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朧な処で、徐に。

朧な処で、徐に。

TOKYOハンバーグ

ザ・ポケット(東京都)

2025/10/15 (水) ~ 2025/10/20 (月)公演終了

実演鑑賞

初演の微かな記憶が、少しずつ蘇って来た。こういう作品だったか・・と。女性劇作家の苦労を描いた秀作、という記憶であったが、劇中の各フェーズに通底するテーマ「人(存在)との別れ」の最もコアな(メインの)フェーズを忘れていた。
劇作家のいる現実の場面以外の場面は、彼女の書く作品の世界であったり、回想される過去だったり、また別の現実の場面だったりするが、後から謎解きされるのが面白い。時に作中人物と作者が対話したり、案が没にされかけた方の人物らがリストラするなと騒いだり、作者の脳内の葛藤・格闘が垣間見えてこれも面白い。ただし先述のコアなフェーズは現実のそれ(彼女の取材先)でありながら、書かれた作品のそれにも見え、実と虚の混濁の具合が、劇全体を劇作家の執筆現場であるかに印象付けている。
その意味で自分の記憶は正しかったと思うが、劇作家自身がその本質的なテーマを問い、問われ、作品を書いている、その図式にもう一つ感動の種があったよう。

ロンリー・アイランド

ロンリー・アイランド

ティーファクトリー

ザ・スズナリ(東京都)

2025/10/10 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

電車遅延で冒頭を逃し、約10分経過した時点から観劇。冒頭に伏線が凝縮しているのかそうでないのか判別つかず。「戦争」の時代である近未来の風景が、斜に構えた目線の中に真顔がよぎるような調味の塩梅で描かれている。加藤虎之介(空気が似てるなァとは思ったが風貌からは本人との認識に至らず)が担った役が戯曲のその目線を体現しており、舞台をある意味で織り上げていたとも言える。
21世紀は人類から戦争を召し上げられぬ事を我々に知らしめたばかり。80年間自国だけの平和を享受した日本が、「戦争抑止の装置を手にしてはいなかった」事実も早晩目の当たりにしそうである。
今の世相、「戦争」の概念が記号として、「感情」を遠因とする主張や感情表出に用いられている中、戦争に接する事を余儀なくされる時代の手触りを伝える舞台。

ネタバレBOX

冒頭を見逃したので会場で売っていた戯曲本を買ったが、台本は自分が見た箇所から始まっている。開演は定刻通りだと聞いたから、戯曲に更に何かが付け加えられたのだろう。
そこを知りたいが、戯曲には書いてなかった。
テキストを手に取り、テンポ感ある場面展開(一場面は短い)を記憶をなぞりながら読み進めた。ぐっと来た。ここ最近の川村氏の新作の中では明快で台詞が効いている。虎之介演じたヒロという人物は「ディアハンター」や多くのベトナム戦争(の時代性を色濃く反映した)映画に登場する精神の半分イカれた人間になって行くが、戦争後遺症を含めて戦争が人間精神にもたらす影響を、数名の人物類型それぞれに対して描き込んでいる。

後遺症と言えば、日本で唯一これを取り上げたと言って良い精神科医による「戦争と罪責」が、地上の戦いで「殺し」を行なった元軍人のその後(多くが精神を病んでいた)について記したものだろう。取り上げられている大半は中国戦線での経験。東南アジアを日本軍は破竹の勢いで進撃し、途中虐殺もやったようだが「占領者」として短期間君臨したのであり、その後の太平洋戦争では殆どが米軍との海か空での戦闘。ガダルカナルは地上戦があったが敗走か玉砕か餓死である。
従って真珠湾攻撃以前、以後通じて「殺し」とその心的外傷の大部分の原因となったのは中国戦線での経験であった。
「殺る」側と、それを目の当たりにした側の中に、深く大きな傷が残された事を想像する。この想像力を人間の武器として、ステロタイプなイメージと記号による「戦争」の闊歩をとどめたい。
「あとは戦争しかない」狂気を正当化する美談ちっくなドラマより、真っ当な感覚を取り戻すような戦争ばなしが、観たい。自分を冷静に保つために。
不愉快犯~別府三億円保険金殺人事件~

