
ピテカントロプス・エレクトス
劇団あはひ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/30 (木) 14:00
時を超える「穴」を通して問答を交わす猿人・原人・旧人・人類・未来人(?)……。
星新一の「おーい でてこーい」も想起しつつお得意の(?)能楽っぽい表現を愉しんで観ていたが終盤の「問いかけのラッシュ」が痛烈。
しかし事前に公開している「あらすじA」は比喩で裏に「あらすじB」があるって、もう一度観させる巧妙な策略では?(笑)

Dear・異邦人
劇団「楽」
スタジオR(東京都)
2024/06/05 (水) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
男女の二人芝居。手話の設定がいいですね。コミカルに始まるけれど、かなりシリアスな展開に。思慕と再生の話、ぐっときました。

短編作品集『3℃の飯より君が好き』
劇団印象-indian elephant-
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2024/06/05 (水) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
演出・鈴木アツト【Aチーム】
①『メイクアップ!』
児童青少年演劇の企画の為に作られた30分のリーディングもの。
中3の少女二人と少年一人の青春模様。化粧は男尊社会への隷従だとガチガチのフェミニストの村田詩織さん。長い付き合いで親友の佐藤美輝さんは演劇部でヒロインを勝ち取り、メイクしたくて堪らない。その『オセロー』主演の河野賢治氏はより作品のテーマを深める為、あることを決めた。
②『3℃の飯より君が好き』
新婚夫婦。仕事から帰って来た滝沢花野さん、これから夜勤の交通警備に向かう向井康起氏。滝沢さんの腹が突然膨れて中に氷の塊が入っているようだ。

かれこれ、これから
ONEOR8
新宿シアタートップス(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

「AM0時のFMで」
劇団Funplace
STAGE+PLUS(大阪府)
2024/05/11 (土) ~ 2024/05/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
私の観劇に先駆け、奥様がお友達と劇団Funplace『AM0時のFMで』チームAM初日を観劇しました。
奥様曰く「面白かった。ジゲキの卯月悠さんと岡田さちこさんが上手だった」
お友達曰く「とても良かった」との事でした。
私が拝見したチームFMでは、竹下舞さんと藤倖志郎さんが目を引いたが、皆さんお上手でした。

「AM0時のFMで」
劇団Funplace
STAGE+PLUS(大阪府)
2024/05/11 (土) ~ 2024/05/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チームFM千秋楽観劇
室山に電波ジャックへ強引に仲間入りさせられた早川·金井、そして乗り気な美智子!
無気力だった彼らが、いつしか一致団結し…
羽交い締められる早川さんと金井さん、そしてイキイキしだす様子が、とても自然で、最後は感動的でした😢
面白かった😆

TOMORROW
劇団伽羅倶梨
KARAKURIスタジオ(大阪府)
2024/05/10 (金) ~ 2024/05/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初回観劇。
客足遠のいた老舗旅館。成仏できない先代は、自殺志望の客に頼み込み…
楽しいお話☺️
伽羅倶梨の皆さんは言わずもがな、それ以上に若い客演さん達がイキイキのびのび演じられ、皆良い人ばかりで、ホンワカ愉しかった😆
心ホクホク🥰

Four Hearts
トランク企画
アバンギルド(京都府)
2024/05/09 (木) ~ 2024/05/10 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初日観劇
決まってるのは「ある夫婦の家に、ある夫婦が訪ねてくる」それだけ!
4つの心が織りなす台本のない物語。
1時間ぶっ通しのインプロ✌️は初体験😁
事前の観客ヒアの心象を元に、4人の役者さんが物語を動かし、手探りで着地点を模索するドキドキ💓感が堪らない💕
そして、そして…
トランク企画さんも、実はUrBANGUILDさんに伺うのもお初💓でしたが、楽しい時間を過ごせました😃
「絵画教室始めるの」とか
「1回40分」とか
🍺飲み続けるとか
色んな物をぶっ込んで…
最後は…
「拝みに行こう」
「3人で描いた絵」
等々、秀逸な納め方、皆が幸せでハッピー💕
ホットワインも美味😋

