ファニー・ガール
シンクロ少女
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2013/10/04 (金) ~ 2013/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
文学的人間関係
一度はこのようなドロドロした関係の中に身を置いてみたい、一回だけでいいですが、そんな感じでした。
ネタバレBOX
二つの三角関係、二部構成。
2時間30分ということで長いなあと思いながら観始めましたが、一人の高校生が主人公だとすると、彼の高校時代と15年後の社会人時代の二部構成になっていて、二つのお芝居を観たと思えば最適な上演時間とも言えます。
第一部は彼が関わる三角関係、第二部は大人になっても続く彼の三角関係と、第一部で出てきた少女が大人になって悩む三角関係の話でした。
高校生の方は、三人はそれぞれが親友であり、優しいから、ズルズルと時間だけが経過してしまった感じです。シラノ・ド・ベルジュラックならプラトニックな思いを秘めて近くで見守るで済みましたが、こちらは一人の女性が結婚しながら彼ともザックリ付き合っていて、夫の立場を考えるといたたまれなくなります。
大人になった少女の方は、夫が血の繋がらない妹を好きになったことに気付いたものの、家族を崩壊させたくはないし、そもそも夫も妹も好きだから思い悩みます。
とても文学的な人間関係でしたが、例え好きだったとしても敵対するようになったらいつまでも好きでいられるのか疑問です。
高校生だった彼の方は、ようやく町を去る決心をしました。そう、群れを去るのが自然です。大人になった少女の方は心情を二人に吐露しました。そうね、先ずはそこからですが、彼女は作家として自立しているからどんな結論を出してしまうのか少し心配に思えます。
サラ金へおいでよ
劇団チキンハート
新宿シアターモリエール(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/09 (水)公演終了
満足度★★★★★
『サラ金』=『東京』として観ると…
『サラ金へおいでよ』というタイトルのままで観賞すると、「あれ!?サラ金っていう割にはダークな感じがしないな~」となったけど、冒頭部分でのナレーションをよく聴いて、『サラ金』を『東京』、つまり『東京へおいでよ』と読み替えると、スッキリした感じで舞台を観賞出来た気がします。
別に『東京』=『悪』っていう価値観を押し付けるわけじゃなく、『夢も希望も入り混じってる場所で、何らかの目的を持って生きてる人達がいる。もしかしたら目的が無い人達もいるかもしれない。そんな中で、ある集団が東京へ来たよ。さぁ、彼らはどうなるのかな?』
そんな風に舞台を眺めたら、不覚にも泣いてしまいました(T_T)
思わず笑う箇所?役者?もありますが(笑)、現代風刺を面白い角度から作りあげた作品だと思いました。
ネタバレBOX
●ストーリーの最後に、社長が債権者に詰め寄られ、自らの命を持ってお金を返そうとするシーンがあります。
舞台を観た方に聞きたいのですが、仲間3人が助けに来るのは現実なのでしょうか?それとも飛び降りた社長が見た幻想なのでしょうか?
私は前者だと思いたいですが、仲間を裏切った社長が、仲が良かった頃の仲間の姿を幻覚で見る回想シーンがあったので、もしかして、最後のシーンは社長の幻想だったのかな~と思ってしまったもので(汗)
●ゲストが日替わり!?になってるみたいですが、私が観賞した10/5(土)は過去に登場した役者さんがドラゴンボールのべジータに扮して登場してました(笑)
どうやら台本からはみ出て暴走してたらしく、個人的にはそういう演劇テロは嫌いじゃありません(笑)(笑)(笑)
おかえり、オカン。
かやくごはん
「劇」小劇場(東京都)
2013/10/02 (水) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
素敵な作品でした。
題名から分かる様に、家族のお話、母親という偉大な存在を描く事で、素晴らしい作品に仕上がっていました。
観ていて、笑えて、気付くと涙が自然にあふれてきて、見終わった後、とてもほっこり出来る物語になっています!
みんなに観てもらいたい作品です!
