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アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/04/03 (日) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

休演していた #加藤梨里香 さんの初日を観た。数公演失った思いを昇華させるような勢いを感じた。
大きな円卓で行われる会議。目的は映像作品のための物語を創り上げるクリエイティブな会議。しかし、行われるのはメンバーの経験についての独白。かなりの長台詞もあり、キャストの苦労が窺える。
この会議がなんとも不愉快。デスコミュニケーション。プロジェクトの参加者がそれぞれに不満を抱いているが、それは最後まで解決されない。その不満も匂わすだけでほとんど話題にされず解決もされないから観客はモヤモヤするのみ。そこには明らかに邪魔者扱いする空気が充満し、客席をもその息苦しさが包む。いたたまれない。
結局、物語は子どもの頃に書いた至ってシンプルなものを紹介して幕を閉じる。現実の人生はたくさんの要素が絡まり合って複雑なモノなのかもしれないけれど、人が求めているものや共感できるものは、シンプルで共感共鳴できるものなのかもしれない。

キャストは素敵だし、スタッフワークも悪くない。でも、本は面白いと思えなかった。一体なぜ、コレを演目に選んだのか。今作の演出でもある劇場芸術監督の小川絵梨子さんがチョイスした理由を訊いてみたい。

おどる落語『あたま山』

おどる落語『あたま山』

CHAiroiPLIN

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2022/04/16 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#あたまプリン
#スズキ拓朗 #清水ゆり
#中山祐一朗 #小林らら
#ジョディ #ジントク
#よし乃 #柏木俊彦
#黒須育海 #鈴木彩乃
#鈴木幸二 #鷹野梨恵子
#鳥越勇作(敬称略)
【初日】もちろん落語である。滑稽話である。なのにキューッと胸が締め付けられる。ここ数作、本当に演出の磨きがかかったスズキ拓朗さんは、ダンスに可笑しみを散りばめ笑いを生み出してきた。今作にももちろんあるのだけれど、落語を題材にした今作は寧ろ笑いを抑えてペーソスを滲ませた。
仕掛けはオープニングからある。劇団の顔と言えるスズキ拓朗さんと清水ゆりさんのコンビが登場し、そこらじゅうを消毒する。(エンディングもラストに二人で挨拶する姿にジーンとした)それは、死者の部屋を片付ける特殊清掃員。コレが今作の芯を貫く。
ダンスの部分では、植木屋と床屋のセッション、花屋の挿し花が楽しかった。
そして今作の胆は、ケチ兵衛の娘に思える……トイレの女神さまの小林ららさん。ジャンケンで負けて屋根の上のアレに沈む可愛らしさも、1列に並ぶ皆んなとアレに座ってジャンケンする明るさも、黒のパンツスーツで頬を濡らして見送る悲しさも……全てが美しく胸を打つ。
この清掃員と女神が、今作の輪郭を象っていた。
もう一つ、今作の功績として書いておきたいのは、観客を池の中に引きずり込んだ演出。サッカースタジアムを思わせるソレは文字通り演技エリアと客席のバリアフリーを実現した。
客席に居ながらにして、作品の中に……いや、池に飛び込んだようなあのワクワクする感覚を、たくさんの人に体験して欲しい。
あっという間なのに濃密な70分。ご堪能あれ。

なんとなく幸せだった2022

なんとなく幸せだった2022

かるがも団地

北とぴあ カナリアホール(東京都)

2022/03/31 (木) ~ 2022/04/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#北原州真 #冨岡英香
#信國ひろみ #森将人
#中嶋千歩 #遠さなえ
#谷川清夏 #岡本セキユ
#宮野風紗音(敬称略)
観劇してる場合ではない状況で、実は諦めかけていた。やめようかと思った。駅まで歩きながらキャンセルの連絡をしようかと本気で考え足を止めた程だった。それでも新幹線に乗って観に行ったのは、前回観た波多野伶奈さんが主演した『意味なしサチコ、三度目の朝』が面白かったから。
こうやって悩んで、新幹線にまで乗って観たのに残念だったりすると本当に頭にくるのだけれど、観に来て良かったと思える作品で、引き返さなかった自分を褒めている。
誤解を恐れずに書くと、作品に漂う空気は学園祭というより文化祭の出し物。それがダメなのではなく、それを作り貫いている感じが素晴らしい。言うなれば、カッコつけようとしているのに安っぽいのではなく、安っぽさをキッチリ作り上げているプロフェッショナリズム。
もう一つ誤解を恐れずに書けば、キャストは美女でもイケメンでもない……と最初は思えるのだけれど、最後にはみんな可愛くてカッコ良く見えている。ウットリして眺めている自分に気づく。コレって究極に凄いことで、作演出の藤田恭輔さんの手腕に他ならない。俳優の皆さんの演技も、チープ感を抱かせておきながら、実はとっても丁寧で力強くて澱みなく流れてクリア。
わたしは年齢を訊かれると19歳と答える。それは大人の手前で、足らないことが許される気がするから。この作品も、いや、かるがも団地という劇団も19歳感が凄い。それは大人になりたいのに足らないのではなく、未熟に徹する感じ……未熟を完璧に作り上げているのを感じる。それはもしかするとワカチコだ。最高のワカチコに違いない。
これからも、誰を客演に招いても面白いと確信する。次も観たいと思う若い劇団がまた一つ増えた。

