私たち死んだものが目覚めたら
shelf
アトリエ春風舎(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/18 (日)公演終了
生と死の曖昧な境界線で
言葉を記号として認識させるミニマルな情景描写と張りつめた沈黙によって紡がれていく信頼は言葉を追い越して感情をやわらかに愛撫する。
ネタバレBOX
ルーベックは彫刻家で確固たる名声は彼を苦しめたが、名声は彼を生かしもした。
中身がカラッポの他人によく似せた彫刻(フェイク)を作る、自分はニセモノなんだとあざ笑い、絶望しながら自分の存在をなくすことでやり過ごす空虚な日々を送る彼にとって、若い妻マイアは不要な存在で突然現れた、彼に名声を与える彫刻のモデルとなった女、イレーネこそが本当の人生を生きるためのたったひとつの希望だった。だが、出会って間もなく彼女は残酷な言葉をルーべックに叩きつける。
魂をあなたに差し出したから私はもう生きられなくなったのよ。
あなたは私のすべてを世界の人々に曝した・・・。
ルーべックは自分のなかに横たわる大きな虚無感を、イレーネはすべてを捧げた見返りを期待しているそれは奪い合い、与えあうものがなくなった瞬間に消滅する関係性でしかなく、劇的な再会という運命のいたずらに翻弄され、死神に導かれ、霧がかる深い森の頂きへと足を進めていき・・・。
そして彼は気が付く。
自分の命を放り投げればイレーネは救われ、報われるのではないか?
ルーべックにとって死は、破滅や憧れではなくてイレーネの願いを叶えるための手段であった。もしかしたらそれをひとは、愛と呼ぶのかもしれないが、最後のあのすべてから解き放たれた、けれど不安そうなルーべックの顔はほんとうにこれでよかったのだろうか。と彼自身、永遠に問い続ける命題からは逃れられないように思えた。
イプセンの死から100年以上経っても尚、何のために生きるのか?
という問題の、明確な答えは出ていない。
欲望に正直に生きることもいいだろう。
人間に対する、根源的な憎悪を抱き、疑い深く生きるのも、いいだろう。
・・・ひょっとすると自己犠牲のみでしか人は、生きることへの不安を拭うことはできないのかもしれない。なんて、漠然とした想いを胸に抱えながら今晩は眠りにつこう。
10月歌舞伎公演 「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)」
国立劇場
国立劇場 大劇場(東京都)
2009/10/04 (日) ~ 2009/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★
乱歩と歌舞伎って相性がよいのだなあ
前作は原作をもとにしていましたが、本作はオリジナルストーリーとのこと。そのためか歌舞伎度が前作よりアップ。そして乱歩の倒錯した世界が、うまく歌舞伎に溶け込んでいました。
中村梅丸、美しい人形の役ですが、ホントに美少女でした。
梅玉は天下を狙う陰陽師で、人形しか愛せないという、いかにも乱歩ワールドな役がハマってました。
歌舞伎にはめずらしいカーテンコールあり。
わが星
ままごと
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
全く新しいスタイルの演劇誕生!
久しぶりに鳥肌が立った。
新しいスタイルの演劇の誕生である。脚本・演出・役者・スタッフ・制作、その全てが斬新で、挑戦的で、刺激的で、感動的だった。終わった後しばらく立ち上がれなかった。柴幸男の才能の集大成のような作品である。
ネタバレBOX
物語は星の誕生から死までを団地の中の家族の物語になぞらえたもの。時の刻みのリズムの中で、動きも台詞も音楽のようにリズムに乗り、全てが計算された作りである。
円形のステージに観客席から役者が台詞を発したり、星に見立てたステージの周りを全員で歩いたり、五感に訴えかける作りである。
最初はユニクロックかと思った。しかし、舞台上の様式に込められているものは奥深い。星の一生と人間の一生を対比し、壮大な物語を感動的な作品にしている。
個人的にはちいちゃんと月ちゃんのくだりがとても面白かった。
インテリジェンス・シャドー
IQ5000
笹塚ファクトリー(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
やっぱすごいな
華がある、とでもいうのか。
公演自体はおもしろくても次回作を見たい!って思える劇団と、
そうでもない劇団ってのがある。
この劇団は明らかに前者。やっぱ芝居に個性があるか、
役者が魅力的に見えるか、あたりが自分の基準なんだろうと思う。
約2時間、中だるみなく最後まで続く独特のテンション。
カーチェイスも戦闘機のドッグファイトもすべて小道具なし
でやってるのに、やけに迫力があります。
相変わらず、一人何役もこなし、時には椅子とかテレビにもなります。
月曜までやってるみたいなのでぜひ!