終演後、母親に思わず電話してしまいました(笑)
6日までなので、下北沢『劇』小劇場に行って観て下さい。
保健体育
20歳の国
インディペンデントシアターOji(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★
男の子っ
そんな感じの展開がされるので少々ハズカシイ感覚で拝見。
カラオケの舞台とか、凝った見せ方もいいし
カラオケと(合ってる曲とそうでもない曲あり)舞台の合わせ方も面白い
高木健さんの男前ぶりに笑った、女優陣には拍手ですね。
ただ、台詞が交錯し音楽もあって聞こえないシーンもあるのが勿体ない
ファニー・ガール
シンクロ少女
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2013/10/04 (金) ~ 2013/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
三鷹は遠いけど観て欲しい作品。
なんでしょうねぇ、良かったですよホント。
上演時間2:30分って聞いた時はビックリしましたが
それほど長くは感じない位、前半は集中出来たし
後半はよっくりと、哀愁のある人々を見守る感覚。
特殊な家庭環境で育った主人公ですが
見た目と違い深く悩んでいるのが、後半の容姿にも見てとれる(笑)
でも最後は、ちょっと風が吹いて涼しさを感じるいい後味の舞台。
父・母がとっても素敵、しーちゃんの義父がフレディ風です
やっとブログ更新、詳しくはそちらへ
ナイゲン【ご来場ありがとうございました】
アガリスクエンターテイメント
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2013/09/26 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
やっぱり面白い
昨年2回観ているのですが、それでもやっぱり面白い。
なんか授業参観な気分も少し出て来たかな?
笑よりも後半の展開に印象がグッとシフトしてきましたね。
隔年位で再演か、学生さんの公演が希望です。
もしも僕がイラク人だったら
カムヰヤッセン
東京芸術劇場アトリエイースト(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
時々再演される作品
想像してみようが体験できました。
ネタバレBOX
主宰北川大輔さんの大学の先輩である大根健一さんが2004年に発表した作品。北川さんが大学二年のときに再演を観て自分もやってみたいと思ったとのことでした。
イラクへの空襲で被災した市民が大勢いる中で家族を亡くした一人の男性の名前が分かったことから、彼の家庭環境、日々の生活、空襲の日のこと、そして現在を、日本人の男が想像してみる話。
母親と彼と歳の離れた弟との三人暮らし。父親は既に戦死しているが、功績を讃えられ家族は高級アパートに住んでいる。彼にはインターネットのチャットで知り合ったイギリスの女性と日本人の男性がいる、等々。
弟がマスターベーションばかりしてるという想像は、作者の経験によるものでしょうか、ちょっとしつこく、近くでミサイルが着弾しているのにそんなことやってる場合か、いくらなんでも止めるだろうと思いました。そして、下半身裸でもたもたしていたことが生死を分けたなんて可哀想。
イギリス人の女性が彼から彼の母親のイラク料理のレシピを教えてもらい、今ではイギリスで料理店を開いているなんて、ちょっとしたしたたかさも感じられる豊かな想像力です。
情報には価値があり、情報収集力で差がつくということでした。
フセイン像が倒された後、退院した彼がチャットで身に付けた英語力を活かして欧米系の会社に就職し、コンパックのパソコンを使って彼女を探し当て、彼女から逆にレシピを教えてもらって母親の味を味わおうと考える、素敵なドラマに仕上がりました。
以前にもちょっとした史実から一つの戦時中のお芝居を作り上げる作家さんに感心したことがありましたが、これもそんな感じでした。しかも、想像している自分が主人公なので大掛かりなセットが必要なわけではなく、時々再演されるのも良く分かります。
何かを展示することで東京芸術劇場のアトリエスペースが使えることは劇団おぼんろで経験済みでしたが、これからも増えるといいですね。
常に最高の状態
財団、江本純子
ギャラリーLE DECO(東京都)
2013/09/17 (火) ~ 2013/09/22 (日)公演終了
満足度★★★★
笑った笑った
肩が凝らない、笑える舞台でした。
狭い舞台で迫力もあったし、一緒に巻き込まれてる感じ
微妙なアーティストの本音と建前(自分最高、でも自信ない)
コダワリの単語を並べたトークもこじれてて面白いですが
低姿勢の千葉さん、オヤジ前回の柿丸さん、この2人のバアバが
巻き込まれ・巻き込んで行く展開に何度も吹き出してしまいました。
最高に笑える、評価が遅くてスイマセン。お勧めしたかったです。
建てましにつぐ建てましポルカ
ヨーロッパ企画
本多劇場(東京都)
2013/09/18 (水) ~ 2013/09/26 (木)公演終了
満足度★★★
迷路だけに笑の出口もない
平凡なウエーィみたく、変わった舞台で話しを作るのは上手いですね。
迷路のような城を迷う貴族にファンタジー要素も入れて来ます。
吉川さん目的で見に行った部分もあるので、まぁいいかなとは思いますが
クスリと笑える軽く見易い作品ですね。(吉川さんはE企画にも合いますね)
前田建設が面白かったのですが、駅前とかでやってた頃からは
セットが豪華になった分、仕掛けは増えましたが、基本変わらないですね。
なんかキャラメルボックスのコメディ版劇団のように安定して見れますが
傑出した面白さが期待出来なくなってきたかもです。
(個人的にですが)
ぬるい毒
劇団、本谷有希子
紀伊國屋ホール(東京都)
2013/09/13 (金) ~ 2013/09/26 (木)公演終了
満足度★★★
灰色の世界ですが
最後は、小さい祝福で締めくくられています。
本谷さん大八さんのアフタートークで、そこは大八さんの仕立てとの事。
自分の中のぬるい毒と、突然現れた男、向伊から浸透していく毒
実際に向伊ってあんな存在じゃなかったんじゃないか?
