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帰還の虹

帰還の虹

タカハ劇団

座・高円寺1(東京都)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

以前一度だけ観たタカハ劇団はやはり「戦争」に関わる題材を扱ったタイムリープ物であったが、リアルに難あり(タイムリープそれ自体よりも人間関係や行動の動機等に)。ストレスな観劇であったが、本作では人物の口から自然に出てくる台詞によりリアルが積み上がっていた。
舞台は都心から離れた田畑の広がる郊外に移り住んだ画家・藤澤の家屋。正に戦時中の「当局」を意識する画家たちの姿や、夫を召集された女とその弟ら地元の者たちを通して、時局の肌感覚にある程度迫れており、物語世界に入りドラマを堪能する事ができた。主役の藤澤はフランス帰りの著名画家で戦争画の製作に勤しみ、妻キヨ子のヒスにも悩まされている。藤田嗣治がモデルに違いないが、二人の画家仲間、その一人が連れて来る見込みのある弟子(乞われて書生として住まわせる事になる)、時折アトリエを訪れる軍人により、架空の物語が進行、兵役を逃れている高等遊民の階層特有の空気感がある一方、地元の女性が女中に雇われ(夫は出征中)、その弟も力仕事で出入りし庶民の空気も行き交っている。途中若者同士(女中の弟と書生)の会話がまるで現代日本の都会の一角で(否舞台の上で)聴けそうな会話で、笑わせ所を作っていたが、この部分はじっと過ぎ去るのを耐えた。
幾つかの軸がある。戦争協力をしてでも画家は絵を描くべきと主張する藤澤と、それに耐えられず離脱していく画家内山(吉田亮)、むしろ軍人に取り入るのに汲々とする画家熊本(津村知与支)、その狭間でもう一人の主人公である書生貞本(田中亨)は揺らぐ。彼を揺るがすもう一人が藤澤の妻キヨ子であるが、彼女は「自分だけを書いていたパリ時代の彼」を最も彼らしい姿とし、戦争画を憎んでいる。もう一つは弟孝則に赤紙が来た事で爆発する女中ちづの訴え・・彼は一度出征して手を負傷して銃の引き金も引けない。貴方がたは偉い方たちと懇意にされているのでしょう、そうやって兵役を逃れて自適に暮らしているのに、自分らは暮らしもままならず、召集も二度かけられる。どうか行かないで済むように頼んで下さい。ダメなら貴方が息子の代わりに徴兵されて下さい・・!
そして劇の山場を作る軸・・終盤になるにつれ藤澤が不審な挙動を示し、いつも出掛けてばかりいるが、何度かアトリエを訪れたあの軍人とつるんでいるらしいとの噂。彼が作製中の大判のキャンバスは開幕以来、ずっと布が掛けられたままアトリエの隅に置かれているが、ある夜藤澤は書生の貞本にこれを見せる。それは件の軍人がかつて味わった屈辱的で凄惨な敗北に終ったノモンハン事件で観た光景であり、藤澤は秘密裏にこれを描いていた。すなわち「本当の戦争とは何か・・」のテーマ。公式の歴史から排除されたその事実を刻み、残したい願望をその軍人は抑えられないと語る。これは画家が持つ「絵を描く」本質的な欲求に通じてもいる。
このことは現実には、真実を伏せ美談で釣って若者を戦場に駆り出している構図に連結するが、その罪深さについて語るのは軍人ではなく、「赤」との接触をしていた画家・内山。彼は憲兵からの暴行で腫れあがった顔で、熊本に連れられてアトリエへ逃れて来るが、程なく例の軍人が現われ、逃亡は不可能である事、仲間が全て検挙された事でお前を拷問にかける必要が無くなった事が告げられる。教え子(書生の貞本)に最後の言葉を掛けると、彼は炭鉱へと連れ去られる。
終章、赤紙が届いたことを知らせる母から手紙を書生は受け取り、最後の時を与えられる。ようやく彼は(物資不足で絵具がなく暫く描かなかった)油絵を、僅かに残されたその時に描こうとする。師匠藤澤が依頼され描いていた地獄絵図の大キャンバス(舞台上では額縁のみ。中は繰りぬかれている)に、絵ごてを当て、暗転となる。
ストーリー上回収され切れてないものは幾つかあるが、胸に迫る幾つかのシーンの欠片が残る。

