波間
ブルーエゴナク
森下スタジオ(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
福岡県北九州市と京都府京都市の二都市を拠点に活動するブルーエゴナク。そんなブルーエゴナクにとって5年ぶりの東京公演となるのが、THEATRE E9 KYOTOのアソシエイトアーティストとして制作・初演された『波間』。再演はメンバーを一新し、東京で活動する俳優・スタッフ陣によって上演されました。
物語の舞台となるのは、「死ぬことを決意した青年」の夢の中。
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ネタバレBOX
舞台上に男(大石英史)が一人。30脚ほどのパイプ椅子をひたすら事務的に並べ終わると、男はマイクの前に立って、「自分は死ぬことを決意していて、今から話すのはその朝に見た夢の中での出来事だ」といった旨の語りを始めます。舞台奥のカーテンが閉められると、そのまま「夢」が始まるのですが、次第に、そこで描かれていることが「夢」のみではないことが忍ばされていきます。明らかに夢であることが分かるような、コンビニでの頓狂な出来事が描かれていると思った矢先に生々しくいじめの過去が再現されていき、そのことによって、男の自死の決意とその過去が深く関わっているということに観客も気付かされていきます。
本作の素晴らしいところは、スタジオの無機質さをうまく利用しながら瞬く間にその場を異質な空間に仕立て上げ、「夢と現実の間」を表現するにふさわしい劇空間を創出していたことでした。
冒頭に並べられたパイプ椅子をはじめ、夢へのエントランスに見立てた空のハンガーラックなどはおそらく全てがスタジオ備品なのではないでしょうか。特別なものを使わずして空間を劇的なものにする、という挑戦を美しく成し遂げていたと感じます。会場の選定がどこまで意図的であったかは分からないのですが、本作と森下スタジオが非常に合っていたこと、その特質を余すことなく活用しきっていたことも魅力だと感じました。スモークや照明の活用も夢を夢たらしめる上でキーとなっていました(スモークの演出があることから観客にマスクが配られている配慮も細やかであったと感じます。)
俳優の物理的な配置、他の俳優との距離感も、夢らしい絶妙な違和を築き上げていました。
だだっ広い空間にぽつりと人間が立っていること、言葉を発すること、そのことによってフィクションと現実が近づいては離れ、絡まってはねじれながら現在へと繋がっていく。そうして、波と波の間で夢と現実とが擦れ合って音を立てるような演劇でした。
男を演じた大石さんのみならず、深澤しほさんの佇まいや田中美希恵さんの声色、男の唯一の友人を演じた平嶋恵璃香さんの舞台での居方も印象深かったです。感情を綴るセリフを極力抑えた上演台本であったにも関わらず、引き算によって魅せる存在感や表現力の技術が高く、俳優の全うした役割もクオリティを大きく支えていたと思います。
ただ、空間の構築が鮮やかな手つきで行われていただけに、「夢」という曖昧な風景の中に「いじめ」という凄惨な現実を混ぜ込み、投影することで削がれてしまうものや、整理された演出が際立つことによって登場人物たちの意図や真意、心のうねりがこぼれ落ちてしまったような感触もありました。一言で言うと、主題に対して美しくパッケージされすぎているような心持ちになった節もありました。「すごい作品を観た」という感触は大きく残ったのですが、人物にその心の抑揚をほとんど語らせない手法も相まって感情移入が難しく、「この主題によって何を訴えていたのか」ということを掴みきれずにいる自分もいました。
しかし、家に帰って改めて考えてみると、それらは、必ずしも重要なことではなかったような気もしてきました。
現代社会ではあまりにも被害者が矢面に立ち、語らせられ過ぎていて、「被害を受けた上に、さらに声をあげなくてはならないのか」ということが多すぎると感じます。それは、周囲の無頓着、社会の無関心、世界の無慈悲によって引き起こされていることで、そういったことも含めての主題なのであったとしたら、「死ぬことを決意した男の感情」に寄せずに淡々と風景を描き出していく演出は、観客に想像の幅を持たせる意味合いでも成功していたように思います。
実際に本作が「いじめ問題」と「自死」を扱った作品であることが明確になってから、冒頭シーンに立ち返ると、事務的に行われたパイプ椅子のセッテイングは男の死後に訪れる葬列への準備だったのかもしれないという風にも思いました。当然、死んでしまってからは何もかもが手遅れです。そんな風に口数こそ多くないものの、実はものすごくたくさんの示唆的な演出が忍ばされていたのかもしれません。私がそのことに気づけなかっただけで。
