最新の観てきた!クチコミ一覧

8361-8380件 / 189759件中
1123GO8

1123GO8

!ll nut up fam

萬劇場(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

コメディとしてみれば、悪くはないと思いました。

ネタバレBOX

ただ、
・やたらと大声での演技が多くて、うるさく感じる
・脚本の筋そのものは非常に単純で、意外性といったものは無い
と感じます。
おぼろ

おぼろ

学園座

関西大学・千里山キャンパス内KUシンフォニーホール(大阪府)

2024/06/28 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

時代劇 殺陣というと学生演劇では学園座 今回はいつ殺陣がでるのか…もう出ないのかと思っていたところ、後半しっかり拝見 刀が折れたのは… 内容も学生とは思えないくらいでしたが、あの二人の歌は要らんかったかも 日曜日で満席は流石学園座という感じ

精肉店のロミオとヴィーガンのジュリエット

精肉店のロミオとヴィーガンのジュリエット

啓蒙ヌードル

インディペンデントシアターOji(東京都)

2024/06/27 (木) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/30 (日) 13:00

初見のユニット。壮大な物語感は確かにあるんだが、何だか乗り切れないのが残念。でも面白い。(5分押し)112分。
 肉食主義者と菜食主義者が倫理感を争う戦争が終わった中近未来。天寿を全うした牛なら食べてもいいじゃないか、と、多数の牛を飼って肉を提供するTECJUコーポレーションが誕生。それを食べれば菜食主義者、と人口の95%が菜食主義者になったが、実は途中で殺してるんじゃないか、疑惑が出て、…の物語。ロミオとジュリエットの物語とは直接の関係はなく、役者も巧い。壮大な構成の物語だったのだが、演技が極端過ぎて着いていけない感じが惜しい。
 作・演出の齋野は、ひみつまたたき『おおかみますく』で観ていたのだった。

誰もが自分を殺人犯だと言う

誰もが自分を殺人犯だと言う

G-フォレスタ

新開地アートひろば(兵庫県)

2024/06/29 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

いろいろ考えさせられる、あっという間の2時間でした!
面白かった〜♪

デカローグ7~10

デカローグ7~10

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/06/22 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

7から10を一日で見た。1から通して、庶民生活に起きる小さな話を10個も並べる、しかも「社会主義」ポーランドの40年前のテレビシリーズが元ネタ、というと、普通はあまり食指を動かされないだろう。ところがそれがそうでもない。どの作を見ても、巧みな展開に引き込まれ、登場人物の心理や選択をめぐって、こちらもハラハラ・ドキドキさせられ、大小はあるが確実に心動かされる。それぞれ無関係の話をデカローグ(十戒)という枠で緩く(あるいは緊密に)つなぐアイデアもうまい。
(つい先日、山田太一「男たちの旅路」シリーズの「車輪の一歩」をDVDで見たが、庶民性、一話完結の連作というスタイル、そして何より各回にそれぞれ異なる強いテーマ性など、共通点がある)

7「ある告白に関する物語」十戒7盗む勿れ
22歳の娘マイカは16歳のときに産んだ女の子を、校長だった母親(津田真澄)が実子として戸籍に入れ、自分はその子の姉として生きてきた。うばわれた娘を取り戻すための思い切った反乱。娘は母親に向かって「私の娘を盗んだ!」となじる。6歳のアニャを誘拐することは「これは盗みではない取り戻すだけだ」と。「盗む勿れ」の戒律から、こんな話を着想したところに舌を巻く。
津田真澄の母親像にリアリティがある。かつて蒸す値を切り捨てたことに負い目はあるが、決して悪人でも冷血漢でもない。アニャを失いたくない悲痛さが胸にしみる。

8「ある過去に関する物語」十戒8隣人について偽証する勿れ
ホロコーストの過去をめぐる話。かつてユダヤ人少女を見捨てた女性と、見捨てられた少女の、40年後の再会を描く。テーマは10作の中で随一の注目度だが、内容は10作の中で一番茫洋としている。結末が肩透かしというか、何か不全感が残る。裏切られた少女の話を聞いても、当事者の二人をよそに、大学生たちはケーススタディとしてしか考えない。子の若者たちの姿にポーランドでも戦争体験の風化が示唆されているのかもしれない。