※
B列の端っこで見たけど、前にやけに姿勢のいい女性の方がすわってて
見づらかった。
→最前列はもう少し低い椅子にできませんか?
舞台を広く、時には通路も使うのはいいけど、首が痛い。
→前側端の席は椅子を斜めに置いてほしい。
レ・ミゼラ ブルーシート
仏団観音びらき
タイニイアリス(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
すっきりしたこてこて感を超えてやってくるテイスト
苦味を隠し味にすっきりしたこてこて感のあるお芝居でした。
関西っぽい魅力をしっかり残しながら
こころをすっとさらっていくものがあって・・・。
高い水準で歌える役者や踊れる役者、
演じることができる役者の力・・・。
水面下の作りこみをがっつり感じる。
しっかりと後に残るものがある作品でした。
ネタバレBOX
タイトルのとおり、
ブルーシートの家に住む路上生活者たちと
青空カラオケのお店(?)のひと冬の話でした。
そこに飛田新地のおはこびさんや
えせ慈善団体、警察や市役所もからんで・・。
フェラガモの鞄を持つような商社のサラリーマンが
路上生活者になっていく姿に
ぞくっとくるようなリアリティがあって・・・。
緻密に描く心情と
ミュージカル仕立てなども駆使した
秀逸な戯画化、
下世話なシーンと人の心情をすっと浮かびあがらせる
密度のバランスが絶妙なのです。
路上生活者や底辺の女性たちの
群像劇ともいえるのですが
そのばらばらさとまとまりの質感が
すごくうまい。
難しいことは分からない的な割り切りに
圧倒的な説得力があって・・・。
結末も陰惨なだけではない
沁み入るような透明感があって・・・。
それは、
笑いやえげつなさで描かれるものの
重さを観客に静かに伝える力になって・・・。
役者たちのお芝居が持つ線の太さから
きめこまかな肌合いのペーソスが生まれるのも不思議。
劇団が持つパワーの多様性に改めて
瞠目したことでした。
私たち死んだものが目覚めたら
shelf
アトリエ春風舎(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★
語りの戯曲
前作であるイプセン作「Little Eyolf―ちいさなエイヨルフ―」は昨年、名古屋市民芸術祭の審査員特別賞を受賞し、主演の川渕優子は利賀演劇人コンクールで最優秀演劇人賞を射止めた経緯を知り、今回の舞台はワタクシにとって、ひじょうに興味深いものとなった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
今回の芝居はきっと劇評が割れる!そんな予感を残した舞台だった。
この戯曲を芝居にするということ・・、それはひじょうに難しいことであり、チャレンジだったはずだ。舞台の殆どが「語り」のみ。解説と語りから舞台全体のエネルギーを発散させるような演技手法だった。この手の手法が苦手という観客には受け入れられないだろうし、ストレートプレイの醍醐味と受け取れた観客には魅了されたはずだ。
ルーベックは自分よりもずっと年下の女マイアと結婚しても尚、今でもイレーヌを愛していた。彼にとってイレーヌは高貴な清純な存在であり特別だった。
イレーヌを想像の源として崇拝していたからこそ彼は俗世界のように彼女を現実の女としてみられなかったのかもしれない。自分の魂が汚れてしまう、という理由で。
一方でイレーヌは裸の体をさらし続けているのにも関わらず自分の体に触れようともしないルーべックに希望を失い落胆してしまう。そして彼の元を去ってしまうが、ある日、偶然にも彼らと会ってしまう。
マイアのルーべックに対する心の襞。忘れようとしても尚、忘れられないルーべックのイレーヌに対する想い。ルーべックに仕える為に全てを捨ててしまったイレーヌのルーべックに対する感情。これらを見事に表現した舞台だったと思う。役者の技量もさることながら、マイアの赤とイレーヌの白という対照的なドレスのカラー演出も良かった。
一見して、清純そうな白・イレーヌには内に秘めた凛とした強さがあり、何者にもぶれない一貫した強さがあった。対照的に赤には、情熱的でエネルギッシュな感覚があったが、ここでのマイアは情熱的だけれどモロくもありそれなりの弱さもあって女性として魅力的だった。そんな情景を織り交ぜながらも、舞台はウルフハイム(山田宏平)とマイアの語りの部分でも魅せる。山田宏平がいい。ひじょうにいい!