1999会の谷川清夏さんのマドンナ感が堪らなく好きだ。そして、声が艶やかで素晴らしい。
ウメコの解説のようなモノローグが嫌味なく聴いていられるのは、演出の力ももちろんだが、冨岡英香さんのパーソナリティによるところも大きい。自然体な佇まいが大好きだ。
劇団員の宮野風紗音さんは、まるで百戦錬磨のお笑い芸人並の面白さ。

つまりは、大いに笑いながらキュンとするから、みんな観たらイイ。

マリーバードランド

マリーバードランド

やみ・あがりシアター

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2022/03/17 (木) ~ 2022/03/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#荒波タテオ #岩井美菜子
#市川歩 #加藤睦望
#川上献心 #河村凌
#久保磨介 #小寺悠介
#小山ごろー #さんなぎ
#清水建志 #髙橋紗綾
#日野あかり #村上弦
#吉成豊 #依乃王里(敬称略)
会場と作品がマッチして、観客は披露宴の出席者としてコトの成り行きを目撃することになる。大勢のキャストそれぞれが新郎新婦になり得る展開でスポットを当て、観る者を飽きさせない。作品が動き出すスイッチが冒頭に押され、あっという間に会場全体を巻き込んでいく。特に観客の後方……客席の後ろの屋外を演技エリアとして想像させる手腕が心憎い。
純愛も打算も織り交ぜて、さまざまなカップルを誕生させ壊していく。その中で頑なに状況を拒む振り袖のカモガワの告白。その純愛と相手の打算による結末が何とも痛々しい。
ずっと憎まれ役の花嫁が過ちを認めつつも、投げやりになったりせず最後まで一貫して愛を貫き通す姿に何だか拍手を送りたくなる。全ての責任を背負って不幸の地獄へ落ちる覚悟の彼女。批判の罵詈雑言は、聞こえなければ幸せなのかもしれない。氷の溶ける音が憎しみや怒りの融解ならば……彼女に少しの光が差した気がした。
花嫁マリ。マリの幸せの青い鳥が舞い降りる楽園だとイイネ。マリーのバードランド。

そして、綺麗な人という重責を全うして余りある麗しさの日野あかりさんに脱帽。
「アキヒコさんはコックコート。ウララさんは黒のパンツスーツ」
マルヤマが語る想像のスピーチに痺れた。

下品なジョン・ドー 笑顔のベティ・ドー

下品なジョン・ドー 笑顔のベティ・ドー

第27班

王子小劇場(東京都)

2022/03/24 (木) ~ 2022/03/28 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#鈴木あかり #箸本のぞみ
#大垣友 #もりみさき
#深谷晃成 #目崎剛
#やじりまおん #函波窓
#大賀美佑治 #服部美香(敬称略)
【初日】帰ってきたジョン&ベティ。この作品が再演され、佐藤佐吉演劇祭に参加して、多くの人に届くことで、演劇の面白さや可能性が広がっていくといい。
10人のキャストで初演に出演されていたのは2名だけ。その上、同じ役はもりみさきさんだけで、鈴木あかりさんは別の役にスライド。だから、雰囲気の違う別作品に思える。
やはり初演を観ていると、当て書きの部分もあったであろうから当時のキャストが脳内でチラつく。劇場に初演キャストさんが何人もいらっしゃったから尚更。どちらが良かったかということではない。今回のキャストさんも素敵に役を立ち上げている。お気に入りは……服部美香さん。あの立ち位置を楽しんでいる感じが可笑しくて好き。
今作を初めて観る方は、純粋にそのユーモアを満喫されるだろう。羨ましい。
ストレスを抱えている人は、是非とも王子小劇場に足を運んで欲しい。何も考えずに笑える幸せな時間を過ごせること請け合い。

