ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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Vol.1『BGS~バックグラウンドストーリー~』

Vol.1『BGS~バックグラウンドストーリー~』

ド・M(マリーシア)野郎の宴

Geki地下Liberty(東京都)

2014/07/31 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

主張が内向きで弱い
 劇団員、全員男、ゲイ在り、腐れ縁在り! 等々、小劇場で公演を打っている劇団の本公演中、舞台袖、楽屋での話である。

ネタバレBOX

 どういうわけか、この本公演前から、アタッシュケースに仕込まれた爆弾騒ぎが起こっていた。この事件、最初の爆発が、おばあちゃんの原宿、巣鴨で有名な西巣鴨で起こったことから西巣鴨ボマー事件として有名になった。その後も、あちこちで同タイプの爆発事件があったばかりか、何と、この劇団に所属する淡路島出身メンバー、福留の隣室で爆発が起き、ニュースで報道されたばかりであった。そんな折も折、楽屋では、劇団創立メンバー、ポンコツ役者、田端と編集者の服部、制作等担当の淀橋らが、雑談をしている。田端の不満は、「何故、自分には、短い科白しかないのか?」である。服部は、唯一、この劇団で本職のシナリオライターだけで喰っていける、主宰者の大木に原稿を貰うことだ。淀橋は、公演終了後の打ち上げ手配などをやりながら、皆の舞台に気を配っている。ところで、作・演出の大木と田端は、小・中・高と同期で、小さな頃は、双子の兄弟のような仲良しであった。田端は、高校で地区大会決勝迄駒を進めた立役者。キャッチャーで4番、時にはピッチャーも務めた程の選手で1年で既にレギュラーであった。綽名をドカ弁と言う。一方、大木は、サッカー部キャプテン、全国大会出場を果たしていて、特技は、視野が矢鱈に広いこと、耳の辺りで本を開いて読んで見せる。ホントに見えないのは、真後ろだけとの噂があるほどだ。だが、二人は、ある時から、事あるごとにぶつかるようになる。原因は、女である。で、現在の其々の彼女は、互いの元カノという交錯した関係である。彼らと最も、付き合いが古いのが、主役の片瀬である。その片瀬は殆ど出ずっぱりで、楽屋に戻るのは、水分補給程度なのだが、彼のペットボトルを狙っている男がいる、ゲイの矢部坂である。矢部坂は、片瀬がラッパ飲みしたペットボトルと自分がラッパ飲みしたペットボトルを交換し、間接キスをすることに執念を燃やしている。この他、舞台監督兼演出助手でプロレス狂の天本が居るが、本番中は、楽屋では静かにしていることが常識なのと、プロレスラーが試合終了後、何らかのアピールをした後、マイクを投げ捨てる動作に重ねて、楽屋内では常にメモ帳にメモって対話をするのだが、その時、マイクをプロレスラーが投げ捨てるようにメモ帳を投げるのが癖である。
 これら、やや濃い目のキャラクターと西巣鴨ボマーとの関係や如何に? ボマーの狙いは? はたまた、矢部坂の恋の結末は? そして彼らは無事公演を終えることが出来るのか? それらの謎解きは劇場で。
 ところで、矢張り何となく内向きである。演劇は社会を映す鏡でもあるはず。外界を、殊に、この国の歪みが、各々のキャラにもっと反映するような作りを目指して欲しい。同じ楽屋物でも、清水 邦夫の「楽屋」が優れているのは、そこに、役者のエゴやプライド、自意識の深刻さが、本質として描かれ、普遍性を獲得していると、観る者、読む者総てに感じさせるからだ。個別的でありながら、普遍的であるような作品を目指すことが、表現する者の心がけの要の一つだと言うことを肝に銘じて欲しい。
交互に光る動物

交互に光る動物

ブルーエゴナク

王子小劇場(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

外面 正常 内面 狂気
 北九州市で2年半前に旗揚げした若い劇団だ。座長は、現在23歳。旗揚げの時に3年以内に東京公演を打つと決めていたそうで、2年半で実現した。先ずは、おめでとうと言いたい。

ネタバレBOX

 座長の年齢から察して貰える通り、若い劇団だから“北九州市(小倉などをイメージして貰うと良いかも)に住む人達の意地やしぶとさ”を描いた、と言われるなら、そうなのかも知れない。
 然し、自分の見方では、擬制の維持の為に嘘しかつかない大人達への徹底的な不信感が現れた作品のように思えた。
 衆知の事実ではあるが、日本は、アメリカのポテンシャルベースである。嘗て中曽根がレーガンに対して「日本は不沈空母だ」と国辱そのものの発言をして握手していたことがあったが、無論、アメリカの日本認識を言った発言という意味では、媚びでも何でもなく、正鵠を射た発言なのである。それ故、こんな売国奴が勲一等を貰っているのだ。勲一等では、東京大空襲を始め、日本各地の空襲を指揮し、日本民衆大量虐殺を行ったカーチス・ルメイにも日本は、この勲章を与えている。更に、日本は、首都周辺をアメリカ軍基地に囲まれ、空域の優先権は第一にアメリカが持っている。そんな「国」の首長が、自分の責任でこんな不平等や大迷惑に一言も発することなく、尖閣を購入して、亜細亜の隣国とのいざこざを惹き起こす。首相は首相で、最低限、何万年単位で考えなければならない核廃棄物問題を隠し、何ら問題の片付いていない原発事故にも頬っかむりして、アメリカの言いなり。集団的自衛権でも得をするのは、アメリカだけだというのは地位協定を読めば明らかなのに、そういった被植民地の実体を隠すことばかりに血道を挙げて、日本全土の沖縄化を推進している。一言で言えば、アメリカの植民地である日本の実体を隠し、独立国の体を装う為に擬制を敷き、大人は共犯で嘘をつき続けているのだ。
 そのことを若者の真っ直ぐな目で見、切り取った作品ということが出来よう。従って、自分の解釈では、かなり理屈っぽい視点がベースにはあると睨んでいる。言い方を変えれば、見えている事象総ての背景にある動機、利害、作意などを総て読み取り、対処したい、との思いを感じるのだ。然し、論理的にそれを徹底する限り、不可知論に陥らざるを得ない。だが、経験も未だ浅く、独自の判断を自らの経験に頼ってはすることが出来ないのが、若者と言う名の“老人”であってみれば、論理で食い下がる他、大人に対抗する道は無い。このようなアンチノミーを通して、認識や意味が追求される一方、意味の形骸としてのルーティンワークが、大人への通路として、その危険な顎を広げている。分かり易く言えば、外面正常、内面狂気とでも言えるだろう。だが、他に採る道が無いとすれば、彼らは、アンヴィヴァレントな道を行くしかないのである。結果、判断は停滞・停止し、精神は、本能に屈服する。そのように危険な可能態を群襲劇2作目で描いているのだと考える。シャブ関連の検挙率、1位。治安の悪さも波ではなく、ロケットランチャーが見付かる等々が起こる街とは、植民地の癖に、独立国だと嘘をつき続ける日本の縮図である。そして、交互に光る動物とは、集団的自衛権とやらで人を殺し、殺される状況下での敵と己のことかも知れない。その時、人は、動物であるより獣そのものであろう。
狂喜乱舞~わらいや双六編~

