ざらば
新宿公社
劇場MOMO(東京都)
2021/09/10 (金) ~ 2021/09/14 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
#ざらば
#新宿公社
時間・時代と場所が入り交じり、ほとんどのキャストが複数の役を演じる。頭をクリアにして臨むべき作品。
#石田迪子 さんが後半にイキイキとして魅了される。黒服の二人の妾は、全くカラーの違う女性に立ち上げ、白服の元カメラマンは不運を跳ね飛ばす程のクールでサバサバした女性に仕上げ、演技の振り幅を見せつけた。最初の黒服には嫉妬心の闇を持たせ、蔑む視線に宿らせた。二人目の黒服が圧巻で、公私の立場の違いを朗らかに超越させ、明朗な口調に誠実な人柄を確立した。小柄ながらしっかりして見えた二人目とは逆に、失明した白服の元カメラマンはスラッとして見えたことに、俳優が作り出す役の雰囲気というもののマジックに敬服するばかり。
花屋のお姉さま #袋小路林檎 さん #杉山薫 さんがイイ。ヒリヒリする作品にほっこりを生み出してくれる安定剤。
今回の発見は #益子有輝 さん。目を引く綺麗な顔立ちなのはもちろんなのだが、卑屈とも見えるお手伝いと色気がダダ漏れのOL、対等な立場でサポートする移動介護従事者を演じ分けた彼女の次回出演作はぜひ観てみたい。
壮大なスケールの作品を、このサイズの劇場でこの時間に収めるのはなかなかたいへんだろうし、理解するのもたいへん。可能なら復習したい作品。
デンギョ-!(再演)
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2021/09/01 (水) ~ 2021/09/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#デンギョー!
#小松台東
3回目 #千秋楽
どうしても見届けたくて、急遽予約。まるで自分も電工メンバーになった気分。
前2回とはまた違う気持ちの流れや昂り。毎回違う感情の受け渡しと受け取りがあって、やっぱり面白い。
#瓜生和成 さんのスズキが「思い切って……なんとなく」を受け入れずに出て行くけれど、今回の背中を見ながら、本当は #五十嵐明 さん演じるカイさんの気持ちを受け入れたかったのではないか……そのタイミングを計っていたのではないかと思えた。もちろん、戸惑いながらも出てきた #依田啓嗣 さん演じるモジカワくんの優しさも素晴らしい。でも、それがなかったら、スズキは「うるせぇなぁ」や「仕方ねぇなぁ」を装って受け入れたのではないかと思えた。
頑なにイジけてみせるスズキの心の融解に期待して……スズナリを後にした。
近松心中物語【愛知公演中止】
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/20 (月)公演終了
実演鑑賞
#近松心中物語
#初日
二組の男女の心中。#松田龍平 さん演ずる気の弱い婿養子と、#石橋静河 さん演じる箱入り娘ながらヤンチャな嫁の夫婦がチャーミング。心中らしからぬ軽やかさで客席を沸かせる。石橋さんのコメディエンヌっぷりも新鮮。でも、彼女のドロドロした不幸を身に纏ったような役どころも観てみたかったというのが本音。
町の喧騒などは、#長塚圭史 さんらしさのよく出た演出。ただ、冒頭のそれは、鐘を鳴らす男のリズムが悪くモヤッとしたし、声質や滑舌の問題で台詞の聞き取りにくさもあって少し残念だった。
散る雪を含め、照明が美しい作品。
デンギョ-!(再演)
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2021/09/01 (水) ~ 2021/09/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#小松台東
#デンギョー!