中之島春の文化祭2024
ABCホールプロデュース公演
ABCホール (大阪府)
2024/05/04 (土) ~ 2024/05/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
5/5 2日目の野外リバーデッキステージ😍
幕間に野外リバーデッキステージを拝見💓
沢山のアーティストさんから元気もらえた💕
11:00~
Cheze、名迫僚太
14:00~
アカペラセッション(まっ赤に燃える太陽ほか)
16:30~
FASE

マーヴィンズ ルーム
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
シリアスなストーリーだけど淡々と、そしてユーモラスに展開される良質の舞台。大分前に観た映画版の『マイ・ルーム』より、こちらの方が好きかも。

デンギョー!
小松台東
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/05 (水) 14:00
座席1階
小松台東で作・演出をする松本哲也は宮崎県の出身。パンフレットには電気配線工事会社の広告がさりげなく載っていたりして、これと松本の関係が気になる。彼はここで今作の取材をみっちりしたのだろうか。全編宮﨑弁で構成された今作は3度目の再演。小松台東のヒット作だ。
宮崎県にある小さな電気配線工事会社「宮崎電業」。現場に出る作業員たちの控室が舞台だ。冒頭、ここに現場上がりの営業部長が背広の男を連れてくる。東京で銀行に勤めていて故郷に戻った男だが、執行役員として迎えるという。下請けを含む作業員たちは「聞いてないよ」というけげんな表情で険悪なムードになる。
この物語の陰の主役は宮崎電業の社長だ。人情に厚く社員と意思疎通をし、とても慕われていることが分かる。そして、今は入院中とか。これについても、作業員たちはきちんと伝えられていないようで、営業部長への不満が際立つ。特に、同期である現場主任は面白くない。
「陰の」としたのは、この物語で社長は舞台に登場しないからだ。社長を中心に人間関係が続いていたこの小さな会社が、社長の入院という事態に少しずつひびが入ってくる。作業員同士の関係、営業サイドとの溝、社内結婚をしたベテラン女子社員と、ひとり親でぐれかかっていたところを社長が入社させた若い女子社員。それぞれの登場人物のつながりやお互いの感情が、縦糸になり横糸になり編み合わさっていく見事な会話劇が楽しめる。
社員のプライベートなことを堂々と先輩社員が詮索して語らせるなど、今ならパワハラかセクハラみたいになる昭和の雰囲気がとても温かく感じる。執行役員として入った男は暇を見ては控室に来て人間関係を結ぼうとするが、職人かたぎの作業員たちには「元銀行員=エリート」という先入観や、何といっても「宮崎✕東京」という都会への怨嗟の壁がある。だが、執行役員の男は何回もぶつかりながら壁を壊そうとする。その愚直な行動が、とても感動的で胸に刺さる。
現場を抱える小さな会社の本格的な会話劇は異色であろう。だから、3演でもお客さんは満足する。今日は平日の昼間、しかも三鷹という少し足場の悪い(劇場には失礼だが)ところだからかもしれないが少し、空席が目立った。だが、この芝居は三鷹からバスに乗っても見る価値がある。お勧めだ。

