解りやすく親しみやすい
独特の観客層とのことで多少覚悟しつつ観劇に赴くものの、平日マチネの博品館劇場ということもあってか、普段とは違った客層のようであった。というより、役者さんが確実にやりにくそうなほど冷め切っている。後半にはアドリブで「ずいぶん静かな観客席だな」と言われてしまうほど。こういう公演は楽屋で「今日のお客さん怖いよ」と話題になっていそうだ。ラストでようやく手拍子が入り、僕までホッとした。
作品について。何より良かったのは、古典劇とはかけ離れたシェイクスピアになっていたということ。最初と最後に脚色が入っただけで、松岡和子さん訳の台詞もしっかりシェイクスピア調なのだけれど、そこには持って回った古臭さがない。作品自体はさすがにプロットの組まれ方が上手いので、物語に自然と入り込める。脚色も機能していたが、終盤はもっとスマートに終えて欲しかった気はする。あと、やはり『じゃじゃ馬ならし』の脚色は『Kiss Me, Kate』に敵うものはないかな、と。
劇中のナンバーはともかく、音響はどうしても馴染めず。親しみやすさやポップな感じを出そうとしているのかもしれないが、安っぽさというか「ハチャメチャ劇」みたいな感じが苦手。個人的な好みの問題ではある。
何より気になったのは、通じないギャグ?をあまりにもしつこく繰り返していたこと。「ファラウェイ」とか「ジョイナス」とか。全然わかんなくて、そのくせ後半になるにつれ使用頻度が多くなって、困った。客席でも理解している人がいなさそうだったから、途中で捨てた方がいいネタだったんじゃないかなあ。。
役者さんは岩﨑大さんのダンスと林勇輔さんの歌が周囲を圧倒していた。上手い人が一人でもいるとその人に自然に目がいくので楽しめる。
この劇団のアットホーム的な雰囲気はファンにとって嬉しいはず。終演後、主演がロビーに物販しに出てくるあたり、規模がなかなか大きい割には凄いこと。余計なお世話かもしれないが、今後どういった客層にアピールし、マーケティングを進めていくかが大切だと思う。