ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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愉快な誘拐犯

愉快な誘拐犯

かーんず企画

シアターブラッツ(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★

視座を深めると良くなろう
 Team Saltを拝見。シチュエイションが突飛な分、やや、強引な筋運びが見られたが固いことを言わなければ楽しめる。

ネタバレBOX

然し、本当に芝居好きに評価されたいと考えるなら、細部のリアリティーに拘って、より緻密に作るべきだろう。例えば、誘拐犯が、最初から素顔を晒している点などは、問題だ。誘拐犯は殺人を前提としている訳ではない。まして、気の良い犯人たちであれば尚更、最初の内は、マスクをするなり、目出し帽を被るなりの細工が必要だろう。顔を見られるのは、殺しを意味するのが常識だからだ。マスクを取るのは、犯人達が、ハルキに同情してからでも遅くないし、そういう所作が、進行場面の転換にも有効だからである。一応、健一が、誘拐の電話を掛ける前に「今ならまだ冗談で済む」云々の科白で“俺達は顔を見られている”ことにも言及しているのだが、顔を見られた場合、基本線で誘拐された者を殺す路線は変更しようが無い。まあ、こういうユルイ認識しか出来ない誘拐犯だからこそ、この展開があるのは、分かるが、このままでは、最高得点は望めないのも事実である。完成度という尺度には、普遍的パターンとの整合性も含まれるからだ。
 また、ハルキが父親に認められる点については、彼の徹底して駄目な加減が、ハルキを冷徹な観察家たらしめており、その才能が、他のダメ人間に活力を与え、再生の機運を齎したことが描かれていたにも拘わらず、ラストでは、突拍子もない歌と踊りがヒットするという安易な展開になっており、小手先の印象を拭えない。以上、指摘した部分だけでも改善すれば、可也、完成度の高い作品になろう。
 それなりに楽しめた作品を作る力を持っているだけに更なる奮起を期待する。
Second Hole

Second Hole

劇団仲間

劇団仲間地下一階アトリエ(東京都)

2014/05/04 (日) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★

分からないということが惹き起こすこと
 不可知、未知の場所にとり込まれた、5人の男女。暗くて様子が分からないだけでも不安なのだが、何故、自分達が、この場所にとり込まれたのかも分からない。分からないことづくめは、当然のことだが、根源的不安を産む。(追記後送)

常夜ノ國ノ★アリス

常夜ノ國ノ★アリス

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王子小劇場(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★

爆音ステージ
 時は大征、大日本帝国、菖蒲天王は健在であるが、皇太子、七緒は、16歳で元服を迎え、名実ともに一人前の皇位継承権を得た。然し、七緒は菖蒲の第二子。第一子は、姉の弥生である。DNAの近い二人は、近しい他人。皇位継承を巡る争いに恋や謀略、情報操作等が絡み事態は進展。(追記後送)

うさぎストライプと20歳の国

うさぎストライプと20歳の国

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2014/05/01 (木) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★

萌えいずる頃
Don’t Be a Stranger! 20歳の国
 思春期の揺れを上手く表現している。殊にいざという時に見せるためらい表現は、秀逸。

学級崩壊 うさぎストライプ
 個々の身体表現というよりは、マスゲームのように機能化・記号化した身体表現を感じさせ、好き嫌いが分かれそうだが、崩壊という事象の抽象的な形は描いて見せた。

オレンジ新撰組 リターンズ

オレンジ新撰組 リターンズ

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しめる
 人気の高い新撰組を描いた作品だけに、様々な工夫が凝らされている。まず、本物の新撰組ではない。但し、本物の新撰組も本来武士だった者は殆ど居なかったので、新撰組という組織自体、狭い意味での武士の組織とは認定しないという立場はあり得るだろう。例えば、日本のビール。法的には至って狭い範囲で規定されている。フランスのシャンパンも然り。この伝で言えば、である。
 自分の造語で言えば、ダサ格好良い。(前段で示した通り、喜劇的要素を含むので、わざとズッコケ・ダサシーンを盛り込んで笑いを取りながら、その作品の中に人の情が求める、人としての深い普遍性を盛り込むことで、極めて格好良い芝居になっている。
(追記2014.5.8)

