ニシムラの観てきた!クチコミ一覧

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ヘッダ・ガーブレル

ヘッダ・ガーブレル

project navakov

Vacant(東京都)

2018/07/05 (木) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/08 (日) 14:00

価格4,000円

客席に招き入れられたら、そこがステージだった! ロフトふうの広い空間、客席も舞台もフラット。しかもオシャレな大道具小道具、窓にはふわふわのカーテン、なんだかステキな予感…と、始まる前は浮かれてました。

だんだんわかってくる人間関係、それぞれの欲望、そしてある小道具がイヤな予感を与える。
イプセンは前の前の世紀の人。でも普遍的なことを扱っていて、演劇ツウの方がよく「現代劇です!」と言われるわけも、実感できました。

登場人物は全員、こだわりや悩み、欲望があってデコボコ。その中でヒロインだけがどうも違うカタチをしている…。ひとりだけ、解決法のないことを悩んでいる。
そんなことが時間の経過とともにわかってくるのはスリリングでした。
女中役の多田慶子さん、いつもながら面白い俳優さん!
ベテランの女中さんだから「無駄のない動きをする人」に化けているんですね。ほかの登場人物の「古典の登場人物らしからぬはっちゃけ方」との対比でとても面白かったです。

ネタバレBOX

さて。
出版社づとめのツレがいちばんぞっとしたのは、原稿を落とすところと焼くところだと申しておりました。
焼くところの演技と演出はすばらしいものでした。ヘッダ、イキイキと輝いてました。
しかし確かに、あの原稿をもらえたはずの出版社、大量に売れてうるおうはずだった印刷所、書店の立場になると恐ろしいシーンですね。

もっと素直(?)に恐ろしいのは、最後のせりふですね。ヘッダはみんなからいろんなかたちの愛情を受けながら、だれからも理解されていなかったんだ…。
「ヘッダよりもずっと苦労し、恵まれてもいない人でも、ふつうは生きていくもの(だからわたしたちも生きていこう)」みたいな一見道徳的な言葉なのですが、ヘッダの立場で聴くと悲しすぎる言葉でした。

いやあ、どこでどうすれば、ヘッダは幸せに生きていけたのだろう。つい、頭の中で反省会をしてしまいます。だってあそこの家の秘密、同じ高さから、ぜんぶ見ちゃったんだもの。
Overtime HIGH

Overtime HIGH

One Bill Bandit

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/12/16 (土) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/12/16 (土) 19:30

価格1,000円

土曜日、1日3回公演ってすごいな。着ぐるみショーか。

少し込み入った話。思惑が途中で変わったり、ウラオモテが見えてきたりするたびに、ついていくのに苦労するので(ただしそれでも少しも面白さは損なわれない)、できれば2度みたい。再演しないかなー。

休憩やBBSなど、1,000円という料金にまったく似合わないサービス精神が、どんどん高まっていくふしぎな劇団。
こういうの、芝居の練習と同時に全員でどうするのか決めて共有し、覚えなきゃいけなくて、けっこうたいへんですよね。
「ところであれどうするんだっけ」「はっ! 決めてない!」みたいな問題が本番の半日前に出てきたり…。でも「たいへんだからシンプルにしよう」なんて思わないのが演劇人のおそろしさ。そして、サービスはちゃんとやらないとつまんないからちゃんとやる! この根性が演劇人のおそろしさ。

今回も「愛のテーマ」が最高でした。
あと、いい話なんだけど、いい話の落とし穴に落ちないバランス感覚がこの作家さんの天才性だとわたしは思います。

切実な問題の切実さをわかっていないわけじゃないんだけど、それにひっぱられて説教がましくなるのをすごーく上手に避けている。
「演劇に一生懸命になるの、イヤだな。ワンビルに一生懸命になりたい」というパンフにある言葉、かっこいいです。木下さんにしか言えない言葉です。

