風神雷神図 公演情報 糸あやつり人形「一糸座」「風神雷神図」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    外人客が多い。家族もいた。謎めいた客層。全公演のチケットを買っている人もいた。

    開場して中に入ると白い死霊犬オス(田村泰二郎氏)が白塗り褌一丁で通路やステージを這い回っている。暫くすると白い死霊犬メス(Kみかるmicoさん)が登場。白塗りに下着姿、乳首を前貼り的なもので隠している。面白いのが観客は慣れているのか特に反応もせず談笑を続けていること。異化効果のクセが凄い。江戸伝内氏と結城一糸氏が登場し紋付袴の着付け。二人の奥さんである結城民子さんと結城まりなさんが手伝い、かなり時間を掛けてきちんとやっている。やっと終わり二人共正座して観客に深々と頭を下げる。長い沈黙。何も起こらない。突如暗転、轟音ノイズ。ゲロゲリゲゲゲを思わすような破壊的ノイズが耳をつんざき強いストロボ照明がフラッシュを繰り返す。

    台本・構成・演出+朗唱=芥正彦氏79歳。客席中央右端に立ち、マイクで詩をがなる。
    下手前のスペースに音楽・灰野敬二氏73歳。晩年の内田裕也や往年の早川義夫のようなロン毛にグラサン。『ファントム・オブ・パラダイス』のポール・ウィリアムズのような妖気。横に長いハーディ・ガーディをフィッシュピックのようなT字型の物で叩く。ひたすらノイズノイズノイズ。時折奇声。パーカッション。

    チラシに書かれた宮台真司氏の檄文が迫力。「暗闇で名状しがたい力が降ってきて僕を貫いた。(中略)すべきことが確定した。我々の時空からこの力が失われた訳を知り、力を回復する方法を探るぞと。」

    ネタバレBOX

    江戸伝内氏の操る雷神と結城一糸氏の操る風神が登場。やたら六方を踏む。

    真白な観音(上杉満代さん)が客席後方から歩いて来る。これがとても人間とは思えない歩み。人形か亡霊か。微かに動きつつ揺らめく淡い存在。非常に印象深い。

    風神(鬼)を演じる杉田丈作氏。裸体に緑色をなすりつけたような風貌でロングショーツを履く。ゴブリン。頭に瘤のようなもの。

    雷神(鬼)は鯨井謙太郒(けんたろう)氏。真っ赤に塗られた筋肉美に長目のハーフパンツを履く。修行のような鍛錬のような舞踏。やたらと見得を切る。

    箒を持った風婆(田野日出子さん)が現れる。中空に向かって箒を振る。「私、掃くわよ。私、掃くのよ。」ほうき隊の人形が三体現れて一緒になって空を掃除する。汚染された空を綺麗にしているそうだ。

    九相(くそう)を演じる小松亨(とおる)さんが客席後ろから這いずり回ってステージに上がって来る。白い死霊犬二匹が身体を貪る。追い払うと亡者達が現れて性行為を連想させる動きを始める。勃起したペニスの形をした芋虫(亀頭の頭をしたモスラの幼虫のようなもの)が六体現れて屍肉を貪る。ゴキブリ達が現れて肉を喰らう。追い払われた白い死霊犬二匹がまた現れて性行為を模す。

    親子で観に来たような人達には気まずい空気。子供は笑っていた。

    風神(鬼)を結城一糸氏の操る風神が成敗しようとするも苦戦。そこに風婆が箒で加勢。倒した⁉胡蝶がぱらぱらと舞い落ちる。オープニングの江戸伝内氏と結城一糸氏の座礼のシーンに戻る。全てはこのお辞儀の一瞬に垣間見た幽かな夢に過ぎなかったのか。

    灰野敬二氏の轟音演奏が始まる度、客席の老女達が耳を押さえ顔を伏せてストロボから逃れる。不思議な光景。

    2018年5月、中野テルプシコールにて「NOISE OPERA カスパー」を観劇。一糸座が気になっていた為であり、芥正彦氏に興味はなかった。内容はこれぞアングラ。人形を遣いながら汗と洟と涎をダラダラ垂れ流す結城敬太(現・結城一糸)氏。キチガイが部屋を行ったり来たりしながら訳の分からないことを呟き続けるような話。この時受けた衝撃は作品よりも、金払ってこういうものを観に来る客に対しての方が大きかった。左翼的理論武装したキチガイこそが現代アートなのか。

    2020年3月に公開された映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」でも赤ん坊の娘を抱っこしながら三島と激論を交わす芥正彦氏が一番の見せ場だった。

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    2025/11/06 21:15

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