忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
いつも「忘却曲線」の外にある
丁寧で淡々としながら、なにげない台詞が活きてくる。
あいかわらず時間と空間を交錯する演出は巧み。
吉田小夏さんは、どんどん研ぎ澄まされていく印象だ。
いろんなモノをそぎ落としたというわけではないのに。
ネタバレBOX
母は、子どもたちにとって、「過去」の象徴である。「過去そのもの」である、と言ってもいいだろう。
母の残した「日記を書け」という言霊は、残された子どもたちに「呪縛」として刻みこまれた。「日記」は「過去」そのものである。
母という地場は偉大である。トラックにぶっかって砕けてしまった父は、もう「いない」ので、過去なのだが、母は「過去であって過去ではない」。
つまり、「そこにいない」ことで「過去」でもあるし、「現在進行形」でもある。これは辛い。しかも、母の両親がかつて住んでいた家に住み続けているということも相まって、二重三重に掛けられた呪縛からは、子どもたちは絶対に逃れられないのだ。
呪縛を解くのは母しかいない。
だから、母は戻ってきて、その「死」によって、子どもたちを解放する。
母と子、姉妹と弟、そして、夫婦という「家族」という絆は、微妙にそのズレがある。そのズレが、ときには辛く、ときには温かい。声を荒げる姿は、誰しも自分の姿と重なって見えてしまうのではないだろうか。家族だからこそ、声を荒げてしまうことがある。これは他人から観るとキツイ。
その意味においても、本作で唯一の(今のところ)「他人」である山中という視点を入れたことは、うまいと思った。
実家から独立して暮らすということは、ある意味、ここの家族のように、誰かが家を出てしまったことに等しいだろう。
だから、この設定や台詞に実感できる部分がある。
遠くにいる両親や兄弟を想い、そこからは、弱いようで強い引力にいつも引っ張られている。
たぶんそれは、実は「死」ぐらいでは断ち切れることはないのだろう。
つまり、「家族」は「記憶」ではないということ。したがって、「家族」は「忘却曲線」の外にいつもある。
母と家の地場にがんじがらめの妻を夫は理解できない。しかし、たぶんこの夫だって、自分の家族の引力から逃れることはできていないはずだ。
2つの家族の引力に引っ張られつつ、夫婦は一緒になっているのだ。
だからぶつかりもする。相手側の引力しか目に入らないし。
ラストに、母が町に戻ってきて死を迎えてしまうのだが、それは、「母による束縛と解放」の手段ということらしいのだが、やっぱりイマイチ納得がいかない。
戻る理由(つまり出た理由)を具体的に示してほしいわけではないのだが、私にとっては、納得できる戻り方ではなかった。
まるで、「物語を終わらせるために死んだ」ようにしか思えなかったからだ。
私は、観ている間、後半で、母がネコに変わるあたりで、「ネコのように死んだ姿を見せないで消えていくのか」と思ったのだ。
だから、母の死は具体的な形ではなく、家族が「察してしまう」という方向で解放されていくのだと思ったのだ。
それは、すなわち、子どもたちの「独立」や「独立の芽生え」によってだ。
長女は、夫と家族を作り直し(てっきりラストに自分が「母」になって「母」との決別と、「母」とのさらなる強い関係性を構築するのかと思った)、次女は長い休息を終え旅立ち、三女は新たな家族の予感をさせ、長男もさらに一歩を踏み出すというような。
母役の方がたぶん一番若い方ではなかっただろうか。母は歳を取らないのだ。そして一番色っぽい。それは「パパに恋している」から。
それにつけても「パパ」は可哀想(笑)。
最後に母親に渡すのは、昼顔だったらよかったのにとも思った。
この舞台からは少々逸れてしまうのだが、こんな「家族」のカタチさえも、まるでメルヘンや昔話のことのように思えてしまう事件が多発することも事実でもある、というのも悲しいことだ。
役者はすべての方が、とても丁寧に演じていた。母を演じていた井上みなみさんは、過去の中で、艶々と活きている生命感が溢れていた。次女(小瀧万梨子さん)の強がった感じと、三女の大西玲子さんが印象に残る。
青☆組は、吉田小夏さん個人のカラーがとても強い印象だ。本人はすべてフィクションであるとおっしゃっているが、どうも「素」の本人がさらけ出されているように思えてくる。
具体的な吉田小夏さんのご家族の様子や内容ではない、「コア」の部分がだ。
それがコアであればあるほど、自分をさらけ出し、さらに他人をもさらけ出すことになる。そういう鋭さがあると思えてきた。
女中たち
劇団 風蝕異人街
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/08/28 (土) ~ 2010/08/29 (日)公演終了