ネタバレBOX

 京都で名を上げた新撰組の名を騙って、女にもてようと立ち上げたオレンジ新撰組の暮らす町へ攘夷派の面々が逃れてきた。一部の情報が合致したことから、攘夷派はオレンジ新撰組を本物と判断。ヤットウのいろはも知らぬ素人に襲いかかる。無論、主役側だから死にはしないので、喜劇的な展開になる。本物の新撰組が武士になりたくて仕様が無かった、遅れて来た青年達によって構成され、それが、本物の武士たちに良いように利用され翻弄されたからこそ、新撰組は庶民に人気が高いのだろうが、その本物新撰組の胡散臭さを偽というコンセプトでパロディ化しつつ、本当の人生を目指したいと願う庶民の気持ちを代弁している点にキチンと棹差すことによって、人情の機微を描き、単なるパロディーに終わらせていない点が良い。また、近藤 勇を名乗って後ろ姿で登場してから幕引きのドンデンに関わるメロン新撰組が出て来て、偽者の流行を示唆したラストもグッド。この喜劇的な流れにシリアスな対比を加えていた、本物の人斬り以蔵役の福地 教光の渋さも光る。またメロン新撰組局長が最初に登場する際、後ろ姿という演出の冴えも見逃せない。小沢 和之の恰幅を活かしたキャスティングも気が利いている。更に、メロン新撰組局長は、ヒロイン、お鶴の父で彼女が身売りの危機に陥った原因が、オヤジの新撰組かぶれ、というのも深読みすれば男に対する痛烈なアイロニーである。
82-Fes・up・party 2014

82-Fes・up・party 2014

82-party

TACCS1179(東京都)

2014/04/24 (木) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

卵たちの夢
 芸能界の厳しさにチャレンジする卵達のメンタリティーを感じさせるシーンも多く、スターを目指す彼らのプレッシャーも分かるような気がして参考になった。

ネタバレBOX

 100万人に夢を与える道明寺が、生放送をドタキャン。その時、道明寺の大ファンで引き籠りの日之内 待機は、漫画を描いていたのだが、憧れの道明寺と自分の、漫画で描いていた想像上のアイドルユニットから道成寺のキャラクターが現実世界へ飛び出してしまった。暫く、待機と偽道明寺は、口論をするが、待機は正鵠を射られて待機は部屋に引き籠り体制に入った。仕事から帰った妹も偽道明寺に会い、初めて現実世界に飛び出した偽道明寺が外出したがるのを何とか抑えていたが、隙を突かれて逃げ出されてしまった。然し、ステージ衣装を纏い、道明寺に瓜二つの偽者は、忽ちファンにもみくちゃにされ、ホウホウの体で逃げ帰ってきた。然し、彼は桜が見たくてしようが無い。ステージ衣装では目立ち過ぎるとジャージに着替えさせて貰った後、再び、隙を見て逃げ出し、本物が穴を開けた生放送に出演してしまう。偶々、妹はこの番組を見ており、有給休暇を総動員して彼を探しに出掛けるが、偽者は偽者で芸能事務所の人間や若手アイドルと知り合いになり、アイドルとは何か? 自分は、何の為に存在するのかについて自問するようになり、アイデンティティーに悩む。
 一方、本物お道明寺は、アイドルにもあるはずの基本的権利を主張する一方、自らとスタッフ共同で築いてきた現在を、誰にも譲ることはできないと考えている。
 偽道明寺を本物と勘違いしてライブの招待チケットを手渡していたドカターズというアイドルグループのライブ会場に偽者、本物、妹が一堂に会した。その結果、本物と偽者の彼我の差、各々の位置がより明確化され、偽者は兄、待機一人の為の漫画キャラクターとして自らをアイデンティファイすることを納得、本の中に戻ることを決意して、待機の籠っている部屋のドアをノック。ドアが開き掛ける所で暗転、幕。
 本からキャラクターが抜け出すという発想は、レイモン・クノーの「イカロスの飛行」にもあるが、其処からの展開はまるで異なり、オリジナリティーのある作品になっている。演じた役者達の清々しい演技も良い。
2014年のジュビランテ