狂喜乱舞~わらいや双六編~

外組

ザ・ポケット(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

喧嘩坊主たち
 現在は売れない落語家、双六となったタケオや、リョウら4人の仲間は、いつもつるんで喧嘩に明け暮れていた。まあ、水産高校の生徒だから喧嘩は日常茶飯事だ。

ネタバレBOX

 ライバルは農林高校の番長グループだ。そんな彼らの中で、唯一、勉強もできるのはリョウだけだ。まあ、親父が議員で元社長ということで界隈の名士だから、その程度は当然だろう。女にももてる。タケオは、いつも、クラスの学級委員をしている女子から追っかけまわされているが、今の所、彼女というわけではない。兎に角、できない勉強をうっちゃり、将来の展望もなく、船酔いを考えただけで戻してしまう体質では、家業の漁師になることも覚束ない、タケオは、喧嘩に明け暮れている。そのお陰で喧嘩坊主としては地元で名の売れた存在だ。そんな彼に、東京で働かないか? と誘いを掛けた男があった。名を木村と言い、亡くなったタケオの父の同級生で、今は東京で働き偉く羽振りが良い。行き詰まりを感じていたタケオは、その話に飛び付くが、木村は、地上げ屋であった。10年後、東京湾を跨いだ橋が掛かることを見越して、房総半島のこの地の土地を買い占め、転がそうと目論んでいたのである。但し、面の割れた、自分の子飼いの若い衆では、都合が悪い。金を積めば、首を縦にふる連中を転ばせるのはわけの無いことだが、先祖伝来の土地は売れない、と言う人々を切り崩すのは難題だ。そこで、地元の若者を使い、様々な問題を起こしたり、敵対させることで、漁夫の利を得ようとの魂胆であった。ところが、その話はリョウの親父にも繋がる利権であった為、リョウの家に出向いて父親と話している所を聞かれてしまった。リョウは早速、タケオに、東京へ行くことは止めるように説得するが。(現在、上演中の為、ネタバレはここ迄)。ダチってのはいいもんだ。
 ちょっと、言っておきたいことは、もう少し、ギャグを知的な物にして欲しいことである。まあ、設定が、水産高校のツッパリなので、シナリオに少し無理がでるかも知れないが、芝居の面白さを追求し、劇団を続けてゆくのであれば、知的レベルの高い作品にもチャレンジしてほしい。
 乱闘シーンの動きなどは良い。
あけみママを待ちながら 

あけみママを待ちながら 

劇団ぺブル(ペブル・グラベル)

ワーサルシアター(東京都)

2014/07/31 (木) ~ 2014/08/04 (月)公演終了

満足度★★★★

劇団の過去作品がポスターにアレンジされていたり、遊び心満載
 この劇団、1年1作である。というのも座長が岡山在住なので、劇団員の殆どが東京乃至近辺在住の合同練習が中々思うようにできないからである。それもあってか、シナリオレベルで、観客に想像の余地を与える“加減・ほど”が実に絶妙である。(開演中なので更なるネタバレは後ほど)

ネタバレBOX

 今作でも、その辺りの呼吸は見事で、作品内容にもピッタリだ。今でこそ、水商売という業界に暗いイメージは無くなってきたものの、かつて、この業界に入る人々には、訳ありの人が多く、過去を消し去りたい人々が持つ独特の距離感を湛えていたものであった。その分、他人にも余計なことを言わない、詮索しないというような空気があったものである。この辺りの呼吸が作品の要になっているのだ。昨日が初日だったので、ネタは終演後に明かすとして、店に捨てられた6~7歳の女の子を何も言わずに育て、独立心の強い、察しの良いこの子がママに遠慮をして中学卒業時に「出てゆく」というのを「高校ぐらい出ておきなさい」とそっとフォローしてやるような優しさを持つママは、店の切り盛りでは、賑やかこの上もない。
 そんなわけでそれなりに繁盛しているこの店は、ホステスが足りない。偶々、父が亡くなって熊本から上京し、キャバクラの面接を受けた夕子は、キャバ嬢には向かない、とのキャバクラ店長判断で、スナック「あけみ」を紹介され、ここで働くようになった。兎に角、自分が「変わりたい」というのが、彼女がこの業界に入ったきっかけである。多少、引っ込み思案ではあるものの、誠実でどこか素人っぽい彼女の雰囲気は、馴染みの客からも自然に受け入れられ、もう7年が経っていた。そんなある日、店は急に静かになった。あけみママが置き手紙を残して失踪したのだ。周りの人々に訊いても消息は知れず終いだ。夕子が入店した時点で、孤児だった優子はここを出ていたので2人に面識は無く、彼女は漫画家になっていて、ずっと戻って来ない。チーママだったみどりも別の店に移っているので、現在、「あけみ」は夕子とバーテンの2人が回しているのだが。
 