満足度★★★★
演じるの、演劇
Genetの「Les Bonnes」とこしばさんと私にはちょっとした縁がある。
...2006年の利賀演出家コンクール。私は自分の翻訳・演出で自団体で出品したのと同時に、ドラマトゥルクとしてもう一団体の作品にも参加していた。どちらも同じ「女中たち」。そこに審査員として参加していたのがこしばさんとの出会いだった。
なのでそのこしばさんが自演出の女中たちをやると知って、期待は高まる。
その期待に応えてくれる刺激的な作品だった。2 versionsあることになっているが、これは2 versions別作品として観るべきではなくてまとめて一つの原作者への応答になっていると思う。なのでまだ未見の方は是非とも両方観てほしい。
時間の制約の中におしこめられて、破壊的な速度になった台詞が、微妙なルール変更を施しただけで、同じ台詞のはずなのに違って聴こえてくる。だから結末が違った絵になることが必然にみえる。
そして演じること=戯れることを主題とした作品において、どこまでが遊びであるかの二通りの線引きを両 versionsで提示して、そのことで、さらにどこまでが遊びであるかの無限の可能性へと観るものの妄想をかき立てる。二つ観たあとに、「いや、私だったらこの戯曲のこの段階までを演技と考えここからを演じ終わったもののリアルと考えるよ。」「いや私は...。」そんな議論が観客の間に誘発されたらおもしろいと思う。
4人の俳優のそれぞれに演技体の異なった居住まいが、演じるということについてさらに考える助けとなる。
アングラだ地方の劇団だと比較的マージナルに追いやるような肩書で紹介されるこの劇団、少なくともこの作品においては、演劇史のメインストリームとして、社会の中で「演じる」とはどういう行為なのかその考えを提示している。
清水那保一人芝居 ~曇天少年/共震少女~
ネリム
スタジオアキラ(東京都)
2010/09/04 (土) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★★
戯曲を客観的にする役者の力
開演までは
作者と演者の同一性からやってくるものに
身構えていた部分もあったのですが、
その戯曲自体にクオリティがあって
観ているうちに、誰が書いた作品かなど
すっかり頭から消えてしまって・・・。
役者としての「清水那保」が舞台で顕すものに、
観る側としてがちんこで向かい合うことができました。
ネタバレBOX
狭い階段を下りていくと
そこに劇場空間が現出する。
閉塞感がややあるものの
一人芝居には格好のスペース。
時が満ちるようにして舞台が始まります。
紡がれていくのは、
インターハイに出場するレベルの水泳少女の日常。
そこに母や、少年の姿があわせて演じこまれて、
やがては、彼女の血に連なる物語にまで
世界が広がっていきます。
作品に対して演じる力はしっかりと担保されていて、
個々のシーンがしなやかなメリハリを持って
観る側に伝わってくる。
観客を引き込むような密度の作り方、
すっと浮かび上がる想いに目を奪われるような解像度があって。
今にして思えば凄く失礼だったのですが、
よしんば、戯曲につたなさがあったとしても
それを埋めるだけの力がある役者の一人芝居であることは知っていたし、
ある程度の破たんがあっても舞台は成立するだろうくらいに思っていたので、
まさか、他の役者が演じても成立するであろう
ここまでの完成度を持った
戯曲自体の世界に
引っ張り込まれるとは思ってもおらず・・・。
シーンが重なるごとに
さまざまなニュアンスが
しなやかに色を変えて
骨太に繊細にしっかりと伝わってくる。
一人芝居というフレームの中で
改めてこの役者の表現する力の奥深さに瞠目。
まあ、しいて言えば、一人芝居としては
キャラクターの遷移の断層がやや高すぎるというか
個々のキャラクターがくっきりと演じられすぎることで
そのつながりがスムーズに感じられない部分があって・・・。
よしんばそれが「憑依」であったとしても
キャラクターをつなぐなかでのべたさというか
へたうまさのような部分もあればともおもったりはしたのですが、
それを差し引いても、
がっつりと残る質感に包み込まれて。
舞台美術も秀逸、
ライティングや映像も、
観る側を圧倒するほどの力を持って
やってくる。
それらが役者の演じる世界を隠すのではなく
役者の「秀逸」を際立たせる力を持っていることいることに
瞠目。
終演時には
「清水那保」というブランドをも軽々と圧倒する
清水那保の舞台力にがっつりと掴まれておりました。
*** ***
余談ですがこの戯曲、
個々のロールそれぞれに役者を振って
数人のお芝居をしても面白い気がします。