りすん 2025 edition

りすん 2025 edition

ナビロフト

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

没後一年。KAATで初めて天野天街ワールドが開陳となる。2025年バージョン、と銘打っている事が希望。「劇的」を追求した天野天街と少年王者錧の仕事を、何らかの形で継承し今後も我々の目を喜ばせてくれるのでは・・と。
この舞台に関しては出演者3名と(少年王者錧を念頭に置くと)異色なので同列の比較は意味がないが、なぞった感はなく、「古さ」が組み込まれている世界ゆえか、ここ暫くの間(あと三十年位は?)古くなる事はないだろう「今」躍動する劇世界に魅入った。

帰還の虹

帰還の虹

タカハ劇団

座・高円寺1(東京都)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/08/12 (火) 19:00

戦争画を扱った秀作。重い題材で迫力ある舞台になっていた。(2分押し)113分。
 2014年に下北沢駅前劇場で初演された作品の再演で、初演も観てるがよく覚えていなかった。1944年を舞台に藤田嗣治(劇中では藤澤元善・古河耕史)を取り巻く、戦争画に関わる人々のあれこれ。笑いを誘う熊本(津村知与支)という存在はあるものの、題材は重く特に終盤はシリアス。絵画(さらに芸術)と戦争の関わりについては、登場人物それぞれの正しさがあり、どれも頷けるものだし、どれが正しいと言えない面がある。役者陣も素晴らしかったという前提で、高羽の脚本がいい。

おーい、 救けてくれ!

おーい、 救けてくれ!

鈴木製作所

雑遊(東京都)

2025/07/30 (水) ~ 2025/08/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

1時間弱の芝居。米国のとある州のとある留置所にぶち込まれた男が、「おーい、救けてくれ」と叫んでいる。夜の明り。彼は今なぜ自分がここにいるのか分からない、といった風にも見えるが、ただ人を呼びたい、あるいは逃げ出す契機を掴もうとしてる・・想定は自由な感じである。どうやら鍵をかけて警官(看守?)は帰宅。誰もいないかと思いきや、予想外にも女の声が、それに答える。壁の向こうにいるのか・・。見えない相手との会話が始まり、窓から漏れる月明かりの下、男は相手をきっと素敵な人だ、と言い、女は恥かしそうに応答する。君を一目見たい、と思いが高ぶる男。でも、と臆する女。その応答が暫く続いた後、通路から本当に女が姿を現わす。
この二人がメイン・キャストで、組み合わせが数組ある。この日は男が川口龍(この名を知っていたので観に行ったというのもある)。途中数人の不良連中が登場するが、配役名としては出ていない。
さて、実は世話係の女が残り仕事で帰りそびれていたのであったが、女の全身姿を見た男は一瞬固まり、言葉を失う。が、すぐさま「素敵だ」と言う。リップサービスなのか本心(実は小太りが好み)なのか不明。話をしようと男は持ちかける。女は次第に男に気を許し、先走って行く(リレー競争で追い抜いて行くあの感じね)。完全に台上に乗り切った女を見て男は一瞬目が淀む。利用してやろうという目だ。
だがその後、男は女に「ここを出て、サンフランシスコへ行こう」と言う。女は今の家庭の状況であれば、未練はない、と思い切る。サンフランシスコへ・・が、二人の合言葉となる。牢屋を出ない事にはどうにもならないのだが、なお男は女にそれを言い含める所にドラマの不思議がある。男は何を目論んでいるのか、あるいは男の中で何が生じているのか・・・。
出奔の準備のため女が一旦帰宅した後、静寂の中に車のタイヤ音が響く。どうやら男はある男の女房を寝取り、夫と悶着の末、相手を伸したため監獄に入れられたらしいと分かる。今日その日のことだ。
その夫婦と仲間らしい男二人がどやどやと、ケリをつけにやって来る。
実は男はその浮気女に迫られたのであり、状況が危ういと悟った女は現場を出て大声を出した、という顛末だったのだが、檻の格子を挟んだ険悪なやり取りの後、夫以外の者が外へ出て、一対一で話す事となる。相手は自分の妻が実はそうした事を悟っている。だが体面上許す事はできない、という。本心を明かす夫に、男は「少し勇気を持てばいい」と相手の良心に訴える。が、形成を変えるに至らず、再びどやどやと入って来た男たちの手で、男は殺される。
虫の息で床に腰かける男のもとへ、女が戻って来る。
男は女に告げる。先に行っててくれ。後から俺も行く。サンフランシスコだ・・。
その後の流れがどうだったか、女の目の前で男が息絶えたのか、女が疑う事なく牢屋を後にした後、また戻って来て気づくのか・・女はその場で佇み、小さく「おーーーい」と言う。
出会って数時間で別れが訪れた男女の物語。恋愛の本質を抉ってもおり、普遍性がある。胸に植え付けられた疼きを撫でつつ、帰路につく。