ネタバレBOX

鳥みたいな人だな。いや、鳥か? 鳥なのか? と思ってたらどんどん鳥になり、ついには…というあの鳥さん、すばらしかったです。

「後藤さん」は錦織さん史上最も名字がふつうな役、サプール(コンゴの超オシャレ平和運動家)に目をつけて研究したとはさすがだっ。

その「錦織さんに惚れて使えない人になる、最初はまともそうだった女性」の役、今回は佐藤マリ子さんの「葉山さん」でしたね。この女優さん、発声がすばらしくて、ずっとほれぼれしながら聴いておりました。

『巨人の星』の「ター坊」みたいな幸幸少年、なぜあんな昭和のマンガ感が出せるんだ…若いのに…木下さんもたいがいだけど演じる女優さんも何なのか…。

そして出ずっぱりの課長さん! 客入れのときからずっと、半田課長でそこにいる…。あまりにも自然な、芝居がかってるところがみじんもない演技で…。お芝居始まってないのに芝居してる…芝居じゃないみたいな芝居を。シュールだ!
これに気づいたときのワクワク感といったらなかったですよ。

ああもうきりがないな、ほかの人も衣装も装置も相変わらずの凝った音響も照明もいいのに、定時(?)までに書き終えられませんでした。
ツレは格闘技のシーンで涙が出たそうです。なんでやねん。
ペルセポリス

ペルセポリス

かもねぎショット

ザ・スズナリ(東京都)

2016/01/28 (木) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

再演してほしいー
演劇を、生の舞台を見る楽しみがつまった作品。いつもそうだけど、今回はとくに。
演じる人と同じ時間を体験するということ、何かを伝えようとする人の態度に感動すること、それを知ってほしいから、再演してほしいし、地方公演もやってほしい。

追記。2017年、改訂版となって再演されましたね。夢みたいだー。嬉しかった。初「かもねぎ」の友人を誘って行きました。

今の日本の現実ともきっちり向き合っている、勇気ある作品であり、ちゃんと娯楽として昇華されているところもすごい。

偉大な一家の二泊三日ともう少し

偉大な一家の二泊三日ともう少し

One Bill Bandit

中野スタジオあくとれ(東京都)

2016/02/06 (土) ~ 2016/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

例年より少しまじめ
サービス精神あふれるワンビルさんが、さらにサービス増し増しで登場。いやあ、楽しかったです。
全国公演とかしてほしいぐらいですよ。

裏パンフによれば、俳優さんたちの希望をとりいれたあて書きなのだそうですが、なかなかできることではないですよね。奇跡的な才能の集まりだなあと思います。

ミュージカルシーンでは、全員が、それまでの役の顔とは違う、「ミュージカルシーンのキャスト」の顔をする! すごいわー。

ネタバレBOX

「例年より少し多めに悪ふざけ」とあるけど、それはどうかな?
今回のストーリーは珍しくまじめで、ふざけてはいません。むしろ説教っぽい。
これは主人公が子供なので、自然ななりゆきとしてそうなったのかなぁと思います。
病院ミシュラン

病院ミシュラン

テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2014/03/01 (土) ~ 2014/03/10 (月)公演終了

二度目は二度目で
初見のときは、やはり筋を追うのがせいいっぱいなので、二度目は役作りや演出、舞台そのものを楽しんだりいたしました。

たとえばふたりのナースさんの足元、ポケットにさしているものに、それぞれの個性が「なるほどなあ」という現れ方をしていること。
不良患者さんそれぞれが読んでいるもの。
そしてリアクション演技のすばらしさ!

ネタバレBOX

わたしは電子書籍も買ったもので、しりとりとか、院長の不器用っぷりとか、覚えて何度も反芻してしまいます。
不良トリオ+西園寺さんの善人っぷりがわかるシーンはもう、あのハチャメチャ世界のオアシスですね。
連城クンの身体能力の見せ場は、メタフィクション的でシュールで、これも好き。

歌のシーンは一度目は大笑いしましたが、二度目は歌詞がしみて、ちょっと泣けてきました。
演出の永井さんが作詞されたのですね。シンプルだけど、病気になった人の心理をよーく理解されてるなあと思いました。

唐沢さんが亡くなったのは悲しすぎますが、今後も再演され続け、生き続けてほしいですよ。
病院ミシュラン

病院ミシュラン

テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2014/03/01 (土) ~ 2014/03/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

