糸洲の壕 (ウッカーガマ) 公演情報 風雷紡「糸洲の壕 (ウッカーガマ)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    小池勇助軍医については、ドキュメンタリー映像や別の舞台を観たことがあり、地元の偉人でもあることから、私自身本を書いて上演したことがあります。
    沖縄戦について、ひめゆりなどとは異なる結末のお話である一方、犠牲者も少なかったからか、あまり扱われることもないですが、多くの人に知ってほしいお話であり、今回舞台にしていただき胸が熱くなる思いです。
    風雷紡さんの観劇は三度目ですが(前回の舞台も長野…)、風雷紡さんらしく史実に対して誠実に真っ直ぐ描いた、教育演劇のような、教科書のような作品だなぁと思いました。

    現代のおばあちゃんが、亡くなった学徒隊の娘という設定で、語り継ぐ学徒隊本人が亡くなりつつある現実が現れていて、戦争の現実を後世に伝えていくタイムリミットを感じました。

    色々な人に観ていただき、特に学生さんや若い人に知って欲しいです。

    ネタバレBOX

    素人ながら気になったところをいくつか。

    ふじ学徒隊の話は規模は小さいとしても、沖縄戦のシンドラーや杉原千畝だと思っていて、ひめゆりなど他の学徒隊が、「冷酷な」本土の日本兵の道連れに合い命を失ったという構図に対して、同じ本土の一人の軍医によって多くの命が助かった実話です。
    戦争という極限状態で3日間悩んで女学生達を助けることを決断するのですが、隊長として抱えるものもあった中で、なかなか出来ることではなかったのではないかと思います。
    当日パンフにも書かれているのですが(知らないお客さん向けには載せないでも良かったかも)、このあと小池隊長は自決してしまいます。自決は学徒隊を助ける前から決めていて、巻き添えには出来ないと思ったのか、学徒隊には生きろと言いつつ自身は自決しなければならなかった事情は何だったのか、本土の家族や部下のことなど葛藤はなかったのか、また、自決した小池隊長を発見したのは落ちていたタバコを届けようと壕に戻った女学生だったかと思うのですが、届けようとまでした女学生の行動、小池隊長の遺体を発見したときの思いなど、ちょっと観たかったところもあります。

    史実に基づいたお話はどこを拾ってどこを削るか、書き手によって違うところが良いのですが、私としては小池隊長の人柄、心情や葛藤によりフォーカスしたものも観たかったかとも思います。

    部下には厳しかったが患者や女学生には優しかったとの話もあり、隊長と学生との直接の関わり合い、優しかったというエピソードがあっても良いかと思いました。大切なことを言わない人設定だったのと、部下が大分代弁して話を進めてしまっていたり、直接は無関係な野戦病院のエピソードが多く、小池隊長の話が薄まってしまった気もします。
    この辺りも証言してくれるおばあ達が少なくなってどんな関わりがあったのか情報も集められないとは思いますが。

    おばあちゃんと孫娘の設定も、ふじ学徒隊は結構語り部として映像でも証言している中、隊長に命令されながら死ぬまで話さなかった理由とか、飛行機に乗ってから行き先を話すものか、孫娘があれほど戦争の話を嫌がるものか、嫌がる様子が感情的で子供っぽくて妊娠する設定も不自然に思え、本題と違うところで話が広がりすぎかとも思いました。

    小池隊長が雨男だったり佐久や浅間山の話も後に活かされるのかと思ったらそうでもなかったり、部下のタバコも、死後の話を知っている私からするとキーアイテムに思えてしまい、回収されなかったのが気になったりしました。

    いずれ、こうした話を掘り起こして伝えられるのは演劇の良いところで、観に行かれて良かったです。

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    2025/08/20 15:42

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