阿呆ノ記
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/06/04 (火) ~ 2024/06/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
九州の山奥にある阿呆村。そこでは捨て子や孤児、罪人の遺児等を古来より寺で養う風習があった。そして自然災害や疫病、飢饉・干ばつでの祈祷、建造物建立の安全の祈願の折りに阿呆丸と呼ばれたその子供達を各地に連れて行く。人柱や生贄、人身御供として天に捧げた。明治になって刑法が整備され、この風習は禁止される。解放された阿呆丸達は死に場所を探して山奥を彷徨っているという。この設定だけで凄まじく面白い。
昭和12年、日中戦争の激化から軍国主義に滑り落ちていく時代。村人は鉄道工事に駆り出され、山は切り崩されていく。代々猟師の一族である、音無美紀子さん、その息子である鉄砲衆頭・三村晃弘氏、孫である加村啓(ひろ)氏の物語。子を産んですぐ亡くなった妻を今も愛し続けている三村氏。そんな息子の嫁として隣村から大手忍さんを貰ってくる音無さん。勝手なことをされて怒る三村氏だったが・・・。
MVPは女頭目・音無美紀子さん。文句なしの素晴らしい存在感。
ヒロインの大手忍さんも魅力的、永遠の少女性。もう少しガタイがガッチリしていた方が作品的には合ったかも知れないが。
もう一人の主人公、加村啓氏も印象的。劇団Q+の『マミーブルー』も覚えてる。寺山修司系の森田剛っぼい感じ。アングラ・イケメン。
神社のおみくじのように赤い紐が無数に木々に縛り付けられている舞台美術。
ドイツのモーゼル(マウザー)銃、Gew(ゲヴェーア)98のフォルムが作品の文鎮と構える。
桟敷童子フォークロアのアーキタイプを見せつけるかのような作品世界。常連客はいろんな既視感にとらわれる筈。
好きか嫌いかと聞かれたら、大好き。
是非観に行って頂きたい。

こどもの一生
あるいはエナメルの目をもつ乙女
インディペンデントシアターOji(東京都)
2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
配信映像で鑑賞。観たかった中島らもの本戯曲をやっと拝めた。
蓋を開けると、凡そ元脚本から想像のつかないようなメタル調の設えで、音楽、踊り、衣裳、演技のタイプも、グロい方に寄っている。が、これはこれで本バージョンの色が貫徹され、成立。
一方自分が感じたいと思っていた作家の作風は俳優が喋るテキストから汲み取っていた。
「こどもの世界」の描写が秀逸。これは中島らもの引出しだなと感じさせる。
色々とチクリやってる台詞がちりばめられていて気がするが、芝居の作り的にはそこはさらっとさり気なく流してる感じ。
正直な感想は、もっと普通にというか、人間のリアルな佇まいを提示し、その口からあの台詞たちが吐かれるのを見たかった。その方が面白いに決まってる。本舞台の演技とは比較にならない緻密な演技にはなるが、彼らも役者の本領をそのように発揮したかったのでは?(演出ディスりになってしまうが。)

泥人魚
劇団唐組
花園神社(東京都)
2024/05/05 (日) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
この日は別の芝居を観た後、思いの外短い芝居だったので「この足で花園間に合うんじゃね?」 と電車を調べたら19時10分前には行ける。恐らく当日券は出すだろう(一応劇団電話に電話するも出ず)と踏んでちょうど大雨の降る中を「ちょっとドラマチックだな」と悦に入りながら向かった。
そう言えば唐組を観始めた頃もあったな、と久々の立見を覚悟して受付窓口で当日券購入。テントの最後尾の出入口はどうやら今回役者は使わないようだ。その少し前あたりに小劇場演劇の重鎮さんが丸椅子に座り、芝居を見ながらやたらと笑っていた。他にも何人か演劇人が居たな。。
という訳で、コクーンや梁山泊でも(確か)観たこの有明海ギロチン堤防を題材にした演目を、改めて味わい直す事に。
お祭り好きだった唐十郎を弔うかのように?テント内は熱気でにぎわい、舞台共々笑いが絶えず。一方自分は改めてこの戯曲の言葉を割と冷静に追いかけていた。
「ほっぺ」と言ってるのか「ほうべ」と言ってるのか、本戯曲の幾つかのキーになるワードの一つは最後まで不明のままだったり、ガンさんと二郎とヤスミともう一人の女性の関係も結局のところ、これだけ耳をそばだてて聴いても分からずじまい。以前観た時の印象と同じくであるが、台詞で状況を説明する分量がえらく大きいのが本作の特徴だ。湯たんぽを作っているトタン板の工場を舞台に、遠く離れた有明海での事が(なぜ皆ここに集まって来てるんだか分からないが)延々と語られるのである。この「言葉で状況や情景を説明する」比重は元々唐作品には多いとは言え、本作は中々の比重なのである。
この作品は人間の無策で無思慮の産物のようなあのギロチン堤防が人間と「人魚(のような存在)」に象徴される生物、その両者の関係に悲しい物語を引き起こす、という大括りの構図を感じさせるが、唐流の幻想譚は本作に限っては、現実を抜け出た先の彼岸を像として結晶しない。幻想が幻想の世界のままに終わる(自分の連想力が及ばないとも言える)。自分の中で「ギロチンは怪しからん」と結論を持っているからだろうか・・。現実において目を見開く事を要請されるより、幻想の中に眠る以外ない、となる。
てな事言ってもテント公演の主眼はお祭りなのである。掛け声が飛び、拍手と笑いが起き、爽快な気分で劇場を去る。それでいいと言われればその通り。状況劇場によく同行した劇評家扇田昭彦氏が亡くなった時唐十郎が訪れ「また楽しいことやろう」と死に顔に囁いたのだとか。楽しんだ者勝ちだ、ってのは強いメッセージだ。