見果てぬ夢

見果てぬ夢

ランプの伯爵

上野ストアハウス(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ヒポクラテス
 確かに、作家がリーフレットに書いている通り、ストレートな作品ではある。然し、全体のバランスの良さ、ところどころに煌めく科白、人情の機微を巧みに表現する技術などは、他劇団でも結構上演されているだけの作品だ。(追記後送)

無事公演を終えました。ありがとうございました!!→H君の冒頭意見陳述とその周辺、あるいは無敵の話

無事公演を終えました。ありがとうございました!!→H君の冒頭意見陳述とその周辺、あるいは無敵の話

楽園王

サブテレニアン(東京都)

2014/07/29 (火) ~ 2014/07/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

Merdre!
 全体は風景1、風景2と題された作品群でひとまず、完全に異なる話の2部構成というか2.5部構成というか、言い方に迷う構成になっている。まあ、2.5部構成といった方が正しかろう。というのも、風景2は、別々の話が、2つ演じられるのだが、風景2の最初に演じられた作品のラスト部分は、風景2で2番目の作品が終了した後に演じられるという特殊な構成になっているからである。この構成上の工夫によって、作品は微妙な化学変化を起こし、結末のファンタジックな世界への移行をスムースに感じさせているのである。尚、タイトルを記してある作品が、風景1の作品だ。風景2のタイトルは後ほど記す。
今作は、サブテレニアンの企画公演Marginal Man01“周縁の人”の参加作品ということもあって、こういう作りになっているのかも知れない。MarginalであることやMarginalなものは、常にpilot surveyや水先案内として、現代のように、価値が無限に希薄化してしまった時代には、殊に重みを増す概念である。この点に着目して、企画を立てた、この小屋主の慧眼にも敬意を表しておきたい。

ネタバレBOX

 何れにせよ、このようなコンセプトで演じられていると考えられる今作。視点もユニークである。Merdre!(糞ったれ!)で始まるアルフレッド・ジャリの傑作、Ubu Roi(ユビュ王)に通じる作品と捉えてみた。但し、今作では糞ったれ! は最後に持って来られている。そのわけは、無論、被告が裁判で意見陳述を許され、その機会を用いて、事件の概要とネットを主要な媒体とする噂の乖離を明かし、個々の事例に対する己の分析的立ち位置、そのように対処した己のメンタリティーの自己分析結果を表明をしてみせた上、更に罪を問う体制側論理を分析、その判断に対する態度表明をしてゆく結果として、己の存在、その存在を許して来た社会そのものを茶番として断罪することが試みられていると言って良いだろうからである。つまり、犯罪を犯した者が、アイロニカルな意趣返しを図ったのである。言い換えれば、論理自体を体制側のものと同一に措定し、それに異を唱えず、寧ろ、自分自身を論理に従って断罪することを要求することによって、体制の茶番を暴くという構造になっている点がアイロニーなのだ。そのアイロニーを呈示した上でだからこそ、糞ったれ! が生きるのである。
 オボカタさんという名の謎の女とムーミンに登場するキャラクター、スナフキンとの間で繰り広げられる、無論、STAP細胞論議をベースとした、コミカルなサイエンスファンタジー。無論、STAP細胞の話が出てくるのだが、専門的な知見というよりは、近代科学のおおもとの一つとなった錬金術と知的所有権や特許料による莫大な利益を示唆する「経済的錬金術」を掛け、更に、錬金術という中世的な概念を持ち出すことによってファンタジックな世界に溶け込みやすくしている点が、面白い。STAP細胞に関して、追試が出来ていないという点が、大きな問題として先ずは上がってくるべきなのだと考えるが、大方の予想通り、下らないゴシップや非本質的な話題に転化することで、メディアが馬鹿騒ぎし、それで、小金を儲けたことを茶化している点もあるかも知れない。それで、今公演のラストに、オボカタさんという名の女性は、迎えに来たスナフキンと共に、ムーミン谷へ行ってしまうのである。
 ところで、風景2では、「錬金術師」と名付けられたこの作品の途中に谷崎 潤一郎作の「お國と五平」という作品がサンドイッチされている。原作を読んでいないので、今回の脚本と同じ内容であるか否か、自分は知らないのだが、この作品は、風景1とダブる。だらしのない男(家老職の家に生まれ、お國の許嫁でもあった友之丞はお國に振られるが、彼女の選んだ夫を闇討ちして殺害、逐電し、虚無僧に身をやつして、仇討の旅に出た、お國、五平を足掛け4年も追い続ける。)武士としては、剣術も頗る弱く、甲斐性もない友之丞だが、未練だけはたらたらである。それは、恋についても己の命についてもだ。その彼が、2人を追い続ける4年程の間、2人は虚無僧の正体に疑いは抱いたものの、結局気付かない。物語は、正体に気付く直前から、仇討を遂げる迄を描くが、互いの利害や、従者、五平とお國の不義密通、友之丞とお國の矢張り、嘗ての情交等を暴きつつ、大団円に流れ込むのだが、だらしない友之丞の居直った論理によって、暴かれてゆく、世間的正義・評判の良さと事実との乖離が呈示されている点で、風景1とダブる仕掛けになっている。

I SCREAM (7/27~7/28無料公演)

I SCREAM (7/27~7/28無料公演)