9「ある孤独に関する物語」 他人の妻を欲する勿れ
不能になった夫(外科医)と、不倫する妻。しかし、妻の不倫は、相手の大学生に押し切られたもので、妻は夫を愛している。よくある夫婦の疑心暗鬼と心理戦なのだが、夫の不能という設定が、男としてのプライド、夫としての自尊心にかかわるヒリヒリした問題にする。妻を疑う夫の行動と、情事がばれるかどうか、夫はどういう行動に出るのかに目を離せない。これこそどうでもいい小さな話のはずなのに、芝居に引き込まれ、一喜一憂させられた。

10「ある希望に関する物語」他人の財産を欲する勿れ。
父が莫大な価値を持つ切手コレクションを遺した、兄弟の話。人情としては、よくわかる話。天国から地獄へ、見事な落差を作って見せる展開がうまい。番犬として本物の犬が舞台に現れ、言うことを翌期うのはユーモアが漂い、舞台がなごんだ。

ネタバレBOX

7:最後はアニャは津田のもとに残り、娘マイカだけが、一人列車に飛び乗る。娘の誘拐・反乱は失敗しtが、成功した時の、今後の苦労を考えるとハッピーエンドと言える。去っていくマイカにアニャが大声で叫ぶが、列車の音がうるさくて聞こえない。その口は「ママ」と叫んだように見えたが、違うかもしれない。いずれにしても、その姿を見てマイカは泣き崩れる。救いのあるラストである。
8:ゾフィア教授は「本当の事を知ったらがっかりするかもしれないよ」という。少女をかくまうためのカトリック洗礼の代父母にならなかったのは、戒律のせいではなく、そのかくまうという夫婦がナチのスパイという情報が来たためだったという。戒律の為というのは嘘だったと。でもその女王法は間違いだった。そのかくまうはずの夫婦は、もう少しで地下軍に粛清されるところだった。
 二人にある種の和解した後、エルジュビェタはそのかくまいうはずだッととこ(仕立て屋)のもとに行く。男は「戦中のことは語りたくない」と何も言わないが、去っていく二人を見て、弟子に「知り合いだ。生きていたんだ」とつぶやく。
 かくまい役の夫婦(男)にわざわざ最後にスポットライトをあてることで、問題の広がり、裏切りと疑いの時代の傷の深さを示しているのだろう。


迷子

迷子

WItching Banquet

Half Moon Hall(東京都)

2024/06/27 (木) ~ 2024/07/03 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想遅くなりました。一体感のある会場でのミュージカルとてもよかった。少し難しい、重い設定、内容だったと思うのですが、そんなに重くならずに楽しく心優しく見られました。歌も素晴らしく本当に優しい時間を過ごせたと思います。ありがとうございました。

1123GO8

1123GO8

!ll nut up fam

萬劇場(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

くどさをかなり感じたが、熱気があって楽しかった。しかし、くどいくらい力の入ったメインのキャストたちに対し、他のキャストの熱量の同化を感じられない。また、神や大王たちの"なぜ、そうなったのか?"心の変化が元から丁寧に描かれていないので、かなり唐突に感じた。セットや照明、予算という大きい壁があるのは分かるが、もっと低予算でも出来ることははあるのでは?と思わずにはいられなかった。

詭弁師のレトラ

詭弁師のレトラ

演劇企画ヱウレーカ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2024/06/28 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/29 (土) 19:00

初見のユニット。世界観芝居だが、分かりやすく面白い。(4分押し)117分。
 言葉で人を癒す「詭弁師」なる存在がいる世界で、気分爽快薬とどちらが、みたいな物語。作・演出の荒井ミサの作品は以前も観たことがあるが(『虚飾のレイス』)独特の世界観をベースにした劇作に特徴がある。本作では、言葉に「力」があり「言霊」や「言の葉」が実在として登場する、というあたりが独特な世界観だが、スンナリ入り込むことができた。言葉か薬か、というあたりは、例えば「鬱」をどう扱うか、という問題にも通じて、ちょっと哲学的な意味も感じてしまった。まひたん,平安咲貴,藤真廉,ゆでちぃ子。など、押しの女優がいっぱい出るのもあって観に行ったのだが、作品も楽しむことができた。人物と「言葉」が同時にセリフを重ねる場面が多く、役者陣は大変だったろうな。まひたんの戦闘シーン美しい。言霊役の平安の扇の裏打ちがないのは、ちょっと安っぽい感じで残念。

