るつぼ 公演情報 演劇ユニット King's Men (キングスメン)「るつぼ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    チケットを発売日に定価で買った。

    『るつぼ』は堤真一、黒木華、松雪泰子、溝端淳平ヴァージョンを観ている。ただ黒木華さんが観たかっただけなのだが、堤真一氏のラストの独白にやられた記憶。サルトルの『壁』と云う短編小説に近い衝撃を受けた。自身の存在と死との対峙を極限まで追求し考え抜いたもの。

    1692年アメリカで実際に起きた「セイラム魔女裁判」を戯曲化。魔女と告発された村人150人以上が逮捕、25名が死亡。当時田舎の村、セイラムのピューリタン(キリスト教プロテスタント派の総称)の教義では回心を重要視。「罪を認めれば許される」という宗教的倫理観から被疑者達は悪魔との契約を認め、求められるがままに自白した結果こうなったという。悪を認めて他者を告発すれば許されたのだ。やってもいない悪を認められなかった善良な信者達だけが絞首台に吊るされた。
    アーサー・ミラーが今作を発表した1953年はアメリカで赤狩りの真っ最中。マッカーシズム=共産主義者追放運動が公然と行なわれ、疑われた者達は公職を追放されていた。無実の者達がその無実を理由に処刑されていく社会の狂気、そこがテーマであろう。

    主人公ジョン・プロクター(平澤智之氏)は妻エリザベス(絵里さん)がありながら、17歳の女中、アビゲイル・ウィリアムズ(絵里さん二役)と一夜肉体関係を結んでしまう。勘づいた妻はアビゲイルを解雇する。
    アビゲイルは叔父のパリス牧師(マキノマサト氏)の家に身を寄せる。夜な夜な深夜の森に少女達を集め、カリブ海のバルバドス島出身の奴隷・ティテュバ(芳尾孝子さん)の知るブードゥー教の儀式をもって降霊会を開催。(日本でいうコックリさん)。到頭それをパリス牧師に目撃されてしまう。全裸の少女達が森でトランス状態で踊り狂う様を見たパリス牧師は悪魔に取り憑かれていると考え、悪魔祓いの為に専門家のヘイル牧師(小松大和氏)を呼ぶことに。
    問い詰められたアビゲイル達は村に悪魔が住み着き、村人達を操っていると告発。魔女狩りが始まる。

    胸元を強調する絵里さん(の胸元)が気になった。だが何故二役を演じたのか?演出的に意味があるのなら平澤智之氏も相反する二役を演らないと釣り合わないだろう。
    芳尾孝子さんがろう者とは知らず、緊張で台詞を出すタイミングが判らない為、石井亮次氏が背中を叩いて合図をしているのかと勘違いして観ていた。大変申し訳ない。素晴らしかった。石井亮次氏をもしや『ゴゴスマ』の司会者?と勘繰っていたが普通に同姓同名。
    平澤智之氏は本田博太郎と町田町蔵(康)を合わせた野性味。足がデカく足の指が柔道経験者っぽかった。

    今作は万有引力の『チェンチ一族』風味に調理するのが正解なのでは。正攻法で行っても何か行き詰まるネタ。
    プロクター家の女中・メアリー・ウォーレン役の山本麻祐さんが全て振り切って何も関係なく突っ走っていたのがMVP。ひたすら突っ走れ!

    ネタバレBOX

    開場してまもなく主催である平澤智之氏が観客一人一人に「上演時間は2時間半、休憩はありません」と小声で告げて回る。観客はまだ十人も来ていない。「あ、はあ」としか言いようがない。不穏な空気。山本麻祐さんが前説的に元気に挨拶。さあいよいよ開幕だ。素舞台に背景に投影された西洋の著名な絵画がバック。だが途中スタッフの手違いで画面が操作画面になってしまう。色々と試してみるがどうにも元に戻らない。シリアスなシーンだったが、バックの設定の方が観客には気になる。やっと全画面表示で絵画が投影されて胸を撫で下ろす。いつしか運営側に感情移入している自分に気付く。
    トーマス・パットナム役の中島史朗氏は不味かったら全額返金で有名な池袋のラーメン屋『鈴の木』店長、「りゅう社長」寄せ。声がくぐもっていてなかなか聴き取れない。後半トーマス・ダンフォース判事役の時のカンペ、ガン読みは別に気にならなかった。ただよく聴き取れない。
    子役の咲希ちゃん、多分母親であろう女優が必死にちゃんとさせようと引っ張る。だが集中力が続かない。もう飽きちゃっている。本筋より周りの女優の必死の対応の方を注視。
    小松大和氏は若き日の佐々木主浩似でカッコイイのだが早口で滑舌が悪く聴き取れない。そこが今後の課題。
    衣装は特撮作品におけるピアノ線のように意識を逸らした。

    序盤から勘づきメタ的な観方に切り替えていたのでそんなに腹は立たなかった。市民劇団、社会人劇団なら「あるある」ネタ。この難局をどう乗り切っていくのか?なんて。いつしかエド・ウッドなんかをだぶらせて観ていた。物凄く理想高く情熱燃やして臨んだところで現実は厳しい。何一つ思ったようにはいかない。懸命になればなるほど酷い異化効果で客席は白けていくばかり。誰もこんな筈じゃなかっただろう。必死になって作った作品全てが酷い駄作だったエド・ウッド。だが「いつ観ても深夜3時の気分にさせられる」という優れたキャッチコピーが物語る通り、それはそれで味わい深い。今作の副題、『Fire Walk With Me』はツイン・ピークスの映画版タイトル、火遊びしましょう。観客も手痛い火傷を負ったのだ。

    今作の失敗は単純に演出の力不足。演出をただの演技指導だと勘違いしている。客席から見える全ての物事について、品質の保証をすることこそが仕事。要らないものを削る判断こそが望まれる。脚本通りにこなすことが正解ではない。伝えたいものをきっちり観客に伝えることこそが正解。ただこんな失敗、人は誰でも経験するもの。誰か他人のせいにして逃げてはいけない。こういう時こそ全て自分の責任だったと引っ被るべき。こんな失敗はよくあること。鼻でせせら笑えばいい。LAUGHIN' NOSE。

    ただチケットを発売日に定価で買った。

    ※以前、今はなきシアターミラクルにてとある老人が観劇。開幕してすぐに口を開けひたすら熟睡。これ感想はどう書くつもりなのか気になったが、星5つで適当な絶賛。それから彼の言説は全く信用していない。これがこの業界の正体だ。真剣に観て批判されるより、観もせずに絶賛されたいのだろう。何を求めているのか?何が欲しいのか?無意味なゴマスリごっこ。自分の惨めなナルシシズムを支えて貰いたいだけなのか?下らない演劇ごっこよりもそここそが気になる。お前の正体を教えてくれ。

    ※上記は特定の個人に対して書いたつもりではなく、自分も含めた受け手と作り手と作品の関係性に対してのものです。このサイトはもっと有意義なものに成りうる可能性があると思っています。ここを見なければ観劇しなかった作品は無数にある。だから褒められた貶されたの場で終わって欲しくはない。作品とはそんな単純な消費物ではない。自分自身への自問自答として“正体”という言葉を用いたのですが非常に伝わり辛い文章でした。

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    2024/09/25 21:45

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  • その老人はこの公演も見に来ていましたか?

    もう一つ。
    その人は無駄に文字数が多い長文なのに、内容がほぼ無い感想コメントを書く人でしょうか?

    2024/10/06 00:39

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