多摩美術大学映像演劇学科3年表現ⅡAコース

多摩美術大学上野毛キャンパス 演劇演習室(東京都)

2014/07/27 (日) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

毀誉褒貶分かれよう
 3.11で2人の男達が、避難したのは、キャバクラだった、という設定の作品だ。

ネタバレBOX

このキャバクラのホステス達は、3つの派閥を形成している。在るグループは、津波で家族や親族と家屋を失った者達で形成され、在るグループは、飼っていたメダカの水槽が割れてPTSDになったり、或いは地震そのものを恐れる余り、余震でパニック症状を起こしたりしている。だが他のグループからは、自己憐憫と思われており、残るグループはその中間という位置付けである。ヤンキー系突っ張りで、何とか傷を誤魔化しているのが、この最後のグループである。無論、互いの派閥同士は仲等良いハズも無い。だが、この店のNO.1 は、どの派閥にも属さない。その名は、デンコ。彼女は、最も放射性核種による汚染の酷い地域が故郷なのだが、自分の体がフリークになっても尚、其処に留まり続けることを選んでいるユニークな存在だ。売上NO.1 というものは、大抵、嫉妬や妬みで表面上は兎も角、内心、仮想敵として嫌われるものだが、ことデンコに限っては、仲間の総てから好かれているばかりではなく、尊敬されている節が見える。何れにせよ、デンコの壊れゆく様を間近に見ている他のホステスや常連客は、いたたまれなくなって、デンコの為に反原発デモに走るが。確か翌月、1カ月の余震の数は1049回だったと思うが、余震の中には可也大きな揺れを齎すものがあり、当然、津波の起こる可能性もある。何れにせよ、ちょっとパニクル状況になると、本義も忘れて自己保身に走ってしまうのが、普通の人々でもあるのだ。その辺りのリアルな感覚を今作はキチンと取り込んでいる。
 その時、派閥の論理の外に立つというよりは、派閥の起きる原因の要をして機能するデンコを、その下降弁証法的なスタンスから捉えて演じ内面的な物をも描いていると感じさせた國分 大輝の演技が気に入った。特に、彼の目の表情、フリークとしての身ぶりの形態模写、そして瞼に塗った効果的なラメの化粧もグー。本編、1時間ほどの作品だが、単調になりがちな前説の時、客席に紛れ込んだ役者が、注意事項に反するようなことを、その度にやってみせ、場を盛り上げていたのも気に入った。映像演劇学科は、この度を以て廃止となってしまうそうだが、残念だ。学生さんたちには、大学の学科は廃止になっても、ここで学んだことを活かして更に上を目指して頂けたら、とは思う。
Case4 ~他人と自分~

Case4 ~他人と自分~

劇団HIT!STAGE

サブテレニアン(東京都)

2014/07/26 (土) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

今後も楽しみな劇団
 劇作家の森さんが、アフタートークでおっしゃっていたことが、今作を理解する大きなヒントになりそうである。

ネタバレBOX

何と、今作は2~3日で出来上がった、というのである。そして、普段、佐世保でこの劇団が演じているのとは、ちょっと毛色の異なった作品でもあるということだ。私ごとを持ち出して恐縮だが、自分も極端に早く原稿を仕上げた経験があって、表現する者がそのような状態にあることに思いを巡らせてみた。その結果、矢張り、作家が普段、自らに問い続けていることが、臨界を迎えた時、奔流となって噴出するのだと考えた。常に作家が、自問し続けているからといって、それが、明確な形になっているとは限らない。寧ろ、そうではないからこそ、問い続けているのである。従って、作家にとってもそれは、未だに不定形な何かであって、理屈で簡単に説明できるような何かではない。然し、常に、丁度寄り添う影のように、自らにつき纏う何かなのである。そしてそれは、それを意識していようが、偶々忘れていようがお構いなしなのである。
 唯、自分が、この作家のポテンシャルが高いと感じるのは、既に1998年の劇団立ち上げから長い時を経てなお、自らの内面の深い所にマグマのような作家の源泉をキチンと抱えていることの凄さである。無論、表現をする人でなくとも、このような資質を持ったことが在る人は居るであろう。然し、持ち続けることができるというのは至難の業である。かつて、ボードレールは「芸術とは売春の趣味だ」と喝破したが、表現する者が、皮膚1枚を表現する為の距離として持ったとしても、これを非難するにはあたらない。それがでえきるということこそが、表現する者の技だからである。そのような、世界と表現者と表現する者の内面のたゆたいとを描いた作品と取ると、とてもハッキリこの作品の主題が見えてくるように思う。
 まあ、もっと人口に膾炙する解釈を採るならば、恋を知り失って、より深い孤独の中で、アイデンティティー崩壊の危機を迎えた中年女性が、自らのアイデンティティーを再構成する為に悪戦苦闘する話ととっても良かろう。オチも利いているし。
 佐世保から、舞台道具を運ぶことも考えて、効果的な装置が考案されていた。高さ2mほどの三角柱の骨組みだけが組み立てられていて、床に接する三角形の各頂点に戸車が取り付けられているのだが、これが鏡になったり、三人の登場人物の一体化する枠になったり、無論、観客の思い描く何物にもなるのだ。その他の舞台セットは、木箱と木製のパソコンやポット、カップなどで、ノートパソコンを、それらしく見えるように木で作ってあるのには感心した。
 また、東京に来ることも検討しているという。今後も期待したい劇団である。
それは秘密です。

それは秘密です。

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/07/24 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

必見! !想像力の齎すリアリティー
 情報隠蔽法(秘密保護法)施行2年後の2016年8月13日、売れないお笑い芸人のコジマ ケイは、TKFと名乗り仲間のタムラ・フジムラと共に、コントのトリオを組んでいる。ところがどんな酔狂からか、業界は鳴かず飛ばずのロートル芸人コンテストを開催することになった。20年以上もこの世界で生きて来たTKFもエントリーしたのだが、何と決勝に進出することができた。(追記後送)