イプセンがこの作品に「エピローグ(終幕)」という副題を書いたのは、『人形の家』から始まった一連の戯曲が、『私たち死んだものが目覚めたら』で終幕としての役割を果たしているから物語は一貫しているらしいが、この一貫という部分が解らない。
イレーヌのセリフ、「そういえば、私たち一度も生きた事がなかったのに気が付いたわ。」が印象的!
世田谷カフカ
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★
話が
積まれて繋がる。観ていて気持ちが良いです。
世田谷カフカ
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
呪われたバブルの塔 -アフターサイド- 【舞台写真掲載!】
北京蝶々
OFF OFFシアター(東京都)
2009/10/01 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
2本立ての醍醐味
ビフォーサイドとはガラッと違った、こちらはドラマのようなサスペンス。
確かに1本でも楽しめる作りになっていましたが、せっかくの2本立て。
両方観た人が1番おいしいのは当然でしょ!(両サイド券買ってんだから!!)と、ビフォーとリンクする部分にニヤニヤしながら観ました。
どんどん緊張感の高まる中、この劇団では珍しくちょっと大味(?)な展開もあり、それもまた意外で楽しかったです。
両サイド通して観て、「呪い」とはなんなのか、バブルと繋がって見えてくるところにゾクッとしました。
きちんとしたテーマを持った、見応えのある作品です。
わが星
ままごと
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
フレッシュ!
全方位円形舞台で4つ打ちのリズムに乗り役者たちが躍動する舞台。新鮮でした
カムパネルラ
Oi-SCALE
SAI STUDIO komone(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/13 (火)公演終了
満足度★★★★
贅沢な演劇空間
「死んでしまった人間/カムパネルラ」を観ました。劇場に入って,まず演劇空間に驚き,そして期待。いいなぁ,客席よりも広いぞ,どんな芝居になるんだろう。芝居内容は,途中までは状況が見えなかったけれど,状況が見えてきてからは納得。観劇後に振り返ってますます納得。これは「残された人間/ジョバンニ」も観るしかないな。さて,いつ行こうか。
ヒマラヤと嘘
ハイバネカナタ
調布市せんがわ劇場(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
シンプルに面白かった
前説で上演時間が約2時間と聞いたときには、ちょっと身構えたけど、まったくそんな長さを感じさせなかった。
集中して、楽しく観劇。腰は少々痛くなったものの。
物語が面白く、話の繋げ方や進行方法にもストレスを感じない。
各キャラもデフォルメはあるものの、嫌味ではなく、それぞれがしっかりと立っていて、わかりやすい。
セットの上下左右の使い方は、模範的とも言えるようなもので、無駄がなかった。
つまり、演出も手際もよかったのだと思う。
ネタバレBOX
長女の死から、お互いにウソを言うことで、相手を安心させることしかできなくなってしまった母娘。
しかも、互いにウソをついているであろうことは薄々感じているのに、なかなかウソであることを告白できないでいる。その告白は、ほんの紙1枚の薄い先にあるのに、それを破ることが互いにできないのだ。まるで自分のウソに溺れてしまいそうになっているのに。
母ソウは、あまり流行らない食堂を切り盛りしている。母とヒマラヤ(!)を一緒に登山した男アゲオも食堂を手伝っている。