【2回目】初日とはまた少し違った手触りを感じた。舞台はナマモノで生き物だということをまた感じる。
#松本哲也 さんの本の基盤は家庭や家族にあると常々感じている。円満にも不和にも、その奥に家族という繋がりに対する願いや愛情が揺るぎなく存在しているように思う。
#小暮智美 さん演じるコハルが中央の椅子に座って夫のヤスダに向ける視線と笑顔から「大好き」が大洪水していてポカポカする。
そして、サッちゃんのお母さんやアノ方など、大切な人との別れは頑なな人の心をも融解させる強い影響力があることを見せつけられた。自分も人生を折り返してから『自分が死んだ時……』を考えることが増えた。
ここにいる人は、なんだかイジケて頑ななのだけれど、それに増して剛速球の愛情を投げ込める人ばかりで、眩しくてクラクラする。
#尾形宣久 さん演じるアベが思いを伝えようとするとブチ壊され、取り残される姿が痛々しい。ラジオ体操開始前……彼が何度もそれを繰り返す姿に涙を堪えきれなかった。
2時間の帰路、#木下愛華 さん演じるサッちゃんの薔薇がこれ以上増えないことを祈った。
丘の上、ねむのき産婦人科
DULL-COLORED POP
ザ・スズナリ(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#丘の上、ねむのき産婦人科
#DULL-COLORED POP
#ダルカラ
#A通常版
B男女入れ替え版を観てからの観劇となり、期待以上の効果がB版によってもたらされたのではないかと思う。特筆すべきは #李そじん さん。最も客席の共感を呼ぶ二人の話のように思う。西洋のように子どもを預けて夫婦も大人の時間を楽しむ…というスタイルは馴染まない日本の一般的な家庭の悩み。ユーモアを織り交ぜながら、大人の楽しみを削って子どもに合わせなければならない未来を想定する。子ども優先を良しとし、そこへ導いたのに…遠い目をする妻の微かに滲む憂いに胸がギュ~ッとなった。頬をつたう一筋のソレが予想外のタイミングで胸を突かれた。寄り添っているようで妻の不安に気付けず、妻との時間を大切にしているようで検診から流れた時間に気付けない #東谷英人 さん演じる夫。この夫がダメなのではなく、多くの日本の男性がそうであろうということこそが胸を痛める。客席の笑いと涙が一番多かった二人。李そじんさんの瞳の雄弁さに今作でも心奪われた。
#岸田研二 さんがイイ。出過ぎない存在感。それでいて、困惑や葛藤がクッキリと浮かび上がる。今後も観続けたい俳優さん。
驚きは #倉橋愛実 さん。福島三部作の1961再演時で出会った彼女。ハスキーなのに張りのある通る声が好きな「女の子」だった。それが見事に艶やかなオンナとしてそこにいて…惚れ惚れ。ジーンズの脚のなんと美しいことか。彼女が仕掛けた地獄の入口。その奥の景色はどんなことになっているだろう。背筋が凍る気持ちがした。
丘の上、ねむのき産婦人科
DULL-COLORED POP
ザ・スズナリ(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
#丘の上、ねむのき産婦人科
#DULL-COLORED POP
#ダルカラ
#B男女入れ替え版
ABを2回ずつ購入したので、本当はAから観たかったけれど逆から。
福島三部作に続いて、よく取材(資料等を含め)されて書かれた作品で、妊娠出産にまつわるさまざまなケースが提示される。「なるほどなぁ」や「そうだよなぁ」が積み上がる。
産婦人科の待合室の悲喜こもごも。いろんな男女がそれぞれの事情を抱えてそこにいる。それぞれの表情がそれを映し出す。
この男女入れ替え版は、やはり意図せずとも何かがデフォルメされてしまうのではなかろうか。もしかすると、単純に、男女を入れ替える演劇があまり好きではないからそう感じてしまうのかもしれないけれど。ただ、この取り組みはむしろ、男女を入れ替えないバージョンに活きてくるのではないかと期待する。カップル双方の台詞、逆の立場の感情を考え演じてみたからこそ掴める何かがあって、それが自分の性による感情表現に変化をもたらせると期待する。
デンギョ-!(再演)
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2021/09/01 (水) ~ 2021/09/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#小松台東
#デンギョー!
ウイルス感染予防としてではなく、人間関係には適切なソーシャルディスタンスはある。実質的な距離を保つことと同様に、関わりや関係性における適切な距離というモノも存在し、それを保つということも良好な人間関係には必要だと思われる。それは壁と言い換えてもいい。自分の心や生活を守る城壁。それを越えて踏み込むこと踏み込まれることには恐怖を感じる。多くの人が他者のことに興味津々ではあるけれど、上手に見て見ぬふりをし無関心無干渉でバランスをとる。実生活ではそうやって衝突を回避しながら生きているものだ。しかし、ココの人たちは違う。その城壁を飛び越えて懐に入って行き入って来る。飛び越えて相手に関係を迫る原動力は愛に他ならない。
人間に…仲間に…人生に…向き合うのか、そっぽを向くのか。
ここに集まった人は、みんな向き合う。ひとりひとりが皆、人生という舞台の主人公なのだということを思い出させてくれる。それほどまでに、全員が素敵で、全員に存在意義を感じ、ここで語られないドラマを生きてきた人間として確かにそこに存在した。
気になるのは、今作のJOKERとも言える、最後までヒール役を貫くスズキの存在。このシリーズでずっと憎まれ役を演じ続ける #瓜生和成 さんのタフネスに敬服する。
人と生きる上で、やはり挨拶は重要だなと感じさせられる。流されれば絶望や孤独が胸に刺さり、交わされれば安堵と喜びが胸を満たす。乾いた心が一瞬で潤う。市井の人々を応援する演劇が、また一つ誕生した。いや、再演だから…「成長した」と言った方がいいだろうか?