白片つぐつぐ

白片つぐつぐ

アナログスイッチ

駅前劇場(東京都)

2022/03/16 (水) ~ 2022/03/22 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#秋本雄基 #渡辺伸一朗
#雨宮沙月 #藤木陽一
#忠津勇樹 #小島あすみ
#浅見紘至 #齋藤拓海
#ぎぃ子 #小野川晶(敬称略)
【初日】最初に書いておこう。大好きなぎぃ子さんと小島あすみさんのチマチョゴリ姿がなんとも可愛かった。ぎぃ子さんが、秋本雄基さん演じる主人公に密かに想いを寄せる感じがいじらしい。それでも、ぎぃ子さんはヒロインというより、作品のガイドを担う語り部を務める。彼女の視点にそれを与えたことが、大きなテーマを考える間口を広げ、問題を突きつけるのではなく、共に考えることへ誘う優しさをもたらした。
1995年にサッカーの選抜チームの引率で初めて韓国遠征をした時のことを思い出す。韓国のガイドさんは国家試験を受けて資格を取得するらしく、聡明であり、たくさんのことを中学生と引率する大人に語ってくれた。光化門を見学し、日韓の関係を肌で感じて欲しいと夕方の市場を案内された。治安が心配される時間帯になる少し前のそこでは、露店で飲む方々からの鋭い視線と語気の荒い声を浴びて、日本がしてきた蛮行と、それによって生まれた遺恨をビリビリと感じた。
東京大震災から100年。ネットは無くたっていつの時代でも噂が広まる威力は恐ろしい。愚かなのは大衆か、はたまた……。なんの因果か、帰路の電車内で大きな地震に見舞われ、帰宅が3時になろうとは思ってもみなかった。
史実を元にした、なかなかにディープなテーマを扱った作品を、笑いを散りばめながらテンポよく軽やかに展開し、楽しませながら考えさせる脚本と演出、そして演技が揃い、澱みなく引き込むアナログスイッチらしい秀作。客演の俳優さんたちも持ち味を活かして色を添えた。
陶器は焼いてみないと、窯から出してみないと出来は分からない。演劇も似ているような気がする。白くて美しい壺が焼き上がっている。みんな観たらいい。

不思議の国のアリス

不思議の国のアリス

文化庁・日本劇団協議会

ザ・スズナリ(東京都)

2022/02/23 (水) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#紅日毬子 #イワヲ
#森ようこ #山丸莉菜
#小林七緒 #田村龍成
#清水ゆり #山下直哉
#佐野陽一 #丸山厚人
#伊藤俊彦 #チカナガチサト
(敬称略)
何度か観てきた今作。いつだってどことなくアンティークでアングラな空気があった。今回はその空気感はありつつも、ポップさが増し淫靡さは薄れ親しみやすい作品に仕上がった。展開もスマートになり、不条理の条理が通った気がした。
​特に前半はスッキリとした印象で、キャストも演じるのが楽しいだろう。
チャイロイプリンのスズキ拓朗さんの演出が進化し続けている。
いま最も観ていて楽しい作品を提供してくれる演出家ではなかろうか。
今作の最大の演出効果は、対極にあるモノの融合。
出る=入る、上=下、北と南……。
特に、上下に分けた胴体で天と地が結ばれ​たことで、限られた演技エリアが無限に広がった。
ダンスと音楽の効果はスズキ演出の両輪。
今回、諏訪創さんの歌のアレンジが秀逸。『かごめかごめ』の変化はサイコー。チャイロイプリンの音楽を担当する清水ゆりさんが今作にも出演し演奏されているが、あの表情と演奏の功績は大きい。
『かごめかごめ』のぐるぐるダンスが大好きだし、空中ブランコを再現する人海戦術を駆使したパフォーマンスも見事だった。
金の兵隊の丸山厚人さん、郵便配達のチカナガチサトさん……キャストにそれぞれ見せ場があり、みなさんが演ずることにやりがいを感じているに違いない。

​人は誰だって人生が豊かになることを願う。
それを……信じていないワケじゃない。
人生を辞めるわけにはいかない。
人生を降りるわけにはいかない。
世界が不条理に溢れていても。
世界のどこかで戦争が始まり、どこかの国が存続の危機にあるなら、
声を上げなければ。

