実演鑑賞
満足度★★★★★
#病室
#劇団普通
#松本みゆき さん #安川まり さん #小野寺ずる さんが揃って観ない選択はない。評判の良かった初演を逃した無念を晴らすことができた。その上、松本さんと安川さんが母娘というシチュエーションだけでも心をわしづかみされた。誰かに向けられた質問に全部答えてしまう母が可笑しいのに切ない。口数の少ない娘にも胸を締め付けられた。大事が起こるわけではなく、そのなんともいえない「普通」な感じが、自分に起こり得ることとして捉えられる作品。
人の話を聞いているようで聞いておらず、自分の言いたいことだけを言いたいタイミングで放つ、人間の傲慢さが柔らかく浮かび上がる。
子を思う親の思い…願い…。それは本当に子のためか…子のためになるのだろうか。父親としての我が身を省みずにはいられない。
それにしても、安川まりさんのトーンを抑えた語り口に引き込まれる。特に配役のない(その場にはキャスティングされていない)話し相手との会話が見事で、その姿がハッキリと見えて、その声がしっかりと聞こえてくる。大きな瞳の…いや広大な白目のなんと豊かなことか。
シンプルなセット。感心した照明。白い照明が黄色を帯びたり、青みがかったりするだけで、病室が診察室に変わり、或いはそこにいる人たちの心理や病状やらが伝わってくる。開演するその瞬間から、照明にKOされた。
人生は川魚なんだな。川の流れ(逆風)に立ち向かって泳がないとその場を保つことはできず、当然上流へと上っていくことなどできない。抵抗することを諦め、止めて、踏ん張ることなく流れに身を任せてしまえば下流へと落ちていくだけ。強い逆風が吹いていたこの4ヶ月、逃げるなと諭された気がした。