Case4 ~他人と自分~ 公演情報 劇団HIT!STAGE「Case4 ~他人と自分~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今後も楽しみな劇団
     劇作家の森さんが、アフタートークでおっしゃっていたことが、今作を理解する大きなヒントになりそうである。

    ネタバレBOX

    何と、今作は2~3日で出来上がった、というのである。そして、普段、佐世保でこの劇団が演じているのとは、ちょっと毛色の異なった作品でもあるということだ。私ごとを持ち出して恐縮だが、自分も極端に早く原稿を仕上げた経験があって、表現する者がそのような状態にあることに思いを巡らせてみた。その結果、矢張り、作家が普段、自らに問い続けていることが、臨界を迎えた時、奔流となって噴出するのだと考えた。常に作家が、自問し続けているからといって、それが、明確な形になっているとは限らない。寧ろ、そうではないからこそ、問い続けているのである。従って、作家にとってもそれは、未だに不定形な何かであって、理屈で簡単に説明できるような何かではない。然し、常に、丁度寄り添う影のように、自らにつき纏う何かなのである。そしてそれは、それを意識していようが、偶々忘れていようがお構いなしなのである。
     唯、自分が、この作家のポテンシャルが高いと感じるのは、既に1998年の劇団立ち上げから長い時を経てなお、自らの内面の深い所にマグマのような作家の源泉をキチンと抱えていることの凄さである。無論、表現をする人でなくとも、このような資質を持ったことが在る人は居るであろう。然し、持ち続けることができるというのは至難の業である。かつて、ボードレールは「芸術とは売春の趣味だ」と喝破したが、表現する者が、皮膚1枚を表現する為の距離として持ったとしても、これを非難するにはあたらない。それがでえきるということこそが、表現する者の技だからである。そのような、世界と表現者と表現する者の内面のたゆたいとを描いた作品と取ると、とてもハッキリこの作品の主題が見えてくるように思う。
     まあ、もっと人口に膾炙する解釈を採るならば、恋を知り失って、より深い孤独の中で、アイデンティティー崩壊の危機を迎えた中年女性が、自らのアイデンティティーを再構成する為に悪戦苦闘する話ととっても良かろう。オチも利いているし。
     佐世保から、舞台道具を運ぶことも考えて、効果的な装置が考案されていた。高さ2mほどの三角柱の骨組みだけが組み立てられていて、床に接する三角形の各頂点に戸車が取り付けられているのだが、これが鏡になったり、三人の登場人物の一体化する枠になったり、無論、観客の思い描く何物にもなるのだ。その他の舞台セットは、木箱と木製のパソコンやポット、カップなどで、ノートパソコンを、それらしく見えるように木で作ってあるのには感心した。
     また、東京に来ることも検討しているという。今後も期待したい劇団である。

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    2014/07/28 23:56

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