いま観るべき舞台が、確かにそこにあった。​

「ペーター・ストックマン」~「人民の敵」より

「ペーター・ストックマン」~「人民の敵」より

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2022/02/19 (土) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#ペーターストックマン
#西尾友樹 #森尾舞
#山口眞司 #野坂弘
#水野小論 #小林亜紀子
#小泉将臣(敬称略)
大上段に振りかざす正義や倫理や道徳は非常に硬質で柔軟性に乏しい。鋼の心は遊びのないアクセルのように危険だ。耐震構造も隙のない硬い素材よりも、柔軟性のある素材の方が外部からの力を逃がして耐久性がある。人の心や関係性も同じことが言えるのではなかろうか。
利権と政治の癒着。そうした悪を糾弾するジャーナリズムに対する政治介入。言論の自由の危機をチラつかせる脚本はスリリングだ。
後継ぎ問題を一方的に抱える姉と、名誉に拘る弟の確執。そこに正義の所在まで交えた駆け引きが面白い。
終末に浮き上がってくるのは女性の権利問題。ペーターを女性に設定した根底にあるのはそれに違いない。
ラストで真っ黒に見えるプールの水が、汚れた水質と政治、そして人間の心を可視化した。見事な照明の演出だった。
熱気溢れる作品。
たくさんの人に観て欲しい。

大好きな水野小論さんが本当に素敵で、それだけでも観る価値があった。

純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて

純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて

アマヤドリ

シアター風姿花伝(東京都)

2022/02/18 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#榊菜津美 #沼田星麻
#相葉るか #一川幸恵
#河原翔太 #宮川飛鳥
#徳倉マドカ #松尾理代
(敬称略)
劇団員だけでの新作公演。新生アマヤドリの覚悟と、劇団の強度を示す上演を目の当たりにした。劇団の中核を担う俳優の皆さんの良さを引き出し、新メンバーの良さを構築していく重要な作品になるのだと思う。
前回の二作同時上演の『水』で目を引いた宮川飛鳥さんが今作でもイイ味を出していた。彼の入団は劇団に多くのことをもたらす予感がする。
一川幸恵さんの美が更に磨かれて眩しい。他者からは魅力的に感じられる容姿を持ち、それでいてアロマンティックという他者に恋愛感情を抱かない難しい役どころを演じるのだからややこしい。そのややこしさこそが、この作品の根幹なのかもしれない。
男の多くは一夫多妻制に憧れたことがあるように思う。ポリアモリーに羨ましく思う気持ちは0ではない。しかし、相手の女性が自分以外の男と……と考えると受け入れられないのが男の身勝手さで、きっとわたしだけではないはず。そんな感情を榊菜津美さんが揺さぶる。
相葉るかさんの人妻が淫靡で驚いた。そう感じたのはわたしだけだろうか。彼女が抱く寂しさや、直面する困難への恐れも垣間見せてくれる好演だった。
誠実さと不誠実さを混在させた沼田星麻さん。彼女を持ち上げて運ぶ姿が逞しくてカッコイイ。アマヤドリの代名詞とも言える群舞の後半、中央で存在感を発揮する彼の力強さが目を引いた。
彼女の恋愛観に困惑する河原翔太さん、恋愛に迷子の徳倉マドカさん、手首に包帯を巻いたブリブリの配信者の松尾理代さん。新メンバーも大健闘。
無駄のない充実の100分。
今作の役名もなかなか面白い。その辺りも考えながら千秋楽で復習しよう。

【2月27日まで上演中】夜を治める者《ナイトドミナント》

【2月27日まで上演中】夜を治める者《ナイトドミナント》

お布団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/02/11 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

#宇都有里紗 #大関愛
#海津忠 #高橋ルネ
#永瀬安美 #新田佑梨
(敬称略)
🅰️初日。半透明のカーテンの持つ集中治療室的な怖さ。上には白十字、中央には点滴。世界が抱える問題とリンクしてリアルに迫ってくる。
そこには国家主義や全体主義まで滲み出す。選り分けられていく市民。そこに健やかさなんてあるわけがなく、一体誰のための健やかさなのだろうかと思い巡らせてみる。その不健全さは、ネットに蔓延る罵詈雑言、溢れ出す誹謗中傷と共にある。世界は、リアルとネットのパラレルワールドで、そのどちらにも魔女狩りの疫病が蔓延している。
観る者の倫理観を問うフィクションだけれども、もう既にノンフィクションと地続きな気がしている。
今作は有名な戯曲の人物名と設定を利用して展開される。その手法を取った意図を訊いてみたい。当然、元の作品のキャラクターの印象に引っ張られるし、相関関係に影響を受けてしまい、それが後半のオリジナルな展開や物語の広がりを理解する際に思考の邪魔になってしまった。この設定を利用せず、当たり障りのない名前の人たちの物語で観てみたい気がする。もちろん、あの作品を利用したからこそ人物の関係性の説明を省けるメリットも承知しているけれど。🅱️ではどう見えるのか、一度では見えなかったモノを探すことにしよう。