いろんなアスペクトを内包した
戯曲の世界を感じたので・・・。
○○★★★◎
おにもつ
東京マハロ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
好感触!
友人に連れられ見てきました。
この劇団は見たことなかったので、あまり期待はせずに見に行ったのですが、予想外に良かったです!!
前半は気持ちよく笑えて、後半はいろいろ考えさせられました。
お芝居が終わる頃には登場するキャラが好きになってました。
仕事が終わって、疲れてたのですが、見に行って良かったです!!
次回公演も行ってみようかな~。
忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
芸術の香り高い上質な芝居。
まるで職人が手掛けたような手作りで、ていねいに作られた作品。細部にまで神経が行き届き、誰もが感情移入する。
井上みなみが今までやったことのない役を初チャレンジ。こんな役まで見事にこなすのだとまたまた感心。井上みなみフアンには見逃せない作品だ。
空
kanikuso
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
KUNIO07『文化祭』
KUNIO
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
青春コンプリート!!
家と学校とを行き来する狭い行動範囲のなかでめまぐるしく活写されていく残酷さと純粋さをあわせもつティーンエイジャーの内省性から高校時代のクラスメイトの顔を思い浮かべたり、あの頃の自分と重ね合わせたりしながら観ていました。
何はともあれ、仲間がいるってすばらしい!
そんな当たり前のことを思い出しました。
渡り鳥の信号待ち
世田谷シルク
サンモールスタジオ(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
渡り鳥の信号待ち
世田谷シルク
サンモールスタジオ(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★★
渡り鳥達の
迷いを包み込んでくれる銀河鉄道が、走り抜けるようでした。初見だったのですが、想像と違い、私・・苦手・・・かも?と、思ったのですが、物語に引き込まれ、楽しめました。
ネタバレBOX
1人何役をも、やったり、シーンが変わるのが、唐突過ぎて、最初、ついていけなかったです・・・。役者さんに、よって、判り辛い方が・・・でも慣れきて、物語に引き込まれました。
身体表現が、とても良かったです。ダンスでもなく、パントマイムでもなく、まさに、シルク風味が、活きていると思いました。特に、ストップモーション的な動きが、感情を良く表現してたし、手のひらでの渡り鳥も、綺麗でした。
天の川や、空を駆け抜ける隕石も、綺麗でした。
木の椅子達も、いろんな姿を見せて、いろんな話も、聞かせてくれました。
ラメの平ゴムで見せる銀河もリンゴも、良かったです。
銀河鉄道の、スピード感や安心感が、輪廻転生を、思い起こしたのですが、アフタートークで、そんな言葉が、でてきて、安心しました。
おにもつ
東京マハロ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★
みた
印象深かったのは、役者陣の呼吸の合い方。
プロデュース公演というのは今や珍しくもないけれど、個々の役者の力の差を見せられて終わることもしばしば。
劇団という形態でも、仲の良さが見えてしまったり妙によそよそしかったりで、なかなか見ていて気持ちのいい空気に出会えなかったりする。
物語には強引なところも目立つ。だからもったいなく思う。同じ座組で、ほかの物語を見てみたいと思う。
プロデュースする目利きの鋭さとか、居心地のいい空気を作るとか、おそらくそういうところで、主宰の矢島さんの力は強く発揮される気がした。
もし年に2度公演を打つなら、うち1度は、他人の本(新作でも既存のものでも)でやってもらえたならと願ってしまう。
おにもつ
東京マハロ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
マハロ初観劇、そして感激
友人に連れられて東京マハロさん初観劇しました。最近、つまらない小演劇ばかり見ていたので最初は正直、全く期待してなかったですが、これがなかなか!!!こんなに笑えるとは思いませんでした。そして最後は心にグサリ、そして涙。前半後半と全く劇団の色を変えてて、そこらへんもびっくりしました。こう言う劇団もあるんですね。東京マハロ、これから要チェックかもしれません。おすすめです!!!