ネタバレBOX

勝てば、優勝賞金1千万円、TVのレギュラー番組出演も決まるだろう。そうすれば、バイト人生ともオサラバだ。もう直ぐ40歳になるというのに、まだ夢を追いかけて、家族や親族をヤキモキさせてきた人生ともオサラバできる。決勝戦は2日後、リハーサルに出掛けようとした矢先、彼は逮捕された。

十周年記念コンサート「Thanksgiving!!」

十周年記念コンサート「Thanksgiving!!」

ミュージカルグループMono-Musica

Studio K(東京都)

2014/07/26 (土) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

質の高さと美しさが楽しめる
 Mono-misicaの10周年記念コンサートなので、これまでのレパートリーから選んだ曲が披露された。キャストが女性だけの劇団なので、大方は、甘えがあるのではないか、と先入観を持つかも知れないが、杞憂である。歌の上手さ、確かさ、ハーモニー、声音自体の美しさと共に振付やフォーメーションの美しさにも極めて敏感だし、衣裳や着こなし、配色にも神経が行き届いている。ミュージカル劇団としての、質の高さが際立っている原因は、自らの立ち位置、作品との格闘を通して、自己批評がキチンとできている証拠だろう。こういう劇団に甘えはない。

ネタバレBOX

  公演は2パートに分かれ、間に15分の休憩が入る。各演目の間、メンバーが交代でMCに入って繋いでくれるのも、10周年記念公演らしく自然で良い。更に。伴奏は、グランドピアノを使った生演奏なので、ピアノ大好きな自分としては、大変嬉しかった。作品の多くは、古典や歴史、小説、物語などを独自にアレンジして作られたものだが、今回は、コンサート形式なので、歌と振付がメインである。無論、アウトラインの説明はあるので、オリジナルの舞台をある程度想像しながら楽しむことができるし、歌われている歌詞で本質は掴むことができる。Clown’s Clownで始まったコンサートは、第七回公演の「墓掘り男と六本の煙草」、第五回公演「如月の砦」に移り、過去作品レアコーナーでは旗揚げ公演「月の鳴く音~Dr.Jekyll and Mr.Hyde~」から“月の鳴く音”次に「砂漠の花~Le Petit Prince~」から“砂漠の花”パート1のラストは、第六回公演「夜明けの風」だ。名を上げた各公演から数曲ずつが歌われる。
 第二部は、第四回公演「十六夜の桜」、第八回公演「花廻りの鬼‐魍魎薬師白夜奇譚‐」と進んだ後、2回目のレアコーナーでは「虎落の笛」から“夜の森の虎”、“白い獣”が歌われる。そして前作、第九回公演「アルバローザの花嫁」で本編は終了だが、これでは名残惜しい。大丈夫、最後にExtra Stageが用意されている。このパートは日替わりのようなので、歌われる曲は、実際に出掛けて確かめて欲しい。
 因みに、今回、行けなかったファンは、12月26日~28日迄、新作を六行会ホールで上演するそうだから、実際に出掛ける前には、再度、御自分で確認の上、出掛けて頂きたい。初めてコメディータッチの作品になるとか。
 ところで、この劇団、最初に上演した作品は「ジキル博士とハイド氏」をベースにしたものだが、無論、デュアリズムを問題とした作品だ。デュアリズムとは、善と悪とか、精神と身体とか、何かを論ずる時に、二つの独立した概念によって世界を解釈する考え方だ。近代哲学ではデカルトがその第一人者であるが、人間存在をも二分化してしまい、この論理ではアウフヘーベン出来ないという問題がある。だが、物事を一面的に眺めるという弊害から、この劇団は脱している。例えば、この作品の中でハイドによって救われた娼婦によって歌われる歌の歌詞は、深い悲哀に包まれている。これは、彼女が命の恩人と思い定めたのがジキル氏であったことから生ずる齟齬が、恐らくこの作品を単なる二元論で論じうる作品にはしていないからだ。他の作品も、あやかしと人、あやかしの棟梁の美しい人食い鬼、これらを束ねる者などと人の関係を描いていたり、と単調でない所が良い。それが、悲恋に終わるにせよ、恋の成就が示されるにせよ、まこと、女性の劇団らしく、恋と命を作品化した舞台は、美しく見応えあるものになっている。
肥後系 新水色獅子

肥後系 新水色獅子

あやめ十八番

小劇場B1(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

意地
 基本的には、2つのストーリーが、含まれ、其々が、その時代を映した合わせ鏡のように、綯ったDNAの螺旋構造のように綯い交ぜにされた作品だ。音響に、生演奏が用いられているのも気に入った。使われている楽器はウッドベース、ヴァイオリン、クラリネット、キーボード、パーカッション等々。

ネタバレBOX

  1本目の鎖は、百合の花を右手に持って神社の門前で死んでいたイケ面国語教師兼演劇部顧問の塚田の死の真相追究。
 2本目の鎖は、この神社の再興に関する縁起。
 冒頭、死の汚れを払う儀式が神主によって執り行われるが、この時、祝詞として裕仁の終戦の詔勅(玉音放送の内容)が、援用されている点、また、2本目の鎖で、英霊が、靖国ではなくこの神社に祭られている点に、反骨の美学とアイロニーを見る。(更なる追記後送)
ジプシー

ジプシー

ULPS

ワーサルシアター(東京都)

2014/07/24 (木) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

詩的作品
 ジプシーの長老役、何とも味のある役作りであった。自由を得る為に人は、何を持ち、何を捨てるべきか? そんな問題を極めて詩的に舞台化してみせた作品。仕掛けになる発想が良いのだが、そのネタバレについては終演後、先ずは観てのお楽しみ。

