公演情報
「糸洲の壕 (ウッカーガマ)」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/17 (日) 14:00
太平洋戦争末期の沖縄戦、病院壕内の軍医・学徒動員の女学生らを史実に基づいて真摯に描いた力作。
装置(枠組みだけの大きな立方体を3つ組み合わせたものが左右に聳え立っている)こそ抽象的だが話の展開は生々しく、そこでの人物たちの戦争への疑問や怒りが直接的に伝わってくるというか、そのまま観客のものになるよう。
また、医薬品不足な中、モルヒネと青酸カリはあるとか退却時に歩ける者だけ連れてゆくとかの状況が現実にあった恐ろしさ。前々日に観たものとは全く違う意味で「やだなーやだなー、こわいなーこわいなー」だよね。
それでいて、最後は人道的な方向に向かう(=稀有な例とのこと)が当時このような判断をした人物がいたことが救い。
そして終盤の小池少佐の「生きてこの事実を伝えよ」という言葉が結実したのが本作の元となった資料群であり本作であるということに感動し、直接語ることができる人が減りゆく中、こういう方法で語り継げると改めて気付く。
あと、演劇やダンスなどをしている小学生から高校生をゲストに招いてのアフタートークも面白かった。
実演鑑賞
満足度★★★
まずはこのような作品を企画、上演いただいたことに感謝申し上げたい。私は沖縄戦についてほとんど知識がなかったし、この作品に出会わなければ興味を持たずに過ごしていただろう。
さて作品であるが上演時間約130分が私には長く感じられた。何故なら物語としての魅力が乏しかったと思うからである。先の「観てきた!」コメントで「教育演劇のような...」と仰っていた方が居られたが私の抱いた思いも近いかもしれない。少々乱暴で失礼な物言いになるかもしれないがお許しいただきたい。作者は伝えたい思いが溢れていて、それをすべて詰め込んだような物語だな、と思った。「戦時下でもこんな兵隊さんがいました」、「看護活動はこんな悲惨な状況でした」etc...、いくつものエピソードを各場面に当てはめて、それをつなぎ合わせて物語を組み立てているように見えたのだ。もちろん各場面での登場人物は、笑ったり怒ったり舞台上での生が感じられるのだが物語全体を通して見ると物語が本来持っているべきはずの魅力(あえて「物語のうねり」というが)が感じられない。そういう意味では「ふじ学徒隊」と対をなして物語の核となる人物、小池隊長のエピソードも多くのエピソードの中に埋もれてしまった感がある。ついでに言うと、小池隊長と里に残してきた妻が会話を交わす短いシーンが何回か出てくるが(夫婦の愛情や隊長の人柄を表現したものか?)なんとも中途半端なシーンに感じられて必要なシーンだったのか、疑問が残る。
さりとて、戦争における非人間性、残虐性、狂気などを伝え、観客の想像力を喚起し、各自が二度と戦争を起こしてはいけないという思いを抱かせるには十分な力を秘めた作品だったと思う。改めてこの作品に出会えてよかったと思う。
もう一つ、好きなシーンについて書きます。小池隊長が隊の解散を宣言した後、(どしてそうなったのかは忘れたが)少女たちに歌を歌うことを所望し彼女たちが童謡「ふるさと」歌ったシーン、これは沁みた。これこそドラマだな。
余談だが、先日、ニュース番組を観ていたら俳優の渡辺謙さんが反戦への思いについてインタビューを受けている中で次のように語っておられた。「戦争について知らないことばかりなのを引け目に感じることはない。知ろうとすることに意味がある」。心に留めておこうと思った。
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台美術は2mほどの正方形枠を左右に
3つ程置いたシンプルなもので
その分 衣装などがしっかりとしていました
卒業証書をかたにしての従軍で
日本人得意の同調意識もあっての
従軍看護を淡々と劣悪なる状況に向い
過酷になってゆく戦況を背景に
見事に表現していた舞台であり
引き込まれました
実演鑑賞
満足度★★★★
小池勇助軍医については、ドキュメンタリー映像や別の舞台を観たことがあり、地元の偉人でもあることから、私自身本を書いて上演したことがあります。
沖縄戦について、ひめゆりなどとは異なる結末のお話である一方、犠牲者も少なかったからか、あまり扱われることもないですが、多くの人に知ってほしいお話であり、今回舞台にしていただき胸が熱くなる思いです。
風雷紡さんの観劇は三度目ですが(前回の舞台も長野…)、風雷紡さんらしく史実に対して誠実に真っ直ぐ描いた、教育演劇のような、教科書のような作品だなぁと思いました。
現代のおばあちゃんが、亡くなった学徒隊の娘という設定で、語り継ぐ学徒隊本人が亡くなりつつある現実が現れていて、戦争の現実を後世に伝えていくタイムリミットを感じました。
色々な人に観ていただき、特に学生さんや若い人に知って欲しいです。