東京アメリカ
範宙遊泳
STスポット(神奈川県)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★★★
面白かった!!
涙がでるほど笑ってしまいました。
ネタバレBOX
話自体に目新しさはないけれど、演出が細かくネタの一つ一つが丁寧に作りこまれていて、それだけでずっと見ていたい気持ちになりました。
会場の大きさも合っていて、一体感が心地よかったです。
渡り鳥の信号待ち
世田谷シルク
サンモールスタジオ(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★
シルク色
なんだか、全く外さない劇団になりつつある。素敵だ。
ヴィジョン
ミームの心臓
神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
祭りのあとに期待。。。
観にいったかいはあった。
いろいろこれからなかんじだった。
しかしいろいろこれからやりつづけそうなかんじだった。
少なくとも現時点で持ってる武器は、作中の時間の管理かな。誰でも考えつきそうな、そこらの小劇場にいくつでも類似品のありそうなそんな物語。かといって演者の能力が傑出してるわけでもない、台詞回しのうまい台本でもない、美術も照明も音響も全く空間づくりに寄与してない...そんな悪いことづくめにもみえてしまうような、ある意味では平凡な企てが、各場面の絶妙なタイムキープで構成されていたと思う。どこまで自覚してるかわからんがこの演出家けっこうやるなと思った。
その歳で旗揚げしたんだと注目された今回から次回・次次回と着実に客の関心は遠のいていくと思う。その間にじわじわ力を蓄えて、離れていったお客さんを数年後に後悔させる。そんなしぶといこれからの活動を期待します。
忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
秀逸な叙情小説の味わい
吉田小夏さんの作品を拝見するのは2度目ですが、今回の作品は、前回以上に、感銘を受けました。
あんなにお若い作家がよく、これだけの、人生機微を小説のようにきめ細かく舞台上に、具現化できるのかとただただ感嘆します。
役者さんも、全員が、その役として舞台上で生き、本当の家族がそこにいるようでした。
モノローグはあっても、説明台詞は一切なく、小説なら行間から滲み出る、家族間の切ない思いが、観る側の胸の隙間に染み渡り、終始、目の奥に涙が出番を待っているような、ジーンとする芝居でした。
本当に、素晴らしい!