不愉快犯~別府三億円保険金殺人事件~

ハルベリーオフィス

小劇場B1(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

なかなか面白い巧みな台本と演出で、最後まで目が離せない。いしだ壱成さんは貫禄ある俳優になったもので、この作品では存在感というかキャラクター性が抜群。

明日を落としても

明日を落としても

兵庫県立芸術文化センター

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

捩れた時間軸。この作家の武器は語り口にある。話が時空を超えてすっ飛んでいく刹那の快感。遣り口が小説っぽい。あれ?これ、いつの話なのか?と頭の中でガチャガチャ構成を手繰り寄せる。ばら撒かれたフラグメントを脳内で整える。BUCK-TICKに『VICTIMS OF LOVE』という曲があって再録BEST版では歌詞の順番がバラバラにされている。当時、櫻井敦司は「歌詞を書いたカードをばら撒いて拾い集めたような構成」と語っていた。それでも伝わるものは伝わる不思議。話の関係性を読み取る脳の認識機能。関連する物事を推理し少しずつ組み立てていく。

阪神・淡路大震災、1995年1月17日5時46分52秒にマグニチュード7.3の地震が発生。死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名。2011年3月11日に起きた東日本大震災は死因の9割以上が津波による溺死であったが、こちらは建造物の倒壊による窒息、圧死が殆どであった。
震災から10年、復興のシンボルとして建てられた兵庫県立芸術文化センター。開館20周年記念作はピンク地底人3号氏の書き下ろし。
作家は演出の栗山民也氏との相性がいいのでは。互いに足りない部分を補うような関係性。

舞台は新神戸駅近くの桐野旅館、2025年現在の様子と1994年から1995年に掛けての日々が交互に描かれる。旅館を継いだ社長に尾上寛之氏。妻の田畑智子さんは女将として取り仕切る。産まれたばかりの赤ん坊、遥。先代からの番頭格、春海四方氏。
主人公である佐藤隆太氏はやる気のない従業員、社長の弟である。かつて定時制高校に通っていた時代、ボクシングに情熱を燃やしたがそれも靭帯を切って呆気なく終わった。追憶の残り火のように吊るされたままのサンドバッグ。
物語は田畑智子さんの学生時代の級友(富田靖子さん)が息子(牧島輝氏)のバイト採用のお願いに来たことから動き出す。息子は喧嘩っ早いヤンキーで礼儀知らず、定時制高校にも禄に行ってない。職に就いてもすぐに喧嘩でクビになる。社長はこのどうしようもなさが弟そっくりだと思った。3ヶ月の見習い期間中、教育係として佐藤隆太氏が面倒を見ることに。

MVPは牧島輝(ひかる)氏。リアルなイキったヤンキーキャラを自然に演じている。富田靖子さんを背後から軽々と持ち上げたり人形のように横抱きにするシーンは場内バカ受け。
佐藤隆太氏がヤンキーをスポーツで更生させる流れは『ROOKIES』っぽいのでは。(観ていないが)。ボクシングに嵌まっていく流れが興奮する。

佐藤隆太氏は昨年の『GOOD -善き人-』の自然に段々とナチスに取り込まれていく大学教授役が素晴らしかった。普通の人間の尺度を持っているので観客も心を寄せ易い。

酒向芳(さこうよし)氏は映画『検察側の罪人』に大抜擢され、怪演で狂い咲き注目を浴びた。蜷川幸雄似。今作でも妙に意味有りげな存在感。

30年前の震災の傷が全く癒えないままの主人公。同じ所をぐるぐるぐるぐるループしている感覚。歳だけ取るが見える景色は何も変わりゃしない。そのリアルさといつまでも繰り返す悔恨。もしあの時ああだったら。もしあの時こうだったら。全てが自分の選択でどうにかなったものだとの誤解。そんな力は個人にはないよ。受け止め切れない現実と時間を掛けて折り合いを付けるしかない。とにかく時間は掛かるだろう。けれどきっとその時は訪れる。きっと訪れる。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