2014年のジュビランテ

創造旅団カルミア

座・高円寺2(東京都)

2014/04/24 (木) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★★

演出、演技に難あり
 ミノ―ル劇場は、40もの芝居小屋が立ち並ぶこの芝居街、アルスストリートで最小の劇場ではあるが、伝統もあり皆に親しまれて来た小屋であった。然し、現在の支配人になってからは、公演の度に事故や俳優の怪我、集団食中毒、スキャンダルによる主演俳優の降板など様々なアクシデントなどが起こり、巷ではミノ―ル劇場は呪われているともっぱらの噂。劇評誌にもその事が報じられて、経営は苦しくなる一方だったが、終に、スポンサーが下りる。と言い出した。その連絡のくる直前、支配人が、自転車で壁にぶつかり入院したとの報せも入っていた。副支配人は、それでも何とか劇場を蘇らせようと奮闘するが。

ネタバレBOX

 醜い顔に生まれ、母に嫌われた少年は父により幽閉され、昼は出歩くことも許されず、母からは虐待を受け続けていたが、或る時、演劇好きで優れた脚本を書く才能を持つ少年、トビーと友達になる。然し、偶々、母を訪ねて行った先で見た物は、トビーを可愛がる母の姿だった。ミノ―ル劇場とこの他にも出てくる人間関係がどのように関わっているかを繋ぐ線が、メロドラマとしても謎解きとしても面白い。
 話は錯綜していて、シナリオ自体は可也面白い作品だ。然し、演出が平板である。折角、シナリオは深くもありサスペンス調にもできる幅を持っているのに、種明かしの仕方が下手なので効果が半減してしまっている。役者のカツゼツも叫んでしまっていて、説得力に欠ける。全体のコンセプトを演出家がキチンと掴んでいないか、方向性を示し得ていないのだろう。この脚本の持っている深みを本当に描くのであれば、かなり重いものになる所だが、変な所(例えば役名と役者名の対応など)で分かり難くしているのは無駄であろう。
寺山修司「青森県のせむし男」フェスティバル

寺山修司「青森県のせむし男」フェスティバル

die pratze

d-倉庫(東京都)

2014/04/29 (火) ~ 2014/05/12 (月)公演終了

満足度★★★★

一回二団体
 同じ作家の同じ作品を異なる団体が演じる企画で、今回は、寺山 修司の初期作品「青森県のせむし男」だ。自分の拝見した日は、各団体、約1時間で、途中に休憩が入る形。IYAYOWORKの演出は、土着性を前面に出し、寺山の原作が描き出そうとしたものをかなり忠実に再現し得ていたのではないかと思う。初演時を残念ながら拝見していないので、自分のイメージであるが、寺山ワールドを色濃く感じた。殊に、せむし男の母役を演じた女優さんの存在感に好感を持った。全体の流れも寺山的な、予め失われた自らの、本来あったハズの、結節点を仮想することすら、白けきった嘘として認識する他無いドライで而も鉄錆や血の臭いのする作品に仕上がっていた。その渇きと存在の軽さを支えるものとして、背中の瘤に集約されるような執着や怨念が逆説的に必要なのであり、土着性が強調されているのであろう。そこにこそ、寺山 修司が現在、これだけ多くの人々に支持される原因があるように思う。
 一方、宇宙論☆講座の演出では、原作の粗筋は概ね踏襲しているものの、せむし男は、せむしMANという着ぐるみキャラクターに代わり、母も3人、生まれた子の数も3人と大幅な修正を加えられている他にも、土着性よりは空疎を前面に出し、そのノリで渡り切ったという感触であった。
IYAYOWORKは☆4つ。宇宙論☆講座は☆3つ。

悪と闘う!  全ステージ満員御礼!ご来場ありがとうございました!