理想の夫

理想の夫

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/02/01 (火) ~ 2022/02/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#安藤百合 #笹野美由紀
#末永佳央理 #土平和加子
#日沼りゆ #若林古都美
#神野幹暁 #須藤瑞己
#福士永大 #髙倉直人
#小比類巻諒介 #椎名一浩(敬称略)
野心と欲望が火花を散らす攻防。政治とカネの密接な関係が社交界という華やかなベールの下で絡み合う。ホンモノの善か、善を装った悪か。偽善者としての証拠を挟んでの駆け引き。それを美女が色仕掛けで迫るなら、大抵のオトコは太刀打ちできない。その美女を演ずる末永佳央理さんが見事だった。まるで彫刻のような美貌が、美しくて悪いオンナの説得力を増す。辛辣な物言いで見事に嫌われ者を全うした。だからこそ僅かに見せる動揺が光り、反動の悪事が煌めく。カーテンコールまでクールを徹底した末永さん、今後の活躍が楽しみだ。
対称となる善を引き受けたのは笹野美由紀さん。一点のシミも無い盲目的な正義は時に人を追い詰める暴力性を持つ。ただ、それだけ清廉潔白な人が「あのオンナ」という言葉遣いをすることだけは違和感を感じたが、逆に言えば、それだけの感情を抱いている証ということなのかもしれない。
二幕は一幕の張り詰めた緊張感を解してコメディ色を散りばめるという宮田慶子さんの演出が心憎い。あのままスリリングに走り切るのも観てみたいが、休憩を挟んでの色の違いは楽しかった。
苦悩の戦いに勝利した上で重大な決断をする夫を立派だと讃える夫人に泣けた。それは安堵ではあったけれども、同時に恐怖でもあったような気もする。もうしばらく我が心との会話を続けてみようと思う。
我が人生も泥まみれで、叩くほどにホコリも立つ。「誘惑に手を出すのは勇気が要る」という言葉にハッとさせられた。勇気の出し方を幾つも間違えてきたのだと膝を打った。

最後に、10期生の高倉直人さんの執事が秀逸だったことを記しておきたい。

休憩20分を含めて3時間15分。
あっという間だった。

『銀河鉄道の夜』

『銀河鉄道の夜』

楽園王

サブテレニアン(東京都)

2022/02/02 (水) ~ 2022/02/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#政井卓実 #日野あかり
#大畑麻衣子 #小林なほこ
#加藤彩 #宮田みや(敬称略)
初日。『銀河鉄道の夜』は何度も上演されている。でも今作は別モノ。オリジナルのストーリーが組まれ、現代の男女と賢治とトシが交錯する。兄妹のエピソードをなぞるような男と女。最愛の妹……最愛の恋人……そしてカムパネルラ。生と死と恋が溶け合うのではなく、確かな存在感をもってマーブル状に絡み合う。
カムパネルラほど主役を超える脇役を見たことがない。その圧倒的な存在感を放つのは、天才バカボンのパパとカムパネルラくらいだ。
このトシと女とカムパネルラを繋ぎ合わぜた日野さん。今作は彼女の美しさを存分に満喫すればイイ。その麗しさに刺激され、彼女を見つめながら脳内思考の旅に出た。

ネタバレBOX

#政井卓実 #日野あかり
#大畑麻衣子 #小林なほこ
#加藤彩 #宮田みや(敬称略)
初日。『銀河鉄道の夜』は何度も上演されている。でも今作は別モノ。オリジナルのストーリーが組まれ、現代の男女と賢治とトシが交錯する。兄妹のエピソードをなぞるような男と女。最愛の妹……最愛の恋人……そしてカムパネルラ。生と死と恋が溶け合うのではなく、確かな存在感をもってマーブル状に絡み合う。
カムパネルラほど主役を超える脇役を見たことがない。寧ろこのトシと女とカムパネルラを繋ぎ合わぜた日野さん。彼女の美しさを満喫すればイイ。その美しさに脳内が刺激され、思考の旅に出た。
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CHAiroiPLIN

あうるすぽっと(東京都)