ネタバレBOX

 入居契約の1カ月ほど前、この部屋の入居者がやってきた。未だ、内装の細々した所は完成していないが、部屋の大まかな部分は出来上がっている。新しい入居者は中年にさしかかる夫婦だが、未だ、子供は居ない。間取りは2LDKだ。今迄、住んでいた部屋に比べると随分広くはなったが、通勤には、1時間程遠くなった。4000万円の物件だ。無論、借金をして購入しているので、結婚で仕事を止めていた妻も、また働きだす予定だ。まあ、思いを一杯詰め込んで買った物件なので、早くから、良く探し、手を打っておいたので、マンションの中で、最も条件の良い部屋に入居できたというわけだ。ロケーションも抜群。環境も良い。いくらか空気もおいしく感じられる。
 ところが、そろそろ、帰らなければと言い始めた夫婦に、多くの人の歩く足音が聞こえてきた。不信に思って廊下へ出た主人は、たくさんの人が、こちらへ来る、と妻を誘ってベランダの工事中の足場に避難してみていると、なにやら杖を持った老人を先頭に赤子を抱いた母親迄がぞろぞろと自分達の部屋に入り込み、老人は、杖を床に打ちつけて何かを探るような素振りを何回か見せた後「此処にしよう」とその杖を床に突き刺した。漸く手に入れた新築マンションの自分達の部屋に闖入された夫婦は、彼らに出ていって貰おうとするのだが。
真夏の少年

真夏の少年

『熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら。』

ザ・ポケット(東京都)

2014/07/22 (火) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

1立方cmの土の中
 何もないように見える、ちっぽけな土くれ。この中に実は、どれだけの命が宿っているか。そんなことを思い出させてくれる作品。

ネタバレBOX

 初見の劇団だが、踊りなどの身体パフォーマンスが多い。動きは、悪くないが、こんなに多用する必要があるとは思わない。意気込みは理解できるものの作劇の必然性をもっと盛り込む方が密度は上がろう。他にも、背景の音響と科白のバランスの取り方、マイクを使ってがなることの効果にも疑問を呈したい。がなっても、音が割れるだけで科白は聞き取り難くなるからだ。
 前半のこのような感想にも拘わらず、終盤の遠泳対決辺りからのパートは圧巻。この劇団の熱と主張がしっかり伝わって来た。
 真に豊かな自然というものは、都会人の芽から見ると何も無いように見える。在るのは唯、山と海と青く広がる空と風が運ぶ季節の匂いだ。だからそこには、何でもある。僅か1cm₃の土くれには、数十億もの微生物が生きており、目も見えなければ、どちらが頭でどちらが尻尾かも定かならぬミミズが土を耕している。水たまりが出来ればボウフラが湧き、いつの間にか小さな魚さえ住みついて命が湧くのだ。だから、ここには総てが在る。そんな自然を守ろうとする人々が居て30年前に“一生の友達の約束をした星岩では、今もあの頃のまま。唯、世代が変わって、一生の友達になる為に飛び込んでいる、子供達の姿が生きて在る。こんな小さな、でもとても大切なことが、リゾート開発をして島を「豊かにしよう」とした自分の過ちを気付かせてくれた。30年前にも似たことがあり、同じ過ちを犯した人が在った。だが、その時も、この何もないから総てを持っている島の人々が、教えてくれた。守るべきものもこれからのことも。何故なら、一見、何もないことの中に総てが在って、未来が湧いてくるのだから。
SUMMER・end・START

SUMMER・end・START

移動する羊

シルクロード舞踏館  http://web.amina-co.jp/silkroad/ (神奈川県)

2014/07/20 (日) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★

悪魔と神
 2パートに分かれた作品。パート1は朗読色の濃い内面の旅をモチーフとした哲学的妄想作品。パート2は、冒険ファンタジーだ。
 1,2で出演者が異なる。

ネタバレBOX

 先ずは、1から行こう。妄想収集家を自任する24歳くらいの青年は、小学校4年の時に、特異な少年と仲良くなる。親友と言って良い仲である。彼は、父の仕事の関係で世界中を歩いていた。ある時、6年生の不良グループに絡まれた彼が、あっという間に6年生の腕を捩じ上げ、静かにこういった。「ストリートチルドレンって知ってます? 親の居ない子です。僕はリオでその仲間に入っていました。ギャングですよ。死がいつも周りにあるんです。何でもやりますよ。僕らに手を出さないで下さい」それ以来、このクラスの何人もが遭っていたカツアゲにも会わなくなり、女の子たちからは、勿論、男の子達とも仲良くなった。彼は決していばらなかったし、皆に溶け込んで遊んだので、皆から好かれた。そんな彼は、僕の偏見の無さと自由なイマジネーションが気に入ったようで、僕らは大の仲良しになったのだった。お互いの家にも良く泊まりに行くようになった。ところで、僕の父は、ある時期から僕を殴るようになった。顔こそ殴らないものの、他は体中痣だらけになるほどだった。4年生も終わりに近い頃、彼は言った「僕の体は大丈夫かい?」と「痣だらけなんじゃないの?」と「見えないようにしていたハズなのに、なぜ、そんなことが分かるの?」と訊くと「僕がやらせたからさ」と彼は言った。「君のお父さんが訊いてきたんだ。どんな風に育てれば、君みたいな良い子に育つのか?」って。だから僕は答えた「殴れば、いいんですよ」って。「こんなに早く始めると思わなかったけど」と。「何でそんなこと言ったの?」と訊ねた僕に彼は応えた。「自分の一番大切な物が、壊されてゆく時、僕がどんなことを感じるのか、どんな風になるのか知りたくってね。君は壊れたね。でも君の広いイマジネーションだけは壊れなかった。それはとても美しい。僕は、壊れながらそういう美しさを失わない君が好きだよ」と。この時、僕は悪魔に出会っていたのだろう。彼と別れた後から、僕は、妄想を集め始めたんだ。もう大学ノート20冊以上にもなった。これはもう、一つのクロニクルと言っていい。
 こう言う青年には、現在、影のおうに寄り添う女の子がいるのだが、彼女は彼の影、内面の形象化された無いかである。彼は、彼女との対話の中で何故、自分が、妄想を集めてきたか。その答えを得る。それは、未だ未成熟であった彼が、既に大人びた悪魔の攻撃を受けた時に、自らの可能性を様々な時空、つまりパラレルワールドに分散避難させ己に力が出来る迄逃がしたからだというのだ。そして、彼はそれらの断片を集めることで自らを再構築しているのだと。そして、4年生の時分かれた彼が、本当に悪魔であったなら、主人公は神だと暗示されて終わる。
 パート2は、不思議の国のアリスの劣化した焼き直しのような作品で、自分には興味が持てなかった。パート1で気に入ったのは、上記の説明部分であるが、物語で男の子を演じた役者? はとても良い声をしているが、いかんせんテキストが長大なので、間をとってじっくり聞かす、という点では不満が残った。もっと話の肝心な部分だけに絞って、朗読らしい深みを加えて欲しい。それから奇しくもの読み方は“キシキモ”ではなく“くしくも”である。
 パート1で自分が説明した部分のシナリオは★5つ。読みなどに関しては日本語のまちがいもあるので、★4つ。パート2に関しては★2つ。総合★3つとした。
アウト・オブ・オーダー~Out of Order~