PRESS

PRESS

明治大学ミュージカル研究会

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2024/06/28 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても良かったです!
難しいと思われるミュージカルの名作を、力いっぱい演じていて素晴らしかったです。
演技力や歌に個人差は感じましたが、一生懸命さと笑顔に心打たれました。
素敵なミュージカルを堪能しました。大満足でした!

2024ゴースト

2024ゴースト

ミュージカル座

あうるすぽっと(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前回の作品がとても良かったので今回も観てきました!

誰もが自分を殺人犯だと言う

誰もが自分を殺人犯だと言う

G-フォレスタ

新開地アートひろば(兵庫県)

2024/06/29 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

作品としては、14年前の再々演ということであるが、現代でも十分状況というか、気持ちがわかる内容であり大満足 アフタートークも勉強になりました‼️

1123GO8

1123GO8

!ll nut up fam

萬劇場(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

!ll nut up fam初観劇。前情報をほとんど入れない状態で劇場へ。序盤、話が動き出し始めるまでというか、タイトルにあたるシーンに入るまでがちょっと長く感じたけど、これは好みの問題かも。視覚的にも分かりやすくて楽しい舞台。

音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

ほろびて/horobite

STスポット(神奈川県)

2024/06/21 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久々のほろびて。と言っても本公演2本、さいたまネクストシアターへの書下ろし作品(演出:岩松了)を観たに過ぎない。今回は初期作品のリクリエイトとの事で、新鮮な感触が味わえた。
表現上「これは幻想なのか、想像なのか、現実なのか」が決定的な部分で判らなかった所があった。二つばかりの解釈があり得るそのどちらかによって評価が分かれるという所でもあり、あらまほしい解釈の方を信じたいが、そのためにはもう少し表現上の工夫がなければ・・という感想であった。
STスポットを横長に使い、調度は置かれているが住居内の「壁」部分は床にテープで示され、映画『ドッグヴィル』(黒い床に白ガムを貼りつけただけの「村」のセットの中で演じられる)で、人物らが次第にリアルな存在に立ち上がって行くのに似た、「段々見えて来る」感覚が中々面白かった。

雨とベンツと国道と私

雨とベンツと国道と私

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/06/08 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

正直ツボであった。ハラスメントがテーマとして浮上しており、回想場面と現在進行形の場面を行き来するが、芝居の真ん中で長尺の回想場面がぐっと入り込ませる。根底には総合芸術である映画を「創り出す」営為と、非対称的な関係性の歪みをどう評価するか(できるか)の問題がある。前作「ビリー..」も劇団の話だったが、映画現場ではより「仕事」の側面が強くなる。芸術性の要素に「お金」の要素が大きく絡む。勢い現場は熾烈になる。ハラスメントすれすれの言動が飛び交う。

句読点シリーズが始まった頃だったと思うが入場料3000円にこだわると宣言し、コロナを経て今はそれをアピールすらしていないが、今となっては破格である(無論芝居のレベルも勘案して)。
芝居は映画界に憧れを持つ(講座に通ったりして一度現場の手伝いに入った事がある)女性が語り手となり、彼女の視線で久々にお手伝いを乞われて久々に訪れた撮影現場の光景が描かれる。だが彼女は語り手に留まらず、徹するのでなく、以前行ったその現場と、久々にお手伝いを頼まれて訪れた現場の二つは、世の中では終息しようとしているコロナ同様、彼女にとって「終っていない」問題として交錯する。彼女がかつて見たハラスメントの飛び交う現場は、彼女にとっては「勇気をもって立てなかった」忸怩とした過去であり、それは彼女の儚く終えた「初恋」に絡んでいる。パワハラ一般の問題ではなく、個的な体験としてある。世間一般で言う「パワハラ」はその当事者である監督のスキャンダルとして映画界から放逐される要因として機能するのみ。物語はそうしたもやもやと未解決に取り残された問題群を看過する事なく、最後に拾い上げる。
見事に溜飲を下げる場面に私は快哉を禁じえなかった。放送コード、コンプライアンス・・表現そして芸術の領域に、これらが果たしてどう有効に機能するのかは大きな議論が必要だと思う。その議論を喚起するに適切なケースが、この芝居では作られている。そこが巧い。色々と語りたくなるが、もう少しまとまったら書いてみるか。。