その「気づけなかったこと」について考えを巡らせること。
それもまたこの作品が導いた大きな余韻であったのではないでしょうか。
舞台上で描かれた「男の現実と夢の間」は、今まさに「現実と虚構の間」に居座っている観客にとっても決して他人事ではない。
ラスト、カーテンが開けられ「現実」が空間を包み込んだ瞬間に、ふとそんな気づきを得るような作品でした。
【2024年7月11日に「CoRich舞台芸術まつり!2024春」グランプリ発表ページより以下を転載しました】
本作はCoRich舞台芸術まつり!2024春の最終審査において複数の審査員から準グランプリへの推薦の声が挙がりました。
惜しくも受賞とはなりませんでしたが、最後まで拮抗した団体であり、作品であったこともここに明記しておきたいと思います。
雨降りのヌエ
コトリ会議
扇町ミュージアムキューブ・CUBE05(大阪府)
2024/03/09 (土) ~ 2024/03/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2007年に結成し、現在は兵庫県を拠点に活動しながら兵庫・大阪・東京在住の6人が劇団員として参加するコトリ会議。そんなコトリ会議が「1ヶ月たっぷり公演」と銘打って、扇町ミュージアムキューブオープニングラインナップのラストを飾ったのが、本作『雨降りのヌエ』でした。
この企画の素晴らしい、いや、もはや凄まじいところは1ヶ月の上演期間のあいだ、劇場の開館時間である10時〜22時まで劇団員の誰かしらが在館していること。つまり、作品の上演はもちろん、「来たらなにかが無料で見られる生展示」など手を替え品を替え、小劇場団体が日々劇場を、企画を動かし続けるという前代未聞の公演なのです。このことは作家や俳優、スタッフなどの作り手はもちろん、観客にとっても多くの発見を与える試みであったと感じます。
「劇場とは観客にとってどういった場所なのか」という現状を観測し、「どういう場所になり得るのか」という可能性を模索すること。そんな前例なき追求があって初めて劇場に辿り着くことのできた観客も多くいたのではないかと思います。
その追求は公演の形式のみならず、創作や上演の方法にも表れていました。
本作は、1公演につき全5本中2本の短編演劇を上演。1本30分弱という上演時間のコンパクトさはさることながら、内容についてもどこからでも、何からでも気軽に観られるようにつくられています。演劇はしばしばその上演時間の長さやテーマの難解さ、チケットの高さなどから敬遠され、映画と比べられる際には「映画は演劇よりも自由に観られる」などと言われますが、本作はまさにその印象を果敢に裏切っていくような公演でした。
それでいて、1公演観たら、他の公演も観てみたくなる、気づけばコンプリートしていたなんて観客の声も少なくありませんし、私自身もまた同じような心持ちを覚えました。私が観劇したのは第夜話と第形話だったのですが、どちらも読み切りのオムニバス小説のような感触がありつつも同モチーフを別視点から切り取った連作的な魅力も感じました。
第夜話『縫いの鼎』、第空話『盗んだ星の声』、第形話『温温重』、第蓋話『糠漬けは、ええ』の4作の各短編は、全てのあらすじが「兄が亡くなったそうだ」から始まっている通り、「兄の死」がモチーフに。
死んだ兄は同一人物であり、4人の弟や妹をそれぞれの話の主人公に据えながら、四種四様の二人芝居形式の会話劇を展開していきます。第糸話だけが毛色がやや異なり、ストレンジシード静岡で上演したリモート作品の改訂版。この作品が入ることによって、他4作から伝わる物語としての「作風」とはまた別の、コトリ会議という劇団の取り組みを把握することができることも意義深いパッケージだと感じました。
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ネタバレBOX
観客が演劇をより楽しめるための工夫にも抜かりがなく、当日パンフレットに書かれた導入テキストや兄弟の相関図など物語への没入を手伝い、上演をより豊かなものにしていたと思います。
全体を観るには1作品がかぶることやチケット代などを鑑みて、複数観劇した観客やコンプリートを果たした観客に台本やオリジナルグッズをプレゼントしていたのも細やかな配慮に富んでいて、またリピート率にも一役買っていたのではないかと思います。
俳優それぞれの個性も素晴らしく、死んだ兄を演じた若旦那家康さんの「不在」という強烈な存在感や三ヶ日晩さんと山本正典さん演じる夫婦の歪な距離感、花屋敷鴨さんの心情をダイレクトに表出した大暴れっぷり、妙に落ち着いた兄の分身として笑いを誘う原竹志さんも魅力的でした。