そうだったのかー!
からっとした喜劇なので、てっきり…

ネタバレBOX

最後はハッピーエンドかと思ったら、ブラックユーモアそのもののエンディングでしたね。
奥さんがかなりかわいそうで、また石津さんが渾身の名演技なので、「あららららー」と思いましたが、ここは、そうじゃなきゃいけないんだね。
病院が、ついに、病院の役割を放棄した瞬間なんだね、あれは。

不良患者ひとりひとりの造形や、病院側の役割分担が、ていねいにつくりこまれていて、何時間でも見ていたいお芝居でした。
宮崎さんのナースはいちばん無難な人だったのに、あんな姿であんなに大活躍するとは…。

今回、わたしの友人知人、元上司に元同僚が合計二十数人見てくれたんですが、みんな口々に面白いって。
「達者な役者さんばっかりですねー」とも言われて、自分のことのように「ええ、当然ですとも」と威張ってしまいました。
自分のブログやツィッタ、Facebookを持ってるんで、ここにはなかなか書きに来てくれませんが…。
冬のグアムは空のまち

冬のグアムは空のまち

One Bill Bandit

池袋GEKIBA(東京都)

2013/12/07 (土) ~ 2013/12/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

やっぱりあなどれない!
はたしてあんなふつうの高校生が、こじれて傷ついた大人の女性を救えるのか…?
という興味でひっぱるのですが、すばらしい展開のハッピーエンドでしたね。

寒い屋外の話なのに、みんなライトと動きで汗だく、という指摘がいくつかあるけど、わたしは気にならなかった。
確かに、汗だくになりながら「寒そうな演技」をする、というのもシュールで笑えてよかったかも。
ただ、そこで笑いをとるつもりはないだろうから、あれでいいんじゃないかな…。舞台と近いから汗が見えちゃうだけだしね。

カモメさんは、ああいう人が現実にいるとしか思えない存在感でした。
「まさかここまでやるとは!」な、音響の懲り方とか、ほんとこの劇団は予測を上回ってくれるのであなどれません。
予測と違うといえば、「そらのまち」だと思ってたら「カラのまち」なんですねぇ。

HOME!!GAME!!RUN!!!!

HOME!!GAME!!RUN!!!!

One Bill Bandit

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2012/11/17 (土) ~ 2012/11/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

「あるある」と「こんなやつおらんわ」の激突
遅ればせながら。破綻なく手際よくとりおこなわれるお祭りみたいで、前回と同様、楽しく見ることができました。この料金はあまりにもうれしいです!

リアルな人物…「あー、球団広報ってこんなかんじだなあ」「熱狂的ファン出身のスタッフなら、やりそう、こんなこと」「チア・リーダーの設定がリアル!」「ほんもののプロ野球選手みたいだ」
とんでもない人物…「ぜったいおらんわ、こんな○○○や△△△…おったら怖いわ。でも…いたら会ってみたいかも」
この両方がいて、ぶつかりあうのがまたいい味出してました。

ネタバレBOX

音声、西武ドームでとりましたね~? 日ハム戦ですね。田中賢介の応援歌、思わず唱和しそうになりました。
中島選手の応援歌は、ほんとに「西武の中島選手」の応援歌でしたね~。ふふふ。

しかし「ミーモ」の完成度には仰天。みんな言ってるだろうけど…。
かもだる田バラエチー「花の精」〜再演+α!〜

かもだる田バラエチー「花の精」〜再演+α!〜

かもだる田

浅草木馬亭(東京都)

2012/08/23 (木) ~ 2012/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

なんという日!
久しぶりの浅草、せっかくだから仲見世を抜け、右手に見えるというなんとかツリーも眺めよう、と駅を出たら、なんと例のカーニバルの日だった。そういえば高円寺では阿波踊りをやる日だ。なんという日!

だるま食堂はずっと見たかった劇団!
熟年女性の味わいを生かした笑いとアクション、こんな面白いものを今まで見てなかったとは、わたしはバカか?