水星とレトログラード

水星とレトログラード

劇団道学先生

ザ・スズナリ(東京都)

2025/08/02 (土) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

大人の風格?を見せた先般のOFFOFFでの4人芝居から、保坂萌女史の「らしい」着想が出たと思ったのが、「お婆さんとタイムリープ」。自分の口でこれを言ったら「認知症」が連想され、見事な親和性である。SFなのかリアリズムなのか、という二つのシーソーはリアリズムによる解明へと流れる所、不思議寄りの現象やダンスシーン等の舞台効果により五感に働きかけて左右に揺らし、中々の長丁場を乗り切ってフィナーレへ見事に着地させていた。
SFは設定が命、と幾度となく書いたが、本作の弱点は「一人がループしている」事であり、やがてそれは「一人だけループを自覚している」との説明で切り抜けるも、お婆さん(かんのひとみ)はリープのループ(水曜に始まって火曜の夜に終わる)を自覚するがゆえに自分は様々な対応をしており、一日に起きる幾つかの出来事さえ繰り返せばループしている事になっているというどこかいい加減な現象だ(だがいい加減だな、と思わせてもいけない)。そしてお婆さんがそろそろ抜け出したいと考え出す事から、身内のまず孫に「あたしはタイムリープしてる」と告げる。これをきっかけに母の面倒誰が見るか問題、息子家族や娘家族が抱える問題が炙り出され、一方お気楽なお向かいさん(田中真弓)夫婦と、孫の先輩、もう一人の孫娘の親友という存在が第三者として飄々と介入する。そして孫たち若者らがお婆さんをリープからの脱出を自らの使命とし、動き始める。つまり、何度も繰り返された時間(お婆さんは同じ一週間を51回繰り返して来たと言うが、後で分かった事にはその自覚以前から500回も繰り返していた)の、最後の一回となる一週間を描いたお話、という事になる。
(続く)

不可能の限りにおいて

不可能の限りにおいて

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Aチーム

世界中の紛争地帯、戦場、難民キャンプ···。ニュース映像で見るそこで医療に従事する人々。国連の難民支援機関のイメージが強かったがもっと民間のNGO団体が多いようだ。リアルタイムで働いている人間の生の声を真空パック。肌感覚でその体験が伝わる。作者はポルトガル人のティアゴ・ロドリゲス、父はジャーナリスト、母は医師。オリジナルでは黒澤明の『羅生門』を皆で鑑賞し、事実というものの多面性を確認した上、役者達と稽古に入ったという。

小林春世さんの挨拶からスタート。彼女と山本圭祐氏の印象が残るプロローグ。
(0)国際赤十字社と国境なき医師団の約30人の職員へのインタビューを再構成。舞台上に集められたメンバーはこれから制作される演劇作品の為に自分達の経験談を語る。「こんなエピソードはどうかしら?」「こういうのじゃ伝わらないわね。」「献身的な英雄なんかじゃあない。ただの仕事だ。」「私、演劇嫌いなのよね。退屈だから!」「録音を止めろ!もうここからは記録するな!」皆が望んでいるような話は出て来ない。出て来るものといえば···。

不可能=法制度(ルール)が機能せず無法状態にある紛争地帯。そこに正義とされるものはない。不条理な暴力への恐怖に怯えながら任務を遂行す。
可能=共有する法律やモラルがあり、安全に安心して生活が営める。論理が通用する。

アルコールを禁止されている地域も多い為、最高の気分転換、最高の娯楽はSEX。SEXをこんなに肯定的に謳歌している共同体だったとは。ウッドストックか!?