昨日まで、行くか行かざるべきか迷いましたが、やはり行って良かったと、心から思います。
大西玲子さんが御出演でなければ、二の足を踏んでいたかもしれません。
こんな素敵な芝居を見逃さずに済んだのは大西さんのお陰です。
ありがとうございました。
ネタバレBOX
失踪した母親の誕生日を毎年祝う兄弟、姉妹の、母を慕う思いが切なくて、何度も涙が出そうになりました。
「祝うことは祈ること」、「いつの8月?」、「母さん、お帰り、さようなら」…、心の琴線に触れる珠玉の台詞が幾つも幾つもありました。
母がまだいた時の過去の記憶と、今現在の家族の、微妙にすれ違う愛と、苛立ち、理解されない淋しさ…。その表現配分も秀逸なら、場面転換や、一瞬の子供から大人へのキャスト陣の変化など、照明、音楽、演技、演出…、どれも、皆遜色なくて、舞台芸術のお手本にできるような完成度の高い舞台でした。
キャストの皆さん、誰も皆、申し分ない演技でしたが、やはり、大好きな大西さんの演技には今回も泣かされました。
太郎の記憶の中の若き母が、現実に引き戻されると、猫に変身する様もお見事でした。
東京から、挫折して帰郷した次女の、タバコを燻らすシーンも、切なくてなりませんでした。
母が失踪した日から、兄弟の母親になろうと決めた長女のいたいけな思いに、共感して胸が苦しくなるラストシーン近く。そして、やっと、これからは俊輔の妻として、再生しようとする幹子の夫へのさり気ない語りかけで、幕となるラスト、最初から最後まで、本当に、寸分の隙もない、傑作舞台だったと思います。
欲を言えば、テーブルがベットにも変身すのなら、もう少し、抽象的なテーブル仕様のセットの方が良かったのかなとは思いましたが…。
おにもつ
東京マハロ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
観てきました!
友達の紹介で、東京マハロさんの『おにもつ』観てきました!
いろんな事件が起こって、あっとゆー間の100分でした!
役者さんもみんな上手で、いっぱい笑わせて貰いました。
とっても素敵な時間をありがとぉございました。
これからも頑張って下さいね!
瀕死の王さま Le Roi se meurt
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★★
多くの含意を読み取れる作品
イヨネスコの「瀕死の王さま」をほぼ忠実の上演。
ネタバレBOX
しかしながら、観客の合間を縦横無尽に駆け抜ける役者陣とそれを可能にする客席の配置、効果的な映像の挿入など、新しい舞台の可能性を感じさせる作品に仕上がっていた。
死が現実のものとなったとき、人はどうあがき、どのようにふるまうのか。といった根源的なテーマを、権料の象徴たる王さまでデフォルメした原作の良さが生きていたように思う。
また、王さまは、イヨネスコの生い立ちを考えるに、ソビエト連邦への反抗を示していようにも読み取れる。
役柄では、第一王妃マルグリットと主治医の冷静さ、第二王妃と女官の暖かみとがうまく対照的に描かれていた。
上演時間は2時間30分近くに及び、中だるみ感があったことから、睡魔に何度か襲われた。
もっと濃縮した舞台にすることも可能であろう。
役者陣では何といっても、王さまを演じた栗山が出色。
「オイディプス王」「タイタス・アンドロニカス」
劇団山の手事情社
アサヒ・アートスクエア(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
かっこえー!
いや、これは間違いなくかっこいいです!久しぶりに“劇的”な演劇を拝見致しました!…で、もろ肌ひとつ見せていないんですが、なぜだかエロチックな雰囲気が漂っているのは、これは「妖」とか「艶」とかという感じの世界でしょうか・・・で、詳細はネタばれになるんで書けないですが、間違いなく「凍りつく」シーンがあります…いや、よかったですよ、これは・・・
櫻の園~喜劇四幕~
流山児★事務所
あうるすぽっと(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★
私には最悪の「桜の園」
「世界の何処にもない熱い『桜の園』!!」のうたい文句。流山児★事務所初の演出作品、千葉哲也演出、安奈淳のラネーフスカヤというので大いに期待したが、これまで私が観たなかでは最悪の「桜の園」だった。