由理のモノローグが主体の原作なので、そう思ってしまう作品でした。
なかなか石井さん川村さんが出てこなくてヤキモキしましたが
ま、なかなか観た後も悪くない感じでした。
ただ、本谷さん作・演の舞台は緩急が激しいから笑も大きいが
残るものも大きいし、笑えますから、そこが物足りなかったかなぁ。
映像の見せ方は面白いです。見易いです。
風 -ふう-
劇団ZAPPA
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2013/09/28 (土) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
『颯』観劇
キャストは違えど,やはり素晴らしい舞台だった。この演目って,再演だったのね。また,この演目の続編もあるとのこと。確かに,後を引くような部分もあったものね。ちょっと,追っかけてみたいような気もします。
熱海殺人事件
47ENGINE
タイニイアリス(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★★
機関銃のような台詞が心地よい
今年だけでも熱海殺人事件は10回以上みてきたが、木村伝兵衛の機関銃のように繰り出される台詞はとても心地よかった。他の三人も台詞が聞きやすく、それぞれの役に溶け込んだ演技をされていた。47Engineの舞台は幕末純情伝、猿人プロジュースのロンゲストスプリングに続いて3度目であるが、毎回つか作品をハイレベルでリメイクされており、安心して見ることができる。今後も他のつか作品をされることを楽しみにしておこう。
「幕末千本桜」
劇団アニマル王子
ブディストホール(東京都)
2013/10/02 (水) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
ネホリーとハホリー☆
(^0^)/
面白かったです。
ダンス凄い、
殺陣カッコイイ、
テンポはスピーディーの、
『歴史幻想ファンタジー』です♪
歴史に詳しいと、なお一層楽しめます☆
終演後も親切な役者さんばかりでした♪
観劇日記をブログに書きました。
眠りの森-Girl's Side Adventure-【閉幕御礼】
劇団やぶさか
黄金町スタジオ 八番館(神奈川県)
2013/08/07 (水) ~ 2013/08/11 (日)公演終了
満足度★★★★
初めての2部構成☆☆
向かう途中、
なんだか芸術の世界に引き込まれていくような
街並みでした
真夏にもかかわらず
うっすら不気味な空間を演出し
しかもその狭さを感じさせない演技でした◎
屋敷から出られないという設定や幽霊の登場など
ホラー映画のothersを意識させましたが
とりま前編が終わってまででは関係ありませんでしたね(笑)
さて、今回がGirl's side、次回がBoy's side
どうなることやら・・
楽しみです♪
人狼 ザ・ライブプレイングシアター
セブンスキャッスル
相鉄本多劇場(神奈川県)
2013/10/01 (火) ~ 2013/10/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
ネホリーとハホリー☆
(^^)/ 面白かったです!
前半で消えてしまったキャラも推理シーンの会話で出たり、
始まる前の演出、
会話の奥深さ、
各人が自由に動き回ったり、
などなど、楽しさアップ!