2022/01/19 (水) ~ 2022/01/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

🅱️#よし乃 #小林らら
#鈴木伽実 #遠藤留奈
シングルキャスト
#清水ゆり #ジョディ
#酒井和哉 #小野塚茉央 他(敬称略)
【千秋楽】開場時の隣人の部屋が秀逸。清水さんの作曲作業の環境を想像して楽しむ。ウォーミングアップの要素より、しっかりと作られていることを確認。つまり、隣人だけは85分の上演。そしてあの時間の生活音とBGMが『友達』シバリで粋。ユーミンの『Hello, my friend』から始まって坂本九『ともだち』でポチッ。
積まれたBOXに仕込まれたスマホがそれぞれ持ち主が登場する動画を再生している仕込みも面白い。
不動産屋?のジョディさんが物件を紹介するシーンの音楽と融合した完成度がヤバイ。カップルが契約した56番の賃貸物件。三人の鍵ダンスが美しくて悲しい。結ばれた二人が12号室に描いた未来と、スマホで愛を語るスーラッタッタの向こうに見ていたものの、いったいどこに責められることがあったろうか。
ショパン『別れの曲』の中で、引き裂かれた痛みを時間の経過で麻痺させ、繰り返す日常によって元気になっていくオトコに対し、彼女は絶望の縁で遂に背中のファスナーに手を回す。なんとも心憎い演出で、まんまと胸を締め付けられる。
丹田に響く轟音の中、がんじがらめに捉えられ逃げられないオトコを観ながら不覚にも込み上げてしまった。
隣人は、もう隣で何が起きていようともアイマスクで見て見ぬふり。
だから……やがて……。
春から一人の生活を始める娘たちの部屋の前で、父の「今で〜す」が聞こえないことを願うばかり。

特筆すべきは、よし乃さんと小林ららさん。
よし乃さんの滑らかな身体と動きと発声が、オトコの悲哀を最大限に増幅させた。その役を演ずる理由が匂い立った。
小林ららさんからは一瞬たりとも目が離せない。万華鏡のように変わる表情は1ミリの隙もないプロフェッショナルなダンサーの証。警官を丸め込むラインダンスの首振りでも、首を倒すカウントで必ず新しい表情を打ち込んでくる。買い物袋に約束のモノが無くたって動じない(後で出てくるのだけれど)。あんなに楽しそうにステージに立つ姿を観たらハッピーにならないはずがない。その上、役と作品の流れに沿った感情まで手に入れて昂らせ溢れさせ、ブルーシートを撫でながら人間の奥底に潜む二面生を立ち上げるのだからお手上げ。その証拠に、裏で赤い紅を引く表情は、もう完全に獲物を狙う戦闘態勢。スイッチングがスゲ〜よ。
それでも、全てを捧げてでも牛乳を貰ってみたいと願ってしまった自分に、男の浅ましさを見て逃げ出したい気分になった。地獄の扉を叩くようなバスタムの重低音が身体中に響いている。

千秋楽を含む最後の4公演を観たけれど、ずっと新鮮だった。
とんでもない作品が上演され、目撃者になれたことを幸せに思う。
それでもきっとまた進化を遂げ、また披露してくれるに違いない。楽しみに待とう。

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CHAiroiPLIN

あうるすぽっと(東京都)

2022/01/19 (水) ~ 2022/01/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

🅰️#青井想 #札内茜梨 #古澤美樹 #藤井咲有里
シングルキャスト
#ジョディ #酒井和哉
#清水ゆり #小野塚茉央 他(敬称略)
【千秋楽】唐草模様の顔の無い獅子舞……いや、九の顔を隠した獅子舞。噛まれて無病息災ならめでたいけれど、コイツに狙われたらそうはいかない。クリスマス・キャロルのような歌で始まり、トントントンを指揮する酒井さんの父がイイ。ラストの時事ネタのアドリブも楽しみで、毎回笑わされた。
藤井さんの母のダンスにチクビームを発見して思わず吹き出したのは隠し切れない。
二女の札内さんの声にはウットリする。まるでシルクだ。
長女の古澤さんがオトコを落としにかかるシーンの艶っぽさの進化に目をみはった。あんなの来たら抗える男なんて居やしない。セクシー担当で新境地を拓いた古澤美樹さん。彼女が演じるオトコを観てみたいと思うのは、贅沢ではなく自然の摂理だと思う。彼女の華麗なダンス、これからもチャイロイプリンで繰り返し観てみたい。

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CHAiroiPLIN

あうるすぽっと(東京都)