1ヶ月とはいえ限られた時間の中で、「劇場空間と観劇体験をより豊かなものにするための可能性」を拡張し続けた公演であり、劇場の敷居を下げ、観劇という文化をより広く開いたものにする一つの革命であったようにも感じています。
【2024年7月11日に「CoRich舞台芸術まつり!2024春」グランプリ発表ページより以下を転載しました】
最後に、本作はCoRich舞台芸術まつり!2024春の準グランプリ作品でもあります。
審査では準グランプリにするのか、制作賞するのかの議論が持ち上がったのですが、結果としては、「制作を含むチーム一丸でロングラン公演を叶えた企画力」や「作品全体が外部へと拡げたムーブメント」を評価する形で準グランプリに決定しましたことをこちらでも併せて明記させていただきます。
この世界は、だれのもの
ながめくらしつ
現代座会館(東京都)
2024/03/01 (金) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ながめくらしつは、2008年にジャグラー・演出家の目黒陽介さんによって結成された現代サーカス集団。これまで、サーカステクニックを基底に、音楽家やダンサーなど多ジャンルのアーティストと接点を持ちながら、幅広い場で活動をしてきました。
そんなながめくらしつが久しぶりに新作として上演したのが本作、『この世界は、だれのもの』。
コロナ禍での公演形態や主催の独演などを経て、新たに取り組むアーティストとの協働。サーカスやダンス、音楽などジャンルを横断し、舞台芸術の魅力を訴えるような力強いパフォーマンスでした。
(以下ネタバレBOXへ)
ネタバレBOX
出演者は、目黒陽介さん、安岡あこさん、目黒宏次郎さん、入手杏奈さんの4名で、名前を挙げた順の2名1組の男女によるパフォーマンスが順次展開されていきます。身体を密着させては突き放す、恋の駆け引きのようにも愛憎の応酬のようにも見えるパフォーマンス、机とボールを用いたゲームがやがてバトルに展開していくようなパフォーマンス、体に複数のリングを絡ませて行うパフォーマンスなど、さまざまなダンスとジャグリングの融合が見られました。
身体の先端から末端までを駆使するダンスの本領や、誰も真似することのできないサーカスにおける超人技など、アーティストの圧倒的技量をも感じることもできました。
本作のもう一つの大きな特徴として挙げられるのが圧巻の音楽です。現代音楽家として活動するイーガルさんによるピアノ生演奏は、舞台上のアーティストの身体の流れやうねりに文字通り伴走するような力強さがあり、空間全体を縁取るようでも、音を介してダンサーやジャグラーの身体を導くようでもあり、とても興味深かったです。
全体のムードとしては決して暗いわけではないのですが、ドラスティックな不協和音を奏でているような趣がありました。怒涛の音楽に包まれながら、4名の俳優が自身の身体やその個性や技量を使い果たすようにパフォーマンスを成し遂げていく様、そして、それらが交わり、重なることで、ペアだからこそできる表現の魅力や可能性を示していたことも素晴らしかったです。
その一方で、どうしても2人1組のパフォーマンスを交互に見る趣が強く、全体を通してショーケース感が否めなかったのが残念な点でした。4人が1組となったパフォーマンスも最後にあったはあったのですが、個人的には、せっかくこんなにも魅力溢れる4名のダンサーとジャグラーが集っているのだから、全員が一つの作品の出演者として存在しているシーンや、それぞれの強みが一つ二つと融合していく様子をもっと見たかった、という心残りがありました。人が他者と関わり、重なり、交わることで物事やその景色は大きく変わること。そういったコミュニケーションがもたらす変化については、ペアのパフォーマンスによってしっかりと描かれていたと感じました。『この世界は、だれのもの』という言葉の惹きつける力が大きかったこともあり、他者が複数存在する「世界」というものへの接続を期待してしまったのかもしれません。
しかしながら、言葉を発さず、表情さえもほとんど変えずして、一人ひとりが濃密かつ情感豊かなパフォーマンスに仕上げている点、その表現力の高さはやはり抜群に素晴らしく、5名のアーティストには改めて大きな拍手をお送りしたいと思います。
「他者への関心」というテーマをそれぞれが身体に落とし込み、さらに、舞台上で生まれる新たな反応を信じる姿勢で臨まれたのであろう、純度の高いパフォーマンスでした。
異ジャンルを横断しながら「今」に向かって放たれる、ながめくらしつならではの創作・表現活動。そのパフォーマンスのさらなる飛躍を今後も楽しみにしています。