旅館のモデルとなったのは「料亭旅館 ほてるISAGO神戸」。売りが同じく神戸ビーフロースト・握り・ステーキ・しゃぶしゃぶのフルコース。

56歳の富田靖子さんと44歳の田畑智子さんが幼馴染、45歳の佐藤隆太氏が恋愛対象として好意を抱く。それを成立させる富田靖子さんの美貌。まだまだ可愛い。

川島海荷さんが赤ん坊だった自分を抱いていた女性が誰だったのか気になり、震災当時にそれを見た酒向芳氏に写真を見せて尋ねる。この話は佐藤隆太氏も父親も亡くなった母親について詳しく教えてくれなかったことを示す為のエピソードなのだが、誤解を招きやすい。川島海荷さんの母親が別にいるのではないかとミスリードさせる。(全くそんな話ではない)。

佐藤隆太氏が富田靖子さんに恋する展開も道理が欲しい。ただ顔が好みなだけだと話として浅い。(以前から見知っていて気になっていた、とか)。

自分に出来ることは人に体験を伝えることだけ、と知った佐藤隆太氏は川島海荷さんに語り出すラスト。死んでいった奴等と生き続けた奴等。どうせいずれ死者の世界に帰るのならば、せめてそれまで生者の世界にバトンを託そう。
リーディングセッション『蠅取り紙ー山田家の5人兄妹』

リーディングセッション『蠅取り紙ー山田家の5人兄妹』

OVER40S

ザムザ阿佐谷(東京都)

2025/10/18 (土) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かった!アコーディオンの生演奏も得した気分。良かったです。

223番のはなし 東京公演

223番のはなし 東京公演

劇団芝居屋かいとうらんま

OFF OFFシアター(東京都)

2025/10/10 (金) ~ 2025/10/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

演技力の高い方が多いと感じました。何を伝えようとているのか、こちらも読み取ろうと真剣になる舞台でした。
環境問題だけでなく、異文化コミュニケーションや風習、現代社会のストレスなど、様々な問題を含んだ、興味深い作品でした。
ありがとうございました。

当番の娘

当番の娘

劇団匂組

「劇」小劇場(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感動!傑作!最高!「当番の娘」の話は知っていましたが、舞台で観るとかなり腹に堪えますね。ほんとすばらしかったです。この舞台はすべての女性、すべての男性に見てもらいたいですね。とくにロシアの男性に… 若い俳優さんから年配の俳優さんまで演技派の方たちばかりで安定した舞台でした。正直、着替えがはじまるまで「このペースで終わりまでいくのかな…だとしたらちょっときついな…」と思っていましたが、着替えがはじまってからのスピード感は半端ないですね。あと演出がすばらしかったです。今回のようなスタイルはあまり見かけないのでとても新鮮でした。最高の時間をありがとうございましたm(_ _)m

明日を落としても

明日を落としても

兵庫県立芸術文化センター

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/10/23 (木) 18:30

145分。休憩15分を含む。60-休15-70

当番の娘

当番の娘

劇団匂組

「劇」小劇場(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

内容的に語弊があるが面白い。戦後80年の節目、多くの反戦劇が上演され 本作もその1つ。特徴として 戦禍ではなく戦渦を描いており、その悲惨さは十分すぎるほど伝わる。テーマとしては「重い」が、それに負けない「想い」が詰まった公演。当日パンフに演出の三浦剛 氏が「少々突拍子もないスタイルかもしれないが、笑撃と衝撃の塩梅は上々かと」記している。この敢えての演出は 評価が分かれるかもしれないが、自分は好意的に受け止める。一瞬 朗読劇かと思ったが、そこには或る意味が込められている。

舞台となるのは、信州松代 真田祭りの昼下がり。そこには松代大本営跡地があり、本土決戦(政府中枢機能移転)を想定して造られたもの。主宰の大森匂子 氏が長い日々あたためてきた渾身作ー反戦と差別ーであるが、それは戦時中のことに止まらず 今に続く問題を提起している。それをハラスメントという別の形で描く。少しネタバレするが、真田祭りの日に来た老女との語らいから、満蒙開拓団 当時の忘れたいコトが甦ってくる。それがタイトル「当番の娘」に繋がる。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

