実演鑑賞
満足度★★★★★
#秋本雄基 #渡辺伸一朗
#雨宮沙月 #藤木陽一
#忠津勇樹 #小島あすみ
#浅見紘至 #齋藤拓海
#ぎぃ子 #小野川晶(敬称略)
【初日】最初に書いておこう。大好きなぎぃ子さんと小島あすみさんのチマチョゴリ姿がなんとも可愛かった。ぎぃ子さんが、秋本雄基さん演じる主人公に密かに想いを寄せる感じがいじらしい。それでも、ぎぃ子さんはヒロインというより、作品のガイドを担う語り部を務める。彼女の視点にそれを与えたことが、大きなテーマを考える間口を広げ、問題を突きつけるのではなく、共に考えることへ誘う優しさをもたらした。
1995年にサッカーの選抜チームの引率で初めて韓国遠征をした時のことを思い出す。韓国のガイドさんは国家試験を受けて資格を取得するらしく、聡明であり、たくさんのことを中学生と引率する大人に語ってくれた。光化門を見学し、日韓の関係を肌で感じて欲しいと夕方の市場を案内された。治安が心配される時間帯になる少し前のそこでは、露店で飲む方々からの鋭い視線と語気の荒い声を浴びて、日本がしてきた蛮行と、それによって生まれた遺恨をビリビリと感じた。
東京大震災から100年。ネットは無くたっていつの時代でも噂が広まる威力は恐ろしい。愚かなのは大衆か、はたまた……。なんの因果か、帰路の電車内で大きな地震に見舞われ、帰宅が3時になろうとは思ってもみなかった。
史実を元にした、なかなかにディープなテーマを扱った作品を、笑いを散りばめながらテンポよく軽やかに展開し、楽しませながら考えさせる脚本と演出、そして演技が揃い、澱みなく引き込むアナログスイッチらしい秀作。客演の俳優さんたちも持ち味を活かして色を添えた。
陶器は焼いてみないと、窯から出してみないと出来は分からない。演劇も似ているような気がする。白くて美しい壺が焼き上がっている。みんな観たらいい。