エアスイミング
カリンカ
小劇場 楽園(東京都)
2024/02/28 (水) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初の海外戯曲上演となったカリンカ第4回公演。
『エアスイミング』は「触法精神障害者」として不当に収監された女性二人の会話を、実話を基に描いたシャーロット・ジョーンズによるイギリス戯曲。戯曲に見出す現代との接続点、2人芝居というミニマルかつ壮大な心のたたかいを、物語の登場人物たちに流れる緊迫や狂気へと繋げ、二人きりの言葉と身体の力を以って独特の磁場を生み出していたように思います。
私は本作をいわば“忘れてはならない女性史の一部”である、と感じました。
しかしながら、その日本での上演、とりわけ小劇場で取り上げる団体は少ないように感じ、私自身にとっても本作が初めてのきっかけとなりました。海外戯曲の知識が乏しいこともあり、日本における上演の歴史や経緯について詳しくお伝えはできないのですが、「どうしてもっと上演されてこなかったんだろう?」と思うほど、現代において重要な戯曲であると感じました。
喫緊に向き合わねばならない女性を巡る諸問題と直結する本作を、小劇場のプロデュース公演として選択されたことは非常に有意義なことだと思います。戯曲のチョイス、CoRich舞台芸術まつり!2024春への応募文章、上演の全てが「今、この戯曲を自分たちで上演しなければ」という信念に基づき手を繋ぎ合っていて、同じく30代を生きる一人の女性として感銘を受けました。自身の現在地から見つめる世相、それに対する戸惑いと怒り。そして、覚悟。現代社会に生きる女性としてのシンパシーとエンパシーのいずれをも上演を以て応答する、果敢な挑戦心に満ちた作品でした。
応募文章には【多方面の方から「今後若い頃よりも役や現場が少なくなってくる」と言われる事が増えました。実際それは構造的な問題もあるし、さまざまな問題をはらんでいると思いますが、ひとつ30歳という節目において、俳優自身が自ら創作の場を作れるということを、今後もカリンカでの活動を通して、モデルケースとして提示していきたいです】という言葉がありましたが、まさに、30歳を迎えることによってかけられたネガティブな声を、演劇を以っておつりがくるまでに返上するような、これまでのキャリアや歩みが二人それぞれの唯一無二の厚みとなったお芝居であったと思います。俳優個人はもちろん、「カリンカ」というカンパニーが今後さらに発展していくための布石として、充分に力強い作品であったと感じます。
(以下ネタバレBOXへ)
ネタバレBOX
堀越涼さんによる舞台空間の使い方や演出も洗練されていて、とりわけカーテンを使用した演出ではその透け感が現実と虚構のあわいを表しているようでもありました。色のない透明の椅子や真っ白なワンピース、水槽の中の魚も登場人物たちの心象風景のように感じ、効果的に昨日していたように思います。
バスルームの掃除の時だけ、拘束を解かれて言葉を交わせる二人。互いと交わす会話を支えにそこで生き続けた果てしなさが、俳優が2時間その役を全うする果てしなさと重なって、彼女たちもまた芝居をするように、いや、することで、あのバスルームで生き抜いてきたのだ、と思わされました。劇場を後にして、眩しいお昼の光に目を細めながら、心の底からこの外の光を、世界をその目で見ることを渇望した彼女たちに見せたかったと痛感しました。
収容された年やその後の時間の流れを知らせる役割をも持つキーパーソンであるドリス・デイ。その代表曲『ケ・セラ・セラ』が聞こえ始めた時のショッキングさは忘れられません。「なるようになる」という歌に包まれながら「決してなるようにはならなかった、なれなかった女性たち」がそこにはいて、セリフと歌詞と風景が淡い光の中で錯綜していく。唯一の救いは、水槽の中にいたのが本物の魚であったことでした。あの舞台上に周囲の視線や状況をいとわず、ただただ生き、泳ぎ続ける生命があったこと。彼女たちが夢にも見た自分たちの姿がそこにはあったのだと思います。
【2024年7月11日に「CoRich舞台芸術まつり!2024春」グランプリ発表ページより以下を転載しました】
最後に、本作はCoRich舞台芸術まつり!2024春の最終選考対象作品であり、審査員の一人であった私が本審査において出演者のお二人を演技賞に推薦したことをここにも記しておきたいと思います。詳細は審査ページに掲載されていますが、「精神の崩壊」という難解な心理的局面をそれぞれの身体性を以て貫いた橘花梨さんと小口ふみかさんに心より激励を申し上げます。
ラスボス前にもう一杯
猿博打