オリジナルでは4名の出演者を14名に変えていてそれがかなり功を奏している。話によって皆バラバラに立ち位置を移動し、椅子と譜面台を様々な場所にセットする。視覚的な演出で朗読劇の印象は薄い。『コーラスライン』のオーディション風景みたいに作品をメタ的重層的に見せる工夫。
客層は岡本圭人氏目当てが多かった印象。

破裂した水道管を時間稼ぎに手で押さえる作業。修理業者が来るまでの繋ぎだ。だが修理業者がやって来る保証は何一つない。何という虚しさ。何という無力感。だが目の前の水道管を押さえずにはいられない。

素晴らしい内容。こういう作品をこそもっと演るべき。出来ればニュース映像をたっぷり使用して、作品の抽象性を具象的にアジテートしたい。世界中に聳え立つリアルタイムの現実と私的共同体で鎖国した日本との対比。政治的な発言はスポンサー的にNGの“夢の国”、日本。公的機関がこんな状況だから皆ネットで騙されちまうんだ。ぬるいことやってないでもっとラディカルに演劇を活用してくれ。公安が隠しカメラで来場者の身元をチェックするぐらいに。思想犯演劇をこそ望む。昔はこういう情報だけで重信房子達はパレスチナに渡った。

ネタバレBOX

①薬丸翔氏。現地に着くと民間人2名が手書きの旗を立て、隣人達の死体を白いシーツにくるんでいる。まだ爆撃は収まっていない。そんな中、怪我人や生存者の救出ではなく死体を大切に埋葬する姿に胸を打たれる。人間は死んで終わりなわけじゃない。

②山本圭祐氏。帰国して地元の友人達に現地でのエピソードを聞かれるのだが、いざ話すと必ず皆、興味を失う。皆が求めていたジャンルの話じゃないようだ。辞めた若い医者と地元の駅で偶然出くわす。

③清島千楓(ちか)さん。これが自分の仕事だと見付けた。「私は強い!私は役に立つ!」

④渡邊りょう氏。手作業で廃墟を病院に再建する医者の話。貰ったミントの種。

⑤前東美菜子さん。手術に失敗し茫然自失の若い医師を叱咤激励する。「あなたはこれを乗り越えられる!あなたはこの辛い経験を越えて前に進むことができる!」

⑥萩原亮介氏。同僚の小児性犯罪の告発。よくあるネタだが実話だと思うとげんなりする。

⑦死体の臭い。

⑧山本圭祐氏。小林春世さん?緊急の輸血が必要な少年の為に自らの血を抜いた医師。後にそのことで危機を脱する。闇を走るジープ。影絵でそれを表現。

⑨渡邊りょう氏。交戦中の山で瀕死の少年兵を搬送する。その間だけ銃の音が止み、静かな沈黙が訪れる。

⑩前東美菜子さん?風呂?

(11)岡本圭人氏?命の順番?

(12)萩原亮介氏。⑧で人助けが身を助く訓話を前振りとし、論理が破綻している現実を見せつける。「何故だ?どうして?」

(13)万里紗さん。ギターで岡本圭人氏。闇夜、怯えた女達と子供達を連れて、殺されないように捕まらないようにここから脱出しなくてはならない。万里紗さんの歌。ポルトガルの民族歌謡、ファド。恐れ怯え震えながら一歩一歩ゆっくりと。

(14)南沢奈央さん。髪型のせいか何かイメージが変わっていた印象。難民の助けに行った筈が配給の奪い合いを止める為、棒を振り回して彼等を殴っている自分。「なにこれ?」

(15)とんでもない暴風雨。テントを押さえ付ける面々。手当ての甲斐なく亡くなった子供。その子が吐いた血飛沫が医師のシャツに飛び散っている。母親はそれをそっと拭う。

※ここから余談。今作とは直接関係ないが政治と演劇がリンクし始めている予感がするので。
初めに知性を感じるのは左派の言い分で、言ってることに筋が通ってると支持するが、よくよく知っていくと人間性が下劣。中身がスカスカのこんな連中とは心底関わり合いたくないと皆逃げていく。プロレタリアを根本的に見下した貴族気取りの言論人。信じているものなどハナからない空っぽ。何も信念などないからどうとでも立ち回る。空虚の中の空虚。
対する右派は言っていることに何の知性も感じず当初は嫌悪するが、地に足が着いた物言いに人情を感じて段々好感を持っていく流れ。どうも人間性はこちらの方がまとも。南京大虐殺、韓国人慰安婦、731部隊···。右派を奉じる者達のイメージは「日本人がこんなことするわけがない!」とガチで純粋に信じている。自分なんかにしてみれば「日本人なんだからこんなこと当然するだろうな」。見ている世界がまるで違う。日本人の美化に自我を重ねているのか?美しいものだけを見せて醜いものを覆い隠す暴力。そんなに美しい偉大な国が何故アメリカに無条件降伏して占領されたのか?醜さがあってこその美しさだろ。
左翼も右翼も度し難き酷さ。知性のない人気取りゲーム。選挙権を放棄することこそが唯一の政治的表明、そんな時代。無関心無関係を装ってみてもいつの間にかに囚われていく。気が付けばもう手には負えない。