2022/01/19 (水) ~ 2022/01/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

🅰️#青井想 #札内茜梨 #古澤美樹 #藤井咲有里
シングルキャスト
#ジョディ #岩本大紀
#清水ゆり #小野塚茉央 他
(敬称略)
#スズキ拓朗 さんは出演していないのだけれど居る。間違いなく居る。でもそれは拓朗さんではなく岩本さん。その再現性が凄い。
冒頭、オトコの最初のセリフの深さに震えた。それが隣人にも当てはまって……ラストに撃ち抜かれた。冒頭の佇むオトコのシルエットが、まるでヒッチコックで、作品の持つサスペンス性を連想させる。
く…く…クルクル🌀…来る来る……清水ゆりさんの歌までスリリングに聴こえてくる。
前作でハートを射抜かれた小野塚さんが今回も素敵で、無垢なのにエロティックという不思議で最強。
ジョディさんはウガンダ・トラからの渡辺直美を経由して確立された存在。最敬礼が美しかった。
🅰️の目当ては藤井さんと古澤さん。芝居の確かさはお墨付きの藤井さんのダンスが予想以上で拍手。古澤さんのプログラムされたダンスの美しさを堪能した。キレは言うまでもないけれど、あの曲線の美しさは一朝一夕には作れない。アレと戯れて踊ることも含め、今回はセクシー担当で新境地を開いた気がする。もっともっとパフォーマーとしての姿を観たい。

明日が千秋楽。
コレを観逃すと後悔するよ。

FRIEND

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CHAiroiPLIN

あうるすぽっと(東京都)

2022/01/19 (水) ~ 2022/01/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

🅱️#よし乃 #小林らら
#鈴木伽実 #遠藤留奈
シングルキャスト
#清水ゆり #酒井和哉 他
(敬称略)
再々々演?
それは自信をもって上演するということ
まだまだ工夫できる余地があるということ
つまりは大切な作品だということに他ならない。
まずは美術の美しさに感嘆。隣人ゾーンの引きこもりオタク系ミュージシャンがヤバイ。その曲も演奏・歌もオーラもヤバイ。食事のメニューで賑わっている時にヘッドフォンを付けてサイドで踊っているのがまた堪らない。ラストには対岸の火事の火の粉が……。この隣人こそ、今作を彼等のオリジナルに昇華させていると言っても過言ではない。
一番好きだったのはオトコとフィアンセのスマホの深呼吸&舌打ちによる打ち込み会話シーン。
やがて困難に疲弊したオトコが、日に日にイキイキしていく姿が切なくて切なくて苦しくなる。
ずっとポップでユーモラスなのにエロティックで切ない。その上、心身共にがんじがらめにされていくオトコの混沌が、なぜだかワクワクさせられる。この魔法がチャイロイプリンの、この作品の魅力。
清水ゆりさんの地元企業ペヤングのビッグサイズを放り込むパックでジェイソンの遠藤さんが、見事にダンサーだった。
二女の小林さんのルックスもダンスも可愛らしさが尋常じゃない。

コイツはとんでもない作品ができちまったな。

夏の砂の上

夏の砂の上

玉田企画

北千住BUoY(東京都)

2022/01/13 (木) ~ 2022/01/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#奥田洋平 #坂倉奈津子
#浅野千鶴 #祷キララ
#用松亮 #山科圭太
#西山真来 #岡部ひろき
作 #松田正隆
演出 #玉田真也(敬称略)
畳と簾と蝉と二胡のBGMが玉田企画の匂いをプンプン漂わせる。今作は玉田さんの脚本ではないためウィットに富んだ笑いを楽しむのとは少し違うけれど、漂う憂鬱さは紛れもなく玉田企画作品。
どんよりとした長崎の空模様と人々の憂鬱。それに沈んでしまわないのは、グイグイと押したり引っ張ったりできる浅野千鶴さんの力強さ。
坂倉さんの最後のシーンに胸が苦しくなる。奥田洋平さんの哀愁が味わい深く、本当に素晴らしい。今春、娘がみんな家を出る我が家も夫婦だけになり、否が応でも互いに目が向くことになる。"そして誰もいなくなった"という彼の状況が、他人事ではなかった。
かつて『みみばしる』で気になった祷キララさんをガッツリ堪能した。低い声と笑顔、清楚なのに淫靡な空気も纏い、従順そうでいて大胆でアウトロー……そんなアンバランスさがなんとも魅力的。大きな瞳を上目遣いにし、口を少し尖らせて戸惑いを見事に映した。彼女が投げつけた破片が見えない壁を突き抜けてワタシの足に直撃した瞬間に、それは心に刺さった💘次はどんな作品でどんな顔を見せてくれるのか楽しみで仕方ない。