悪と闘う! 全ステージ満員御礼!ご来場ありがとうございました!

ロリポップチキン

王子小劇場(東京都)

2014/04/28 (月) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★★★★

若者たち2014 ナウ
 ジャスト ナウを呼吸する若者の若者流異議申し立て! 安倍のようなアホが国の中心に居座って嘘を垂れ流しているのに、国会議員もインテリも有効な対策が取れず、事態は悪化の一途を辿っている。その悪影響を最も端的に、激しい形で喰らうのが、現在の若者達である。良い子を演じた所で、社畜になるかアメリカとその犬共に骨の髄までしゃぶられるのがオチ。それは、余りにもハッキリしたことだが、それがハッキリしているとまでは言い切れない、若者の経験不足が、苛立ちのエネルギーとして炸裂する舞台。(追記後送)

さらば、仏の顔

さらば、仏の顔

アフリカン寺越企画

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

三島とも水上とも異なる僧侶による寺放火
 カルマとの相克。(追記後送)

SWING

SWING

劇団Jamming Panda

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2014/04/27 (日) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

人外境
 やってきた者達には、往復の旅費と共に訪ねるべき場所の地図の記された手紙が送られていた。館に集まったのはウーノ、イスネーン、トレイ、フィーア、五郎の5人。だが、この5人のうちの誰かの館でもなく、誰もが初対面。誰が何の為に皆を呼び集めたのかが分からない。仕方が無いので、皆に共通項があるか、あるとすればそれは何かを探ってみることになった。(追記後送)

彼女の、利口な自殺未遂。

彼女の、利口な自殺未遂。

劇団平成商品

タイニイアリス(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

人の心
元星静高校3年6組の面々7人が、雑誌の編集などをいている彼氏と同棲中の金城のマンションに集まった。神保は相変わらず音楽をやっていて漸くメジャーデビューを果たした。服部は売れっ子塾講師で本を出したりもしていて売れ行きも良い。西垣は教諭。和泉は呉服屋の跡を継ぐと目されている。高橋、稲村も無論働いている。高校を卒業して9年の月日が流れていた。(追記後送)

448の女

448の女

ビニヰルテアタア

宇宙舘(東京都)

2014/04/24 (木) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

時と所の生まれる前
 4時48分に目覚めてしまう女。たった一人目覚めている時の寂しさを、宇宙の始原レベルの寂謬と感じてしまう女性という存在の紡ぐ詩的時空間。
 物理的に、時空は、宇宙が膨張しているから生じる性質だ。従ってビックバン以前には、時間、空間はない。この現代物理が捉えた最新物理理論を感覚的に捉え、得体の知れない表象として昇華している点に詩がある。ラストシーンは、その象徴だろう。素敵なテイストの作品だ。

妖精の探し方

妖精の探し方

劇団Peek-a-Boo

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★★★★

汚れっちまったら悲しめる?
 子供たちの感性、大人になるということの勘所を押さえ、バイアスを排除する目を持った大人にもキチンとアピールできる作品。(追記後送)

 porter ~旅するひとびと~ 

 porter ~旅するひとびと~ 

[DISH]プロデュース

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

額縁の絵を描いている人がいるとすれば才能在り
 旅をキーワードに紡がれたオムニバス。何と約20篇で構成されている。

ネタバレBOX

 1篇1篇が短いので上演時間は、通常だが、所々に珠玉の短編を鏤めながら、ダジャレ、お茶らけ、昭和ギャグ等のレトロ趣味的ギャグを挟む。こうすることと、最初と最後のシーンを同じにすることによって旅の象徴たる駅ホームを舞台の中心にして演技しながら、各々の人生の様々な局面とも読める内容になっている演出が気に入った。役者達は、秒単位の衣装替えなどでてんてこ舞いだろうが、舞台上では、可也自然であり、ちゃんと遣りたかったことの本質を捉えて臨機応変な対応を見せる。そこがまた、面白い。(これだけ押すことが目に見えている舞台で、ただ、わやわやするほど役者は馬鹿では無いし、演出は当然織り込んでいるから、間違いなくその辺りの指示は出している。)
しゃっふる