デカローグ7~10

デカローグ7~10

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/06/22 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

7-10を1日で通して観たが、これまでと同じく、どれもなかなか面白く印象に残る短編の佳作。劇的な展開をみせるものもある。何度も観てくると、あの舞台上の建物がそこに住まう者の運命を操り見つめているように思えてくる。
オリジナルの映画がそうだからか、どれも短い場面が次々連なって展開するが、うまく舞台上で捌いている。最前列の場所によっては建物の2階で演じられる場面が角度的に死角になってやや見えにくくなる。

ネタバレBOX

デカローグ8でついに亀田氏がしゃべった。
『D地区 × カムパネルラ』

『D地区 × カムパネルラ』

火曜日のゲキジョウ

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2024/04/02 (火) ~ 2024/04/02 (火)公演終了

内側の時間

内側の時間

劇団野らぼう

調布市せんがわ劇場(東京都)

2024/05/31 (金) ~ 2024/06/01 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

野外と見せかけ実はせんがわ劇場!?と驚くほどの世界観の構築にまずびっくり。テントのみならず太陽光で蓄えた電力も持ち込んでの地産都消のゼロカーボン演劇、素晴らしい試みでした。地球のエネルギーも人間のエネルギー同様に有限。この世界と、今という時間と手をしっかり繋ぎながら描かれていく叙情詩/叙景詩の連作たち。キャストから技術スタッフさんへの「(残りの電力は)あと何%?」という問いかけすら演劇の"内側"に繋がる輝きが眩しくて、尊くて。開けた窓から入る風と光で煌めきながらパラパラと詩集がめくれてくような時間でした。この演劇ばかりは語れば語るほど、本当に語りたいことが指の隙間からすり抜けていくものがある感覚になります。それは多分目に見えぬ、心に直接触れるエナジー。胸がいっぱいの観劇でした。次も必ず観たい!

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『思い出せない夢のいくつか』は列車内を舞台にした3人芝居である。
歌手の由子(兵藤公美)とその芸能人生の苦楽を共にしてきた長年のマネージャー安井(大竹直)、由子の付き人である貴和子(南風盛もえ)が地方巡業へと向かうため列車に乗っている。
3人は過去の世間話や窓の外の景色、そして空の星座についてのとりとめのないおしゃべりを続ける。一見なんてことのない、こちらもまた静かな会話劇だけど、さりげない一言一言がそれこそ星と星のようにつながり、3人の間に生じている穏やかではない起伏をそっと確かに握らせていく。
以下ネタバレBOXへ

ネタバレBOX

三角関係がまるで星座のように浮かび上がってからは、なんてことない質問や応答が牽制のようにも取れるなど、会話の手触りにも変化を感じずにはいられない。その上で最も印象的だったのが、出ハケの効果だった。喫煙や売店への買い出しなどで誰か一人が席を立ちその場を空けると、当然残された二人だけの空間が始まる。表立って分かるほどではないけれども、それぞれが三人の時とは違う温度と湿度を宿した会話がカットインし、そして、そのことによって不在の雄弁さとでも言おうか、席を空けている人間は今、この車内のどこでどんな表情で過ごしているのか、などのイメージも駆り立てられるのである。
由子と安井が恋仲ではないにせよ夫婦に擬えられるような気の置けない関係であること、しかし恐らく安井は貴和子と既に一線を越えているのかもしれないことなどが読めてきたところで、二人きりになる由子と貴和子。空気をかき混ぜるかのように星座早見盤を使って星座を探しはじめる貴和子とその読み方が全く分からないとボヤく由子。そのコントラストはこの先の三人の関係の読めなさを暗に示しているようでもあって、ドキッとさせられた。一つの林檎を回しあって食べるシーンもまた、それぞれの歯形で欠けていく果肉がその関係性を彷彿させるようでもあって、それでいて官能を秘めているようでもあり、とても詩的な演出だった。