スマイル フォーエバー
熱海五郎一座
新橋演舞場(東京都)
2024/06/02 (日) ~ 2024/06/27 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/06/03 (月) 13:30
座席1階
公演中に87歳になる伊東四朗が登場。NHKドラマ「老害の人」でも見事な主役を務めた印象が強く、そのレジェンドを生で見るだけでも行く価値があるのかも。三宅裕司が若手に見えてしまい、いつもと違う熱海五郎一座を楽しめる。
サブタイトルに「魔法」とあるが、舞台美術など「ハリーポッター」のパクリというのがまず、目を引く。前段から魔法学校のシーンが登場するが、一座のやや高齢の役者たち(渡辺正行や小倉久寛ら)が学ぶのは「定時制」となっていて、これが秀逸なパクリなのである。では、校長先生はダンブルドアかというと、これが若い女性なのだが、せりふの端々に昭和でないとわからない単語が登場し、若返りの魔法を自らかけているという落ちも強烈だ。
ゲストの松下由樹は都知事の役。役名からして小池百合子のパクリであるのは一見で分かるが、都知事室のツタンカーメンの飾りは何だ。これは小池知事の「カイロ大学卒業疑惑」を笑っているというのも一発で分かる。この舞台で笑い所の数は星の数だが、一番笑えるのは小池知事を揶揄したギャグであるのは間違いない。現実世界では都知事選も近い。はたして本島に出馬するのか。最後の方は、松下由樹が小池百合子に見えてくる。ここはさすがの名女優と言わざるを得ない。
主役の伊東四朗は冒頭から登場し、いつものゆっくりとした調子で立ち回る。突然黙ってしまうところが何度もあるが、これはせりふが飛んだのか、あるいはそういう台本なのかは見ていても分からない。仮に飛んだということだったとしたら、周囲の役者が絶妙にカバーしているからである。喜劇のレジェンドへのリスペクトがあふれている。
老齢をギャグにしたところはあまりなくて、そこは少しホッとしてみていたら、後段でちょっと驚かされる場面もある。本人がどう思っているのかは分からないが、死ぬ瞬間まで喜劇役者でいるぞという決意表明にも見えた。
昨日が初日。千秋楽は今月27日で連日のように公演がある。この長丁場をレジェンドが無事に駆け抜けていくのかどうか。お体を大切に、頑張ってください。

破壊された女
お布団
サブテレニアン(東京都)
2024/05/23 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
俳優による一人芝居のWキャスト公演。出演俳優によって観客の印象が結構変わる作品では…と思います。残念ながら僕はA公演のみ観劇。初演は2019年で5年ぶりの再演、とのこと。
一人の「女」が、見聞きしたこと、体験したこと、自身のこと、頭の中に流れる感情、などを交えて語る、「現在の社会」と「破壊」について。空気感は徹底的にドライ、そして、虚無と絶望に溢れている。ブラックボックスのコンパクトな空間で、俳優一人、映像、照明というシンプルな構成。そこに圧縮されていたのは、今日の日本が抱える「停滞」だと感じた。