それにしても、特筆すべきは #吉田電話 さんの素晴らしさ。彼が演じるイワキリがそこにいる自然さが愛すべき世界だ。奇しくもパラリンピック開催期間に上演されていることに感謝し、この世界が、素晴らしき愛すべき世界に近づけることを願う。
大金塊
キッズシアター~ボクとキミの秘密基地~
雑遊(東京都)
2021/08/25 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#大金塊
#キッズシアター
ダンダ〜ンダダダダダダンダ〜〜ン。キュートな #森寧々 さんが道先案内人になって、宝探しの大冒険の物語を楽しませてくれる。キッズシアターという名で侮ってはいけない。実力派揃いの豪華キャスト。いい大人が真面目に楽しんでいるのだから面白くないハズがない。無駄のない60分強。大人も存分に楽しめるし、わかり易いストーリーで子どもたちが出会うにはもってこいの演劇体験にになるはず。#松岡依都美 さんと #吉野実紗 さんのバトル⁉️はお腹がよじれる。
脚本(脚色)の #斉藤祐一 さんの脳内で駆け回る少年の心が具現化された感じ。あの人物の鏡に映る姿を演じた演奏出演 #鈴木亜希子 さんが可愛くてハートを鷲掴みされた。
子どもはやっぱり冒険しなくちゃね。夏休みの最後に新宿で、親子の大冒険はいかが⁉️
劇場チケットも、配信もあるってよ。
ダンダ〜ンダダダダダダンダ〜〜ン。
あ;今;いな;未ら;い
架空畳
吉祥寺シアター(東京都)
2021/08/14 (土) ~ 2021/08/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#架空畳
#あ;今;いな;未ら;い
これまでのリーディングとはひと味違う。もちろん対面で台詞を交わすわけではない。座ったまま台本を読むのでもない。キャストはシーンに合わせて位置を変えるが、椅子の配置も含めてその動きが綺麗に演出されていて気持ちいい。その肝となるのはスピードだ。
感心するのは、長尺の台詞スピード。鍛え抜かれたアスリートのように思える。事故が起きるのではないかと心配になるほどの速さで、まるで競い合っているかのようなそれは、オリンピック……サーキットと言ってもいい。その先頭を走っているように見えた……感じた #日野あかり さん。彼女の、作品全体を把握した上で自分をどう活かし、カンパニーを牽引するか、その才と覚悟のようなものを感じた。
濃厚な接触が信条の「革命アイドル暴走ちゃん」に所属する #江花明里 さんも、そことは別の顔を見せてその存在感を示した。
今回の発見No.1はもちろん架空畳という劇団であり、作・演出の #小野寺邦彦 さんであるが、キャストでは #江花実里 さん。他のキャストと台詞をシンクロさせる間合いというか…寄り添うというより溶け込むとか染み込むという方がフィットするようなそれに心奪われた。長身の女性にトキメクわたしが、目も奪われたことは隠せない。
また、次を観たい人たちに出会ってしまった。
ガムガムファイター
佐藤佐吉演劇祭実行委員会
王子小劇場(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#ガムガムファイター
#佐藤佐吉賞Reborn
#小川夏鈴 さんを初めて観たのもこの劇場で、 #池亀三太 さん演出の『すべての犬は天国へ行く』だった。まだ学生さんだった彼女に心を射抜かれ、学内公演まで観に行ったのが懐かしい。あれから何作品観ただろう。可愛らしさも残しつつ、見事に大人の女性の色香を纏い、まるで古代彫刻のようだった。誰にでも人生にひとり、こうしたヒロインがいるのだろう。いや、今回は女神と言った方が合うかもしれない。薄幸の女神は、我が心の小さくひび割れた割れ目にスッと入り込んで全身を麻痺させた。
人生がオセロゲームならば、いい手をパチンしたい。SNS抜きでは生きられないような世界で、そこには毒が溢れている。蓋を開けなければ見ないで済むのに、人はついつい覗いて、傷つき、病む。
心ってなんでこんなに弱いんだろう。
愛されちゃ〜。
アォ〜〜〜〜ン😱🐺
素敵な人に迷惑をかけられながら役立ちたい。受け入れてくれる素敵な人に「ご迷惑」かけたいね。
突然の出来事に見舞われても困らぬように、ちゃんと片付けながら生きよう。