「チェーホフやってみました」というだけ。私は主役スターに頼った企画というのが好きではないが、これはその典型だった。
千葉と安奈は以前、舞台で共演し、一緒に舞台をやる約束をしていたそうだが、期待はずれもいいところ。
一時は再起不能といわれた大病から見事舞台復帰したミキさん(安奈淳)を観られたことだけが収穫。
ネタバレBOX
アングラ風チェーホフかと思ったら、そうでもなく、多彩なキャストを集めたが、演出に緊張感がなく、各自の演技がバラバラという感じ。
アメリカ映画の地下倉庫のようなセットで、ロシアという国であることも、時代背景も感じない。
口では「冷える」と言いながら、女性は薄着だし、衣裳も統一感がない。赤いシャツに黒のスーツの流山児祥なんてギャングみたいだ(笑)。
町田マリーが男性の役なのにしゃべりかたは女性そのもので「私は」というから、レズなのかと思った。パンフに朝比奈慶を新人と書いてあったので、宝塚の男役スターだったのに?と思ったら、最近、流山児★事務所に入ったらしい。朝比奈も男性の役だが、ジャケットの下は胸のあいたビスチェで、男性の衣裳には見えない。女性が男性を演じる必然性を感じないし、町田と、恋人役の坂井香奈美がともに丸顔で顔立ちが似ているのも具合がよくないと思った。
10分間の休憩を挟んでパーティーというより、ショータイムから第2部が始まるが、栗原茂のピーシチクがキャバレーの呼び込みにしか見えない。
朝比奈のダンスに華があり、宝塚のショーの男役そのもので、これはファンには懐かしくご愛嬌なのだが(笑)。
筋は「桜の園」だが、いったい何を見せたいのか、まるで伝わってこない。原作を知らなければ、もっと意味がわからなかっただろう。大胆な脚色ならよいのだが、意図がみえてこない。
池下重大のロパーヒンがかろうじてそれらしいが、この一座では浮いている。ワーリャの伊藤弘子のシャープさが印象に残った。
安奈の女地主はさすが貫禄も魅力もあるが、演技は彼女にお任せといった感じ。卓上ピアノを弾きながら宝塚調の歌唱法で歌ったり、安奈が好きなオフベージュのパンツスーツの衣裳といい、ディナーショーの一部みたい。
下手のブランコに乗る場面でも、宝塚の新人時代、ブランコの上で号泣したというヅカ時代のエピソードを思い出してしまったほどだ。
ラストシーン。老僕(塩野谷正幸)が「毛皮もお召しにならず、外套だけで出て行かれた」と嘆くが、ラネーフスカヤのコートの襟と袖口にはシルバーフォックスの豪華なトリミングがされているのでピンとこない。アーニャ(関谷春子)など、花柄プリントの透けたミニワンピースにムートンの半コートを羽織り、原宿に出かけるギャルみたいな軽装。冬なのに。
これって喜劇なんですか?チェーホフフェスティバル参加公演が聞いて呆れる。
北守の騎士とカルボナードの踊る魔女
青果鹿
テアトルBONBON(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
満足度★★★
混沌としたまま終わってしまい残念。。。
宮沢賢治原作の「グスコーブドリの伝記」、「北守将軍のと三人兄弟の医者」、「貝の火」という作品をモチーフに紡ぎ出される詩的なイメージ。
ネタバレBOX
物語は、「グスコーブドリの伝記」をメインにし、主人公のブドリが失明してしまったというあたりは「貝の火」から、また、疲れ果てたとある公職者がその職を譲ろうとするあたりは「北守将軍のと三人兄弟の医者」から設定を借りている。
賢治のそれぞれの作品は童話、または寓話として、それぞれ素晴らしいものであるが、本作はそれをうまく一つにまとめ上げることができたのであろうか。
それぞれの作品の詩的なイメージは端々で伝わってくるものの、一体感、イイタイコトを伝えるという意味においてはそれは十分に伝わってこなかった。
グスコーブドリの伝記がメインテーマとした自己犠牲について、本作では何故、ブドリが犠牲となって人々を救おうとしたのかが今一つ明快に描き切れていないことがその例であろう。
面白い作品だけに、改作によってブラッシュアップを期待したい。
役者陣では、ブドリ役を演じた樋口浩二が熱演。
また、今村美乃は、1980・梁山泊の「宇田川心中」とは違った光を放っていたのが印象的。