私たち死んだものが目覚めたら 公演情報 shelf「私たち死んだものが目覚めたら」の観てきた!クチコミとコメント

  • 生と死の曖昧な境界線で
    言葉を記号として認識させるミニマルな情景描写と張りつめた沈黙によって紡がれていく信頼は言葉を追い越して感情をやわらかに愛撫する。

    ネタバレBOX

    ルーベックは彫刻家で確固たる名声は彼を苦しめたが、名声は彼を生かしもした。
    中身がカラッポの他人によく似せた彫刻(フェイク)を作る、自分はニセモノなんだとあざ笑い、絶望しながら自分の存在をなくすことでやり過ごす空虚な日々を送る彼にとって、若い妻マイアは不要な存在で突然現れた、彼に名声を与える彫刻のモデルとなった女、イレーネこそが本当の人生を生きるためのたったひとつの希望だった。だが、出会って間もなく彼女は残酷な言葉をルーべックに叩きつける。

    魂をあなたに差し出したから私はもう生きられなくなったのよ。
    あなたは私のすべてを世界の人々に曝した・・・。

    ルーべックは自分のなかに横たわる大きな虚無感を、イレーネはすべてを捧げた見返りを期待しているそれは奪い合い、与えあうものがなくなった瞬間に消滅する関係性でしかなく、劇的な再会という運命のいたずらに翻弄され、死神に導かれ、霧がかる深い森の頂きへと足を進めていき・・・。

    そして彼は気が付く。
    自分の命を放り投げればイレーネは救われ、報われるのではないか?
    ルーべックにとって死は、破滅や憧れではなくてイレーネの願いを叶えるための手段であった。もしかしたらそれをひとは、愛と呼ぶのかもしれないが、最後のあのすべてから解き放たれた、けれど不安そうなルーべックの顔はほんとうにこれでよかったのだろうか。と彼自身、永遠に問い続ける命題からは逃れられないように思えた。



    イプセンの死から100年以上経っても尚、何のために生きるのか?
    という問題の、明確な答えは出ていない。
    欲望に正直に生きることもいいだろう。
    人間に対する、根源的な憎悪を抱き、疑い深く生きるのも、いいだろう。
    ・・・ひょっとすると自己犠牲のみでしか人は、生きることへの不安を拭うことはできないのかもしれない。なんて、漠然とした想いを胸に抱えながら今晩は眠りにつこう。

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    2009/10/10 18:36

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