多田さんとかもねぎショットは、昔から好きで見てるけど…

ネタバレBOX

多田さんのジャニス(?)、かっこよくて萌えました。あとグラジオラスが好きです。弟子ができてたのにも笑いました。
一瞬で表情が変わる「さ! くらっ…」も、脳裏でプレイバックして楽しんでます。

そして、高見さん! あんな特技がおありだったとは…。

子ヤギたちの話も、あの人数でみんなキャラクターが立っていてよかったです。

いやもう、ぜいたくな思いをさせていただきました。

「お花割引」も楽しかった。あれ以来、花柄のものを見ると「これ、お花割引に使えるな」と思ってしまう病気が治りません。
ハーフムーン

ハーフムーン

テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2012/04/03 (火) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

唐沢ワールドに身をゆだねて大満足
『アラカン!』で、ニュータイプのバックステージものを見せてくれた唐沢伊万里さんと、テアトル・エコーのタッグ。
今回は、いかにもいそうな中年夫婦が、どこかにありそうな民宿にやってくる話。作家さんの振り幅の大きさをかんじさせますねー。

はじまりのところでわたしたちは、民宿の次男坊のもくろみをきかされます。やってくる客に取材して、それをネタにシナリオを書いてデビューしよう! なーんていう。でも、やってきた夫婦のダンナのほうは、きいてもごくふつうのことしか言いません。がっくりくる次男坊…。

おいおい、唐沢さんのドラマだぜ、これからきみにびっくりするようなことが起きるんだぜ、と客席から心のなかで、わたしは次男坊に語りかけました。

ネタバレBOX

その期待にたがわず、いろんなことが起きます。

まずこの夫婦は、奥さんの発案で、「よりよい夫婦になるための練習」をしに来てるということがわかります。なんだそりゃ? と思うよね。でも、奥さんは自分なりに夫婦のあいだがらに悩んでのこと…。では、ダンナはなんでついてくるか? っていうと、その理由が少しずつわかってきます。

…と、「夫婦のあり方」を静かに考えさせる展開と見せかけて、次から次へと問題がこじれていき、二度、三度と重なる「まさか!」な大展開に、もう身をゆだねるしかありません。
この感覚が、気持ちいいんだよなー。『アラカン!』でもそうでした。途中から、「どうなるのか予測もつかない、でも芝居の流れについていけば、ぜったい大丈夫!」っていう心理になる。

さて、ネタバレBOXとはいえ、ぜんぶのネタをとても書ききれないぐらい豊かな内容なので、わたしが好きな点を並べてみます。

・民宿の兄弟と幼馴染の女の子が、最後まで、奥さんのウソを信じて、しかもさらに勝手に誤解を深めてしまうこと。
ウソっていうのは、奥さんは中盤、感情がたかぶって、自分たちは不倫カップルだと言ってしまうんですよね。その感情のたかぶりの奥には、まさに次男坊ががっかりした「平凡ななれそめとその後のありふれた結婚生活」があることが、観客にはわかってくるんですが、それって、若い3人にはわからないのが自然!

・中年夫婦のけなげさ。
ほんとは何を伝えあわなければいけなかったのか、気づいたふたりは、あるヘンテコな手段でそれを伝えはじめます。
これがもう、笑わずにはいられないんですが、一生懸命であるゆえなんで、けなげで、かわいくて、笑いながら泣いてしまいます。
泣けるシーンで笑わせる、これこそ喜劇ですね。
ちなみにかれらが伝え合うのは、かれらの個別の事情であり、ほかのだれとも違う、自分だけの気持ちです。よくある、「愛してると言葉に出すこと」「感謝の言葉」なんかじゃないんですねー、これが。

・対照的に見えた男ふたりが心を通わせるところ。
主人公夫婦とはいちいち対照的な、初老男性と若い女性の、年の差カップルが出てくるんですが、その初老男性のほうが、ダンナに前述の「ヘンテコな手段」をさずけてくれます。
そのときに語る言葉、すごくいいですよ。「これならみのり(若い彼女のほう)をあずけても大丈夫だな」と、親みたいな気分になります。
そして、それまでは対照的なふた組に見えたかれらだけど、たしかさを求めあう気持ちは同じなんだなあ、と気がつきます。