#安東信助 さんの立ち上げた自己肯定感がプレる中年男性の吸引力に負けて、まんまと自己投影。同時に、我が人生のヒロインについて想いを馳せる。
この中年を引き立たせた若者を #鈴木研 さんが好演。あの若者の懐の広さと深さはどうやって身につけたのだろう。教育って何なのかもう一度考えてみようと思った。
今回の発見は #百々ともこ さん。なんだか気になって、視線が自然と引き寄せられる。後ろ向きのダンスが妙に艶っぽかったなぁ。
脚本の #池田美樹 さん、演出の #井上瑠菜 さん。どちらも次の作品を観てみたい。哀愁、ノスタルジー……人間の……人生の明暗を考える作品はご馳走だった。
終演の余韻を膨らませてくれた音楽は #大垣友 さん。流石です。
病室
劇団普通
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2021/07/30 (金) ~ 2021/08/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#病室
#劇団普通
#松本みゆき さん #安川まり さん #小野寺ずる さんが揃って観ない選択はない。評判の良かった初演を逃した無念を晴らすことができた。その上、松本さんと安川さんが母娘というシチュエーションだけでも心をわしづかみされた。誰かに向けられた質問に全部答えてしまう母が可笑しいのに切ない。口数の少ない娘にも胸を締め付けられた。大事が起こるわけではなく、そのなんともいえない「普通」な感じが、自分に起こり得ることとして捉えられる作品。
人の話を聞いているようで聞いておらず、自分の言いたいことだけを言いたいタイミングで放つ、人間の傲慢さが柔らかく浮かび上がる。
子を思う親の思い…願い…。それは本当に子のためか…子のためになるのだろうか。父親としての我が身を省みずにはいられない。
それにしても、安川まりさんのトーンを抑えた語り口に引き込まれる。特に配役のない(その場にはキャスティングされていない)話し相手との会話が見事で、その姿がハッキリと見えて、その声がしっかりと聞こえてくる。大きな瞳の…いや広大な白目のなんと豊かなことか。
シンプルなセット。感心した照明。白い照明が黄色を帯びたり、青みがかったりするだけで、病室が診察室に変わり、或いはそこにいる人たちの心理や病状やらが伝わってくる。開演するその瞬間から、照明にKOされた。
人生は川魚なんだな。川の流れ(逆風)に立ち向かって泳がないとその場を保つことはできず、当然上流へと上っていくことなどできない。抵抗することを諦め、止めて、踏ん張ることなく流れに身を任せてしまえば下流へと落ちていくだけ。強い逆風が吹いていたこの4ヶ月、逃げるなと諭された気がした。
新編 ロミオとジュリエット‐薔薇の名は‐
蓮×歌
ザ・ポケット(東京都)
2021/08/05 (木) ~ 2021/08/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#新編ロミオとジュリエット‐薔薇の名は‐
#Black
#蓮×歌
#大里結衣 さんを観るために劇場へ。乳母のスーザンを演じた彼女の高い声は、よく通りよく届く。そして大きな瞳がたたえる感情で、シーンの状況を見事に物語ってみせる。嗚呼、コレが観たくて劇場へ足を運ぶのだ。
正直に言えば、若くて美しい青年やお嬢さんがたくさん集う作品は、顔見せ興行的なモノが多く、面白くない上に高額で苦手だ。今回も覚悟していた。ところが、その予想は間違っていた。綺麗な顔立ちの男女が揃っているが、彼等はそれだけではなかった。まず、みんな声がイイ。確かに気合いが入りすぎの感じも見受けられるが、多くのキャストが力を込めながらも明瞭な言葉で届けてくれる。修道僧ロレンスを演じた、劇団員 #南武杏輔 さんはなかなかに魅力的だったし、ヒロインの #西村美咲 さんはスタイリッシュであることに加え、言葉の力や表情で登場の瞬間から群を抜いて輝いていた。