しゃっふる

ソラリネ。

ギャラリーLE DECO(東京都)

2014/04/22 (火) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★

ぼくたちの失敗にゃんちって
 大学卒業後、久しぶりの飲み会に集まった面々。現役生でも既に29歳。晩婚化した昨今と雖も既婚者も多く子持ちもいる。また中には7年ぶりに皆に会う者も。偶々、仲間の一人がレストランオーナーと結婚した関係で、その店で貸し切りパーティーをしている最中だ。他愛ない話が続き、互いに腐し合ったり、近況報告をしたり、この店のオーナー夫妻のなれそめ話に花が咲いたりと話は弾むが。(追記後送)

嘘つきと泥棒のはじまり

嘘つきと泥棒のはじまり

東京AZARASHI団

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2014/04/22 (火) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

お勧めの舞台
良い意味で裏切られた。喜劇は難しい。その難しい喜劇で笑わせて貰って、なおかつ深い。シナリオ、演出、演技、間の取り方、外し方も絶妙である。今までいくつか優れた喜劇を演じる劇団を評価してきたが、今作を観て、この劇団も、優れた劇団自分のリストに加えることにした。(追記後送)

楽屋

楽屋

演劇集団アクト青山

ワーサルシアター(東京都)

2014/04/22 (火) ~ 2014/04/30 (水)公演終了

満足度★★★

鏡の
 清水作品の中でもとりわけ上演回数の多い今作は、登場人物の造形次第でカラーが変わる。無論、その為には、登場人物の一人一人がシナリオの内実を内側から滲み出させるようなヴィヴィッドな演技が不可欠である。

ネタバレBOX

 前回「楽屋」を観たのはこの3月チョコレートケーキの日澤演出であったが、演出の差が出たように思う。日澤演出では、舞台装置、照明、音響、キャスティング、演出、演技総ての要素が緊密に結びつきながら而も個々の役割を受け持つ各々が、互いのエッジを尖鋭化して微妙なバランスと緊迫感を醸し出していたが、今回ROSSOの作劇では、これらの交感に脈絡が感じられなかった。その為、役者がポテンシャルの高い演技や、非常に高いレベルの演技をしているにも関わらず、各々の仕事が、単体として作用してしまい、作品全体の流れに統合されなかった。
 これは、演出家が、舞台上に吊るされた鏡のイマージュをキチンと捉えきっていないからである。今更、謂う迄もないこと乍ら、鏡は物理学的にも極めて興味深い対象であると同時に文化的にも広くて深い物であり、象徴であり、境界領域に位置する微妙である。この鏡の使い方を間違えた、と敢えて言いたい。即ち、この点だけから見れば、作品の本質を読み違えている。もし鏡を使うなら、割れた鏡を舞台床に敷き詰めるイメージで用い、鏡の乱反射を利用して、上演中、常にプロンプターの霊や、役者の怨念、情念が渦巻く世界を表現する為に使って欲しかった。演出家でも無い自分が言うのはおこがましいが、自分ならそうする。

ちのもの

ちのもの

ヒューマナムー

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/21 (月)公演終了

満足度★★★★

造反有理
 “ちのもの”の意味する所が社会的常識だったり、世の中の価値観だったり、要は、人間社会を成立させるものとして一般に考えられているものなら、それはチト疑って掛かる必要があり、打倒する必要があるということだろう。