アウト・オブ・オーダー~Out of Order~

ファルスシアター

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/07/18 (金) ~ 2014/07/22 (火)公演終了

満足度★★★★

ファルスチームを拝見
 ファルスシアターと名乗る劇団のファルスチームを拝見。確かに、笑わせようとするネタ満載なのだが、殆ど、が、見えてしまう。自分の場合は95%くらいは、見えてしまったので、余り笑えなかった。もっと思い掛けない笑いを狙って欲しい。一つには、笑いの質だ。基本的に、同じタイプの笑いなのである。つまり、論理で推せる笑いが殆どであった、ということだ。もっと、緩急や、パラダイムロスト、ナンセンス等々、多様な笑いがあって良い。

ネタバレBOX

リチャード・ウィリーは保守党の重鎮だが、基本的には首相の懐刀というよりは、用心棒である。浮名を流すことでも有名で、今夜のお相手は、野党議員の秘書をしているジェーン・ワージントン女史だ。彼女も既婚だが、まだ若く美しいので、エスタブリッシュメンツの習いに従い、乱れ咲きの一夜をこのホテル、ボルベリーナの648号室で過ごそうというわけだ。唯、彼女の夫、ロ二―は粗暴な男なので、彼に暴力をふるわせないよう注意が必要である。今日は、無論、嘘をついて出掛けてきたのだが、折角の逢瀬に邪魔が入った。何と、ベランダから、盗人か何かが、部屋に入ろうとした所、窓枠が落ちて来て挟まれ、脈も無いようである。彼女は直ぐ警察へ電話をすることを提案するが、ウィリーは、妻、グラディスにバレルことを頗る恐れているばかりでなく、スキャンダルになれば与党への壊滅的打撃となることを恐れており、この事故の隠蔽に走るのだが。
おむすび

おむすび

劇団サミシガリヤ

シアター711(東京都)

2014/07/17 (木) ~ 2014/07/22 (火)公演終了

満足度★★★★

賑やかな葬儀
 葬儀が様々な原因で、非凡なものに変ってゆく様を描いたホームドラマ。楽しめる。

ネタバレBOX

 山登りとおむすびが大好きな拓郎は、山の中腹で登山客におむすびを分けてやった際、自分のおむすびを落としてしまい、それを追い掛けて滑落してしまった。一報を受けた二女、夏音は、結婚して実家を出た姉、陽花に電話を入れるが、繋がらない。仕方なく事故現場の長野に夏音は向かう。一方、拓郎の妹、ヤスエも夫、道夫と娘、かな恵を伴って病院へ行ってくれていた。然し、拓郎は手当の甲斐も無く他界してしまう。一家の大黒柱を失った彼の家では大騒ぎ、早速、葬儀の段取り等もしなければならないのだが、ヤスエ一家は、病院から拓郎の遺体を彼の家へ運んで来ているので、喪服も何も無い。そこで、主人と娘が一旦引き返し、彼女の喪服も持ってくることになる。が、普段、何から何まで妻に面倒を見て貰っている道夫には、何処に何があるのかすっかり分からない。そんなわけで持って来たのは、派手な模様の入ったロングドレス、と厳粛であるべき通夜や葬儀が、こんな調子で過ぎてゆく。
0号 -2014-

0号 -2014-

ゲキバカ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/07/17 (木) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

エンタメ王道
 今作の優れている点は、何より民衆の生き抜く力に対するエールだろう。今、この「国」は、未曾有の「国難」に陥っている。無論、アホそのものの宰相、安倍その他の馬鹿共の所為である。間違いなく、アメリカの植民地としての機能を果たす為、この植民地は、アメリカの利害によって他国の、殺したくも無い人々を正義に反して戮しに行き、自らも大きな犠牲を払うであろう。それでも尚、民衆のある部分は生き残ってゆく。その強かな生命力に対するエールである。描かれているのは過去と現在である。然るに、しっかり見つめられた過去は未来を包含する。今作はその域に達していると見て良かろう。
(ネタバレ後ほど更に追記)