そして何よりの驚きは脚本。たしかに「ロミオとジュリエット」だけれど、冒頭から喉に刺さった小骨のような違和感がある。それは…登場人物。その違和感が後半に、まるでジェットコースターが急降下するように動き出す。そして仕掛けの中に、マクベスの三人の魔女…ハムレットの墓地…顛末を語り継ぐホレイショー…十二夜やお気に召すままの男装などを忍ばせ、そしてロミオの元カノのロザラインを見事に融合させているように思えた。演劇好きにはたまらないシェークスピア・ミックス。終演までニヤニヤが止まらなかった。脚本(脚色)と演出の #時雨らら さん。今後に注目したい。
少年口伝隊一九四五
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/08/05 (木) ~ 2021/08/08 (日)公演終了
実演鑑賞
#少年口伝隊一九四五 #新国立劇場 #演劇研修所 #井上ひさし 氏が研修所に書き下ろした名作。広島を題材にした一つ。ずっと観てきているけれど、これまでとは違う印象を受けた。何故だろう? 第一に、とても短く感じた。その理由をじっくり考えている。衣装の印象も違ったなぁ。こんなにもバラバラだったか。イイとかワルイとかではなく。土砂崩れ…山津波に毎回衝撃を受ける。狂った号令は現代もこの国をあざ笑っている気がしてならない。
毎年8月、ハナエさんたちのことを思い出す。
ぞうれっしゃがやってきた
公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター
吉祥寺シアター(東京都)
2021/08/07 (土) ~ 2021/08/11 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#ぞうれっしゃがやってきた #青☆組
主宰の #吉田小夏 さんの人柄が滲む「子供たちにも見せる」演劇。あうるすぽっとで上演された「モモ」もそうだ。今作は、動物を入口にして、戦争の愚かさを考える道が未来へとつながっている。そうした、作品の持つ価値や意義をよく理解したキャストが、子どもたちを作品の世界へ誘い、大人たちをノスタルジーと共に、未来に平和を届けることを決意させる。子どもたちにとって「演劇って楽しいね」だけにとどまらない豊かな出会いになっているに違いない。
劇団員のみなさんの笑顔に、毎公演、日常の営みでくすんでしまった心の目が洗われる。今作は、お尻にまわした左人差し指から伝わる感情にウキウキと涙した。山下飼育員の #大石丈太郎 さんの声にうっとりした。歌やダンスはもちろん、カンパニーへの #清水ゆり さんの融合を感じる。
象の恋も、人間の恋も、美しく切ない。
セットの壁が、横向きの象2頭にも、正面を向いた1頭の象にも見えたのは自分だけだろうか。
※振付も演出の吉田小夏さんと知り、修正加筆いたしました。失礼いたしました。
意味なしサチコ、三度目の朝
かるがも団地
王子小劇場(東京都)
2021/08/05 (木) ~ 2021/08/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#意味なしサチコ、三度目の朝 #かるがも団地 #波多野伶奈 さんを観るのが目的だった。彼女は語り部として作品にねじを巻き、主人公として牽引した。実際に重い心を引きずるようにチャリをこぎながら嗚咽する彼女の姿に人生を重ねた。また、ラストシーンに響く蝉の音に、人生の儚さを感じたりもした。深く深くノスタルジーの海に飲み込まれた。
いやはや……ふるさとは遠きにありて思ふもの、そして悲しくうたふもの。人生は不時着、いや胴体着陸だ。人は一人でも生きられるよう努力し、人を助け人に助けられながら生きている。人生の孤独と仲間の素晴らしさがマーブル状に混在する。それこそが人生だ。
ユーモアたっぷりでふざけた作りの…骨太の作品。帰国子女にツボった。登場人物も、それを立ち上げるキャストも、みんなキャラがエグイ。そして魅力的で素晴らしい。笑いと涙と…見事なバランスの脚本と演出。そこに破天荒さもあるけれど、そこに1mmの隙も無く、誰ひとりとして客に恥ずかしさを感じさせない。今後が楽しみな劇団と、俳優たちに出会ったぞ。
【追記】
配信チケットがあるらしい。このご時世、劇場に行くのが怖い方、家で時間を持て余らせている方、そして演劇が大好きな方、オススメです。
コメンテーターズ
ラッパ屋
紀伊國屋ホール(東京都)
2021/07/18 (日) ~ 2021/07/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/25 (日)