そのアゲオはソウと一緒にヒマラヤに行った体験から、映画を撮っているとウソをつき、ソウを新興宗教の教祖に祭り上げている。
娘アイは、大学の登山部に入り、母が何かを感じたらしい、ヒマラヤに自分も登りたいと密かに思っている。しかし、その登山部は、母が教祖となっている宗教の資金集め団体だった。
母ソウは自分が教祖になっていることも、娘のアイが怪しい登山部に入っていることも知らない。もちろん、アイも自分が母が教祖の宗教に取り込まれていることは気がついていない。
アゲオも、自分が仕掛けた宗教に関連した登山部にアイが入っていることは知らない。
母と娘のウソの上に成り立つ危ういバランスは、そろそろ限界かもしれないと互いに思っている。
宗教騒ぎとそれをかぎ回る刑事たち、そして、なぜか幽霊が見えちゃう(そのことは実に軽〜く出てくる)登山部の部員エガワが、絡まりあって、いろんなところにある、危ういバランスが崩れてきだし、ホンネや欲望が姿を見せ始める。
ソウがウソをついていることをアイに告白しょうと思うことで、宗教も終わりだとアゲオは悟る。
そして、(予定調和かもしれないけど)母と娘を取り巻く物語のエンディングを迎えるのだ。
母と娘がついていたウソは、「冷やし中華の作り方を知らないけど、メニューに入れてしまった」「彼氏が出来ているのに教えなかった」「死んだと言っていた父親は実は女を作って家を出ていた」「黙ってバイトをしていた」と、実に他人からすればどうでもいいことなのだ。
しかし、この親子にとっては、母に、娘に、ウソをついている、という状態が問題であるのだ。そんな、真っ当で真面目な家族の話が一番の軸になっているということは、ササクレ立っている私の心(笑)に沁みて、気持ちよかったのかもしれない。つまり、どことなくソフトな雰囲気(宗教がらみなのに変なダーク感もないし)が全体的にあったのが、心地よかったのだと思う。
ラストにある「季節外れの初雪が降るときに和解する」という予言があったのだが、てっきり、「お互いのホンネを書いた紙(1枚1枚に書かれており、輪ゴムで止めてある)」がフリだと思ったので、それが都合良く(笑)地震で降ってきたときが、それかと思っていたら、本当に初雪が降ったのだ。これは紙が降っただけで、季節外れの初雪としたほうが、よかったのではないかと思った。
細かい台詞で面白いことを言っているのだが、ことさらそれをクローズアップして「ここ笑ってください」という雰囲気がないのも好感が持てる。ただ、もう少し笑えてもよかったような気もするが(変なくすぐりみたいなものにはクスリ、ククスリとはしたけど)。
セットはシンプルながら、舞台をうまく使っており、無駄がなかった。ネットカフェから食堂に、ヒマラヤまでになるんだから。
狂言回し的なアゲオ位置づけの、宗教を仕掛けるのキャラクターは、ちょっと大げさで鬱陶しい(テンションが高い)のだけれども、この勢いがあるから物語が展開していくのだなと思えたし、自分のやっていることへの高揚感だと思えば、それほど違和感を感じなかった。また、娘のアイと母のソウキャラクターもなかなかいい。一番真っ当なキャラクターで真っ直ぐさが現れており、この物語の内容にふさわしかったと思う。一番素っ頓狂なエガワも、いい味を出していた。特にこの4人は印象に残った。
それにつけても、母娘のウソは白日のもとに現れたのだが、アゲオのホンネはどこにあるのかがわからないままだったのは、少し残念。彼の心の中も見えるようになっていれば、かなり素晴らしいものになっていたように思えるのだ。
人形の家
劇団ING進行形
pit北/区域(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
奇跡の先
イプセンは時々妙なキーワードを投げかける。
今回『人形の家』では、奇跡。
ほとばしる人間パワーで、人形の家に挑んだ!