ネタバレBOX

 ところでキネマに於ける”0号“とは、総ての作業を終えて一本のフィルムに画も音も収録され、スタッフ・関係者のみで最終チェックを行う為のフィルムである。従って、通常の試写会で用いられるのは、この後のバージョンである。今作では、第二次世界大戦前夜1938年3月のドイツによるオーストリア併合・日本では国家総動員法施工辺りから、1940年10月の大政翼賛会発会、1941年12月の真珠湾攻撃を経て翌年4月末の翼賛選挙、6月初旬、ミッドウェー海戦での大敗後、南洋諸島で連戦連敗の大日本帝国軍は、1944年ロジスティック面で大きな問題を抱えたインパール作戦を決行、大失敗を演じる。更にグアム戦でも守備隊、1万8千名が玉砕、直後にはテニアン守備隊8千名が玉砕すると、日本本土へはB29 の空爆が、日常茶飯となった。
 こういった負け戦情報をアナウンスで流すだけで、舞台上では、あく迄、登場人物達の、恋や表現者としてのプライド、人間関係等々が緻密に演じられてゆく。役のつかなかった役者が、初めて役付きになった時の喜びようや、役作りの抱負、役がついたので惚れた女にプロポーズする様、直後、彼らは、赤紙を受け取る。大スターであり、憧れであり、自分達の兄貴分であった坂妻が、初めて貰った役、忠臣蔵の吉良上野介役に抜擢されて喜んだのも束の間、愛しい千代子との恋路も切り、坂妻の跡目を継いだ鶴三郎との内蔵助、吉良共演の話も切って泣いて詫びた約束の反故も、鶴三郎への赤紙で意味を変じた。互いに矢張り南方戦線に送られたが、生きて戻って、必ず忠臣蔵で役を演じようとの当代一流の役者達の誓いも虚しく南洋の島々の露と消えた。鶴三郎最後の時、後藤は肌身離さず持っていた千代子のブロマイドを引き裂き、紙吹雪を作って雪を降らせる。無論、名作「南の島に雪が降る」を踏まえていよう。畳みかけるように、後藤から千代子への手紙、雪の降る中、千代子は、本分は総てひらかな、名前だけは、本人の名も千代子の名も漢字で書くことができるようになった手紙を読み上げる。途中から、方言で発音されるその文面の何と言う奥深さ、美しさ。南方の島々に送られた役者達は全員星になった。今作に登場する出征軍人・兵士のうち、生き残ったのは、望月とやんすのみ。二人とも役者ではない。良い奴ほど早く死んでしまう。それが、戦争だ。
高校生舞台ショーケース'14「たまごから。」

高校生舞台ショーケース'14「たまごから。」

ちょビすけ

スタジオ空洞(東京都)

2014/07/20 (日) ~ 2014/07/20 (日)公演終了

満足度★★★★

自分の頭で考えているのがグ-
 1本20分ほどの短編を5本とマイムのパフォーマンスが2度入る構成だ。各短編は、独立しており、相互の関連は無い。然し、どの作品も、手作り感に溢れ、高校生らしい問題意識が垣間見えるのは、爽やかである。更に、どの作品も自分達の頭で考え、問題を立て、解決しようとしたり、向き合おうとしている点を評価したい。若い人達故、無論、まだまだ磨くべき点はある。然し、果敢にチャレンジする姿勢に好感を持ったのも事実である。今後も、只管真っ直ぐに事象・時局を観察し、率直に人生に向き合って欲しい。どんなに困難であっても徹底的に率直に物事を見極め、且つ、それを表現する限り、表現者として堕ちることはないであろうから。

100%Mimic

100%Mimic

SOUKI

高田馬場ラビネスト(東京都)

2014/07/19 (土) ~ 2014/07/20 (日)公演終了

満足度★★★

混合
1.あ~ダモちゃん怒S「ガラス拭き編」2.あ~ダモちゃん怒S「激闘編」3.「俺の銃が奇妙にテクニック重視でグルングルン回るぜ!」4.「あなたを好きなの…噛みたいくらい。」5.「センチメンタルショッカー!」6.あ~ダモちゃん怒S「ランドリー編」7.「ありがとう」の7編。基本的に小鉄の一人舞台なので、衣裳や化粧の時間がインターバルとして入る。(追記後送)

トウサンの娘たち

トウサンの娘たち

花企画

シアターX(東京都)

2014/07/15 (火) ~ 2014/07/17 (木)公演終了

満足度★★

未消化
 西田 幾太郎とその家族、人脈を描くことで、大正中後期から2.26を経て政府が軍部の傀儡と化して行く迄を描いた作品。「善の哲学」で有名な西田の親族、弟子らは、当然、ドイツの名門大学に留学、フッサール等、当時超一流の哲学者から薫陶を受けていたが、その一方、大日本帝国は、満州建国以来の欺瞞的植民地経営で亜細亜諸地域に反日の芽を育んでいた。本土では治安維持法や共謀罪などの成立が、国民の自由を奪い、天皇、裕仁を現人神と称える天皇ファシズムがその猛威を増していた。
 本来なら今作、丁度、現在、愚か極まる、アメリカの犬、安倍が推進している「国家」滅亡策に対する批判を込めて上演されているハズだが、キャスティングミスが祟ってプロンプターが多用されるなど、作品自体、現象学以降のヨーロッパ哲学に、西田哲学、鈴木 大拙などの禅、更には旧帝大、殊に京都帝大の名誉教授となった西田の人脈の社会的位置等に鑑み、演出、演技には、相当な修練を要するものなのに、内容を伝える為の技術が余りにお粗末。高度な作品にチャレンジするが、未消化で寸足らずの舞台になってしまった。激動の時代を背景にしていることもあり、演出、演技がキチンとしていれば、面白い舞台になったであろうに、科白が入っておらず、間もグチャグチャでは、話の外である。勉強も練習も足りない。

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