マルティン・ニーメラー

ナチスが共産主義者を連れ去ったとき、私は声を上げなかった。私は共産主義者ではなかったから。

彼等が社会民主主義者を牢獄に入れたとき、私は声を上げなかった。社会民主主義者ではなかったから。

彼等が労働組合員等を連れ去ったとき、私は声を上げなかった。労働組合員ではなかったから。

そして彼等が私を連れ去るとき、私の為に声を上げる者は誰一人残っていなかった。
『残響』

『残響』

白狐舎、下北澤姉妹社、演劇実験室∴紅王国

シアター711(東京都)

2025/08/06 (水) ~ 2025/08/12 (火)公演終了

実演鑑賞

演劇実験室∴紅王国の野中友博が闘病中に温めていた企画を没後に白狐舎の三井快が引き継いでの公演。110分、8月12日までシアター711。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/08/post-f4ec6a.html

貴子はそれを愛と呼ぶ

貴子はそれを愛と呼ぶ

株式会社テッコウショ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/08/06 (水) ~ 2025/08/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

48歳独身女性、堅実ながらどうにもパッとしない現状
どこにでも存在しそうな女性の日常を彼女自身の見識と併せて観進めるカタチになるのだけれど、これが滅茶苦茶面白い!
湧いて出たようなロマンスも大方の検討はついているのに、どうにもならない高揚感をもって見入ってしまう
やっぱり恋愛の威力って凄いね
自分だけでなく会場全体で固唾を飲んでいた様に思う

ヒロインというにはめっちゃ一般人、でもそれが肝になって立派なエンターテイメントになってしまうというのが本当に巧いと思う
イケてる風な元同級生との対比がさり気なく効いているし、職場仲間や家族関連の存在感も間違いなく貢献していて、振り返ればかなりの高等テクニックだったと思うのだけれど、そんな難しい事は抜きにして、ただただ味わい深く面白かったです

貴子はそれを愛と呼ぶ

貴子はそれを愛と呼ぶ

株式会社テッコウショ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/08/06 (水) ~ 2025/08/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いや~これはめちゃ面白く、切ない話ですね。社会的な問題を多々取り入れて、下ネタも結構あって、笑って、実に考えさせられます。

vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」

vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」

TRASHMASTERS

駅前劇場(東京都)

2025/07/25 (金) ~ 2025/08/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★


三好十郎『廃墟』。戦後の混沌を描いたはずの芝居なのに、私の心が揺さぶられたのは何故だろう。
明日食べる物もない中、色恋も絡み、家族が「負け戦」をめぐって互いを罵り合う。誰の言葉にも「そうかも」と思ってしまう私は、まるで正しさを見失っていくようだった。
パン泥棒が、疲れ果てた家族と客席に向けて静かに頭を下げる。その姿に怒りも反感も感じない自分はいったい何なのだろう。

三好十郎の芝居は、もっと観念的で、非現実 的な台詞劇だろうと身構えていた。目の前で繰り広げられたのは〈感情のぶつかり合い〉だった。思想を武器に家族とぶつかる姿に、自分がどこかで避けてきた“古い情熱”の膿が引き出されたようで、終演後は付き物が落ちたような気がした。

俳優陣も鮮烈だった。 長男・誠(長谷川景)は、生真面目すぎて怖い。共産党的な理想論が、なぜか目の前の現実よりも切実に感じられた。
次男・欣二(倉貫匡弘)は、舞台でもロビーでも昭和のイケメンそのまま。
せい子(川崎初夏)は、DV男と甲斐性なしの間で揺れる哀しみが胸を打つ。