恋愛漫画~鳳凰篇~

恋愛漫画~鳳凰篇~

ライオン・パーマ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 初日を拝見。ライオン・パーマが何度となく再演してきた作品とのことだが、自分は初見。尺は休憩無しの約2時間25分。然し一瞬たりとも目を逸らすことが出来ない傑作だ。初日が開けたばかりなのでネタバレは極力控えるが必見の作品。華5つ☆。観るべし!

ネタバレBOX

 板上は嵩上げされた奥のホリゾントセンターの幕のど真ん中に“万引きは極刑です”の張り紙、上手には“万引きを見つけたら金一封”、同様に下手には“本屋→警察→学校→親”と記された紙が目を引く。これだけで尋常ではない、笑いの種が撒かれている。因みに開演前にはサマータイム等のBGMが流れてセンスの良さを感じさせる。明転すると板中ほど上手は本屋の入口、小さな町の本屋で、店員が正面を向いて座っている。センターやや下手には引き戸式の手洗い、下手は書架が置かれている。嵩上げされた奥は、場面、場面で書店主が兼業している小さな出版社の編集部になったり、ラーメン屋のキッチンになったりとオムニバス形式の今作の物語の展開次第で様々に変容する。枢要なプロットは漫画家vs編集者、書店と常連客、張り紙に纏わる諸々、ラーメン屋の顧客獲得作戦と山奥に残る狼保護vsダム建設、瞬時伝送システムを持つ企業の実際、天才漫画家の闘病と後継者問題これらの挿話がくんずほぐれつしつつ終盤で一気に集約されてゆく。この手際の見事なこと。而も上質な笑いを誘うシーンが随所に鏤められ観客を擽る。無論、これだけの傑作、それだけで終わらない。一々の挿話自体が深く、隠されたテーマは各々大変本質的で喫緊の問題群でもあるが、これらを如何に非専門家の生活者に届けるか? についての極めて稀な成功例でもある。

#三等カヨあがれ

#三等カヨあがれ

三等フランソワーズ×カヨコの大発明×ユニットまいあがれ

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2025/10/10 (金) ~ 2025/10/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初日を観ました。
ハッシュタグ込みで公演名なトリプル10周年記念公演。
おっもしろかったぁ!
しっかり各団体の特色MAXで味わえて、この面白さを三連続で観られるって最高でした〜!

ネタバレBOX

三等フランソワーズ
様子のおかしい女性書かせたら天下一品な中川さん。様子のおかしな女性まかせたら天下一品な福田さん。人畜無害そうにみえてクセありながらやっぱり無害な男前やらせたら天下一品な倉増さん。
ひたすら面白かった。よくあんなん思いついたなの域。

まいあがれ
思い出に残る過去の勝山さんの数々のリズム芝居が融合して新たに生まれ変わったかのような作品。相対性理論が切なく胸を締め付け、還りたくても還れない郷愁を煽る。これはだいぶ好き。米山さんと中嶋さんの仲良しコンビがやるからまたいい。

カヨコの大発明
演劇人が書く演劇人の話。ありそうでありそうなメタな雰囲気を醸し出す。そんなまぁ落ち着いた会話劇で進めておいてからの…が醍醐味。概念が出てきた瞬間に心鷲掴みにされたカヨコファンはおそらく多数に違いない。小道具のブツあれどうしたんだろう、そんなとこも。
わがことなかれ

わがことなかれ

海ねこ症候群

シアター711(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/10/22 (水) 19:00

気になってる劇団の新作。若いから書けるファンタジー。111分。
 小学生4人が秘密基地を発見するオープニングから、その内の2人が大人になってシェアハウスで同居しているが、もう1人は既に…、の物語。ファンタジーっぽい芝居をやっていたユニットだが、本作もその感じはあるものの「よくある話」ではあるかと思う。展開はある意味で期待通りだが、丁寧に描いて面白い。秘密基地とか戦闘機とかのエピソードは今一つ有効ではないように思うが、清清しく描かれた若い芝居で気持ち良く帰れる作品だった。地元に一人残った晴子のキャラクターが良い。