ピテカントロプス・エレクトス
劇団あはひ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
会場に入ると、アクティングエリアの中央に穴(奈落)が開いていて、その四方をカラーコーンで囲っている。客席はその穴から距離をとり四方に設置され、穴を取り囲むような状況に。ゴリラっぽい着ぐるみを着た人が場内にいるが、作品タイトルから演出の一部と想像。この穴がタイムホールのように時間を繋ぐ存在となっており、穴を通して前時代(と言っても何万年単位だけれど)の「祖先」と対話する。類人猿からヒトへの時間を辿りつつ、その進化の過程から「知的生命における、生物的、あるいは社会的進化とは?」を見つめ直す…ような作品に、僕には見えました。

ライカムで待っとく
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観劇直前にキャストが初演と変わっている事に気づいた。演出、脚本と長塚氏の対談がKAATサイトにあってながら見をしたが「若干、俳優が変った事で台詞を変えた」「装置も微妙な所で変わってる」、と言っていた。
初演は下手側中段あたりから観た記憶。今回は最前列ど真ん中。(実は少し前完売だったので当日一か八かで・・と考えていたら、楽前日昼夜とも空席が出ていた。)
観始めると、風景が違う。劇の感触も違う。まず亀田佳明が中山裕一郎に。このドラマの中心的な「目」である記者の存在が、コメディ色を帯びて安心させる亀田氏が、どちらかと言えば朴訥なキャラにシフト。(亀田氏は新国立「デカローグ」1~10話に通しで出演する唯一の俳優のため元々無理であった由。)
変更になったもう一名が、沖縄に飛んだのっけに乗るタクシーの運転手(劇中では「事件」の主要登場人物の一人に)。初演では30代の飄々とした風情の役者で、この芝居のナゾめきの空気を担ってもおり、とりわけ最初のタクシー場面では客(記者)を翻弄する振る舞いで笑いどころ多め、劇の始まりの緊張を解き、沖縄場面(過去と現在、あるいはどっち付かずとある)の風景と観客はニュートラルに対面する事となった、と思うのだが、今回は笑い処は一つあるものの他はそこはかとじんわり、といった程度(つまり弾け方が押さえられていた)。
そのせいなのか、あるいは二度目の観劇だったり見る角度だったりなのか、話の筋を時折「同じだ」と確認できた以外は、別物を観る感覚であった。
と、どうしても比較して観る事になるが、沖縄を訪れた記者とその妻と子どもの話(実は妻方の祖父が亡くなった事で帰郷し、夫の方は別口からの依頼があって取材に訪れた)と、記者が取材する事となった事件にまつわる過去のドラマが交互に進み、最後に「死者たちとの対話」と「過去の時空に紛れ込んだ」とも判然としない異空間が作られ、強烈な言葉が吐かれるのであるが、この最終場面になって漸く、私としては劇に追い付いた。
もっと正確に言えば、そこまでの「見え方」が随分と変わっていて、初演以上に直截に「怨嗟」や「沖縄問題」的な証言が届いて来ることに戸惑っていた。恐らく、タクシー運転手であり「事件」の当事者の役が25歳と若く、生硬に寄った演技の質感によるものだろう。(作者は対談の中で、この俳優同士の空気感なら、もっと踏み込んだ言葉を吐くだろうと思えたりした所を、変えたと言っていた。)
そして初演のやや無責任雑誌記者のキャラを通してコメディ感覚で事態を眺めさせていた亀田佳明バージョンとは異なり、場面の直接的な情報伝達によって「見えてきた」情報もあった(これは二度目というのが大きいかもだが)。そしてコメディ調のヴェールによって流れていた台詞の細部に引っ掛かり、意味を読み取ろうとするセンサーも働いた。
従って、「見やすさ」とは裏腹に、事象が苦いまま粒立って迫って来る(私はこの感触は田中麻衣子演出の技量によるもの、と思う所が過去にもあったのだが、もし「敢えて」なのだとすれば、基本的に異化効果を好む演出なのかも知れない)。ギザギザと不快な感触さえ伴って風景が象られると、初演ではギターをかき鳴らす異化効果が、今回は屋上屋を重ねるようであったのは、私としては少々残念(勿体なかった)。
この「飲み込みにくさ」、そして朴訥感のある記者の捉え処のなさが、最後に効いた。(そして亀田氏バージョンでは最後にその味が出なかったな、と初演で微かに感じた事も思い出した。)
それは、イノセントな、所謂罪意識の無い平均的日本人の感性が、痛烈な皮肉で語られた沖縄の亡霊たちの言葉を、受け止める佇まいに凝縮されている。その言葉らを自分の「大切な存在」を人質に取られた今やっと、「聞く」体勢に「させられた」彼は、せめて記者の使命感に支えられてと言いたい所だが、戸惑いながらどうにか目を見開き、対峙できて(させられて)いる。その姿に、本土人である自分が重なるのである。