あとはネタバレにて。
ネタバレBOX
奇跡なんてのを信じているうちが幸せで、奇跡なんて未来は一瞬で絶望になり得る、とINGは突き出しているように感じられた。
未来より、今をしっかり生きるようとふと劇場を後にして思った。
まだまだ荒削りだが、さらに良くなる気配を感じている。
はじめとラストのコントラストでがうまく出て、INGらしい人形の家であった。
人形の家
劇団ING進行形
pit北/区域(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
観てきました
前回と全然違う印象を受けました。
これはこれで素敵な話でした、面白かったです。
ダンスとかもっとあったらなって思いました。
て
ハイバイ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/09/25 (金) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
一粒で二度おいしい
何がすごいって、序盤ただの小気味よいファミリードラマのような流れの中で歌われるカラオケで、なぜか泣けること。背景も人物像もその時点では泣けるものではないはずなのに、なぜか泣ける。で、多視点というあっと驚く演劇手法を用いて重層な背景が判明した後、再度歌われるカラオケで今度は事情がわかって泣けてきて。言葉ではない、何か醸し出すオーラで観客を泣かすなんて、演劇としてものすごく素敵。その後、言葉と物語で背景を描いた結果、さらに泣かすというのも見事。家族というミニマムな集団の中で、人と人との断絶を暖かな目で、しかし一切目をそらさずに見つめきった上で、演劇的にも極めて完成度の高い表現に仕上がっている。何度観ても飽きない、シビレル作品。
わが星
ままごと
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
演出家が全力全開で仕事してる。
劇場の使い方、音楽の使い方、台詞の言い方、間の取り方等色々な面で挑戦的。観ててそのテンポに乗って世界観に飲み込まれる。83分。
ネタバレBOX
三鷹の劇場をフラットに、そして広くしかも円形に使っている。こんなプランを見たのは初めてかも。
話は当パンにも書かれているが、『地球が生まれてから死ぬまでの100億年。 人間が生まれてから死ぬまでの100年。 団地に住む一家をモチーフに、ある女の子の一生と星の一生を重ね合わせて描く』とまさにこのままなんだけど。
歌うわけではないが、音に乗せて台詞が語られる。決してリアルじゃなくてもそれ以上に言葉が響くように届くと思えたこと、それがわかっただけでもこの芝居の効果として素晴らしい。
役者陣は色々な負荷がかかってると思いつつも楽しげに表現してるのがすごい。端田新菜の子役と黒岩三佳の母はしっくりしすぎ。
敢えて難を言うのなら、郡唱の台詞が動きと高い天井で聞き取りづらいこと。別に生声にこだわることもないだろうから、最初だけでも工夫があると後半に活きてくるのになぁ、なんて思ったり。
観に行くのなら個人的には場内入口から右手、いちだんと高くなっているブロックの座席がお勧めかなぁ、と。
日々変化があるみたいだし、楽日に向けてもっと作品が進化することを期待して★は満点にはしておかないで。それでも十分に満足できる作品に仕上がっていると思う。
『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』
DULL-COLORED POP
サンモールスタジオ(東京都)
2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了
満足度★★★★★
もう一度、観たい!!
『プルーフ/証明』
いやぁ~、凄い!!
なんて言っていいんだろう。
アングラ/シリアス系で今年一番です。
掴まれてます。
眠れないかも知れません(笑)。
『証明』したいこと、出来ない事。
自分の心、相手の心、愛情、正常、異常…。
あ~、凄かった。
ちょっと整理して、明日書きます。
もう一度、観たいなぁ。
活動休止って、勿体無いよ。
ネタバレBOX
計:2時間20分,休憩10分。
1昼夜経ったけど、まだ、支配されてます(笑)。
キャサリン、凄かった。魅力的。
心の置き場のない時、可愛い時、天才の時、女の子の時、慈しんでいる時。
ヒリヒリと伝わってきます。
敬愛する天才の末路と、自らが同じようになってしまう不安と、天才の片鱗への誇り。
思えば、開演前から彼女に持っていかれてるんですよね。
天才の父親。
研究に対する理知と狂気、娘に対する厳格と甘さ。
私には、「その人そのもの」にしか見えない。
現実を生きる姉。
彼女がいるから、観客はこの舞台の世界を明確に自分の中に取り込めるんですね。
セットは、テーブルと椅子3脚、それだけ。
でもいろんな場所に化けて見えるんです。
凄い役者さんたちだなぁ。
重い一幕目、ちゃんと軽やかに笑いをとる二幕目頭。
重い芝居から立ち上がるのは、難しいと思うんですけど、サラッとやってのけている。
素敵なライティング。
素敵な本。
良いカンパニーだ。
「美しい」。
数学的な世界では、昔実際よく言われた言葉です。
私がコンピュータの世界に身をおき始めた頃、まだまだハード資産が貧弱でコーディング(プログラミング)の美しさが、そのまま処理速度に繋がっていました。
本当に数学的センスのある先輩のコードは美しく、自分の能力との差に驚愕したものです。
休業、もったいないなぁ。
やっぱり、もう一回見に行きます!!