「理想なんて捨てて生きろ」と言われても、簡単には捨てられない人がいる。
そんな人こそ、いま、時代に一番必要なのかもと思った。

—終演後の私は肺の中のモヤモヤが晴れたようで、「明日からのことを考えよう」と思った。
観に来てよかったと思う。

帰還の虹

帰還の虹

タカハ劇団

座・高円寺1(東京都)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

高羽彩の旧作である。最初は旧作とは知らなかったが、10年も前にこれだけのものを書いているのに、去年だかに見たヒトラーの出てくる作品は、まぁもう二度と見たくない作品だった。波があるのは仕方がないが、これは人物設定も、時代設定も面白く出来ていて二時間あまり面白く見られた。
物語は太平洋戦争の末期。芸術家として、徴兵を免れた画家が四人、満州開拓で空き家になった農村の空き家に憲兵大佐の見張りのもと住んでいる この四人の組合わせが、図式的といえばその通りなのだがドラマ設定としては上手い.まずフランス帰りの戦争画の大家。絵に関しては何を書かせても上手い、今は時局便乗。次ぎに共産党崩れ。さらに自らの限界を知っている現実派。大家のモデルだった時局達観型の女(護あさな)。家に付いている家政婦とその家族。
戦争時の芸術家の生き方をそれぞれに託している。
幕開きから、メインの場面になる大家のアトリエに白布をかぶったおおきなカンバスが置かれていて、何かというと、そこへ観客の目が向くように作ってある。その謎を最後までひっぱっていく。これが、戦争と芸術家の葛藤というところに落としていくのはいいとしても、結局は個人の思いになっているところが弱い。(まぁこれでもいいのだが、これでは娯楽作になってしまう。そこがこの作品の焦点だろう。折角冒頭から画家たちや地元農民・市民、憲兵など、戦後生まれの本の知識だけで書いているにしてはかなりうまく出来ているのに、もっと、戦争と芸術というテーマに直面した芸術家、市民というものに迫らなければ、三好十郎に勝てない。これからは知らないものの強みで戦わなければならないが、アフタートークで出てきた戦争記録の映像作家の作品共々、これではまるで実感が出ていない。色つき立体映像と復元再生音声だけで再現が可能で、演劇に勝てると思っているところも同じで、人間のない面を舞台で見せなければただの面白いお話の絵解き絵本で風化していくだけだ。そこは前に見たヒトラーの話と同じ安易さである。)
と悪口に落ちていくが、いいところは、小劇場でよく見る役者たちがガラも生かして、画家四人など、小劇場らしい面白さも出している。高羽の演出については、そのつもりで見ていなかったが、演出の方がいいのかもしれない。女優も始めて見る人だが、男どもを押さえてタカラヅカばりにちゃんと演じきっている。


パビリオンをください

パビリオンをください

電動夏子安置システム

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/07/25 (金) ~ 2025/07/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/07/27 (日) 13:00

「しょーもないこと」を理路整然としたと言おうか論理的なと言おうか(理屈っぽいとも言う)な会話で笑わせるパターンはいつもながら、今回はある部分について「ナンセンス度」が高かった気がする(笑)。ま、半世紀以上先のことだしそんなこともあるかも……なワケあるかい(爆)。
で、あれこれ真逆ではあるが前々日に観た avenir'e「#VALUE!」と一脈通ずる感があってビックリ!(私見)
あと、葛西甚の衣装(背中のアレ)と、それをネタにした終わり方がまた好みだった♪

ネタバレBOX

よもや「火星人」が人間のふりをして加わっていようとは!(笑)
『意味なしサチコ、三度目の朝』再演

『意味なしサチコ、三度目の朝』再演

かるがも団地

吉祥寺シアター(東京都)

2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/08/11 (月) 14:00

お気に入り劇団が初めての再演。笑って切なく希望もある。とても良い。(2分押し)113分。
 2021年に初演された作品を再演で、初演も観ている。元地下アイドルで現派遣社員の幸恵(波多野伶奈)は、田舎の能代市の団地が取り壊されるので荷物の片付けに帰るが…、の物語。幼馴染みの何人かと久々に会い、親友のサチコ(村上弦)の事を思い出し、子どもの頃のことや、アイドルに憧れて東京に出てからのことなど、回想と現在を取り交ぜて、失ったものや成長したもののアレコレを思いつつ、最後は前を向く。初演から特に変えているところはないのだろうが、時が経って感触は変わった。初演の感想で「物足りない」と書いたエンディングがとても良く感じる。タイトルもとても良いのに気づいたりもした。初演と全く同じ役者陣で上演するという偉業をなしとげているが、劇場のサイズが変わって舞台美術や照明等も進化してて、とても良い舞台だった。都合で千秋楽しか観られなかったのだが、できれば3回くらい観たい作品だった。
 初演を観て、劇団「かるがも団地」を知り、その後の全作品を観ているのだが、10本に1本くらいしか星5を出さない私が7作品連続で星5という驚異的な気に入り方の劇団になった。また、波多野伶奈という希有な女優を知ったことや、抜群のコメディエンヌにして優秀な制作である宮野風紗音を知る等、思い出深い作品が蘇り、なんだかいい気持ちで帰路に就いた。