破壊された女
お布団
サブテレニアン(東京都)
2024/05/23 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/27 (月) 14:00
女優の一人語りによる「或る女」の顛末。そうして語られるのはいかにも「イマの世界」。5年前の初演時に昨今の情勢(?)をここまで言い当てるとは「予言の書」か?(驚)
また、時々あった語りの合間に日常的な受け答えの台詞が差し挟まれるのを面白いと思っていたが、アフタートークで作・演出の得地弘基氏から「種明かし」があって大いに納得。

第壱部「綺譚 逢浄土桜心中」第弐部「DREAM-NeoJapanesque」
想組〜こころぐみ〜
小劇場メルシアーク神楽坂(東京都)
2024/06/01 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/06/01 (土) 13:00
第5回公演となっているが、拠点を福岡から東京に移した矢先にコロナ禍に見舞われて活動ができず、東京での公演はこれが最初だという
。
主宰の大和零河という名前、どっかで見たと考え続けていたのだが、舞台を観て思い出した。BMI25オーバー達が踊って痩せようという1日限定の発表会イベント「脂肪遊戯」の振付担当者としてカーテンコールで紹介されたのだった。
劇+レビュー・ショーという宝塚のような構成。
第一部は歌舞伎の名作「桜姫東文章」をベースにした「綺譚 逢浄土桜心中」。CoRichの「観たい!」で浄瑠璃風と書いているメンバーもいたが、四代目鶴屋南北などの作によるれっきとした歌舞伎である。
驚いたのはこの複雑な筋立ての物語を桜姫・権助・清玄という3人の登場人物だけで、しかも75分という時間のわかりやすい作品に仕立て上げていたこと。衣装も素晴らしく、台詞廻しも宝塚調。殊に権助役の仲井和るながいい。昨年2月に木ノ下歌舞伎が上演した「桜姫東文章」よりもずっと良かった。木ノ下歌舞伎のチケットは7千円もしたのに、こちらはレビュー・ショー付きでその半額だ。
ただ残念だったのは劇中で始終デジカメのシャッター音が響いていたこと。スタッフとしてのカメラウーマンは4列目(最後列)の通路脇に陣取っていたが、静かな場面でもお構いなしにシャッターをきっている。こんな狭い空間だと事前にわかっていたはず。どうしてシャッター音のしないカメラを用意しなかったのか。もしくはゲネプロの時に撮影するとか、客の集中力を途切れさせない方法はいくらでもあるだろうに。
第2部は第1部の3人にさらに3人が加わっての1時間のレビュー・ショー。
ステージが小さいことも影響はしていると思えるものの、新たに加わった3人の技術的レベルはいまひとつの感もあり。
殊にさくらはちょっとヒロスエっぽい感じで、メイク次第で美女にもイケメンにもなりそうで、スタイルもよく、足もよく上がるのだが、振付を覚えていない風な自信なさげな様子が散見されたのが残念。
東京バレエ団の元芸術監督のK氏が福岡のバレエ団の指導に招かれて生徒たちのレッスンをする場に、私はK氏のお招きで拝見したことがある。その時驚いたのは、K氏はバレエシューズを履かない素足で爪先立ち(足の指の腹で立つのではなく、まさしく爪先で立って)苦も無くスピンを連続してみせたのだが、その折にK氏が生徒たちに最後に言った言葉を記しておきたい。「自信を持ちなさい。自信のないものを観せるのはお客さんに対して失礼だし、観せられるお客さんが可哀そうだ。」