売春捜査官

売春捜査官

高円寺K'sスタジオ本館

高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)

2025/10/15 (水) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

無料(投げ銭)公演。高円寺K'sスタジオ10周年特別企画
脚本は同じでも、演出や役者(演技)によって面白さが違って観える。今回の「売春捜査官」は、主人公の木村伝兵衛部長刑事を木村夏子サンと柏尾志保サンが競演する。その演技が見どころ。最終日に続けて観たことによって、その違いを感じることが出来た。

何度も「売春捜査官」を観たが、それだけに観慣れたといった先入観を持っていたが、表現しにくい新鮮さ斬新さがあった。公演は、木村伝兵衛像が役者の演技だけではなく、その外見ー体躯によっても印象が違って観える。演劇は役者の数だけあるような。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし)【柏尾志保版】

ネタバレBOX

物語は、警視庁の木村伝兵衛部長刑事の取調べを中心に熱海の殺人事件の概要をなぞりながら、その過程で事件の底流にある問題を抉るもの。人間を鋭く洞察し、心理描写と情況表現が中心であることは間違いない。

男優陣は、熊田留吉刑事(日下諭サン)、梶刑事(梶原航サン)、大山金太郎(千葉大和サン)との絶妙な遣り取りに人間味が…そんな滋味溢れるものが観てとれる。単に伝兵衛の盛り立て役に止まらず、1人ひとりの人間性を立ち上げている。体躯のよい日下さんは、厳つい風貌と剛腕を見せつつ純情な面を併せ持つ熊田刑事、梶さんは顔付こそ野性味あるが、やはりホモらしい繊細さを見せる梶刑事、千葉さんは2人に比べると体は細いが、強情で熱い男-大山金太郎。相乗効果を発揮した役者たちの演技はよかった。

なお 柏尾バージョンでは、梶刑事を木村夏子さんが演じていた。この公演は 主に5人で運営ー登場人物は4人、そして1人は照明/音響・音楽など舞台技術を担当する。この回は梶原さんが技術を担当しており、李大全(故郷 五島の先輩)を演じる時だけ 木村さんが技術へ。だから出ハケの場所や動線が違う。まさに少数精鋭での公演だ。

柏尾さんの伝兵衛は、大柄で迫力があるが 白ポロシャツというラフな格好。台詞は はっきり明瞭だが、情感に乏しいような気がした。2人の伝兵衛は、その体躯の違いもあって、一部シーンが異なる。例えば、熊田と梶の両刑事が伝兵衛のスリーサイズを揶揄う場面は、柏尾さんのバージョンでは割愛。その代わり 高校時代に熊田と別れた駅舎場面を入れる。2人の女優の体躯や特長を活かした「売春捜査官」---敢えて例えるなら、木村さんは精神派、柏尾さんは肉体派といった印象。
次回公演も楽しみにしております。
売春捜査官

売春捜査官

高円寺K'sスタジオ本館

高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)

2025/10/15 (水) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

無料(投げ銭)公演。高円寺K'sスタジオ10周年特別企画
脚本は同じでも、演出や役者(演技)によって面白さが違って観える。今回の「売春捜査官」は、主人公の木村伝兵衛部長刑事を木村夏子サンと柏尾志保サンが競演する。その演技が見どころ。最終日に続けて観たことによって、その違いを感じる。彼女を支える男優陣ー日下諭サン、梶原航サン、千葉大和サンーの熱演も良かった。もちろん舞台技術の照明や音楽が実に効果的に使われ、印象深く観(魅)せる。

つかこうへい の思いは、やはり役者の演技力という体現なしでは伝わらない。特に主人公を演じた2人の力強く凛とした姿と愛嬌ある仕草、また山口アイ子の切なくも強かな女、その異なる女性像を自在に演じ分ける。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし)【木村夏子版】