・女傑対決。
民宿の若者3人が主人公夫婦を不倫カップルだと信じ込んでいるなか、なんと「ここに夫が女と来てるはず!」と言い張る女性がとびこんできます。
観客は、今までのストーリーからいって、「夫を出して!」と言ってくる人物はありえないことを知っています。では、この人はだれ? と思いながら見るんですが、種明かしされるまで観客に何らかの仮説を抱かせたらおしまい。
脚本はそこは丹念につくられているのですが、役者さんにも隙のない演技が求められます。
戯画的な演技で、それをこなした女優さん(森澤早苗さん)には脱帽!
最近気がついたのですが、お芝居には観客が自分を投影できる役も必要だけど、かけらも投影できないどころか、少しでも話がつうじる相手に見えたら、芝居全体がこわれる、そういう難しい役もあるんですねえ。
『ザ・ワールド・イズ・スターマイン』の十日町くんとか、この女性とか。

そして、正体をあらわした女性は、宿のおかみさん(日本を代表する声優で舞台女優の太田淑子さん!)と対決するんですが、かわいいかわいいおばちゃんに扮した太田さん、これがまたすばらしい!
不倫カップル専用の宿になってくれたら巨額の契約金を払うと言われ、「どんな人が来るかわからないから楽しいのに、そんなのつまらないからいやだ」って言うんですよ。
メルヘンなこと言ってるようでいて、てこでも動かないよ、という断り方ですよね。すっごく「商売人」らしい! こわい!
なのに、目の前にいる女優さんは少しもこわくなくてかわいいまま! あー、演技ってすごいなあ、と思います。

あと、空間の使い方がなんとも面白かったです。
いっしょに見た人がそれをうまく言い表してくれたので、ここにも書いてもらうようお願いしました。
きっと書いてくれると思うので、期待しててください!
ワールド イズ スターマイン

ワールド イズ スターマイン

One Bill Bandit

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2011/11/26 (土) ~ 2011/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

感情が全開になりました
それぞれに善人だが頭がラクをするほうにこりかたまっている三人組を、なぜ雇い主である宇野社長は「地域活性プロジェクトチーム」のメンバーにしたのか?
宇野社長のおそるべき(?)陰謀がわかったとき、三人は覚醒する…。

そこはちょっと感動的なんだが、だからといって善人が急に有能になるわけではない。
ひとりだけ有能さを見せる登場人物の社長秘書も、ある理由で、まっすぐに能力を発揮しなくなる…。
この窮地を救うのが、なんと…

ネタバレBOX

なんと、それまで観客をいちばん笑わせ、かつ、いらだたせていたイケメン十日町だ。しかも、三人組以上に怠惰で無責任なかれの発想が、なんと、物語にサマになるクライマックスをもたらしてくれるのだ。

先週見たテアトル・エコーの『アラカン!』とふしぎに共通する要素があるんだけど、あの芝居もこの芝居も、「まさか、歌うとは…」だった。
歌っているときのりりしくて骨のある遠野さん、やっぱり会社を救うのはあなたです…。たぶん。

で、はたして地域は活性化したのか? 塩原さんは、休みがちだった店をまたあけるようにはしたようだけど、ほかの人たちは…? そして、十日町さんは宇野社長に与えた損失をなんで補填しないのか?

解決しない問題を残しつつ終わる物語だが、見ているときは感情が全開になるので、あとあじはけっこうさわやかだったりする。

それにしても「イケメン指導」って…何だろう。
アラカン!

アラカン!

テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/11/11 (金) ~ 2011/11/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

魔法にかかった理由
『アラカン!』、12日と19日に見ました。

一度やってみたかったのが、「同じ芝居を、間をおかず二度見る」ということ。
映画や小説、マンガではよく経験しますが、あまり間をおかずリピートすると、一度目は筋を追うのがせいいっぱいだけど、二度目はゆったり見られるから登場人物のようすに目が行き届き、気づかなかったことにたくさん気づける。
お芝居はライブの緊張感があり、筋を追うのがとてもたいへんだから、二度見の効果も大きいと思う。

でもお芝居はお金がかかるからねぇ…。
これまでは、自分で二度見るかわりに、ほかの人の感想をきいたり、劇団や作家の方の話をきいたりすることで満足するようにしてました。
(ちょうど劇場で売られていた唐沢さんの『リプレイ』っていう劇評本も、まさにそのために読みました)

まあ、だからこそ、「これぞ!」と思った作品は二度見てみようと思ってたんです。『アラカン!』は一度見て、「これがその作品だ!」と思ったんですよねー。

シニア向け演劇教室の素人役者が『オセロー』をやりたいと言い出す話、ときいて、当然、そのシニアさんたちの視点で見ることになるんだろうなあ、と思ってました。だってあたくし、文化祭とはいえ、いちおう部活で舞台に立ってるざますからねぇ(ドヤ顔)。いわば元素人役者でしょ、あたくしも。

ところが(以下ネタバレ)

ネタバレBOX

ところが見始めたら、このお話は、シニアたちの指導と卒業公演の演出をまかされたプロの俳優・片瀬さんの視点に立つようにできていました。
最初からイライラしてかんじが悪いにもかかわらず、片瀬さん、ものすごく共感できる。応援したくなる。だってひどいんだもん、このシニアたち。

これはジャンルを越えて、「素人に自分の場を荒らされようとしているプロ」の話だからなんですねー。
そこまでじゃなくても、クソ生意気な新卒OLに、目立つ仕事をとられたキャリアウーマンとか、パワハラにならないよう気をつけながら後輩の言い分を聞いてやる新任管理職とか、第二反抗期の娘に家事のしかたにケチをつけられる母親とか…「大人」ならだれもが経験する、やりきれない気分を刺激されるんだと思う。

そんなわけで、片瀬さん視点で「これだから素人は!」「オレはなぁ、オレはお前らとは違ってなぁ」という苛立ちを楽しむことしばし。

しかし、それではお話は完結しません。
では素人たちが成長したり、幅広い人生経験を生かして片瀬さんを助けたりするのか?
これが、違うんですよねぇぇぇ。

素人さんたちを劇団側ではこっそり「アラカン(アラウンド還暦)」とよんでいます。で、このアラカンたちは、最後まで、「いきいきシニア」「プロ顔負けの素人」に生まれ変わったりしません。ただのアラカン素人のままなんです。
でも、いつのまにか、「ムカつくオヤジやババァ」ではなくなっているんですよねー。どんな魔術?

わたしはいつ魔法にかかったのか?
二度目はそれを確かめにいきました。
自分では、いちばんうまくて人望もあるアラカンが、みんなをひっぱったからかな、と仮説を持っていったんですが、どうも違ったみたい。

まあ、魔法のききどころは人それぞれでしょうけど…。
わたしに関しては、アラカンとプロのあいだにひかれている、越えられない一線が見えたとき、だったみたいです。

アラカンたちは、いったん勝手なことを言い出しても、片瀬さんがキレたり押さえつけたりすると、いったん受け入れたり、言い分を取り下げたりします。
自分たちの意見に、それだけの覚悟はないからねー。素人だもん。それだけはわかってるんだな、この人たち。

最終的にこの対立は、まったく予想しないかたちに発展するんですが、でも、それを応援する気になったのは、アラカンたちとプロのあいだに一線がくっきり引いてあるからなんだろうなあ、と思いました。

この一線を、プロの人たちは誇りに思っている。そしてその誇りが、ある人には心の負担になっていて、またある人は…。
なーんていうところがよくわかるやりとりがあります。
身近なたとえで語られるのですが、これがじーんと来る。

それにしても、これはさんざん言われていることですが、「素人が芝居をするところ」を演じられる俳優さんたちの技術と覚悟はすごい!
だって、ただヘタなだけじゃないんですよ。ムダにうまい素人とか、俳優っぽくすることだけはできる人(それも自分勝手な解釈の俳優像)、なーんてものを演じるんですよ。ああもう、プロにはかなわん!

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