「三日目の夜にアンケート回収」という、参加型なので、推理を十分に楽しめます☆
観劇日記をブログに書きました。
エゴ・サーチ
虚構の劇団
あうるすぽっと(東京都)
2013/10/05 (土) ~ 2013/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
再演ということで
初見の方とはちょっと違った感想になります。やはりどうしても、初演との違いに目が行ってしまう。初演が好きすぎること、そして鴻上さんの作品ということでどうしてもハードルが高くなってしまうのですよね。楽しいのですけど、すごく好きな演目ですけれど。今現在に再演することの意味まで考えてしまうのはやはり演劇人として頂点に立つ鴻上さんの作品だからこそなのでしょう。いや、でもやはり初演で6回通った作品でした。好きでした。初演と変わった部分と変わらなかった部分への雑感はネタバレ欄に。
ネタバレBOX
まず、脚本・演出は細かい時事ネタを除いて全く変わっていませんでした。劇団員の配役も。セットや役者さんの立ち位置も。そして劇中で使われる音楽や写真までも。なのでまるで3年前にタイムスリップしたかのようでした。
しかし大きく違ったのは、やはり演技力。特に晶ちゃんと小沢くんが凄まじく達者になっていて(初演も凄かったのに!)余裕さえ感じて頼もしかったです。晶ちゃんは初演でコメディエンヌとして新境地を開くことに相当苦労したとの印象がありましたが、3年経った今ではその分野の演技をすっかり自分のものにしていてとても楽しそうでした。小沢くんもより存在感に深みと厚さが増して・・・今思うと初演はテクニカル優先だったキジムナーの演技が、今は小沢くん自身がキジムナーそのものになっている感があり、その立ち姿のオーラの違いに目を見張りました。
ただ、客演さん達の部分は・・・私が初演のキャストが好きすぎるせいも大きいと思いますが。山崎くん&古河さんのペア、そして綾乃ちゃんの緻密な演技、奈津季ちゃんのスタイル抜群でキレのある演技には少し及んでない気がします。まだまだ初日なのでどんどん上がって行く事を祈って、また観に行きます!
※初演の山崎くんと古河さんのクライマックスは圧巻でした。数秒ごとに切り替わる過去と未来。持続する緊張感。役者さん、そして演劇そのものへの力をヒリヒリと感じるシーンでした。そして驚いたのは、キスシーン。再演では笑いが起きていて、屋上での、佐伯の気持ちの誤解のときにも笑いが起きていたので驚いてしまいました。それはやはり、初演との緊張感に温度差があったからなのかなぁ・・・。鴻上さんの演出の狙いは全く変わってなかったと思うのですけどね。
※あと、さほちゃんがびっくりするほど女らしくなってしまったので、同じ役なのに全然印象が違いました。無邪気な元気さが抑えられて、なんだかとても可哀想な印象に。
※杉浦くんは金髪にしたと同時にキャラが自然に変わってました。そしてギターがめっちゃ上手くなってましたw 確か初演の頃はギターを始めたばかりで死ぬほど練習をしたと言ってた気が。もうすっかり慣れたものでした 笑
花札伝綺
流山児★事務所
Space早稲田(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/11 (金)公演終了
満足度★★★★★
詩人の台詞
昨年のインドネシア、英国、カナダと回った海外公演で喝采を浴びた作品。
“見世物”のだいご味、芝居の原点を感じさせるエネルギー溢れる舞台に
これがアングラであるとかなんとか、そういう括りなどどーでもよくなる。
役者陣と演出の充実ぶりに、レパートリーというシステムの良さを再認識した。
改めて“詩人が書いた台詞”の、言葉のすごさを感じる舞台だった。
ネタバレBOX
舞台中央にドラキュラが入るような棺桶が立てかけられ、蓋に時計が嵌め込まれている。
大正時代の下町の葬儀屋、この家の人間は
父親の団十郎始め猫に至るまで皆死んでいる。
一人娘の歌留多だけが生きていて、彼女は盗人・墓場の鬼太郎に恋して結婚すると言う。
団十郎は死んだ美少年に娘を誘惑するように持ちかけ、
歌留多を何とか死の世界へ取り込もうとするが…。
全員白塗りの顔でキョンシーみたいだから死者であることがすぐ分かる。
それが実に生き生きとしているから可笑しい。
着物をアレンジしたキッチュな衣装がカラフルでいかにも外国でウケそう。
歌って踊って、生きている者を死の世界へ取り込もうという目的に向かってまっしぐら。