ネタバレBOX

舞台セットは、お馴染みの古びた机、その上に黒電話、捜査資料、そして洋酒瓶が雑然と置かれている。音楽は冒頭の「白鳥の湖」は定番であるが、それ以降の劇中音楽は情景場面に応じて流すが、その選曲が実に良い。

在日への人種差別の激白、その故郷を追われた慟哭が胸をしめつける。また伝兵衛の部下 梶ワタルを同性愛者として登場させ、性への偏見差別、職業・職場、さらには社会進出における男女差別、権力至上への揶揄など、色々な問題・課題を浮き彫りにしていく。今では憚られるような差別・卑猥語や隠語で捲し立て、観客によっては嫌悪感を抱くかもしれない台詞をポンポンと発する。一方、人が感じ持つ優しさ、哀しさ、孤独、気概などの人間讃歌とも受け取れるシーンの数々。

熱海の海岸で絞殺された山口アイ子の平凡と思われた事件。その容疑者 大山金太郎を一流の殺人者に仕立て上げることによって、事件の底流にある本質を炙り出す。この硬質で骨太い描きの中に、女性ならではの純粋と情念の心情を垣間見せる。またちょっぴりあるお色気シーン、この緊張・弛緩のほど良い刺激が物語を飽きさせない。

木村さんの伝兵衛は、小柄で華奢な体格に 黒スーツでビシッと決めたスキのない恰好。ただ 自分が観たのが楽日ということもあるのか、声が掠れており聞きにくい。聞き取れなくても関係ない、例えば 冒頭の電話口に向かって喋る台詞は、男勝りの気性の荒い女性という印象付けが出来ればよい。しかし本篇の中はしっかり聞かせてほしかった。そこが惜しい。好かったのは、衣裳が関係しているのかもしれないが、芯が強いという内面の激しさが迸っていた。
次回公演も楽しみにしております。
カスタネット

カスタネット

末原拓馬

TBS赤坂サカス広場特設紫テント(東京都)

2025/10/20 (月) ~ 2025/10/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ドブロクが呑んだくれながらカスタネットの話を伝えようとするのは、彼なりの贖罪なのでしょうか。カスタネットの花瓶を紛争地に投げ込みたくなりました。

『ストーリーズ』-短編物語選集-2025

『ストーリーズ』-短編物語選集-2025

楽園王

GALLERY LIPP(東京都)

2025/10/08 (水) ~ 2025/10/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/10/12 (日) 15:15

【PROGRAM1】
1編目の長堀主宰による二人芝居はパラレルワールド系も好きな身として頬が弛む(小松左京「こちらニッポン…」も連想)。「12月のカレンダーをめくる」という表現から瞬間的に予期したものがアタリでニヤリとしたりも。
2編目は新美南吉作品の朗読劇。楽園王ではお馴染みの(だよね?)演技エリア内を歩き回りながら読み終えたテキストを床に散らかす(笑)スタイルだが、会場の広さゆえ数行にわたるものからキメとなる文節一つだけ(←フォントが大きい)のものまで異なるテキストが見えて膝を叩く。よもや意識した演出?
3編目は岸田國士「紙風船」。前日の岸田作品同様、クラシカルとモダンの融合もさることながら、序盤の二人が背中合わせとは!

プンティラ旦那と下男のマッティ

プンティラ旦那と下男のマッティ

MODE

座・高円寺1(東京都)