もはや俳優評にしたいほど、3人の俳優それぞれが纏うムード、声のトーン、そしてその絶妙に調和のとれた応酬が素晴らしい。状況的には「調和」というよりは「不和」なのだが、一言で「不和」と言い切るには憚れる、えも言われぬニュアンスを見事に生み出しているのだ。兵藤公美の人気歌手という過去も納得のオーラと喋りだすと途端に無防備なチャームを見せるそのギャップ、二人の間に挟まれているのか、挟まれにいっているのか、肝心なところでつかみきれない男の浮遊感を体現する大竹直、若さと無邪気さのその奥で渦巻く複雑な葛藤を目線一つに豊かに滲ませる南風盛もえ。目的地が星のごとく遠ざかっていくような時間とその時間に呼応して間延びしていくような車内の空間。3人の会話と2人の会話の往来によって、人一人の不在が語るものの大きさ、その雄弁さを受け取った。3人が作り出す濃密な芝居を堪能した75分だった。


S高原から

S高原から

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/22 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

病を抱え、療養を要する人たちが暮らす高原のサナトリウムを舞台に、そこで生活をする人や働く人、入れ替わり立ち替わり面会に訪れる人たちの交流が会話を通じて描かれていく。
以下ネタバレBOXへ

ネタバレBOX

患者がスタッフや面会に訪れた友人と比較的明るく会話をしていることもあり、場所が療養所であるほかは一見自由に過ごしているように見えるのだが、コーヒーが飲めなかったり、テニスができなかったり、おもむろに眠気を訴えたりすることで、やはり何かしら制限をかけなければならない病を伴った身体であるということが伝わる。特段お腹を痛そうにするだとか、息を切らすだとか、そういった素振りをしないにもかかわらず、俳優たちが言葉の端々、身体の隅々を使って体と心の揺らぎを体現して見せる様子が見事だった。

登場人物は16名。
入院して半年の患者・村西(木村巴秋)とその恋人と思しき面会人・良子(瀬戸ゆりか)と良子の友人・久恵(田崎小春)。一時は名を馳せた画家・西岡(吉田庸)とそのかつての恋人であり面会人の雅美(村田牧子)、サナトリウム内で西岡の絵のモデルをしている患者・明子(南風盛もえ)。入院歴4年の福島(中藤奨)の元に挙って訪れるのは、古くからの友人である鈴本(串尾一輝)と坂口(井上みなみ)と恋人と思しき友子(和田華子)。その傍らで何やら騒がしいのが、患者の中でも年少に見える喜美子(山田遥野)と過保護なまでに甲斐甲斐しく喜美子の面倒を見る茂樹(松井壮大)の一風変わった兄妹。そして、新たに入院した患者の本間(永山由里恵)と医者の松木(大竹直)、看護人の藤沢(南波圭)と川上(島田曜蔵)である。