鉄塔13 【サーティーン】
さるしげろっく
萬劇場(東京都)
2009/10/08 (木) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★★
ちょっとモヤモヤ感が‥
かつては罪人の流刑地だった、とある孤島を舞台にしたサスペンス。
最初のうちは孤島についての説明がほとんどないまま物語は進んでいくので、なんか観ててモヤモヤした感じでなかなか舞台に入り込めなかった。島の中だけで物語が進んでいき本島(日本列島)からの目線でほとんど描かれていないので、いったいこの島はどんな存在の島なのか最後までよくわからないまま終わってしまった感じ。けっして退屈ではなかったし面白くはあったけど、ちょっと設定に無理があるかなぁ(もしくは説明が足りないか)?
舞台美術とか音楽とか雰囲気はとても良かっただけに‥
ネタバレBOX
島に漂着してきたという鮎川の存在も、最初から怪しい雰囲気出しすぎてて後半の裏切りに全然意外性がなかったし、ある日突然空から降ってきたという鉄塔がいったいなんだったのかもよく分らなかった(こっちが聞き逃してしまっただけかもしれないけど‥)。
人形の家
劇団ING進行形
pit北/区域(東京都)
2009/10/09 (金) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
人形の家
今回はダンスが少なめ、その分会話で魅せてくれました!
原作ではイマイチ分かり辛かったのがすんなりと頭に入ってきました。
少人数ながら各々の役が立っていて飽きなかったです。
ぬいぐるみを使った演出が可愛かったですv
ネタバレBOX
ラストの大量の紙がドバーッには度肝を抜かれました。
慄く男と生き生きとした女の対比が面白かったです。
朝焼けのパレード
ハチビットプラネット
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2009/10/02 (金) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
第一級娯楽作
国家独立に尽力し初代大統領に就任した人物をクーデターによって倒した独裁者が支配する架空の国が洪水に見舞われ、その援助をするにあたり周辺諸国から出された条件によって実施されることとなった「民主的な大統領選挙」をめぐる物語。
といっても堅苦しいものではなく、候補者の1人が正体を隠した初代大統領の娘と知り、彼女を勝利させようと動く隣国からの報道記者たちを中心に描いており、娯楽性十分。
もちろん、報道が及ぼす影響やジャーナリストの使命と責任、クーデターによって独裁政権下に置かれた国民の気持ち、などシリアス気味なものもちりばめてあり、しかし全体的にはユーモラスで、緊張感(サスペンス?)の高め方と息の抜き方も絶妙、「娯楽性十分」どころか「第一級娯楽作」か?
そのシリアスさと娯楽性のブレンドの巧みさに『遠い夜明け』(リチャード・アッテンボロー監督、87年)を思い出す。
そんなストーリーに加えて人物設定と配置も完璧と言って過言ではないほどに上出来。
かつて記事をめぐって反目した(が、今回結果的に協力することになる)2人の記者がイキオイで行動するタイプと臆病なほどに「石橋を叩いて渡る」タイプであったり、彼らにTVレポーターも加えて「これが正しい」という答えのないジャーナリストの姿勢をそれぞれ表現させたり、終盤で何人かがそれまで隠していた顔を現したり(若干お約束的あるいはご都合主義的なニオイもするが「芝居のウソ」としての許容範囲内であるし、それよりも楽しく愉快・痛快なので全く問題ナシ)、しかも登場人物全員にそれぞれ見せ場があるし。
さらに、いくつかのどんでん返しを経ての終盤の思いがけない展開とそれを踏まえたエピローグもホントに巧い。
こりゃあもう「傑作」を優に通り越して「名作」ですぜ。
ネタバレBOX
安易に選挙戦に勝利するのではなく、結局初代大統領の娘も「事故死」させられてしまい、そこからの国民蜂起なんて「ちょー劇的」で「そう来ましたかっっ!!!」な鳥肌モノだし、「こうあって欲しかった」な姿を記者が想像するラストシーンは美しいし…