「♪さあ、思い出してみな、死んでないヤツが一人でもいたか?♪」
のっけからこの価値観の逆転が素晴らしい。
「不完全な死体として生まれ、何十年かかかって完全な死体となるのである」という
テラヤマ自身の言葉通り、生きていることなど
完全なる死体になる為の通過点に過ぎないのだ。
墓場の鬼太郎がとても魅力的で、演じる伊藤弘子さんがタカラヅカのように素敵。
ソロも確かな歌唱力で、安心して聴いていられる。
何を盗んでも朽ち果ててしまうなら「視えないものを盗んでやる」という
盗人としての矜持も鮮やかに、死の世界でも変わらずこれを貫くところが痛快だ。
鬼太郎の仕事を助ける獄門次を演じた谷宗和さん、
登場人物の多くがカタギではないが、中でも裏街道を歩んできた人間らしい
軽やかな身のこなしや台詞に色気があってとても魅力的だった。
卒塔婆おぎんを演じた平野直美さん、
お歯黒のメイクとキョーレツなキャラで忘れられないが、歌も上手い。
すごい存在感で、舞台に出て来るとどうしても目がそちらに行く。
棺桶も使った出ハケが自然で人数の多さを感じさせないスピーディーな展開。
歌が話の流れを断ち切るような舞台も多いが、これはむしろ流れを加速させる。
その理由は歌詞とダンスの表現力だと思う。
歌詞が台詞と強くリンクしているから聴いていて無理がない。
そして振り付けが、芝居の続きとして違和感なく“演じられている”。
エネルギッシュな舞台だが、勢いで押し切るのではなく緻密なバランスが感じられた。
この日は流山児★事務所の次回作品「テラヤマ歌舞伎 無頼漢」の脚本を担当する
中津留章仁氏の姿もあった。
「作品を作ることは人と人とのぶつかり合い」という流山児氏。
テラヤマの詩的な台詞を、“論理”の中津留氏がどんな本にするのか、今から楽しみだ。
保健体育
20歳の国
インディペンデントシアターOji(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
めんどくさいけど愛おしい。
20歳の国の魅力は、誰にでも楽しめるキャッチーな作風なのかな、と「花園」に続いて2度目の観劇で思いました。高校生の女の子+保健の先生と、その同級生から先生に至るまでの男性達との恋愛群像劇。誰もが通る人生初期の恋愛特有の面倒くささや切なさが満載のお芝居に、終始心臓がときめきっぱなし。思うに、女の子ってやっぱり早熟だな、と。ウサギのように発情しっぱなしで、寂しくて死にたくないから浮気しちゃう。それに翻弄される男性達。5人の女優さん達の個性的な魅力で舞台がキラキラと輝く中、同時に男性の役者さん達が多少しょんぼりして見えたのは演出として成功だと感じました。
ネタバレBOX
私はもういい大人なのですが、面倒くさい恋愛は自然と(というか敢えて)避けてしまってて。恋愛は楽しいものだと思ってるし、面倒なことにはなりたくないので(苦笑)、気付いたら合理的な恋愛しかしてない。出会って愛し合って別れて・・・を繰り返す度に、傷付くことを避けるために、言葉や行動にこだわることのナンセンスさを身に覚えさせてしまってるんですよね。「あのときああ言ったでしょ」とか「なんであのときあんなことしたの」などと相手を責め立てることは無意味どころか逆効果。・・・だからこそ、そんな風に口にしてしまう恋愛人生初期の頃の彼女達に、懐かしい愛しさを覚えるのです。二股掛けたり浮気したりしても、恋愛がすべてで全力を掛けられているならそれは純愛。観ていてとてもピュアな気持ちになってしまう。これからどんどん大人になっちゃうけど、こんな頃の自分が愛しいといつか思えるよ、今のうちにいっぱい恋愛していっぱい傷ついて、心の豊かな美しい女性になってねとエールを送ります。
女優さん5人とも自分の役を魅力的に演じてらして素敵でした。中でも川田智美さんがすごーくすごーく可愛かったです。長井短ちゃんの魔性は観る毎に増していく気がします。大人の美女に脱皮する頃にはきっと震えるほどの魔性を発揮すると思うのでそれが楽しみ。
男性の役者さんでは、斉藤マッチュさんの繊細でキレのあるSな演技に、「花園」同様釘付けになってしまいました。演出家として大好きな池亀三太さんのがっつりとした役者の姿も堪能。まさかの男子高校生役、ピュアな役柄の演技で可愛かったです。
そしてフライヤーではめっちゃトガッてカッコいい姿を見せてくれた竜史さんが、素朴・・・というかちょっとキモい役でした(笑) 竜史さんの作演出は早くも「間違いなく面白い」との信頼感があります。なぜが「花園」を見る前からその予感はありました。カトウリョウさんのフライヤーデザイン効果もイメージ戦略として大きいかと。色のセンスとかとても好きで、フライヤーを見るだけで観たい気持ちが何倍にも膨らみます、素敵。