患者とその面会人や家族で構成されるコミュニティは大きく分けて4つあり、そこが時にすれ違ったり、交わったりすることで患者の置かれている状況や心情が炙り出されるようでもあった。私がとりわけ印象的だったのが、患者と恋人や元恋人(恋人と明確に定義はされていないかもしれない特別な間柄も含む)との会話、その温度や質感のコントラストだった。そこにはやはりそれぞれの「死との直面」があった。未来を描ききれずに別れを決めた良子の葛藤にも、その別れを良子の友人から代弁された村西の狼狽にも、つとめて明るく周囲と会話を交わし、蝋燭の火が消えるかのように時折姿を消す福島の背中、隣に座るだけでその孤独を包み込むような友子のたおやかさにもそれぞれ同じだけ胸をかき乱された。
ここにきて絵を描くことの本質と同時に死生観をもまっさらに見つめ直すような西岡の落ち着き、何も語らずしてその余白の中に多くの想像を導いた明子、その様子を複雑な心を秘めつつ見守るようでもある雅美。静かな三角関係が伝える、そこはかとない終末の気配にも心を揺すぶられた。
劇中のどの会話を切り取っても、とても静かなお芝居なのに驚くまでの饒舌さがあった。それは、生の饒舌さであり、同時に死のそれでもあるように思えた。サナトリウムでなくとも、昨日も今日も明日もどこかで誰かと誰かの間で交わされている言葉と会話、沈黙と行間にもきっと同じものが流れているはずで、つまり、これらは、生まれた時から死に向かう私たちのリアルそのものなのだった。停滞にも滞留にも似た時間、達観にも諦観にも似た横顔、高原の上と下では当たり前に空気や温度が違うのと同じようにそこに生じる人と人の懸隔。大きな出来事は起きない静かな時間の中で、その瀬戸際でこそはじめてうねる人々の心。死が訪れる先はその当人だけではないということを改めて気付かされるような、そして、それは、生を感じることが当人だけでは難しいということでもあるのではないだろか、と。
孤独を縁取りながら照らす。そんな演劇だった。

少し余談になってしまうのだが、こまばアゴラ劇場に通った日々についても少し振り返りたい。私は演劇を観たり、取材したりしているわりにはこまばアゴラ劇場に、青年団の演劇に、ひいては“静かな演劇”に出会うのが遅かった方だと自覚している。正直なところ、それまでの私はどちらかというと、客入れの曲がガンガンかかり、最後にM0のボリュームが上がって暗転、明転した時から演劇が始まる、そんな演劇ばかりを好んで観ていた。だから、最初はこの静けさをどう受け取っていいのかがまるでわからなかった。静かに始まって静かに終わっていく演劇に慣れていなかった私はその見方がわからず、突然来たことない土地で迷子になったような気持ちだった。こんなにも答えのもらえない演劇があるのか。そう思った。答えをもらおうとすること自体が違ったのだ、と今では分かるけど、そう教えてくれたのが、紛れもないこまばアゴラ劇場で上演された数々の演劇だった。「聞こえてくるものだけを聞く」「見えているものだけを見る」のではなく、その奥で聞こえずとも確かにある声、見えずとも確かにある風景、そういうことに耳を澄ませたり、目を凝らしたりすることを、その豊かさを、私は時間をかけながらこの劇場で学んだような気がしている。



静かであることの饒舌さ、沈黙や行間、停滞の中にこそ潜む真意。言葉の一つ一つを、台詞の一言一言を文字にしたら、どれもが際して大きな意味はないように見える。淡々と語られる言葉、粛々と過ごされる日々。だけど、だけどだ、その言葉を俳優が口にする度に、あの空間でその一言が発される度に、強烈に死と生が絡み付いていく。拭いきれない死はいつもとても静かで、静かなときほど存在感を増す隣人とも言える。『S高原から』という作品はそんな静かな死の饒舌さ、その実感を改めて私に握らせた。こまばアゴラ劇場で出会ったいくつもの演劇、そして、閉じゆくその空間の中で見つめた二つの“静かな演劇”。それらの存在は、私の心をとても騒がしくした。静けさから導かれたその騒めきをこうして文字に託しながら、改めてそう痛感している。
1123GO8

1123GO8

!ll nut up fam

萬劇場(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人間の死生観を管理するという何とも目新しい世界
天使と悪魔、それぞれのコミュニティーが存在するも、天使側の政治の方がぐらついており悪魔よりダークな匂いがするという意外な展開
唯一の人間となる主人公には華やかさとリーダー性があるので、入り込んでしまったこのヘンテコな世界をガンガン引っ掻き回して欲しかったもけれど、最初は宙ぶらりんな状態であったのがちょっと勿体無かったかなぁと(重要な立ち位置ではある)
バナナマンを彷彿させる天使&童顔の天使の二人組が筆頭になって笑いを誘発
ケレン味たっぷりの見せ場が随所に用意されてバラエティーに富んだ舞台
導かれた結末で作品の主張部分に共感できたけれど、もう一段深みが加わればもっと良かった

このページのQRコードです。

拡大