スタジオ空洞(東京都)
2024/06/21 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/25 (火) 13:00
価格3,800円
男女3人の劇団。まず、「観に行って良かった‼️」と率直に思いました。3人で85分をこなすのは、セリフだけでも大変だと思っていましたが、セリフだけでなくアクションも多く、稽古の成果を感じる内容でした。3人がそれぞれ個性的でハマり役、互いがエネルギーを出し合いながら、バランスの取れた内容なのは「アッパレ」の脚本であり、俳優さんそれぞれの力のある証拠ですね。歳を重ねながら、どういう進化を遂げていくのか、楽しみです。また、見逃しごちですが、個人的にはさりげなく照明が上手いとも思いました。
眠れぬ森の人々
吉祥寺GORILLA
studio ZAP!(東京都)
2024/06/12 (水) ~ 2024/06/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【STAGE葡萄】
太宰原作の一人芝居+劇団員の作・演出作品+主宰の作・演出作品という短編集別プログラム。
太宰作品には日本語の美しさを感じ、劇団員作品はファンタジー系RPG?からのエヴァや直近の牙狼などを想起。主宰作品は檸檬と異なるハッピーエンドに安堵。
蘇る魚たち
モトキカク
インディペンデントシアターOji(東京都)
2024/06/20 (木) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
途中苦しくて外に出たくなった
キネカメモリア
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
おちょこの傘持つメリー・ポピンズ
新宿梁山泊
新宿花園神社境内特設紫テント(東京都)
2024/06/15 (土) ~ 2024/06/25 (火)公演終了
実演鑑賞
ほぼ諦めていたが、何とか客席に滑り込む事ができた。
どこから吟味すべきか・・。
本戯曲、初演は1976年。状況劇場時代の演目であった(場面転換が少なく登場人物の人数の大きく変化する場面も少ないこの類型は唐の後期戯曲と勝手に決めつけていた)。
この演目を知ったのはSPACが珍しく唐作品を取り上げた事(2020コロナ中止、2021年上演。未見)によってであったが、2022年唐組で上演したのを観た(他の上演記録がないのでここで観た事になる)。梁山泊では初である。
何と言っても話題は今回の俳優の布陣に集まるが、劇場公演で金守珍が著名俳優の座組を演出する事はあっても、今回は花園神社・紫テントである。サプライズ感の大きい豊悦と勘九郎、今回の舞台のレベルは両名無しには達せられなかった事を認ざるを得ない。作品本位での配役である。一つ付け加えれば、(御大の死を金守珍が予感したのかは知らないが)状況劇場が当時具現していたテントの熱気を今ここに彷彿させようとしたのではないか、とも。そんな思いが過ぎったのは寺島しのぶ演じるヒロインが李麗仙に見え、相対する白スーツの豊悦が唐十郎に重なるような幻視の瞬間がふと訪れた時。(もっとも私は最晩年の李麗仙が梁山泊「少女仮面」に客演したのを観たのみで、唐十郎は短い映像でしか見ていない。)アングラ前の時代を知る人に、当時アングラは何だったのかと訊いたら、言葉を探しながら「(あれは別カテゴリー、というニュアンスで)有名人が出たりしてね」の言葉でまとめていたのを印象深く覚えているが、私なりの解釈を重ねると、スター性を帯びた特権的肉体が、一身に視線を受け止める事で成立する観客との交歓がテント公演の熱気であった・・となる。私の想像の届かなかった「時代の中のアングラ」の一側面を感覚的になぞる(追体験する)観劇となった。
世界に憧憬し悩む無垢な青年と、曰くある過去を持つ大人(男そして女)の構図はやはり唐十郎世界に欠かせないなと改めて思った次第だが、その青年役を勘九郎が担い、冒頭から喋り倒す。見事である。感想はまた改めて。
残す所1ステージ、完売。ネットでの当日券抽選も前日に終えている。
ただ一点、当日になって空席が生じる可能性はゼロでなく、テント公演の寛容さは「前日抽選の当選者か」を問う管理的目線より「観たい」情熱を受け止めてくれそうな現場での心証ではあった。「外で声を聴いて想像するだけでも良い」と腹を括れる熱量の方には、足を運ぶ事をお勧めする。
きく
エンニュイ
アトリエ春風舎(東京都)