あああととても大事なこと・・・えっちでした!笑 キス多発しかり、暗闇の声しかり・・・ドキドキしっぱなしでした笑 素敵なお芝居をありがとうございました。
「幕末千本桜」
劇団アニマル王子
ブディストホール(東京都)
2013/10/02 (水) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
幕末顧みて武士の世
桜田門外の変(1860)から7年後の慶応3年尊王攘夷、勤王佐幕両派は、蛤御門の変(1864)を経て薩摩藩出身の策士、大久保 利通は、土佐出身の浪人、中岡 慎太郎と共に京を離れ、江戸へ出向いていた。一方、中岡の盟友である龍馬も江戸へ出、身分を隠して、民衆を如何に扇動・先導するかについての考えを巡らしていた。
ネタバレBOX
そんな折も折、両国の暴れん坊鬼若 獅童が、単身、大勢のヤクザと立ち回りを演じ大怪我をして動けなくなっている所を通りかかった御典医、桂川 周の娘、一縷は獅童を救うことになった。彼女は、蛤御門の変で、幕府方の患者しか診ようとしない母に反発、敵味方の区別なく治療を施すような娘で身分制度にまだまだがんじがらめになっていて時代にあって突出した娘であった。こんな経緯から母は、彼女を勘当したのだった。彼女は、獅童達の溜まる万屋の仲間になる。ここには、新たな仲間も加わることになった。蛤御門の変以降、荒れ果てた京都では、ゴロツキと化した元武士が、町民を襲い、犯し、略奪し、街を荒廃させていたのである。妹の身を案じた兄は、兄妹で江戸に逃れることを決意、流れてきたのであった。
万屋の中心に居る若者達は、才谷という偽名を使って潜伏している龍馬から、何だかんだと薫陶を受けている。その結果、当時、最先端の思想、民主主義の萌芽を彼らも理解していた。戦乱に筧を乱されるのは、何も敗軍ばかりではない。最も大きな被害を受け続けているのが、民衆なのである。彼らは、実際、戦乱の世にも、戦費を調達する為の増税にもウンザリしていたのだ。それで、仲間を集めて、15代将軍、慶喜に訴えようとする。具体的には、一種のデモである、ええじゃないかを組織する。
そして、その決行の日、大久保の陰謀によって、英国の武器商人、グラバーと銃五百丁の取引をしたとされた、ええじゃないか一行は、幕府側ではあっても民衆からも人望の厚かった幕府組頭、滝川 信明配下の将軍護衛警護が銃を構える中に突入して行き、先頭に立って檄を飛ばしていた獅童が撃たれる。彼は、一縷を置いて死んでしまう。一縷の深い嘆きが、彼女を過去に連れ去った。その過去とは、武家政権が成り立つ揺籃期である。
二幕、場面変わって、時は遡り、千百年代、源 頼朝が鎌倉幕府を創設するに至った時代へ飛んだ一縷は、五条の橋の上で弁慶と対峙、彼を下して、生涯の友とも、一の家来とも為すが、弁慶即ち、獅童。幕末、一縷は獅童を愛していた。相思相愛の恋仲である。為に一縷は時代を遡り、武家政権成立の時代へ飛んだのだ。そして、五条の橋の上で千振り目の刀を奪おうとした弁慶に出会うのだ。義経と化した一縷と最も関係の深いのは無論、弁慶である。彼は、義経を守る為に己を鬼神とも化した人物。その気持ちは、獅童そのものである。時代を隔てながらも、義経・一縷と弁慶・獅童は、互いの時代を超えた関係を理解し合っている。他にも、敵味方に分かれたとは言え、主要なキャラクターは、皆、過去に飛来してきている。例えば、才谷こと龍馬は、平家方和平派に成っている。動乱の幕末の歴史勝海舟と共に担おうとした役割自体は変わらず、時代が変わっただけというような設定になっている。無論、それが、一種の輪廻転生になっているのではあろうが。シナリオはそれなりに、面白く展開する。二幕は、それなりに役者のエンジンも掛かって来て楽しめた。
それでも、演出、役者の演技は、幼い。残念である。演出レベルでは、一幕のオープニングで、観客に驚きを仕掛けていない。漫然と役者が入ってくるだけである。これが、今作の舞台では演じられなかった、その後の戦乱そのもののシーン(例えば蛤御門の変など)に繋がるならまだしも、そのような展開もなく、只、漫然と始まる舞台など、自分には、信じられない。観客は日常の生活空間の中から劇場に足を運ぶのだ。いきなり舞台に引き込む工夫をしないでどうするのだ?