ネタバレBOX

 豊家、男1人女3人の兄弟は、長男の脳、知識欲、長女の喰、食欲、二女の心、愛欲、三女の眠、睡眠欲其々の権化だが、その背後に狐面をつけた得体の知れぬ者に関与され続けている。然し、各人の欲望に憑かれた彼らの行動は、何とかギリギリ社会から落ちこぼれない程度の駄目加減を維持し続けて来た。だが、各人の疲れは相当なもので、疲れが極点にたした為か、唯一の友を失いそうになった危機などの他の原因が明確にあった為か、ハッキリしないものの、狐の面をつけた五感には感じられない得体の知れない者と融和した時、新たな展開を迎える。それは、社会との折り合いをつけ、水準以上の仕事を楽々こなし、スマートで通りの良い社会人優等生として生き抜く方法だった。暫く、彼らもこの方向で進んできたが、矢張り、三つ子の魂百まで、と言うことか。終に、この擬制にも破綻が到来した。その名を造反有理。
 演出では、手拍子の意味するものが効いている。前・中盤の溜めを、わざと無視した演技の時間が長すぎる感じがするので、この点でもう一工夫欲しい。
 作品の意味解釈:規律だの常識だの或いは社会的正義を強制してくるものは、眼にも見えず、耳にも聞こえず、味も無ければ、臭いも無い。無論、触れることもできぬ。即ち、五感で感知できぬことを示唆しているが、これは無論、放射性核種の危険極まる毒とのダブルミーニングだ。安倍政権になって、益々顕著になった権力者の関わる様々な事象の名前が恣意的に不正確にされていることを含めて、正しいことを認知し難くされていることへの警鐘も含めればトリプルになる。表現する者は先ずこの点を暴かねばならないという認識は正しい。その為には、敢えて良い子にならぬ選択が必要ではあるまいか? 即ち反逆者としての不良である。常に、意識は高く、政治を注意深く見つめ、人間的な位置に立って間違いは間違いであると指摘し続ける者、高潔で賢くても貧乏を余儀なくされ、社会的地位も常に低いであろう。が、人間的真実は、その最高の形も、最低の形も、常に弱者にこそ、宿るものだということを知り、且つ、その弱者に与する者。そのような者を為政者、及び体制派は、反逆者・不良と呼ぶ。然し乍らこのような造反こそ有理である。
震える砂塵

震える砂塵

幻想芸術集団Les Miroirs

シアターシャイン(東京都)

2014/04/18 (金) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

殻の中
 作家は、装飾銃剣が好きだと言う。だったら、セルバンテスが卒業した大学のある町へ行ってみたら如何か? 自分が行ったのは随分昔の話なので、今は様変わりしているかも知れぬが、歴史のある学生都市だから、まあ、色々探せば面白いものにぶつかるだろう。町の中心部のアゴラの回りは、イケテル“バル”がたくさんある。安くて旨いし、感じが良い。スペイン語もできるなら歓待されると思う。
 芝居自体は、五七調、七五調も入り混じる擬古典体に時々、現代ギャルの用いる偉く気安い表現が入るのは如何なものか? 貴族の用いる表現と民衆の用いる表現、都会と地方の表現の差をキチンと意識して使い分けているとは思えなかった。その辺りもキチンと表現するなら、表面上のアリバイ作りではなく、リアルな心理なり社会学的ジェンダーを意識してシナリオを書くべきだろう。今作を拝見した限りでは、ナルシシズムの域を出ていない。言語が、特殊な形を持って表現に供される場合、真にラディカルならば、それは、鋭い刃を持つ。そして、そうでなければ意味など無い。
 拘るものがあって、こういった形の作品を呈示しているのであろうが、未だ、夢を夢見ているレベルだ。殻を突き破って荒々しい現実と切った張ったする方が面白いよ。
 気に入ったのは、スタッフの丁寧で感じの良い対応と音響関係。歌姫、ラレを演じた祐妃 美也の歌は声楽家の歌には及ばないものの素人レベルでは上手い。音感も良さそうなので、レッスン次第では更に上が目指せるかも知れない。ノルベルトを演じた谷 英樹は、終始自然体に近かった。
ミュルテを演じた風祭 鈴音も自然体に近い演技であった。
 ところで、miroirを名乗るなら、現代の現実を映して欲しかった。現代の現実は、もっと歪んでいるし複雑だ。鏡像も捻りを加えて欲しい。

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