この真冬に、かつて銭湯だったコンクリートの劇場で、扇風機に当たりながら真夏の装いはなかなかハードだ。それを跳ね除けて素敵な作品を届けてくれる俳優さんに拍手。たくさんの方に観てほしい。

ナビゲーション

ナビゲーション

ACTOR'S TRIBE ZIPANG

サンモールスタジオ(東京都)

2022/01/13 (木) ~ 2022/01/16 (日)公演終了

実演鑑賞

#鳳恵弥 #パッパラー河合
#松本梨香 #村川翔一
#木之枝棒太郎 #小野春花
#亀吉 #岩瀬かえで
#井手晋之介 #松村美里
#江頭美智留 #鮒田直也(敬称略)【初日夜】
やっと小野春花さんを観ることができた。可愛かった。声も張っている訳ではないし、やや低めなのかもしれないけれど、聴き取りやすい魅力的な声をしている。諸々のことを明らかにするシーンでは、感情の流れに苦労が見えたけれど、脚本自体の展開の無理矢理感の影響であることは否めない。願わくば、葛藤のある会話劇で観たい。細やかな視線の動きで感情を滲ませることができる彼女には、映像での活躍にも期待したい。

転換の多い作品だけれど、目つぶしの照明でソレを見せない工夫は感じられた。いっそのことセットや小道具を簡略化し、もっと観客を信じて想像力に委ねてみてもよかったような気もする。

若い俳優さんに光るものがあった。今後の活躍に期待したい。

正直、本にも演出にもツッコミどころ満載なのは覚悟の上の観劇。
しかしながら、以下のことは受け入れ難い。
①冒頭のシーンで、舞台裏の会話がずっとザワザワと聞こえていた。あれほど声が漏れてきては、どうしたって集中は削がれる。未だかつて経験したことのない衝撃的な出来事。
②とあるモノが見当たらずに慌てるという場面で、ソレを床に落としているのは致命的。拾うのも拾わないのも不正解。
③ユニゾンで歌う場面で、いきなり詞を間違えて別々のことを歌い、作品の鍵を自ら潰してしまっては元も子もない。
④「よし、これで大丈夫」と言ったスペアタイヤがグラグラでは笑いを堪え切れない。
⑤これは彼らのせいではないけれど、暗転時に隣の席でスマホを操作されて愕然とした。観客の質にも恵まれず可哀想に思った。

芸術劇場では、とても上質な作品が3000円で上演されている。
この金額と内容では……辛い。

恋愛論

恋愛論

動物自殺倶楽部

イズモギャラリー(東京都)

2022/01/11 (火) ~ 2022/01/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#赤猫座ちこ #金子鈴幸
#小西耕一 #野花紅葉
#高木登 #小崎愛美理
(敬称略)
久しぶりに観ながら爆笑した。
みなさん、ごめんなさい……と謝罪しないといけないくらいに笑ってしまった。
アッちゃんは悪意と敵意に満ちて、不誠実で不愉快(という役)だった。ソコに世間の噂や評価を逆手にとって、主宰の高木さんが自虐的に楽しんでいるのを楽しんだ。
ワタシも祀って拝もうかな。ご利益あると思う。
ラストが気味悪いのは流石だった。

『忠臣蔵・武士編』『忠臣蔵・OL編』

『忠臣蔵・武士編』『忠臣蔵・OL編』

青年団

アトリエ春風舎(東京都)

2022/01/04 (火) ~ 2022/01/18 (火)公演終了

実演鑑賞

#根本江理 #申瑞季
#田原礼子 #髙橋智子
#本田けい #西風生子
#山中志歩 #平田オリザ(敬称略)
【OL編】
幾つの組み合わせを観ただろうか。当たり前だけれど、キャストで本当に雰囲気が違う。この戯曲自体が好きだから、アドバンテージはある。ただ、何度も観過ぎて、もしかすると純粋に楽しめなくなっているかもしれない。
今回は、皆さんが自分の役を全うしようというプロであった気がする。それがもう少し滑らかで自然な受け渡しになるともっとよかったかもしれない。やや、やりとりが凸凹していたように感じた。後はキャストの年齢のアンバランスさが気になった。おそらく自分が古い人間だからなのだろう。先輩に対する若手の対応や言葉遣いが受け入れ難かった。役が同世代という設定ならば俳優もそれに併せてキャスティングし、役に年齢差があるなら、台詞の言葉遣いをそれに併せて再考して欲しかった。抵抗を感じた。そこは気持ちよく観たかった。

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