実演鑑賞
満足度★★★★★
戦後80年…沖縄の悲劇を考えさせられる、素晴らしい舞台でした。
風化させてはならないと同時に、自分自身を含めた、戦争を知らない、次世代への継承の難しさも、改めて考えさせられました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
8/16と8/18の2回鑑賞しました。とても良かったです。
始まりに一人一人がちょっとずつ舞台に出てきて、沖縄戦の世界に自然と引きずり込まれていきました。
話は一対の男女で進行し、それぞれのエピソードが混じって、面白い演出でした。そして、戦争の為に失ってしまうものの大きさに改めて気づかされました。このような戦争は二度と起きてはいけないことなのだと痛感しましたが、今の世の中、劇中にもあった同調圧力やセクショナリズムを感じるところがあります。
絶望的な戦況で負傷者の治療もままならならず、次第に追い詰められていく状況の中でやはり小池軍医の人としての優しさに救われました。生存者が比較的に多かったのも小池軍医の判断によるところが大きく、指導者で全然変わるものだと思いました。佐久市長のお話も良かったです。
一点、疑問だったのが、おばぁちゃんは当事者ではなく、ひいおばあちゃんから聞いた話でひいおばぁちゃんは何も話してくれなかったのに、なぜ孫娘に当時の状況を鮮明に伝えられたのかな?と思いました。
実演鑑賞
満足度★★★★
「ふじ学徒隊」の事は、文献やドキュメンタリーで名前は知っていましたが、実際に舞台で観ることで、当時の凄惨さや少女たちの苦悩がより鮮烈に伝わってきました。当時の皇国思想の中では、冷静な判断など到底できなかったのでしょう。それでも最後に小池隊長が「死んではならない」と告げ、生き延びた女生徒たち。その思いと命が、今日まで繋がっていることの尊さを強く感じました。
そして、こうして舞台を観て自由に感想を語れるのも、戦後の今だからこそ。当たり前ではない平和の時間に、改めて感謝の気持ちが湧きました。
ただ2時間を超える大作でしたが、登場人物が多いため、それぞれのエピソードがやや薄まってしまった印象もありました。
それでも全体としては、忘れてはいけない歴史を心に刻む貴重な作品だったと思います。戦後80年の今、この舞台を観られたこと自体が大きな意味を持つのだと感じました。
実演鑑賞
満足度★★★★
風雷紡at座高円寺というだけで特別感。これまで広くてd倉庫、通常は楽園での記憶しかなく、昭和の事件に肉薄する舞台には狭い空間こそ相応しい感じもある。沖縄、ガマと来ればやはり大戦での沖縄戦が題材だろうか・・と推察しながらも新劇系の反戦ドラマは想像できない風雷紡。興味津々で劇場へ訪れた。
座高円寺1の満席状態というのを初めて見た(やや後方の見渡せる席からずらっとカボチャが並んで隙間がない)。ちょっと前の万有引力「奴婢訓」と、だいぶ前何かの公演で当日押しかけて満席と断られた事があったが、客席に座っての満席の光景は、壮観である。
女子挺身隊に駆り出された地元の女学校生と、当地に配属された軍人たち。臨時野戦病院=ガマ(洞窟)での群像が描かれる。鉄の暴風の艦砲射撃を命からがら逃れた先で、軍司令部が戦闘放棄する時点までの沖縄地上戦の期間を、男女一対にそれぞれエピソードを設けながら丁寧に描いている。
後日追記予定。
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高でした。最後嗚咽しました。2時間を起こす長尺の舞台ですが長さを感じられないぐらいのめり込みました。いろんな人のいろんな思いがいろいろ交錯していてほんといろいろ考えさせられました。ほんと、80年前の沖縄では人の数だけいろんな思いがあったんだな…と思いました。知人にも「時間あればぜひ行って!」とさっそく紹介しておきました。最高の時間をありがとうございました。
実演鑑賞
満足度★★★
村田さんが出演されるとのことで、昼の回を観劇。
村田さんの殺陣をしない役は初めて拝見しましたが、良いお声は変わらずでした。
女学徒の悲惨な運命に涙したけれど、国民を巻き込んで戦争を継続し続けたことに対する怒りが湧き出て仕方がなかった。
太平洋戦争関連の舞台や映画を見るたびに、過去に悲惨な戦争があったことを語り継ぐだけでなく、情報収集力・分析力、戦況・情勢を俯瞰してみる力、判断力といった能力を持たない軍部、政府のせいで国民が犠牲になった、という事実も併せて伝えないといけないな。
一つ、気になった点。
孫娘ちゃんのおばぁちゃんに言いたくても言えない事がちょっと想像を超えててびっくり。命と沖縄のことを「継なぐ」ということなんだろうけど、そうじゃないよ、と思いました。孫娘ちゃん、家族関係は結構良好そうだし、今時の子だと思うから、その事態で思い悩む感じではないのでは?と思ってしまいました。そもそも、飛行機、乗っちゃダメだし。
実演鑑賞
