実演鑑賞
満足度★★★★
2007年に結成し、現在は兵庫県を拠点に活動しながら兵庫・大阪・東京在住の6人が劇団員として参加するコトリ会議。そんなコトリ会議が「1ヶ月たっぷり公演」と銘打って、扇町ミュージアムキューブオープニングラインナップのラストを飾ったのが、本作『雨降りのヌエ』でした。
この企画の素晴らしい、いや、もはや凄まじいところは1ヶ月の上演期間のあいだ、劇場の開館時間である10時〜22時まで劇団員の誰かしらが在館していること。つまり、作品の上演はもちろん、「来たらなにかが無料で見られる生展示」など手を替え品を替え、小劇場団体が日々劇場を、企画を動かし続けるという前代未聞の公演なのです。このことは作家や俳優、スタッフなどの作り手はもちろん、観客にとっても多くの発見を与える試みであったと感じます。
「劇場とは観客にとってどういった場所なのか」という現状を観測し、「どういう場所になり得るのか」という可能性を模索すること。そんな前例なき追求があって初めて劇場に辿り着くことのできた観客も多くいたのではないかと思います。
その追求は公演の形式のみならず、創作や上演の方法にも表れていました。
本作は、1公演につき全5本中2本の短編演劇を上演。1本30分弱という上演時間のコンパクトさはさることながら、内容についてもどこからでも、何からでも気軽に観られるようにつくられています。演劇はしばしばその上演時間の長さやテーマの難解さ、チケットの高さなどから敬遠され、映画と比べられる際には「映画は演劇よりも自由に観られる」などと言われますが、本作はまさにその印象を果敢に裏切っていくような公演でした。
それでいて、1公演観たら、他の公演も観てみたくなる、気づけばコンプリートしていたなんて観客の声も少なくありませんし、私自身もまた同じような心持ちを覚えました。私が観劇したのは第夜話と第形話だったのですが、どちらも読み切りのオムニバス小説のような感触がありつつも同モチーフを別視点から切り取った連作的な魅力も感じました。
第夜話『縫いの鼎』、第空話『盗んだ星の声』、第形話『温温重』、第蓋話『糠漬けは、ええ』の4作の各短編は、全てのあらすじが「兄が亡くなったそうだ」から始まっている通り、「兄の死」がモチーフに。
死んだ兄は同一人物であり、4人の弟や妹をそれぞれの話の主人公に据えながら、四種四様の二人芝居形式の会話劇を展開していきます。第糸話だけが毛色がやや異なり、ストレンジシード静岡で上演したリモート作品の改訂版。この作品が入ることによって、他4作から伝わる物語としての「作風」とはまた別の、コトリ会議という劇団の取り組みを把握することができることも意義深いパッケージだと感じました。
(以下ネタバレBOXへ)