#コメンテーターズ
#ラッパ屋
語り部は引きこもりの息子 #瓜生和成 さん。でも、彼はいたってノーマルで素直で客観性がある。それがむしろ、現代社会が抱える闇にも思える。インターネットというバケモノが日本に入ってきてもうすぐ30年になる。誰もが発信できる時代で、ネットが大きな影響力を持つようになったのに、全く力を感じられなかったり。もう何を信じていいのかわからない。一般人の意見とは何か。そもそも一般人とか普通とかいう概念が揺らいでいる。そこへ来て、国民の誰もが忖度してしまうなら…何も信じられないし、怖い。恐ろしい世の中。報道は、元来そうした偏りの要素を持っているもの。政治的なことも経営的な面でも影響を受け、忖度する。
これを、まさに五輪開催中に観る不思議。開催反対の声はどれくらい本気だっただろうか。政治家もデモも、パフォーマンスで終始し、それでヨシとしてはいなかっただろうか。本気ならば、もう少し違ったうねりのようなものが起こるのではなかろうか。
そんなことへ思考を広げながら観た。
こうなったら、ノコギリ男爵ブログだけが頼りだな。
誰か決めて
吉祥寺GORILLA
王子小劇場(東京都)
2021/07/07 (水) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#吉祥寺GORILLA
#誰か決めて
【追記】千秋楽を迎えたので
#岡野優介 さん #宮部大駿 さん #森崎真帆 さんが演じた4役(岡野さんが2役あるので)の優しさが美しくて泣ける。あの人たちと出逢いたい。本当に切望する。岡野さんの脱臼同級生の明るさは全人類を救えるし、先輩の面倒みの良さは師と成りうる。宮部さん演ずる菊池の優しさは宇宙より広く深い。彼に対する葉介の自暴自棄な暴言に、胸をズタズタに切り裂かれた思いがした。それでも、怒りや絶望を飲み込み、絶対に見捨てない彼が神に思えた。彼が神なら、森崎さんの野崎は聖母マリアだ。あんな風に人に受け入れられたなら、どんなに苦しい思いをしていても救われる気がする。
辛い生活をしている人に、この作品と出会って欲しい。周りに目を向けたら、自分も一人ではないと気づけるかもしれない。そんなきっかけを与えてくれる、哀しくも温かい演劇だった。
七祭〜ナナフェス〜この夏、胸アツ!演劇2本に映画だ、わっしょい!
On7
シアター711(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#On7 #七祭
#青年座 #文学座 #俳優座 #演劇集団円 #テアトルエコー
2本の短編芝居と1本の映画。元は映画館の #シアター711 で映画を観られたことも嬉しい。クリアな映像と迫力の音響が想像以上のクオリティで驚いた。
映画からのスタート。本編前のイントロダクションが、映画館でかかる予告編のようでワクワクする。予告編て、興味をそそるように見事に編集される訳で、これもまさにそれだった。7人のワンショットがクルクルと映し出され、一瞬にして彼女たちの魅力に飲み込まれ恍惚とする。ベッドに横たわる #吉田久美 さんのエロスに完全にやられた。
短編映画『うまれる』▶ファーストカットの強烈なインパクトが脳を焼く。それはサブリミナル効果などという生半可なモノではない。#安藤瞳 さんの狂気に満ちた表情の残像はトラウマになるレベルだ。ラストの放心した表情とのコントラスト。うまれる……。子どもを産む。子どもは生まれる。ここでうまれたモノは……物質的なモノではないソレについて考える。
短編芝居『夜会』▶シーンは舞台上演中の楽屋。このシチュエーションは、清水邦夫の名作『楽屋』を思い出す。女優を演じる #渋谷はるか さんから匂い立つ女優は『ガラスの仮面』とも『Wの悲劇』とも通ずる気がした。作品に優しさを注入し柔らかくした #小暮智美 さんが『サウンド・オブ・ミュージック』のマリア先生に思えた。そのなりきりっぷりが圧巻で、役にハマっていた #尾身美詞 さんは『アダムスファミリー』のモーティシアのよう。メイクも見事だった。レヴュー仕立てなのであれやこれやがあって楽しい。どこを観ていいのか、誰を観ればいいのか...困ってしまうのはわたしだけだろうか?