2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昨年開催された『CoRich! 舞台芸術祭! 2023春』のグランプリ受賞作品。の再演です。受賞作バージョンも観劇しています。その時の会場は三鷹のSCOOL。今回はアトリエ春風舎。舞台美術もリニューアルし、空間の使い方も異なり、新しいシーンも挿入されるなど、再演として基本的な構造を踏襲しつつ装いも新たになった印象を受けました。
ネタバレBOX
「きく(聞く)」をテーマに様々な角度から提言・実演・検証するパフォーマンス的上演。アドリブに見えるシーンも多いが、かなり緻密に構成された台本のもと上演していると想像します。上演形式の新しさも感じますが、とはいえ、こういうスタイル自体も増えているし、今後も増えていくと予想。個人的にすごく印象的だったのが、黒板を使って物語の一部を説明しようとするシーン。予備校の授業のように展開され、内容をまとめ、ポイントを絞り、明確な答えを導き出す。これらのシーンが反面教師として挿入され(←僕にはそう見えた)、このシーンのおかげで、今回の上演に大きな意味が追加されたと感じます。互いに聞くこと、互いに理解すること、それが明確にまとめられ、端的な言葉で伝えられた時、その意味合いのなんと味気ないことか…。改めて、コミュニケーションの本質・正体とは? という問答が自分の脳内を駆け巡りました。
ワーニャ伯父さん×母がいた書斎
S.H.Produce
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
久々のアルシェで、Bチームを鑑賞。
チェーホフの「ワーニャ伯父さん」と林将平による「母がいた書斎」の2本を朗読劇で。
舞台前面に4本のスタンドマイク、そこから2mほど奥の50cmほど高く作られたところに2本のスタンドマイク。演者はこの6本のマイクの間を行き来しながら朗読する。
朗読劇の楽しさは、身体表現がない分、登場人物の感情や仕草をいろいろと想像できる点にあるのではないかと思っている。が、この公演では(2本ともに)それができなかった。なにせ表現があまりにも類型的で、かつ大声でわめきたてる場面が多く、想像の余地をなくしてしまう。
例えば「怒る」にしてもいくつもの怒り方の表現があるだろう。それが全て大声で怒鳴るだけなのだ。これでは感情の押し売りに近い。
類型的な表現であるために底が浅く、情緒に乏しい。義弟の提案に、自身を犠牲にして務めてきた永年の苦労が無になったワーニャの哀しさや苦しみなど全く迫ってもこない。
役者が熱演すればするほど心が離れていく、残念な舞台だった。
地の塩、海の根
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2024/06/21 (金) ~ 2024/07/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
混迷する世界、その時代に生きる者にとって演劇の<力>とは…。
フライヤーには「ポーランド作家ユゼフ・ヴィトリンによる現ウクライナ地域の民衆の苦悩を描いた反戦小説」とあり、2022年6月に関西の演劇人と坂手洋二氏が この小説をもとにした「反戦リーディング」を上演したとある。タイトルからも分かるように小説「地の塩(未完)」と「海の根」という物語(思い)が交錯するように描かれており、その内容は民族・歴史・文化・言語など多岐にわたり、色々な課題・問題提起をしている。
さて、この作品が燐光群(作・演出 坂手洋二氏)で上演されるから興味を惹くのであって、日常的に この国・地域に関心を持っている日本人がどれほどいるだろうか。地政学的にも すぐ反応できる人はそれほど多くいないのでは(⇦誤解か?)。今回観劇したのは、以前観た「ストレイト・ライン・クレイジー」が少し残念な思いをしたこともあり、このまま燐光群公演を観なくなったら という思いが正直なところ。
(上演時間2時間30分 途中休憩なし)
ネタバレBOX
素舞台。ただ奥が高くなっており、カーブを描くように低くなり また客席側が高くなる。一見すると八百屋舞台のようだ。基本 リーディングだが、役者が動き回り少なからず情景と状況を表す。
客席近くの上手 下手に対峙しての会話は圧巻。
物語は、某国立大学の講堂からウクライナ、ロシア、クリミアへ時間や場所が次々に変化・変遷していく。言えることは<今>を描いているーその意味では現代叙事詩。その観せ方はドキュメンタリーフィクションといった臨場感あるもの。小説「地の塩」の章立を順々に展開するようだが、原作は未完(10章迄)である。そして ロシア語の翻訳はあるがウクライナ語の翻訳はない。そこで リーディングを行うために役者を集める。