満足度★★★★★
登場人物は多いが、みなセリフがよく聞こえ、最初から最後まで圧倒された。各人それぞれの立場での葛藤もちゃんと描かれ、現在まで続く物語だという思いが込められた舞台。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/17 (日) 19:00
重い題材が重く演じられるのだが、息を呑んで観ていられる。129分。
戦争末期の沖縄・糸州の壕の野戦病院の物語。学徒動員で看護に派遣された「ふじ学徒隊」の女生徒たちが体験した物語を濃密に描くが、肯定的な展開だけでなく、葛藤も反発もしっかり描くあたりがいい。しかもそれを現代の祖母(下平久美子)と孫(吉水雪乃)の回想風にしたことで、ちょっとだけホッとできる作りになっている。25人の登場人物は多いが、そのそれぞれの物語を描く脚本も見事だが、広い舞台で演じる役者陣も見事。開演の5分前から登場人物達が舞台に現われ、ちょっとずつ演じていくあたりで、自然に物語に入るのも巧い。
実演鑑賞
満足度★★★★★
わかりやすい悲劇や美談としてではなく、色々な葛藤や矛盾を抱えた人々の話だったのは非常に好感が持てた。だからこそ、特定の壕をタイトルにしたのであれば、そもそも住民を追い出した場所であった事もきちんと描いてほしかったなぁ、とも思う。
実演鑑賞
満足度★★★★★
戦後80年。今日のお芝居からも真実が見つかるだろうと思って来ました。ウッカーガマとひめゆりの場所が近いことに驚きました。解散のタイミングが約1週間違ったことで生死を分けた。戦争ですね。
脚本、演出、演技とも素晴らしいものでした。舞台のうえですが沖縄戦を経験した役者の皆さんが、これからもその経験を舞台の上で継承して頂いたらいいなと。舞台は歴史の証人であり、継承する力があるのではないかとおもいます~
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/17 (日) 14:00
座席1階
先の戦争でも凄惨極まる沖縄戦を描いた。舞台は糸満市のウッカーガマ。陸軍の野戦病院となり、ここで看護師として働いた「ふじ学徒隊」の女学校生徒たちの群像劇だ。
野戦病院を率いた小池軍医が、米軍上陸舞台が迫り病院を放棄した際、「君たちには生き延びてここであったことを伝えてほしい」と自決を強いなかったことで働いた女学生の大半が生き残ったことで知られている。日本軍は国民を守らないどころか盾にもしたという沖縄戦の中で、こうした異例と言える上官の振る舞いが舞台のメーンとなっているのは当然だろう。だが、ウッカーガマは元々、付近の住民が先に避難していた場所で、軍は彼らを追い出して野戦病院にしたということなどを忘れてはなるまい。そうした点で、命を賭して軍に協力するのは当然と学徒隊への志願を迫る教師の存在など、国民への同調圧力もしっかり描かれていたのはよかった。
なぜ、長野県佐久市が後援になっているか不思議だったが、小池軍医は同市の出身なのだそうだ。彼の故郷の話も描かれていたのだが、舞台の一貫性からみると浮いている感じがした。小池軍医の振る舞いが立派なのは、佐久市とは特に関係がないと思うからだ。仮に後援を取り付けるためにこうした構成にしたならば、そこは蛇足だったかなと思う。
客席は満員で、小学生など多くの子どもたちがいた。学校で沖縄戦を習う前からこのような舞台を見て日本が約80年前に経験した戦争を考えるのは、大変意義がある。アフタートークは客席も参加して行われたようで、こうした劇団の取り組みには敬意を表したい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日観劇。戦後80年、風雷紡が描く渾身の反戦劇。見応え十分。
戦前・戦中そして戦後生まれでは、当たり前だが 戦争への思い(リアルさ)は全然違うであろう。戦争の記録は残るかもしれないが、薄れゆく人の記憶と伝える人が少なくなる現実。しかし、戦争という最悪の不条理を語り継ぎ、今ある平和で平穏な日々を守らなくてはならない。
劇中の台詞にもあるが、「言葉は、声に出して伝えることが必要な時がある」、本作では その語り継ぎに或る工夫を凝らしている。それをどう捉えるか。公演は、脚本や演出の素晴しさ、それを役者陣の熱演が見事に支えている。
(上演時間2時間10分 休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★
自分はね、戦争ものの芝居って苦手意識があるんですよね。ただ、これは、良かった。
良し悪しじゃなくて……。
こういう時代、歴史があった。
そこに生きてる人たちがいた。
それは、今の我々にも地続きであるって、感じられる芝居。
医者、医療の話でもあって、トリアージについても考えさせられたり。
強く描かれたのは、生きるってことだと自分は感じた。
悪役として描かれる人がいないのが、本当に良かった。