短編芝居『座れ!オオガミ』▶何故、OLの制服ってオトコ心を擽るのだろう。#保亜美 さんと #安藤瞳 さんのコンビネーションが絶妙。#吉田久美 さんがジジイに夢を与えてくれる。嗚呼......口吸い。オリンピックイヤーに新しいスポーツ。新国立劇場『イロアセル』やNODA MAP『エッグ』を思い出した。
つなぎの芝居▶日替わり出演となる #宮山知衣 さんがイキイキとしていてなんともカワイイ。彼女のコメディエンヌっぷりが存分に発揮されてなんとも愛おしい。クスッとなるこの可笑しさを多くの人に味わって欲しい。とにかくコッチ!
既に老舗劇団の看板女優を担う七人。その実力が遺憾なく発揮されたお祭り公演は、振り幅の大きい作品が並び、彼女たちのいろんな表情を観ることができた。それは、さまざまな人生を生きてみせる、俳優の素晴らしさを証明してくれている。
是非とも、多くの人に目撃していただきたい。
誰か決めて
吉祥寺GORILLA
王子小劇場(東京都)
2021/07/07 (水) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/07 (水)
#吉祥寺GORILLA
#誰か決めて
#黒沢佳奈 さんが、これまで観た中でサイコーの好演。娘の姿がクッキリと浮かび上がった。そして、幾つかの障害のある恋の予感と切なさを、線香花火のようにヒリヒリと弾けさせた。そして……綺麗で愛しい女性が立ち上がった。
人は一人では生きられない。それでいて、一人で生きていける力を身につけようとしなければならない。相反するように見える二つのことが、人生の両輪だったりする。
登場する女性が……いや、女性キャストが皆さん魅力的で、何だか羨ましかった。同時に我が人生を寂しく思った。母親役の #石澤希代子 さんの笑顔の奥に潜ませた悲しみや寂しさに胸が痛んだ。
いったい何を見せられているのだろう……というような感覚で、ふわりと軸を掴めないままにいながら、不思議と作品の中に飲み込まれていくような気持ちがして、今までに味わったことの無い感覚だった。
人はみな何かに依存しながら生きている。それに溺れる姿は恐ろしかったけれど、ラストの光景は優しさや温かさも感じて……美しかった。
私を代わりに刑務所に入れてください 非行少年から更生支援者へ
私を代わりに刑務所に入れてください実行委員会
シアターサンモール(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/04 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2021/07/04 (日) 15:00
#私を代わりに刑務所に入れてください
#森寧々 さんと #久保田堅伸 さんが光っていた。#桂ゆめ さんは僅かなシーンでも別格だった。
やはり舞台は、物語の設定だけでは感動しない。説明されても感動しない。俳優がそこで生きてこそドラマが動き、観る者の心を震わせるのだと、改めて感じた。
キャストが何度も何度も場面転換に使われ、また、通行人や市民として舞台を歩かされてばかりいて、なんだか浪費されているように感じてしまった。
客席に向けて顔を見せる演出は思いやりなのだろうけれど、それは同時に真実味を削いでしまう。ダヴィンチの最後の晩餐のような食事風景は、やはり興ざめする。その上、そこにあまりにもミスマッチな音質のBGM😰これみよがしのメロディは狙いがあけすけで閉口。
そして、作品以上に酷かった客席のマナー。こんなに着信音が聞こえる舞台はそうそうない。飲食禁止という開演前アナウンスが流れているその時に、関係者にペットボトルのお茶を配っているスタッフにも驚いた。まさかそれが上演中にキャップを転がすことになるとは予想もしなかった。この客の携帯から数分ごとに着信音がするのに、一向に音を切ろうとしない。犯罪加害者の更生を扱った作品の是非を問う前に、観劇マナーに対する姿勢を問いたい。あまり演劇と触れ合うことのない人が集まった作品なのかもしれない。であるならば、尚のことマナーを徹底させる努力を主催者には持ってもらいたい。
チケットに記載された整理番号が指定の座席番号だというのも初めてだった。自由席だと思い新幹線で早く来た自分を哀れに思うしかない。