もしも生殺与奪の権を私が握ったら

もしも生殺与奪の権を私が握ったら

演人の夜

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/08/06 (水) ~ 2025/08/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても楽しかった!
初演は45分とのことでしたが、初演がむしろどうなっていたのか気になる本。
105分の中で絶えず笑いが連発され、普通にやるとシリアスなシーンすらも笑いに変える金子作品の恐ろしさ…

最高でした!!
1度しか行けなかったのが悔やまれるくらいもっと見たいと思う公演。

Xでみんなが盛り上がっていたのも納得の大作。
素敵な時間をありがとうございました!

不可能の限りにおいて

不可能の限りにおいて

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

生田みゆき演出による海外戯曲リーディング、という所で「観る」つもりでいたのがふと気づくと既に公演期日。泡を食って予定を組み、幸い観る事ができた(webからの購入を一度やり直したら次は完売。当日立見席で観た)。
どこにその匂いを嗅いだかこの公演じっくりと取り組んだ舞台製作であるよりは、急ぎ上演に漕ぎ着けた感があり、その予感(?実際の所は分からないが)に違わぬ内容であった。即ち「人道支援」の仕事に取り組む人たちへのインタビュー(聞き取り)、今現在待ったなしの状況がパレスチナという土地で進行している事への焦燥が、その印象に繋がっただけ(単なる主観)かも知れないが・・私にはこの観劇体験は必要であった、と振り返っている。

俳優はずらり14名、A、Bの2チームだが裏チームの者も「証言」以外の会話や小芝居の補佐として立ち回るので、全員の姿を見、声を聞く事ができる。
一等最初、前説的な挨拶が終ると、インタビュー「される側」の会話が始まり、そこから最後まで彼らの証言だけで貫徹される(客観視する存在のナレーション等はない)。彼らは目の前にいる(だろう)俳優や関係者=演劇製作のためのインタビューに訪れた者たちに向かって語る。彼らを迎え入れる時の会話・・「私は演劇が苦手。退屈しか感じたことがない」「俳優さんとこんな体験ができるなんて考えもしなかった」「あなた、あなたに私を演じてほしいな。私は穏やかな人間。そして貴方は穏やかな顔をしているから」等々。そして徐に証言が始まり、彼ら「人道支援」を仕事にする者たちが一人ずつ立ち替わり喋ることとなる。