2025/10/17 (金) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

二時間半の大作でした。

ネタバレBOX

大地主のプンティラは酔っ払っているときは人間性あふれる好人物に見えるが、しらふになると冷酷な資本家に戻る。運転手マッティはその性質を見抜いている。お嬢さん育ちのプンティラの娘エヴァ、その婚約者の外交官、プンティラの取り巻きである裁判官や牧師、プンティラに振り回される労働者や女たち。フィンランドののどかな自然を背景に描かれるドタバタ喜劇は、ナチスの手から逃れ北欧への亡命中の1940年に書かれた。 初演は1949年。第二次大戦後、亡命先のアメリカの赤狩りから逃れ、ようやく東ドイツに帰国。そこで設立した劇団ベルリナー・アンサンブルの旗揚げ公演が、このプンティラ旦那と下男のマッティ。古い時代で話ですが、人間はそんなには変わらない。今ならとんでもないハラスメントになりそうですが、人々が生き生きと暮らしていて、元気をもらいました。見ていて楽しかったです。ただ、初見だと何の話か分からないので、あらすじを理解してから見た方が良いです。
焼肉ドラゴン

焼肉ドラゴン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2025/10/07 (火) ~ 2025/10/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/10/22 (水) 13:00

日韓国交正常化60周年記念公演『焼肉ドラゴン』作/演出 鄭 義

舞台の伊丹市とほど近い神戸に住んでいた。時代は1969年から71年、中3から高2だっただったか。小中、特に小学校では韓国出身のクラスメイトが多かった。台湾ルーツの子供も。通学経路には朝鮮学校があった。社会人になって鶴橋の焼肉屋にはたまに行っていた。焼肉の匂いに包まれる街。

時代を切り取る流行語や、上演前のアコーディオンで弾いていた曲達は懐かしかった。

在日韓国人、直接的には描かれてなかったが、差別。そして居住している劣悪な環境の地区。

戦後を生きて来た両親、そこで育った子供達、三姉妹、彼が生きた 3年を描いた 2時間45分の上演。私立中学での韓国人へのいじめ、自死を選んだ彼。時生はちょうど同じ世代だ。生きて欲しかった。我々の世代はいじめはほとんどなかったのだけど、小学校時代、同級生は何人とか何も気にしていなかった。

劇中、台詞にあった済州島での事件のこと、あとで調べてみるが、島民の惨殺/虐殺。

次女夫婦の北朝鮮への移住。在日の帰還事業の結末を知っている訳で、あの出発がどういうことを意味するのか、悲しい気持ちを抱く。
そういったことを背景に、厳しい時代を生きて来た夫婦の姿、家族、時生の姿に最後は涙が止まらなかった。

でも、あの最後のシーン、笑いを生んでいた様に、次へのスタート、辛いことになるのだけど、次へと歩き出す姿だと受け取った。未来への消えていったのだと

さる

さる

中野坂上デーモンズ

水性(東京都)

2025/10/15 (水) ~ 2025/10/22 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

(笑えた度)5.1(今感)4.08(完成度)5.1(平均)5

異能で孤高の文学者、モヘーさんによる3人芝居。
ミニマムなマジックリアリズム風味演劇。

ダウナーな日常から出発して、想像もしていないどこか彼方へ連れて行ってくれる、極上の75分。

ネタバレBOX

モヘーさんの抑制の効いた変か普通かキワキワな動き、
わかさんの振り切れた瞬間に輝く異常感、
柿原さんのひたすらリアルな人間の怖さ。
これは、ホラーです。

かたや、笑いも極上。
米津Lemonがかかった瞬間に爆笑。
音入れで笑いをとる凄み。
サカナ新宝島もドンピシャ。
いやー、絶妙なとこ、ついてくるなー。

細部がじわじわくる。オフビートな笑い。
ナポレオンダイナマイト、インスタント沼、
最近だと超絶異才竹林亮のMondays、みたいな。

諦めていた夢を再びみるのは、地獄の1丁目なのか? 
いっとき芸道に片足を踏み入れし者、大多数に訪れる、圧倒的なリアル。

Mondaysでは、夢の再チャレンジの結末はよくあるハッピーエンドではなく、ビターエンド寄りのフラット。
現実はそんなもの。
考えようによっては、そんな宙ぶらりんなリアルは、逆に極めてビターな夢のあとさき。


熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン

熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン

ゲキコパ

千本桜ホール(東京都)

2025/10/16 (木) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

良かったです。ただ、今までにない登場人物は不必要な気がします。役者さんの熱量も伝わって来ましたし、今後が更に期待大ですね。

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