リーディング作業と「地の塩」をウクライナ語に翻訳しようとする作家(家族)の話が交錯する。ロシア語を拒否し、ウクライナ語に未来を託す家族、しかしロシアに止められている息子はロシア語などの教育を強いられる。さらに小説の世界へ、そこでは踏切警手が オーストリア帝国の兵士として徴兵されロシアとの戦争へ…。
ロシアにいた息子とウクライナにいる父の邂逅、父は「地の塩」をウクライナ語へ翻訳し、息子は その思いを綴った「海の根」、その地に対する脈々たる歴史と敬愛が書き込まれているよう。
公演の面白いところは、ウクライナ、ロシアといった一方的な観点ではなく、まさにジャーナリステックのような視点で描いたといった印象。他方 難しいところは、現在進行している戦争を扱っているところ。自分の考えスタンスが確りしていないと、単に同調して見誤る可能性があるということ。その意味では おそろしく手強い公演だ。
世界各国が政治・経済などあらゆる分野で関係していることから、対岸の火事といって傍観していても物価高など火の粉が降りかかってくる。正当なメッセージが込められた倫理観という醒めた見方、遠い国の出来事(戦争)といった他人事ではなく、自分たちとの関わりという視点で観ると興味深いかも。勿論、公演の主張は明確で 燐光群らしい反骨そして硬派なもの。
次回公演も楽しみにしております。
ワーニャ伯父さん×母がいた書斎
S.H.Produce
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「ワーニャ伯父さん」を朗読劇で観るのは初めて。時間制約があるのか、アップテンポで早口なセリフで、人生の悲哀をしみじみと感じる訳にはいきませんでしたが、なかなかに楽しめました。「母がいた書斎」はほのぼのとした小品で、よかったです。
キネカメモリア
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
映画館を舞台にした作品は秀作が多いが、この群像劇もグッときましたね。時代設定は2000年くらいかな。大好きな「アイアン・ジャイアント」の予告編が聞こえてきたのが嬉しい。
恋々、レヴェリー/きもちななめ
劇団カオス
大阪公立大学杉本キャンパス旧教養地区第1学生ホール(北食堂)2階オアシス(大阪府)
2024/06/22 (土) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
昨日の作品も面白かったが、今日の作品は自分自身の境遇にもマッチし、実に面白かった
タッチ的なはじまりは(タバコを吸いにきた男女)似ているが、内容が重い… 私もダメ男の立場も経験し、且つ歳上の女性との同様な時間も経験あるだけに、妙に入り込んでしまった…
一つだけ注目をつけるのであれば、葵さん(トワ)を幸せにするであろう男性と、アルバイト先の塾で告白された男性を繋げて欲しかったかも…(メビウスの輪になるけど…)
恋愛系の演劇は、カオスにおまかせです❕
しかし、リアリティー有りすぎて、作者の経験が…
楽しめました‼️
付き合ってはいけない職業 バンドマン バーテンダー そして YouTuber
ワーニャ伯父さん×母がいた書斎
S.H.Produce
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
凄く良いリーディングでした。皆さん良い声でとても聞き取りやすく、情景が目に浮かぶほどでした。
古典の話と現代の話と全く違う時代でしたが、両方共聞き入ってしまいました。
水彩画
劇団普通
すみだパークギャラリーささや(東京都)
2024/06/17 (月) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ネタバレ
ネタバレBOX
劇団普通『水彩画』を観劇。
茨城弁を駆使した口語演劇。
あらすじ:娘・あみは父と母を連れて夫と一緒に美術館に行った帰りに、茨城県の田舎町には似つかわしい喫茶店でたわいもない話しをする。隣では結婚間近のカップルが来ている。互いの会話は筒抜けだが、のんびりした風景の中で、淡々と時間が過ぎているように見えるのだが…。
感想:平田オリザ超えと言わんばかりの口語演劇で展開されていく。
両親の物忘れが進み始めているからか、「やれ薬は飲んだが?」「トイレの鍵が壊れているとか?」と不毛な会話ばかりが続くが、綿密に書かれている戯曲、演技、演出が三位一体になり、生々しい瞬間を徐々に感じ始めていく。笑いが苦笑に変わり始めると、父と母の将来の不安に怯えている娘・あみが感じる悲劇に否が応でも追随してしまい、鳥肌すら立ってくる。
『平田オリザは人間が生きている事こそがドラマだ』と言っているが、赤の他人の不毛な会話に己の実生活を感じてしまう。