まずはこの演出の見事さ、に触れるのであるが、彼らの証言はほぼ全て、彼らの「訪問先」で体験した事だ。彼らはその地域の事を「不可能」と言う。本テキスト中、演劇的飛躍のある唯一の約束事。自分が住む国は「可能」であり、「可能から不可能へ入る」「不可能の言葉は分からない」といった使い方をする。不可能=紛争地のことだ。
台本を置くための譜面台を前に、最初は一列にずらり並んでのリレー・トークが収束すると、中央に一つ譜面台を残して少し後ろに椅子が横一列、俳優はそこに控え、一人ずつ中央に立って証言するフォーメイションとなる。
言葉が耳から頭へとすうっと入って来る。一番手の話から、情景が眼前に浮かび上る。一つ目は彼らの組織の旗が爆撃後の静かな町の一角にはためいているのを見た職員は、そこにいる二人の男が路上に横たわる遺体を一体一体収まりの良い場所へ移動しているのを見る。仲間であれば自分らの職務が今最も医療を必要としている負傷した人達の元に駆けつけ、処置を施すこと・・にもかかわらず彼らは、手を掛けても甦る事のない遺体を黙って運んでいる。彼らに話しかけると、「手伝ってもらえますか」と言う。語り手はその後、自分の勘違いに気づく。彼らはそこに住む人々であり、彼らはその旗を「それがはためいている時だけは誰からも攻撃されない」お守りとして用いていたのだった。彼は自分たちの組織のシンボルが、その組織のことを何も知らない紛争地の人たちのものとなっている事に感銘を受けた事を語る。証言集の幕開きである。
場内はその後、笑わせシーン以外は物音一つ立たず、張り詰めていた。
様々なシチュエーションに遭遇した彼らの様々な証言が続く。
フォーメーションは幾度となく変る。一人中央に立っての証言(後ろに横一列ずらり)はやがて、ランダムに中央へ向いた椅子の置き方となり、ある男が自分の失敗を語る。話者はしばしば女性の証言を男優が、男性の証言を女優が担う。
ある女性は自分の血の輸血で救ったあるサッカー少年の、後日談を含めて語る。そこでは少年を表わす人形が登場し(人形が中央やや左のテーブルの上、話者は中央やや右寄りに立つ)、パペットシアターに。その少年のお陰で間一髪危機を逃れた後日談は木々の生い茂る中を車で進む様を、左右両の照明の前に木の枝(葉っぱ付き)を左右交互に「近づけて外す」とやってその影で道行きを表わす影絵の手法。
やがて舞台上には何も無くなり、シチュエーションを複数で演じたり、照明だけでキャンプファイアを囲む様子に見せたり・・。その夜はギター弾き(メンバーの一人)も居て、話者が歌う「不可能」の人たちの不可能の言葉で綴られた歌声に聞き入る。彼らは他の者の証言に、常に耳を傾けている。その情景も観客の目が捉える所となる。
逸話のバリエーションに見合うだけの趣向を凝らした演出に、リーディングである事も忘れるが、人の語りというものが様々な場や状況、気分によっても言葉のトーンが変って来ることを考えれば、ごく自然なあり方だ。
台本を持ち、台本に目も落としているのに「読んでいる」ニュアンスが排除されている。語っている臨場感をキープし続ける所が俳優たちの力量を思わせる所であった。
しかし何より、テキストが夏の昼に水を飲むように耳に、脳に入って来る。翻訳の藤井慎太郎は(先日観た)世田谷パブリック「みんな鳥になって」を始め過去上演したムワワド作品を翻訳してきた人だが、今改めて翻訳が持つ力というものを考え始めている。

特記する事でもないが、終演後拍手は鳴り止まず、4コールまで続いたのだが、それが不自然でない舞台ではあった。娯楽とは何か、と考えずにおれない。

ボーイ・オーバーボード

ボーイ・オーバーボード

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/15 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

某原理主義勢力が過酷な支配を行う国で迫害を受けた家族の苦難が描かれ、悲惨というか希望がまったく持てない状況のストーリーなのだが、元気盛りの子どもたちが主人公で、暗く沈まず、むしろカラッと明るい感じの芝居になっている。ヘタに悲惨、悲惨で同情を誘おうとする趣向のものよりずっと好ましい。俳優たちも役柄を楽しんで演じている印象。

走れ☆星の王子メロス

走れ☆星の王子メロス

to R mansion

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/08/09 (土) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

良かったです。

百物語2025

百物語2025

伊藤えん魔プロデュース

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2025/08/09 (土) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

トーク怖かったです。すべったのではなく聞き入ってました。怖いのですが楽しかったです。

宇宙で一番孤独な場所

宇宙で一番孤独な場所

夜光群

萬劇場(東京都)

2025/08/07 (木) ~ 2025/08/11 (月)公演終了

実演鑑賞

かなり思い詰めた経験のある人が作ったんだろうなあ、と推測できます。

ネタバレBOX

観劇前は「インサイド・ヘッド」的なもの想像していました。それとか大池容子さんが作った「セブンスター」とか。
実際に見ながら連想したのはTeXiという劇団の「ファジー『ours』」という劇。

我が事のように身につまされ、見ていて辛い部分も多い劇でした。

14人は多過ぎたかな、とは思いましたが。
『残響』

『残響』

白狐舎、下北澤姉妹社、演劇実験室∴紅王国

シアター711(東京都)

2025/08/06 (水) ~ 2025/08/12 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

事件を起こす前の日常を中心に話は進むが、周りの人達も皆悩みや苦悩が各々ありうまくいかない現実を思い知らされる。
実際にあった事件なだけにこれ以上の犠牲者が出ないように願いたいと思うほど心に響いた作品でした。

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