役者陣の演技も、溜めが無い。若いとは言っても演じるのは、少なくとも16歳では元服する時代の人物達だろう。(元服する年代は時代によって異なるが)現代の明らかに子供じみたレベルで演ずるのは間違いである。演出も、この程度のことは常識の範囲なのだから、きちんとダメダシをすべきである。シナリオが時代劇である以上、当然だろう。
10周年は一区切り、益々の精進を期待すると共に、自由なイマジネーションの翼を広げる戦いは継続して欲しい。若い人々の活躍を祈念して、星は4つをつけておく。
イッヒ リーベ ディッヒ【全公演完売の為、当日券の発売を中止いたします】
劇団東京イボンヌ
ワーサルシアター(東京都)
2013/10/01 (火) ~ 2013/10/06 (日)公演終了
満足度★★
チケット完売おめでとうございました。
1000枚のチケットを完売させることは容易なことではないです。それを初日前に実現させたわけですから、いかに期待した人が多いか、ということがうかがえます。素晴らしいことだと思いました。
また、当日の舞台運営も人手が多く、気持ちよかったです。
こうした裏方の気持ちがこの劇団を支えているのだと感じました。
ネタバレBOX
舞台内容について記述します。
舞台内容に関しては、かなり厳しいものでした。
多くの役者に「役割のある役」が与えられておらず、
感情移入する部分を見つけるのが大変でした。
何名かの方が書かれているように、
脚本上で「現代パート」が破たんしていました。
ですので、どんなに役者が頑張っても、
物語の世界にはいりこめないわけです。
作家に都合のよい状況説明ばかりでエピソードが展開されておらず、
起承転結もはっきりしないために、
ドラマ不在となり、感情移入ができませんでした。
ベートーベンの方はというと、
確かに現代の部分よりはドラマっぽくありました。
ですが、ベートーベンは既存のキャラクターであり、
周知のストーリーを展開してるだけなので
オリジナリティを感じることはできませんでした。
良家の子女であったマリアがあえて「家政婦」となってベートーベンの恋人となっていた、というのはもしかしたら作家のオリジナルかとも思いましたが……
いかんせん、カツラをかぶった日本人が「ベートーベン」だと言い張っても、結局は着ぐるみと大差ないように思いました。さらにドイツ人が「バカ」を連発するのは、コントですよね。面白ければそれもありですが、マリアは大まじめに演技しているようだったし、どう受け止めていいのかよくわからず、戸惑うばかりでした。ただし、ベートーベン役の古賀氏の力量は素晴らしいと思いました。カツラ姿が途中で気にならなくなりました。
声楽家の歌は素晴らしいのですが、どういう立ち位置だったのかよくわかりませんでした。愛の告白シーンでいきなり舞台上に連れてこられても……どういう意図の演出なのか、戸惑ってしまいました。
結局脚本がうわべの「きれいごと」をただ羅列してるだけなので、
人の心に響いてくるようなセリフがなかったのだと分析します。
私は作家なので脚本重視でドラマや芝居を観ます。
なので脚本の出来が作品の出来を大きく左右します。
脚本はドラマの設計図であり、それが狂っていたらまずいと思います。
ただ、これはあくまで私の感性です。
ようは何を楽しんで作品を見るのか、ということの違いでしょう。
★は制作と役者さんたちにそれぞれひとつづつです。