何も起こらない、ただの会話の中に大きなドラマが展開されているのだ。
『映画監督・小津安二郎』っぽいと言われそうだが、遥かに凌駕しているのは間違いない。
誰が何と言おうと断言出来る、それほどの演劇なのである。
眠れぬ森の人々
吉祥寺GORILLA
studio ZAP!(東京都)
2024/06/12 (水) ~ 2024/06/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【STAGE檸檬】
太宰原作の一人芝居+劇団員の作・演出作品+主宰の作・演出作品という短編集。
太宰作品はその発想と描かれた世相に感嘆、劇団員作品はホラーに近いダークさにゾクゾク。主宰作品もビターだがSTAGE葡萄は異なるエンディングと聞きそちらに期待。
生ビールミュージカル
宇宙論☆講座
下北沢 スターダスト(東京都)
2024/06/14 (金) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
ワーニャ伯父さん×母がいた書斎
S.H.Produce
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
観(聴き)応え十分。
「ワーニャ伯父さん」…どんなに辛く厳しい現実があろうとも生き抜く、そんなメッセージを印象深くさせる演出が良い。「母がいた書斎」…無難にまとめたといった感じだが、こちらの作品も演出が巧い。どちらの作品もキャストの感情に訴えかけるような熱演(朗読)が物語の世界へ強く引き込む。
(上演時間1時間40分 休憩なし)【Aチーム】
ネタバレBOX
舞台美術は 後景に何枚かの白紗幕、黒っぽい壁(暗幕?)と相まって鯨幕のように見える。舞台前後に段差を設え スタンドマイク(前4本、後2本)、キャストは立ち位置を固定せず、マイク間を移動する。この動きは、感情や場所といった精神的・物理的、そして会話する相手との距離感の変化を表しているようだ。登場しない時には、上手 下手にあるパイプ椅子に座り待機している。
●「ワーニャ伯父さん」
ワーニャ(新濱 卓サン)が自分の人生(47歳)を顧み 無駄に過ごしたと苦悩するが、それでも姪ソーニャ(桜羽萌子サン)が、いつか来るその時まで生き抜くことを諭すといった、よく知られた物語。
始まりと終わりに 登場人物(キャスト)が一瞬静止するが、それによってチェーホフの閉塞した世界観とは別の光景が描かれているといった印象だ。勿論 描かれている内容の根幹は変わらないが、何となく現代的といった感じだ。劇中 何気に雑踏・雑談のような外の世界が入り込むようで、約130年前に書かれた物語を現代から俯瞰したような。それは後景の鯨幕(枠)のような美術と相まってモノクロ映画で「ワーニャ伯父さん」を観たような感覚。
語りは 下男(足立彬光サン)と乳母(伊庭波弦サン)、この2人は黒い衣裳でその外見から黒子、そして淡々とした語りで感情表現をしない。それはト書きでありナレーションのようで見事な語りに徹していた。一方、登場人物はそれぞれが役に見合った衣裳。さらにワーニャの義弟セレブリャコーフ(多田健悟サン)はメガネをかけ老境を、その妻エレーナ(星いくみサン)は若くして美貌を表すためウィッグで長髪、といった外見にも気を配る。他に医師アーストロフ(米山真平サン)、母マリヤ(中村伊佐サン)。演技(朗読)は 聴きやすく、感情が迸った熱演が良かった。ただ 少し早口で悲哀が…惜しい。
舞台技術、特に照明の諧調は巧い。紗幕の上下から照射することで情景や状況の変化、スポットライトで人物の心情を表現する。橙色彩で温かさ、銃声の瞬間は青白い閃光といった印象付け。また音響・音楽は、朗読劇ということもあり、あまり目立たないようにしているが、帰りの時に鳴る鈴や優しいピアノの音色が心地良い。ラストはJupiterを選曲し余韻を…。
●「母がいた書斎」
物語は、概ね説明にある通りだが、予備校の講師への片思いという感情は あまり感じられなかった。ヒロイン 弥永香奈(有藤詩織サン)は女医であった母 路津子と同じ道を歩もうとしている。幼い頃に亡くなり、その思い出・記憶はほとんどない。受験勉強、進路に悩んでいた時、母の書斎で見つけた<母の日記>を読み、といった物語。
ワーニャ伯父さんで夫婦を演じたセレブリャコーフとエレーナは、夫々 メガネやウィッグを外し、今度は若々しく現代的な夫婦(一宏・路津子)を演じる。またワーニャ伯父さんでは語りを務めた下男が 予備校講師 松尾尚人、母マリアが 一宏の上司(婦長) 東美保として感情表現する等 魅(聴か)せる演技が見事。舞台技術は上述と同じ。
次回公演も楽しみにしております。