿組

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/05 (火)公演終了

満足度★★★★★


 この公演にも亜空間、亜時間が成立している。開演早々、雨音を背景に座敷童子と見まごうアマノウズメが、坐って黙ったまま小さく四角い物を長い間覗き込んでいる。

ネタバレBOX

 観客はこの時点で、長い間(ま)に込められた手管に掛かる。嫌でも応でも、想像力の総てを注ぎこまざるを得ないからである。結果、現実と異界の間に引きずり込まれる。それは、誰もが持つ幼少期の、神話的・御伽的時空の追体験だ。
 ここは、明日取り壊される家で、兄弟5人全員が集まることになっている。ところで、集まって来た兄弟が其処で発見したのは、古い写真だ。ウズメがずっと見ていた物である。観客にはウズメがずっと見え続けており、彼女の妖精的な世界は観客と共にある。亜時間・亜空間を追体験しているのであるから、当然だろう。
 一方、役者陣には、ウズメは見えない設定だ。無論、アメノウズメは日本書紀に登場する女神であるが、天の岩戸を開かせたことで、芸能の神としても祭られているのはご存じだろう。役者や演劇関係者は総て芸事に関わる者だから、ウズメは、芸能の神としても、初脚本、初演出の出し物を寿いでいると考えてよい。但し、この劇の中では、座敷童子の役も担っていると考えられる。
 何れにせよ、観客は特化された時空体験をしており、とても不思議なテイストなのだが、心地よい。友達と悪戯をし、遊び、喧嘩をしたりしつつも何時も一緒に楽しく過ごしたこのユートピアのような世界は、ウズメの過ごす時間としては非常に短いにも関わらず、子供達は大きくなり大人になってちりじりばらばらになってしまう。ウズメの寂しさはいかばかりであろうか? 何より、この充実し楽しく夢のような世界は、1964年のオリンピックを境に急激に変化して行く。日本列島改造計画が実行され、それまでの自然な河川敷や海岸は悉く失われ、しもた屋はみるみる消滅、代わりに高層ビルが林立するようになる。道路・ハイウェイの整備の名のもと、子供達の遊んだ道路が、空き地がどんどん無くなっていった。声高に叫ばれる文明批評など何一つ語られないこの作品の、鋭く激しく、根底的な批評が素晴らしい。
 また、いつも無駄を省いて本質を掴んだ舞台美術を作る加藤 ちかさん、センスの良さが光る振付のスズキ 拓郎くん、ラストの素晴らしい効果を盛り上げた諸子、自然な演技で臨んだ役者陣、シナリオ・演出も巧みである。座長の独特のリズムも、勘を得て良い。

壺を割った男

壺を割った男

舞台芸術集団 地下空港

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2013/02/20 (水) ~ 2013/02/26 (火)公演終了

満足度★★★

嘘と真心?
 前説が入れ替わり立ち替わりのドタバタで幕開けという趣向は面白い。これが、最後のシーンの悪戯と響き合って、間に入る物語をサンドイッチしている。当然のことながら、前説のドタバタは、本編の予告も為している。

 嘘が嘘を呼び、その嘘が新たな嘘を呼ぶ連鎖構造を丁度マトリョーシカのように入れ込んでいるのだが、その外壁は、嘘で固めた原発推進派の説明のように危うい。無論、この作品がそんなにシリアスな事を演じているわけではない。単なる比喩である。
 

ネタバレBOX

 唯、作家は、敢えてシリアスな世界をシリアスに描くことは避けたのだろう。漸く年間自殺者が3万人を割ったと報じられた我が国の自殺率が高いことは言う迄もないが、中でもポスドクの自殺率は際立っている。3万人を越え続けた高い自殺率のアベレージの確か20数倍以上であったと記憶している。この問題をきちんと扱えば、大変大きな問題を提起する作品になることは誰にも分かるだろうが、喜劇に仕立てるのは相当の才能と困難が伴おう。それもあってか、主人公はマスター出で元カノを追い掛ける嘘つきだ。彼の嘘でない所は二つだけ。いや、一つが二つに分かれたとも取れる。彼女を本当に好きなことだけだ。彼女をゲットする為なら、どんな努力も厭わない。それで彼女が進む大学へ、更に院へと進んだのだ。勉強は決して好きでもないのにこんな努力をしたことをもう一つの真と考えるか否かで意見が別れる所だ。この位の軽いノリで見ると楽しめる。

韓紅の音(カラクレナイノオト)&韓国民族伝統芸術パフォーマンス

韓紅の音(カラクレナイノオト)&韓国民族伝統芸術パフォーマンス

Unit航路-ハンロ-

タイニイアリス(東京都)

2013/02/22 (金) ~ 2013/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

金 哲義氏のシナリオ
 金 哲義氏のシナリオは、何処を切っても血が噴き出す、生きたシナリオである。役者の演技もこのシナリオに応えて質が高い。更に演出家としても優れた手腕の持ち主である哲義氏が、今迄表面に出て来なかった役者の新たな才能を掘り出す点にも注目したい。
 作劇の中で、象徴を上手に使う点でも既に実績を築いてきた彼ではあるが、今回は、その象徴を重ね、新たに重層的な意味を付与してもいる。

 釜山民芸総による民族伝統芸術
サムルノリ、パンソリ、韓国民謡、仮面を用いたパフォーマンス、伝統舞踊など、韓国の無形重要文化財に指定された最高峰の芸人達が繰り広げる芸の質の高さ、エネルギッシュな演奏、身体鍛錬の凄まじさ、民衆の底力を感じさせる、諸芸。時を忘れて楽しめた。

ネタバレBOX

 幕開き当初、ハルモ二が故郷を離れ、海を渡ってくるシーンがあるが、ここで用いられた水音と舷側の波を示す薄布は、終盤、朝鮮的であること・ものの総てを嫌って片道2時間もの遠回りをして住んでいる地域を隠したオモニの、日本と朝鮮、北と韓国、ハルモニとオモニの融和を示唆して意味深長である。無論、在日一世のハルモニ、二世のオモニ、三世の視点と在り様もこの象徴に関与している。但し、終盤で使われた薄布は、水音の無い分、在日として生きてゆく彼らのこれからを暗示してもいるだろう。

コスモノート

コスモノート

実験劇場企画公演

明治大学和泉校舎第二学生会館地下アトリエ(東京都)

2013/02/23 (土) ~ 2013/02/25 (月)公演終了

満足度★★★

しなやかな感性

 コスモノートはカフェの名前、店の名物は、ドーナッツとお話。という枠で、三つの物語がオムニバス形式で進行するが、演じられている世界、世界観が個人レベルに留まっている点が気懸り。感性がしなやかで、演劇が好きだ、ということが分かるだけに、その気になれば、時間は結構あるのだから、世界の中の日本という視点も持ってほしい。外国語も英語のみならず、独、仏、スペイン、露、中、ハングル、アラビア語等々にチャレンジし各国語で情報を入手、分析できる程度の事を目指した上で、シナリオを書いて欲しいのである。

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