公演情報
風雷紡「糸洲の壕 (ウッカーガマ)」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★
まずはこのような作品を企画、上演いただいたことに感謝申し上げたい。私は沖縄戦についてほとんど知識がなかったし、この作品に出会わなければ興味を持たずに過ごしていただろう。
さて作品であるが上演時間約130分が私には長く感じられた。何故なら物語としての魅力が乏しかったと思うからである。先の「観てきた!」コメントで「教育演劇のような...」と仰っていた方が居られたが私の抱いた思いも近いかもしれない。少々乱暴で失礼な物言いになるかもしれないがお許しいただきたい。作者は伝えたい思いが溢れていて、それをすべて詰め込んだような物語だな、と思った。「戦時下でもこんな兵隊さんがいました」、「看護活動はこんな悲惨な状況でした」etc...、いくつものエピソードを各場面に当てはめて、それをつなぎ合わせて物語を組み立てているように見えたのだ。もちろん各場面での登場人物は、笑ったり怒ったり舞台上での生が感じられるのだが物語全体を通して見ると物語が本来持っているべきはずの魅力(あえて「物語のうねり」というが)が感じられない。そういう意味では「ふじ学徒隊」と対をなして物語の核となる人物、小池隊長のエピソードも多くのエピソードの中に埋もれてしまった感がある。ついでに言うと、小池隊長と里に残してきた妻が会話を交わす短いシーンが何回か出てくるが(夫婦の愛情や隊長の人柄を表現したものか?)なんとも中途半端なシーンに感じられて必要なシーンだったのか、疑問が残る。
さりとて、戦争における非人間性、残虐性、狂気などを伝え、観客の想像力を喚起し、各自が二度と戦争を起こしてはいけないという思いを抱かせるには十分な力を秘めた作品だったと思う。改めてこの作品に出会えてよかったと思う。
もう一つ、好きなシーンについて書きます。小池隊長が隊の解散を宣言した後、(どしてそうなったのかは忘れたが)少女たちに歌を歌うことを所望し彼女たちが童謡「ふるさと」歌ったシーン、これは沁みた。これこそドラマだな。
余談だが、先日、ニュース番組を観ていたら俳優の渡辺謙さんが反戦への思いについてインタビューを受けている中で次のように語っておられた。「戦争について知らないことばかりなのを引け目に感じることはない。知ろうとすることに意味がある」。心に留めておこうと思った。